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横河 健さんのレビュー一覧

投稿者:横河 健

1 件中 1 件~ 1 件を表示

この書は磯崎新の内面を知ることができる。愛する建築に対する告白文だからである

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 「アントロポモルフィスム」を人体形象主義といおうか,身体像がすべての人工的構築体に投影されているという考え方,つまり人体形を基盤とした解剖学的解析という訳だが,建築・都市・さらに宇宙までの構造を人体になぞらえたものである。
 しかし,これは身体感覚で建築をとらえようとすることとは別の次元のことである。むしろ正反対の頭の運動といえる。つまり,宇宙観である。古くはアルベルティ,レオナルド・ダ・ビンチから,近年のコルビジェのモデュロールに至るまで,この宇宙観のなかで,建築のその成り立ちを説明しようとするその構造である。
 ・・・というところまで書くとなんと堅苦しい難解な書と思えてくるが,しかしこの本はそんなに難しい本ではない。この本は,写真家・篠山紀信と共に巡った六耀社版建築写真集の「建築行脚」を下敷きにしてその代表的な作品を再録したものであり,それらの建築に磯崎が思いを入れた知的蓄積から炙り出された氏の告白文とも言えるものである。それはアクロポリスに始まり,ビラ・アドリアーナ,サン・ロレンツォ聖堂,パラッツォ・デル・テ,ショーの製塩工場,そしてサー・ジョン・ソーン美術館に至るまで,磯崎本人の体験的な目と,必ずしも解釈が正しいと言えるかどうか分からないが磯崎の歴史観,すなわち史実と史実を結びつけるアントロポモルフィスム的飛躍からこの本は成立している。
 磯崎が自問し,告白している言葉は,これまでの彼の著作の中でくり返し使われてきているので,そのフレーズには既視感がある。しかし,知識の積み重ねと独自の歴史観だけを見るよりむしろ磯崎自身の生身の告白の方がきわめてわかりやすく心地よいのだから仕方あるまい。
 磯崎の著書を読んだことのない人にとっても,建築を知るということより磯崎を知る上において好著と言えるだろう。その意味で磯崎はもはや歴史の人となったのかも知れない。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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