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青木みやさんのレビュー一覧

投稿者:青木みや

39 件中 1 件~ 15 件を表示

脳は砂糖を求めている?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


 甘いものは好きですか、と聞かれると好きと答える人は多い。そしてまた砂糖は肥満の原因だと思いますか、と聞かれると肥満の原因になると答える人も多いだろう。だから世のダイエットブームの流れを受けて、ノンシュガー、シュガーレスの商品が売れている。 では本当に砂糖を食べると太るのだろうか。イエスでもあるし、ノーでもある。砂糖10gのエネルギーは38kcal、米10gは36kcalでそんなに変わらない。そして本書では砂糖に特別に肥満になる成分も依存性もない、ことが科学的に検証されている。砂糖のみならず何でも食べ過ぎれば、太る。

 でも砂糖って体に悪いのでは、という疑問もありそうだ。どうだろう。砂糖はそのブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)がくっついたものだが、脳はそのブドウ糖のみをエネルギー源にしている。穀類に多い糖質のでんぷんはブドウ糖の重合したもの。
 脳のエネルギー消費量は激しく、ブドウ糖の摂取が不足すると集中力や記憶力が低下するとも言われる。砂糖の分解はでんぷんの分解より早く、速やかに吸収される。私たちは3度の食事で穀類のでんぷんからブドウ糖を補給しているが、食事から数時間たち、血糖値が低下してきた頃に砂糖入りのコーヒーを摂るのは理にかなっている。砂糖が体に悪いとは言い切れないのだ。

 じゃあ、砂糖はいくらでも食べて良いかというとそうじゃない。砂糖のフルクトースは高脂血症を引き起こしやすい。また穀類にはタンパク質もビタミンもミネラルも食物繊維も含まれるが、砂糖はほとんどエネルギー源にしかならない。本書の途中までだと砂糖の効用ばかりが強調されているので、砂糖は体に良いのねと早合点してしまいそうだが、そういうわけではない。きっぱりあれがダメ、これは良いとは言えないのが食べ物の微妙さだ。

 結局のところ、食べ物はこれを食べれば……という単品効果主義はあり得ない。何を食べても良い、ただ「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。昔の人は旨いことをいう。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
はじめに
第1章 「砂糖は太る」の誤解
第2章 健康常識の落とし穴
第3章 ”糖”が付くから砂糖が原因?糖尿病
第4章 脳が欲しがる砂糖
第5章 健康な生活のために

<関連書籍>
『脳の栄養─脳の活性化法を探る』(中川八郎 共立出版)
『食卓の生化学(別冊・医学のあゆみ)』(三浦 義彰著 小野 直美著 橋本 洋子著 医歯薬出版)
『砂糖の世界史』(川北 稔 岩波ジュニア新書 岩波書店)

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紙の本医者が心をひらくとき 上

2002/11/29 22:15

医学生・研修医に、そして患者自身に読んで欲しい

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 本書は、JAMA(アメリカ医師会誌)の連載コラム「A Piece of My Mind」からの傑作選を、『アメリカ医療の光と影』の著者である李啓充氏が訳したものである。
 医師や研修医を中心に、患者とその家族が書き手となり、それぞれが思いの丈をつづった100本近いコラムが収録されている。

 生と死が関わる場所にはドラマが生まれやすいが、ここに描かれているのは、そんな大げさなものばかりではない。実地研修中の医学生が医師の質問に答えられず、採血にも失敗し、暗い気持ちで1日を終えようとしたところに、患者に言われる。「君は、きっと、よい医者になるよ。俺にはわかる」。患者がそう言った根拠は、たんに医学生が「椅子に座って話しかけてきた」からだ。
 だが、ここから入院患者が人間的な扱い、思いやり、優しさに飢えていたことがわかる。医学生の技量は未熟だったが、患者から暖かい気持ちと信頼を勝ち取ったのだ。

 もちろん医師にも患者にも、それぞれの立場があるだろう。しかし、患者は病気の残酷さ、容赦なく訪れる死に、恐怖感や無力感、さらに絶望感を持つ。そんな患者の個人的な感情を、診断、検査、投薬、手術などというスキルだけで癒すことはできない。そして医師自身が抱える苦悩にも同じことが言えるのではないだろうか。感情を摩滅させ、機械的に効率よくしようとするほど、信頼や愛情という温もりは失せていく。それは本来の医療と呼べるものだろうか——。

 本書の中では、患者家族から「アートとしての医療」への感謝が表される。「アートとしての医療」とは何か、本書を読んで考えてほしい。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
上:
序 キャスリン・モントゴメリ 博士
編者まえがき ロクサーヌ・K・ヤング
[医者になること/医者であること]
[家族]
[暴力−−医の対極にあるもの]
下:
[思い出をありがとう]
[患者の視点]
訳者あとがき


