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先月(2017年8月)

加藤ゆきさんのレビュー一覧

投稿者:加藤ゆき

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本できればムカつかずに生きたい

2000/11/07 11:46

暗闇で立ち止まったとき,彼女は光で照らしてくれることだろう。

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 この書では一番身近な他者である家族との関係を軸に,これまでの自身の生き様を文章に著している。ささくれだって過ごした若い時代を冷静に分析しながら,ときに様々な事件を自分の体験に重ね合わせ,淡々と自分の人生を語っている。そうすることによって,彼女は自分の生きている理由を問うている。そこには同情を求めるような女々しさはなく,むしろ男性的であるように感じる。誰にも止められない彼女のやり方なのであろう。さばさばした文体と取り上げるテーマの重さは瞬間,読者に冷たい印象を与えるかもしれない。しかし読み進んでいくうちに身体の中からじんわりと熱くなってくる。背景は違えども,実は私たちが普段感じることばかりだとわかるからだ。

 私たちの多くは他人の生き様を見せられたとき,自分の人生と比較をしてしまう。人をあわれむことで自分の救いにしてみたり,うらやむことで自分の不運を嘆いたりする。だが,読みすすめるうちにそれがナンセンスであることが端々からうかがえた。次元が違うのだ。

 誤解を恐れずに言えば,私たちを取り巻くいろいろのことは他人のせいなのだ。でも本当は他人のせいにはできないのはわかっている。だからムカつくし,キレる。
 
 そこで起こる気持ちの変化を,彼女は長い時間をかけて克服しようとしてきた。けれども,あれこれと思うより自分の気持ちを相手に直接伝えることで,他人(=違和)とわかり合い,認めようとしているのだ。それは「私の人生において確信できることはごく僅か」で,「私は私の人生しか知りえることができない」からであり,本質的
に彼女が自分と向き合う手段なのである。

 田口ランディは光の中に生きる人という表現が似合うのではないだろうか。目も開くことのできない強烈なまぶしさのなかで,光の先にあるものを探しつづけている。どこまでも進む。光が強いほど落とす影の色は濃く,そこにそっと顔を伏せる瞬間がある。そのメリハリが彼女を支えているような気がしてならない。

 私たちが暗闇で立ち止まったとき,彼女はその光で照らしてくれることだろう。

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