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先月(2017年6月)

走尾正敬さんのレビュー一覧

投稿者:走尾正敬

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政治的、経済的、文化的挑戦

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 本書は、1974年から82年まで西ドイツ首相を務め、東西冷戦の時代に米ソ間のいわば仲介役として「危機管理人」の異名をとった著者が、97年12月から98年1月にかけてデュッセルドルフのハインリヒ・ハイネ大学で行った3回の講義を1冊にまとめたもので(1)グローバリゼーションとは何か、いま何が起きているのか、何が問題なのか(2)主としてドイツや欧州が直面している政治的、経済的課題とそれへの対応(3)独自の文化的アイデンティティーの保持(一方で他の文化や宗教を尊重する精神の重要性)—の3項目に分かれている。
 このうち、大量失業を抱え、構造改革を迫られているドイツの政治的、経済的課題として、著者は規制の緩和(個々人の自己責任の再確立)、国の不要な仕事の廃止、税制の透明化、硬直した労働市場の柔軟化、経営者・勤労者・国家の連帯を取り戻すこと、社会保障制度の再構築、研究開発への本格的取り組みの7項目を挙げる。これらはわが日本が直面している課題とほとんど同じだ。
 著者は81歳。フランスのジスカールデスタン大統領(当時)との独仏枢軸で、第1次石油危機後のスタグフレーション(インフレと不況の同時進行)を克服するため、先進国首脳会議(現・主要国首脳会議、サミット)の開催を呼びかけたり、欧州連合(EU)の経済通貨同盟(EMU)の前身にあたる欧州通貨制度(EMS)を創設したりするなど、国際的に活躍した。そんな幅広い経験から、西欧民主主義の尺度ですべてを推し量る態度を戒め、東洋文化など、他から多くを学ぶことの重要さを説く。
 本書の中身は実に分かりやすく、具体的だ。毒舌家として知られた人だけに、鋭い舌鋒は相変わらずで、現役の政治家に対する注文はとりわけ厳しい。マックス・ウェーバーが挙げた政治家の望ましい資質(情熱、責任感、見識)だけでは不十分で、判断力と市民的勇気、実行力が不可欠とし、「彼らの責任感の欠如を決して見逃してはならない」と結んでいる。
 これに関連して、知日家の著者は「日本語版に寄せて」のなかで、「いま日本がもっとも切実に必要としているのは、経済諸施策より国民の政府に対する信頼の回復である」「日本の危機は大部分、経済的な要因からではなく、心理的、政治的な要因、さらには信頼にかかわる要因から生じている。したがって日本は、エコノミストを必要としているのではなく、むしろ政治的リーダーシップを必要としている」と書いている。たぶん、その通りだろう。
(C) 日本経済研究センター

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