★【科学・技術・医学・建築サイトへ】

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未来への期待と科学技術の普及への熱意が伝わってくる。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1999年9月、2000年2月とスペースシャトル・エンデバーに搭乗した毛利衛。本書は、毛利へのインタビューや対談、生い立ちなどから毛利衛を解きほぐそうとする、丸ごと一冊毛利衛本である。

 毛利衛は2001年7月にオープンした日本科学未来館の館長となった。館長に就任したのは、2度の宇宙飛行の体験をより多くの人と共有すること、その体験を生かして社会にどう貢献できるか、を考えていたからだという。そして日本科学未来館によって、「科学技術を文化にする」ことに魅力を感じたのだと。
 科学技術はこれまで経済の発展に貢献し、家庭電化製品や医療技術の向上など現代の生活に欠かせないものとして成長してきた。私たちはそれを知っていながらなぜ科学技術を「特別なもの」と感じてしまうのだろう。毛利は、日本科学未来館で働く科学技術スペシャリストに議論させ、彼らのオリジナルな解釈を出すことを求めたという。その最初の結実が哲学的なテーマも盛り込んだ「ロボット・ミーム展」だった。今後は、日本科学未来館から文系や理系という枠を越えた新しい試みがどんどん発信されることが期待される。

 ところでいまは日本科学未来館の館長である毛利衛だが、やはり宇宙がバックグラウンドにある。毛利の「ユニバソロジ」という考え方は、宇宙で顕微鏡で細胞をのぞいていて、ふとスペースラブの丸窓から地球を見たら、そのふたつの姿がよく似ていた、というところから発想を得た、という。スケールの違うものを大きな観点から見た驚きは、宇宙の、とても包括的な雄大なスケールを感じる。毛利のユニバソロジという考え方は、今後、日本科学未来館で、未来を目指して発展し、広がっていくのだろう。
 未来への期待と科学技術普及への熱意が伝わってきてわくわくする一冊。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
巻頭写真
巻頭言 毛利衛
1 未来館
・ロングインタビュー 終わりのない進化の中で —宇宙飛行士から日本科学未来館館長へ—
・聞き語り 新しい場所で「個」をみがく —ある5人のこだわり—
・私が見た毛利衛 酒井夕子 藤田大悟
2 宇宙
・対談 坂本美雨×毛利衛 宇宙で見たきれいなもの
・対談 坂本龍一×毛利衛 Music in the Universe 音楽の未知なる可能性
・聞き語り 地球の中でなく、宇宙の先に向かうということ —3度目の宇宙はじっくりと—
・私が見た毛利衛 角野直子 RYU
3 生い立ち
・対談 石川直樹×毛利衛 ふたりの旅人が語る自然との対話
・エピソード キーワードで探る 毛利衛「好奇心の遺伝子」
・BOOKS SELECTION 毛利衛 本との出会い
・私が見た毛利衛 広畑優子 本島修
4 科学と社会
・対談 瀬名秀明×毛利衛 科学と文学のリアリティ
・聞き語り アート、ボランティア 未来へのアプローチ
・Q&A 学生5名×毛利衛 科学と社会をめぐるQ&A
・私が見た毛利衛 中村桂子 中西忍

【関連書籍】
毛利衛撮影・坂田俊文監修『私たちのいのち』(集英社インターナショナル 2001.1)
毛利衛著『宇宙からの贈りもの』(岩波書店 2001.6)
幸村誠著『プラネテス』(講談社)

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減塩だけがよいわけではない

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 人間の血液から赤血球などの血球成分を取り除いた血清の成分と海水の成分は、ほとんど同じ組成になっている。生物が海洋から陸上に進出した名残であり、海水と血清で濃度の差はあれど、どちらも最も多いミネラルはナトリウムと塩素である。
 ナトリウムと塩素は、人間の体の中では、細胞外液(特に血液量)の水分量や浸透圧の調節、血液の酸・塩基平衡、筋の収縮、神経機構、糖質の吸収などに関係している。そのため生命の保持には食塩が必要だが、1日1〜3gの食塩の摂取で十分なのだ。

 本書では、まず食塩が体にとってどのような働きをしているかを説明し、その事を踏まえて食塩の必要量はどのくらいか、を示す。そのステップの踏み方が丁寧で、納得がいく。専門的な事を一般的な言葉で説明しようとすると、科学的な精密さが犠牲にされることがあるのだが、本書ではそのような事は見受けられない。

