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先月(2017年1月)

野口 武彦さんのレビュー一覧

投稿者:野口 武彦

1 件中 1 件~ 1 件を表示

始祖鳥記

2000/10/21 00:17

日本経済新聞2000/3/19朝刊

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 鳥のように空を飛びたいという夢想は人類に普遍的であり、江戸時代にも「鳥人」幸吉という男が飛行機の発明に夢中になった話が語り伝えられている。
 『始祖鳥記』の一編は、この人物の数奇な半生を描いた物語である。時代は江戸中期の天明年間から文化の初年まで。日本の十八世紀最後のほぼ三十年にあたる。備前児島に生まれた幸吉の行状をなぞるだけだったら通常の奇人伝で終わるところを、作者は塩商人と廻船の船頭という二人の副主人公を配することによって、作品の世界を思い切り広げることに成功している。
 天変地異が相継いだ天明期は、諸国の飢饉をよそに幕府と癒着した問屋商人の営業独占が民に災厄をもたらしていた時代でもあった。生活必需品である塩及びその廻船の独占を打破すべく、二人の男が立ち上がり、幸吉との不思議な接点がかたちづくられる。民衆からはヒーロー視され、権力には罪人視される幸吉に発奮して、舞台は雄大に千葉の行徳と備前岡山とを結ぶ行動半径を機軸としてひろがる。
 作者が寡作であるのもむべなるかな、この長編小説には技術史、塩業史、海運史の知識がよくぞ調べたという感じでぎっしり仕込まれており、文章はもう少しあそびがあってよいくらいに緊密であり、ちょっとへんくつな文体に独自の風格がある。
 天変があれば人妖が出現するという言い伝えの通り、これらの三人は反・独占の流通革命をめざす闘士といった面持ちで活躍する。世界は陸から海に溢れだし、さらに空に向かって開かれる。幕府政治の腐敗と独占価格に対抗する男たちの物語にはぐんぐん引き込む力があるが、それ以上に、主人公の幸吉が身の破滅を覚悟で大凧にぶらさがって飛ぶラストシーン。ついに日常生活にあきたらず、空に呼び戻されるこの結末には、達成感とわかちがたい孤独の悲哀がこもっていて印象的である。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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