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先月(2017年5月)

森  真人さんのレビュー一覧

投稿者:森  真人

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本消えゆくコンピュータ

2000/10/26 00:16

日経コミュニケーション1999/3/15

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 モバイル端末の普及のカギは電子メールの入力インタフェースにある。現代日本人に適合するキー操作は,ビデオデッキ・リモコン,電話のプッシュ・ボタン,ゲーム機のコントローラのどれかをベースにしたものだけだ。日ごろこう主張してきた私の立場からすると,本書の内容は非常にスムーズに受け入れられた。
 私の主張は,どちらかといえば経験的・感覚的なものである。それに対して本書は,普遍的なヒューマン・インタフェースの中に潜むエッセンスを抽出・分析し,問題点,進むべき方向,方法論などを示しながらコンピュータ・インタフェースを検証する。図や写真,関連Webサイトの引用も多く,理解を助ける工夫を凝らしてある。
 著者の言葉を借りれば,道具を使いこなすことは人間のスキルという能力によって身体を広げ,道具の存在を消していく経験プロセスである。つまり個人的・社会的に意識しなくてよいほどまで人間のスキルが到達した時,「コンピュータは消えゆく」のだ。
 興味深い点の一つは,著者がインタフェースを「メニュー型」と「コックピット型」に分類していることだ。前者はマウスを使ったGUIなどのように,時間的制約がなく,じっくり見つめる場合に適している。一方,後者は,ピアノの鍵盤のように全体をちらっと見た後の操作は身体に任せるといった分散的インタフェースに優れる。明示こそしていないが著者自身は後者が好みのようだ。また,「分かりやすい」,「使いやすい」かは,それが人間の身体の形態と構造や,それらのダイナミックな動きに似ているかどうかによるとも述べている。
 さらに社会的側面からは,インタフェースの過度の統一は個人の試行錯誤や工夫の楽しみを奪うという点で好ましくないと警鐘を鳴らす。あるインタフェースに初めて触れる人に伝えるべき印象は「簡単さ」ではなく,使い込んでいくと,何やら未知の世界が開けてきそうだという「予感」や「期待」なのではないかとも言う。また,後半ではユニバーサル・デザインの著作権問題を大きく取り上げている。これは私がかかわる携帯電話や携帯情報端末の分野でも切実な課題だ。
 本書はモバイル・コンピューティングを対象にしたものではないが,関連業界の方には一読を薦めたい。自分の考えを分析し直すよい機会となろう。
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