 他に、食塩と血圧の関係、治療としての食塩制限についてもポイントは抑えられている。それにしても食塩制限によって血圧が上昇するケースや降圧薬で食塩嗜好が亢進し食塩摂取も増加するケースなど、人間の体の不思議さにはうならされる。

 また歴史的な話も挟まれているのが興味を引く。人肉を食べるカニバリズムの風習は地球上の赤道付近に広がっているが、熱帯のような発汗の著しい地域では食塩の喪失が大きいため、塩分の補給のためにカニバリズムが行われたのではないか、というのだ(第3章「塩とカニバリズム」)。そして人類の歴史から考えると、食塩が過剰に摂取されるようになったのは、近年のことであり、そのため食塩を多く取って血圧が上がるという食塩感受性に関して進化の途中にあるのではないか、と著者は言う(第12章 食塩感受性と奴隷貿易)。真偽のほどは判らないが、面白い話ではある。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
まえがき
第1章 海と我々の意外な関係
第2章 食塩への渇望
第3章 塩とカニバリズム
第4章 塩の種類
第5章 食塩嗜好とはどんな要因で変化するか
第6章 塩の道と塩税
第7章 塩と健康
第8章 食塩とがん
第9章 食塩は高血圧にどう影響するか
第10章 食塩はどのようにして血圧を上昇させるか
第11章 食塩負荷によって血圧の上昇する人、しない人
第12章 食塩感受性と奴隷貿易
第13章 治療としての食塩補給と食塩制限
第14章 食塩と他の栄養素の関係
第15章 食塩制限はどのようにするか
あとがき
参考図書/その他の主な文献/さくいん

<関連書籍>

片平 孝著『塩 海からきた宝石』(あかね書房 1979.12)
木村 修一・足立 己幸編『「食塩」 減塩から適塩へ』(女子栄養大学出版部 1981.11)
都甲 潔〔著〕『旨いメシには理由(わけ)がある 味覚に関する科学的検証』(角川書店 2001.3)
アスペクト編『至宝の調味料 5 塩』(アスペクト 2000.3)
陸田 幸枝著 大橋 弘写真『日本の正しい調味料 全部取り寄せ情報付き』(小学館 2000.10)
コリン・コバヤシ著『ゲランドの塩物語』(岩波書店 岩波新書 2001.5)

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世界稀な日本の定時運転はいかにして成ったか

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世界稀な日本の定時運転はいかにして成ったか

 1日に160万人の乗客が乗り降りするJR新宿駅。激しい混雑ではあるが整然と動く乗客を乗せて、列車はきちんと定刻に発車していく。毎日通勤する人にとっては当たり前の光景であるし、また定刻発車でなければ困る。
 だがその「1分違わず」正確な運行をしている鉄道は世界でも希有な例だ。攪乱要因はいっぱいある。まずは乗客。乗客が乗降するだけでシステムにとっては不測要因が発生する。次に台風や大雨、雪といった自然現象。それに事件事故、人的ミスや故障。
 鉄道が正確でなければ、あの朝のJR新宿駅の光景は殺伐となる。山手線のホームは人で埋まり階段まで並ぶ。来た列車に乗客が殺到する。安全水準と平行させながら定時運転を遵守していくのは容易ではない。
 本書では、乗客の眼に見える部分から、鉄道を支える裏方やその歴史まで紹介しながら、「定時運転」を検証している。定時運転は社会と科学技術のたまものである。私たちは「遅れない鉄道」「遅れてもすぐに回復する鉄道」を当然に思っているが、その裏には科学技術の結晶というべきシステムが横たわっている。
 著者は定時運転から、日本社会のありようまで見渡そうとする。日本の社会は時々刻々で動き、鉄道は社会を大量輸送能力で支えてきた。その在り方は今後どう変わっていくだろうか。やや物語性には乏しいが、社会と科学技術の見事な関係を描いた力作である。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
序 鉄道は正確で当たり前?
1 環境
第1章 正確さの起源
第2章 定時運転の誕生と進化
第3章 鉄道が正確さでなければ成り立たない都市
2 仕組み
第4章 驚異の運転技術
第5章 攪乱要因との闘い
第6章 巨大システムのマジック
第7章 列車群の生態
第8章 よいダイヤは遅れない
第9章 「ダイヤの回復力」を設計する
第10章 システムの運転台
3 正確さを超えて
第11章 日本の鉄道はこれからも正確か?
第12章 成熟社会の夢
あとがきと謝辞
参考文献

<関連書籍>
『新幹線をつくった男島秀雄物語』(高橋団吉 小学館)
『新幹線がなかったら』(山之内秀一郎 東京新聞出版局)
『社会風土と鉄道技術』(斎藤雅男 中央書院)

