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先月(2017年4月)

羽生田 敏さんのレビュー一覧

投稿者:羽生田 敏

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本はてしない物語 上

2000/08/01 15:40

今、現代人に問われているもの−『はてしない物語』の世界から−

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』は、映画「ネバーエンディング・ストーリー」(1984年)で多くの人々に知られている。

 この作品の主人公であるバスチアンは、背の低い太った十才ぐらいの少年である。彼は、母を失い父との関係もよくない。それに、学校ではいじめられっ子であるが、想像力は大変豊かである。

 バスチアンが、古本屋から盗んできた本(『はてしない物語』)を、学校の屋根裏で読みだすところからこの物語は始まる。この本は、現実の世界はえんじ色、ファンタージエン国の世界は緑色で書かれ、この二つの世界をたくみに組み合わせて展開されていくところがみごとである。

 さて、バスチアンが、学校を休んでひそかに読み進める本には、虚無によって荒廃していくファンタージエン国が描かれている。その様子を、“葉が色という色を失いぼんやりとくすんだものになっていた”と表現されているが、それはバスチアンの暗い心を表現しているのかもしれない。

 ファンタージエン国の救い主として、少年アトレーユが活躍するし、作品の後半で、バスチアンが「月の子!今ゆきます!」と叫んだ瞬間、バスチアンは、ファンタージエン国に入り込む。

 だが、バスチアンは、野心にとりつかれ、人間としての自分を忘れてしまう。そして、ひとりぼっちの世界をさまようが、<変わる家>のアイゥオーラおばさまから、愛の大切さを教えられる。そして、最後に、太っちょの気の弱い少年にもどったバスチアンは<生命の水>に入っていくのである。

 — 今はあるがままの自分でありたいと思った。(略)世の中には悦びの形は何千何万とあるけれども、それはみな、結局のところたった一つ、愛することができるという悦びなのだと。

 こう悟ったバスチアンは、現実の世界にもどっていくが、そこで会った父の目には涙が光っていた。前とちがった生気に満ちたわが子を見たからである。即ち、ファンタジーエン国から帰ってきたバスチアンは以前よりたくましく成長し、真実の愛を自覚していたのである。

 エンデの書くファンタジーの世界は、単に作品の中のことではない。ファンタジーエン国の虚無は、現代社会が抱えている一つの病理を象徴している。それを新しい発想で解決するために、真のファンタジーの世界を旅することができるかが、今、現代人に問われている課題のように思われてならない。

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