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村上知彦さんのレビュー一覧

投稿者:村上知彦

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ほんの少し元気に

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 あや秀夫は1978年の小学館新人コミック大賞に、『ぼくのサヨナラヒット』で2席入選してデビューした。この作品の、淡々としたナレーションのセンスに惹かれたぼくは、続く初の連載作品にも大いに注目した。

 あや秀夫『ヒットエンドラン』が新鮮だったのは、これが“甲子園を目指さない”高校野球まんがだったからだ。主人公はスーパースターではないし、必殺技も出てこない。弱小野球部の「1勝」にかける思いを、ランナーとバッターの信頼によって成り立つ『ヒットエンドラン』というタイトルに込めて、あや秀夫は、甲子園とは無縁の大多数の高校球児たちの、野球を通して傷つき成長してゆく、かけがえのない日常を描いたのだ。

『ヒットエンドラン』の連載が「週刊少年サンデー」で始まった1978年は、柳沢きみお『翔んだカップル』が「週刊少年マガジン」で、あだち充『ナイン』が「増刊少年サンデー」で、それぞれ始まった年でもある。60年代末以来のスポ根ブームは去り、少年誌の野球まんがは、『野球狂の詩』『一球さん』などリアリズムを基調とする水島(新司)節と、『1,2のアッホ』(コンタロウ)、『すすめ!! パイレーツ』(江口寿史)などの新しい感覚を持ったギャグとに、ほぼ二分されていた。まんが界の大きな潮流としては、少女まんがブームの余波で、恋愛などを描いた日常的なドラマが、少年まんがにも流れ込み始めたころと言ってもいい。

『ヒットエンドラン』は、少年まんががそんな日常の細やかな感情を描く、さきがけとなった作品かもしれない。地味な練習、ナインとの心のすれちがい、そして試合でのみじめな敗北。『ヒットエンドラン』では、敗北し、失敗したとき少年たちが見せる、みじめで悔しそうな表情こそが見どころなのだ。それはぼくに、連戦連敗を続けるチャーリー・ブラウン率いるピーナツ・チームを思い出させる。そして、ピーナツ・ブックスを読んだときと同じように、彼らの心の中で励ましながら、ぼくもほんの少し元気になるのである。

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