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ナチス医師を裁いたニュルンベルグ裁判の記録と解説

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 第2次世界大戦後、ニュルンベルグの米軍法廷では、ナチス・ドイツの元で人体実験に関わった医師達が裁かれた。本書は1949年に刊行された裁判記録とその解説である。
 序文にも記されているが、著者は裁判の法的根拠には拘っていない。関心を寄せているのは、医師達の医科学的な活動の環境、患者および被験者への接し方、何のための研究作業か、優生学的・人種政策的な目標であり、その背景である。
 人体実験は軍事目的と医師の医学的好奇心が結びつき、拡大していった。実験の対象者となったのは、主に強制収容所の収容者たちであり、国籍は様々である。実験は凄惨であり、死者が続出している。
 読んでいて感じられるのが、実験を行った医師たちの大義名分もしくは権威への盲目的服従、エリート意識、偏狭な視野、自己防衛本能である。彼らは己の人間としての尊厳を地に落としていることを気付いていないのだ。日本でも過去の細菌戦部隊による人体実験、近年のサリン事件を思い出しても、私たちはこれを過去のことには出来ない。
 軍事と医学との関わり、人間性や尊厳というものを考えさせてくれる本書は非常に貴重なものだ。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
訳者まえがき
編・解説者序文
本書の主な登場人物
第1章 低圧・低温実験
1 高空からの飛行士救出実験
2 長時間冷却実験
第2章 海水を飲料水にする実験
第3章 発疹チフス接種実験と伝染性肝炎ウイルス研究
1 発疹チフス接種実験
2 肝炎ウイルス研究
第4章 スルフォンアミド実験と骨移植実験
1 スルフォンアミド実験
2 骨移植実験
第5章 毒ガス(イペリットとフォスゲン)実験
第6章 ストラスブール国立大学によるユダヤ人の頭蓋骨収集
第7章 安楽死プログラム
1 病院や施設における精神病者の安楽死
2 心身障害児の殺害
3 不要民族と不要患者の安楽死施設における「あからさまな殺害」
4 肺結核を病むポーランド人に対する特別処置計画
5 大量断種と実験的予備作業
第一次アメリカ軍事法廷の判決
訳者あとがき

<関連書籍>
・いわゆる「T4計画」と呼ばれたナチスの障害者安楽死計画をテーマにした2冊
『ナチスドイツと障害者「安楽死」計画』(ギャラファー著 長瀬 修訳 現代書館)
『灰色のバスがやってきた ナチ・ドイツの隠された障害者「安楽死」措置』(フランツ・ルツィウス著 山下 公子訳 草思社)

・関東軍第731部隊(通称、石井部隊)の行っていた生体実験やその目的を資料や証言を基に解明していく
『医学者たちの組織犯罪』(常石 敬一著 朝日新聞社 朝日文庫)
『証言・731部隊の真相 生体実験の全貌と戦後謀略の軌跡』(ハル・ゴールド著 浜田 徹訳 広済堂出版)

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からだに入る化学物質を検証

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 人工的に合成された物はからだに悪く、自然の物はからだに良い、との考えが一部にある。いわゆる化学調味料とその主材料である「グルタミン酸ナトリウム=MSG」が嫌われるのもその類だろう。MSGは口渇や頭痛を主症状とする中華料理店症候群を起こすと言われた事があり、「からだに悪い人工添加物」の代表格になってしまった。
 だが果たして中華料理店症候群は本当に「人工的な」MSGの責任なのだろうか。著者は、いいや違う、と言う。からだが食品成分を処理できない不耐症のためで、天然か人工かは関係ない。問題は自分に合わないか合わないかと摂取量・体内濃度なのだ。
 本書では、非栄養物が体内のどの経路で影響しているかを化学的に検証している。万物は化学物質で出来ていて、1回の食事で約50万種類の化学物質がからだに入る。その数の多さのためか、食品科学の情報は不明慮で胡乱なものになりやすい。著者は「カフェインを巡るホラー話は、たいていずさんな疫学調査の産物だとわかってきている」と述べているが、「科学的な」情報でも2転3転する時がある。だが、本書で書かれている体内での物質の働きや害の回避の基本的な考え方を知れば、戸惑うことは少ないだろう。
 からだのためになる食事を考える章、栄養ガイドもある実用書。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
はじめに
1  グルタミン酸ナトリウム─中華料理店症候群の謎
2  アルコール─中毒と解毒の科学
3  腸のはたらき・不耐症・アレルギー─8メートルの化学
4  天然アミン─サバ中毒とパーキンソン病
5  サリチル酸─万能薬の光と影
6  カフェイン─コーヒーで目が覚めるわけ
7  二酸化硫黄─大仕事も乱暴もする小分子
8  天然の毒─ダイオキシンも真っ青
9  添加物と汚染物質─子どもがキレる一因
10 食と健康─野菜・果物・セレンに注目
付録1 栄養ガイド
付録2 参考データ
訳者補遺「安全・危険」は量しだい─ダイオキシン騒ぎの錯誤
訳者あとがき
索引

<関連書籍>
高橋久仁子『「食べもの情報」ウソ・ホント』(講談社)
食品添加物研究会編『あなたが食べている食品添加物 食品添加物1日摂取量の実態と傾向 総合版 本編・資料編』(日本食品添加物協会)
辻 啓介監修『すぐ役立つ食べもの安心事典』(法研)
西島 基弘著『食品添加物は敵?味方?(健康とくすりシリーズ)』(丸善)

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魅力溢れる医学エッセイ

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 5歳で脳の難病にかかり失語症の危機に陥った少女、字は書けるのに、読めなくなってしまった英語学教授、脳梗塞のため楽譜は読めず人と会話することすら困難なのに指揮棒を振ると一流の音色を出す指揮者。脳神経科医が語った経験は人の脳の不思議に満ちている。
 脳の機能と密接に関係しているのは「言語」だ。小さな未発達の脳で生まれてくる人間は学習しながら成長する。子どもの時に開かれる学習のための特定期間「機会の窓」を逃してしまうと学習は非常に難しくなる。複雑な言語は、「機会の窓」のある典型的な例であり、その言語の発達には子どもを育て語りかける女性が大きな役割を担ってきた、と著者は主張する。わたしたちは誰でも母の言葉(母語)を話している、と考え得るのか。
 言語を手がかりに脳のメカニズムの巧妙さを語り、神経学的に脳の進化と発達を推論する。症例のエピソードも興味深く、魅力溢れる医学エッセイである。友人であるオリヴァー・サックスとの対話も収録されているが、興味の持ち方やアプローチの仕方は随分違うようだ。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
第1部 認知機能の由来
第1章 原始人女性は偉かった 学ぶための機会という窓
第2章 わたしが出会ったルーシー 利き手と話し言葉を探る
第3章 話し言葉という贈り物 フランク・モレルと後天性癲癇性失語症治療
第4章 マンガン鉱夫 運動のプログラム
第5章 好きな映画は字幕なしで 読字の仕組み
第6章 このなかで違うものはどれでしょう 識字は脳をどう変えるか
第7章 音楽は続く、いつまでも だが、どこから来たのか?

第2部 脳の弱点 プログラムされた細胞死、プリオン、苦痛
第8章 オリヴァー・サックスとのランチ なぜあの朝はほかの朝と違っていたか
第9章 二つの脳 古いものと、「新しい」ものと
第10章 予期(アンテイシペイシヨン) 三世代のち、そしてその後
第11章 シーフ・リヴァー・フォールズの隠者 病気の名祖との最初の対面
第12章 狂牛病と狂乱相場 アイス・ナインおよび人間と病気の非ダーウィン的進化
第13章 ネアンデルタール人の赤ん坊に何が起こったか ちょっとしたあとがき

解説 澤口俊之

<関連図書>
【オリヴァー・サックスの著作一覧】
『Brain valley』(瀬名秀明 角川書店)

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猫を愛する読者のために。

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 本書は、1996年12月に絶滅の危機にあるツシマヤマネコが捕獲されたが、猫免疫不全ウイルス、通称「猫エイズ」に感染していたというニュースから始まる。
 環境庁が対馬島内の50匹の猫を調べたところ、感染率22%と非常に高かった。ツシマヤマネコはその猫たちとの喧嘩による傷から感染したのだ。
 猫免疫不全ウイルスーFIVーは公式には1987年にアメリカで発見された。だがその起源はかなり古く、猫の進化と共に歩んできたウイルスらしい。だから人間にはFIVは感染しないが、猫には致命的だ。無症状のキャリア期を経て発病すると免疫機能は低下し、死に至る。著者らの調査では国際的に見ても日本の猫の感染率は高いそうだ。著者は、日本の猫たちに猫エイズが蔓延したのは人間社会への警告だという。人間の都合でイエネコの生息区域を変化させ、縄張り争いや生存競争の激化という事態を猫の間で起こさせている。猫のFIV感染蔓延は人の手が大きく関わっているのだ。
 飼う飼われるではなく、人と動物の関係を「同居」という立場で見直す。人間に非常に身近な動物である猫を入り口に考えていきたいと思う。
 免疫機能についての解説からFIV感染猫をケアする際の注意点など細かい配慮がなされている。猫を愛する読者はきっと勇気づけられる。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
プロローグ 猫のエイズに感染したツシマヤマネコを発見
 猫のエイズウイルスの発見
第1章 猫のエイズ発見まで
 猫のウイルス研究の歴史/ウイルスとは何か
第2章 エイズとはどんな病気か
 エイズと免疫/猫のエイズウイルスの感染から発病まで
第3章 猫のエイズと他の動物のエイズ
 猫のエイズウイルスは人間に感染するのか/エイズウイルスの進化
 犬にはレトロウイルスがない/猫のエイズウイルスはどこから来たのか
 ツシマヤマネコのウイルスのルーツ
第4章 エイズウイルスに感染した猫の飼育とその管理法
 他の猫への感染をいかにして防ぐか/2次感染の防止
 病期ごとに必要な管理法
第5章 エイズとその保護者たち
 エイズの猫を保護する素晴らしい人たち/様々な形の人と動物の関係
 動物への思いやりとケア
エピローグ 猫のエイズが現代社会に警告するもの
あとがき

<関連書籍>
『ねこのお医者さん』(石田卓夫 講談社+α文庫)
『DR.野村の猫に関する100問100答』
『エイズ ウイルスの起源と進化』(Jaap Goudsmit 学会出版センター)
『「HIV」と暮らす』(服部雅博 集英社新書)

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医師はどのようにガンに立ち向かったか

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 本書のテーマは、「癌克服」。癌を体験した5人の医師が、がんをどう乗り越えてきたか、その体験から何を得たか、自分の医師という職業に照らし合わせてどう思ったか、を書きつづっている。手記だが、同じ病気を体験してもそこから引き出されたものや視点は違い、それぞれ好きなように思ったことを書いている。個性が感じられ、指針ではなくて、個人の考え方が示されるている。
 医師の告知の方針や病気の受容などに対する考え方は、患者側への影響が大きい。「体験しなきゃ患者の気持ちはわからない」というわけではないが、心持ちはやはり違う。医者として癌の進行具合が自分で察せられ、医療は体を新品にしてくれるものでないと理解している。その上でどう立ち向かって行ったか、その経験をどう生かしどう伝えていくか、という静かな意気込みが感じられる。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
まえがき
きょうのような明日がくることを願って 小倉恒子
“強敵”ガン細胞との闘いは知的ゲームでもある 黒木登志夫
ガンよ、ありがとう 柴田高志
抗ガン剤を拒否して栄養療法を選択した私 星野仁彦
ガンもまた人生 荒川健三郎

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『現代思想』『科学』に掲載された論文集

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 優生学を根本から検証した『優生学と人間社会』で「自己決定に根ざした優生学」が問題になっていた。そこで「自己決定」に歯止めはあるのだろうか、と書いた。本書は、その「自己決定」の意味を再検討し、安楽死、遺伝子治療、介護保険、臓器移植における自己決定、人の存在の尊重、国家と個人の関係を探る議論を展開していく。
 立岩真也氏の本を読むと妙に安心する。前作『私的所有論』でもそうだったが、「自己決定」という肯定的な概念に覚える違和感の根拠を丹念に解きほぐしてくれるからだ。自己決定は重要ではあるが、まずその人としての存在が尊重されて決定がある。自己決定に第一の価値をおく社会は優生を促進する。出生前診断〜選択的人工妊娠中絶は、他者の在り方を決めることであり、自己決定の問題ではあり得ないのだ(ただし著者は中絶に関わる決定を当の女性に委ねている)。
 ほか介護保険について障害者運動にも詳しい著者は、介護を受ける当事者たちの意見も踏まえた上で、結論を導いていく。『現代思想』『科学』に掲載された論文集。丹念に積み重ねた緻密な議論は、読み応えたっぷりである。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
第1章 空虚な〜堅い〜緩い・自己決定
 近頃の自己決定 空虚I・迷惑について 空虚II・条件について 
 緩い自己決定 堅い自己決定 機能不全とその修理 責任問題とその解決
 詐称 圧迫 畳まれてしまうこと 弱くしてしまうこと

第2章 都合のよい死・屈辱による死 
     ─「安楽死」について─
 都合の悪い自己決定 都合のよい自己決定 屈辱による死 問い方について

第3章 「そんなので決めないでくれ」と言う
      —死の自己決定、代理決定について─
 安楽死を駆動するもの みんなのため、みんなのおかげ、でなく
 少なくとも医者は(代理)決定者ではない

第4章 1970年 ─闘争×遡行の開始─
 できなくさせる社会、という把握 「平等派」と「差異派」
 1970年 能力主義のこと 自己決定のこと そのあと

インターミション 障害者運動に賭けられたもの 
     ─市野川容孝氏との対話─
 平時の思想としての優生学  日本の1970年  
 日本の障害者運動は特殊なのか 問題提起しかしないこと・を受け止めること
 障害者運動の国家論 不妊手術の闇

第5章 生命の科学・技術と社会:覚え書き
 問い 人とともに既に存在してしまうことを巡る問題 
 その人を離れ利用可能になる時に生ずる問題
 漠然とした不安を漠然としなくなるまで持ち続けること

第6章 未知による連帯の限界 ─遺伝子検査と保険─
 保険会社が遺伝子情報を求めることの是非 しかし逆選択がおこりうる

第7章 遠離・遭遇 ─介助について─
 まえおき 根本的中途半端さについて 「よさ」について 機構
 口を挟むこと、迎えること、他 つまり短絡させないこと

おわりに
文献表 索引

<関連文献>
『私的所有論』(立岩 真也著 勁草書房)
『優生学と人間社会』

《生命・人間・社会》
参考文献、関連情報が掲載されている。

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紙の本ジュゴンデータブック

2002/10/29 22:15

もっと、ジュゴンのこと、知りたい

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 ジュゴンについて、知っていること。人魚伝説のモデルになった(らしい)、数が少なく珍しい、くらい。あまりに知識が乏しくて、『ジュゴンデータブック』を読んで恥ずかしくなってしまった。
 写真をまじまじと見たのはこれが初めてだ。似たイメージの動物を挙げてみる。カバ、イルカ、アザラシ……。人魚のイメージからはちょっと遠い。海牛類とされてきたが実際はゾウの仲間と考えられている。海生哺乳類としては唯一の草食動物だ。そう言われてみれば、体長3メートルの大きな体にちょこんとある瞼のない小さな眼はおとなしそうで、ゾウの目に似ているかもしれない。
 ジュゴンは太平洋とインド洋の赤道を挟んだ熱帯から亜熱帯の沿岸の、多くはオーストラリア、パプアニューギニアに生息している。個体数は減少する一方で、日本でも絶滅寸前で沖縄本島で確認されているのみ。
 沖縄ではザンと呼ばれ、民話にも登場するほど親しまれていたジュゴンは、終戦後に見かけなくなったという。戦時下の爆弾投下や戦後のダイナマイト漁がひっそりと暮らしていたジュゴン達に影響を与えたことは間違いない。だが、今もなお沖縄本島東海岸にはジュゴンが海藻を食べに来ている。生息数もはっきりとは判らないが、まだジュゴンは確かにそこにいる、存在している。まだ間に合う。
 沖縄の海のジュゴンが伝説にならないように、私たちはジュゴンのことを知ろう。そこにある海に、環境に眼を向けよう。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
プロローグ
名前/分布/生息数/ジュゴンとウミガメ/分類、大きさ、寿命
潜水能力/泳ぎ/海底の移動/ジュゴンとアマモ/食餌/プロポーズ
繁殖/オスとメスの違い/ジュゴンの瞳/体つき/鼻の下/目と耳
鼻/口/皮膚/骨格
ジュゴンの仲間 海牛類
ジュゴンのまつわる話いろいろ
ジュゴンノート 沖縄取材日記
エピローグ
ジュゴンを折ろう
ぱらぱらジュゴンの作り方
ジュゴンの生息分布図
日本で会える海牛類・ジュゴンの目視記録
ジュゴンリスト・協力クレジット
参考文献

【関連書籍】
ジュゴン保護キャンペーンセンター編『ジュゴンの海と沖縄 基地の島が問い続けるもの』高文研
中村元著『人魚の微熱 ジュゴンをめぐる愛とロマン』パロル舎


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人体をパーツとみなし、切り売りする権利は誰に

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 あなたが難病を患い、「治療の一環」と思ってある検査を受けた、とする。あなたは検査は自分が回復するためだと思っている。ところが実際は、あなたの身体組織から特殊な細胞や遺伝情報を手に入れるための検査だとしたら、あなたはどう思うだろう。しかもあなたの身体組織に対し、医師の名の下に特許が申請されていたら。

 これは実際に米国シアトルのジョン・ムーアの身に起こった事件だ。ムーアは医師たちを訴えたが、1990年、カリフォルニア州最高裁判所は、ムーアの自分自身の身体に対する財産権を認めず、そこから生ずる収益は医師とバイオテクノロジー企業側に属すると判断した。ムーアに認められたのは、身体組織を研究に使うと聞かされた場合に同意するか拒むかという権利のみだ。だが、医師や研究者は目的をすべて明らかにせずとも組織を採取することが可能だ。あなたは健康診断の血液検査で、自分の知らないうちに遺伝子情報が調べられることがあると想像するだろうか?

 バイオテクノロジーの時代に、人間の身体は貴重な遺伝子情報の宝庫となった。そして科学技術の進歩、ベンチャービジネスの育成という理由で、ヒト遺伝子特許が認められ、人体組織の商業価値が高まっている。ドナー候補者は自己決定をもとに自分自身を販売し、企業や研究者は金銭的利益を確保しようと患者の組織試料をため込む。遺伝子特許により遺伝子診断は法的制限やコストがかかるようになり、診断結果は遺伝子差別の原因となって現れた。

 人間は宗教的、歴史的、文化的なバックボーンをもつ社会的な存在である。人体を部品(パーツ)とみなし、切り売りする権利は誰にあるのか。法律家を含む著者たちは裁判記録やインタビュー、具体例を示しながら、個人や社会の価値が脅かされている現状に警鐘を鳴らす。科学技術のネガティブな側面ばかり強調されているように思えるが、人間が使う以上は誤用も濫用もあり得る。説得力と衝撃に満ちた内容であり、必読の書と言えよう。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
目次
謝辞
プロローグ────人体をめぐるビジネス
第1章  アインシュタインの脳からシルクウッドの骨まで──人体組織の研究
第2章  生体部品売買──人体組織に宿る“人間”
第3章  遺伝子ゴールド「・ラッシュと特許戦争
第4章  採血して走れ
第5章  人体にひそむ密告者
第6章  DNA捜査網──生物学的監視とDNA鑑定の拡大
第7章  生物収集と人体展示
第8章  死後の詮索──DNA捜査によって蘇る過去
第9章  新時代の死体泥棒──人体犯罪と法対策
第10章  人体を市場から救い出す
訳者あとがき

索引

【関連書籍】
粥川準二・文、あべゆきえ・絵『資源化する人体』現代書館
立岩真也著『私的所有論』勁草書房
市野川容孝編『生命倫理とは何か』平凡社

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紙の本C型肝炎 沈黙の感染症

2002/08/16 18:15

C型肝炎のことを知りたいと思う人にはうってつけの本

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 肝臓は有害物質の解毒や排泄、胆汁の生成、栄養素の代謝機能、タンパク質の生成と血液凝固作用など、身体を維持する重要な機能を担っている。その肝臓が炎症を起こす肝炎はアルコールなども原因となるが、最も多いのはウイルスによるウイルス性肝炎である。ウイルス性肝炎の中でも危惧されているのが、C型肝炎である。

 日本では非加熱血液凝固因子製剤による医原性の感染が広まっている可能性が強まったため、2002年度から住民健診にC型肝炎ウイルス(HCV)検査が組み込まれた。少しでも感染の心当たりがある人は、すぐに検査を受けることをお勧めする。なぜならC型肝炎の70〜80%が慢性化する。そうなるとほとんど病気の自覚症状はないまま、密かに肝臓は破壊されていき、何十年後かに肝硬変、肝癌として姿を現す可能性が高いからだ。沈黙の感染症と呼ばれる由縁である。

 C型肝炎ウイルスの大部分は血液を介して拡がる。輸血、ドラッグの静脈注射回しうち、刺青、ピアス、鍼治療などなど。幸いなことに、家族間のC型肝炎の感染は極めて起こりにくい。治療法は、インターフェロン治療と抗ウイルス薬の併用療法が注目を浴びている。

 以上のことは、本書にもっと詳しくていねいに語りかけるように書いてある。C型肝炎のことを知りたいと思う人に本書は、うってつけだ。ミシガン大学部の講師でありC型肝炎の免疫療法の研究者である著者によって、感染者やその家族、友人のための解説書として書かれた。病気に関心を持つこと、自分の状態を知ること、それが治療には良い影響を与えるはずだ。

 C型肝炎ウイルスが発見されたのが、1989年。それから十数年、治療法は急速なペースで進んでいる。もう少し、もう少しだ。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
まえがき
1章 「肝炎」という病気
2章 C型肝炎の発見
3章 C型肝炎と慢性肝炎
4章 C型肝炎と末期肝臓病
5章 C型肝炎と肝移植
6章 C型肝炎感染の拡大を防ぐには
7章 C型肝炎と飲酒
8章 聖杯を求めて
9章 食事と栄養
10章 C型肝炎とインターフェロン
11章 代替医療と非伝統医学
12章 C型肝炎と体の闘いと、ワクチンについて
13章 皮膚と関節病変—C型肝炎の肝臓外の症状
14章 C型肝炎と腎臓
15章 あなたと免疫系
16章 C型肝炎の心理面への影響
おわりに
訳者あとがき
関連情報
参考文献
用語解説
索引

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紙の本海馬 脳は疲れない

2002/07/11 18:15

ポジティブに生きるための方法論となっている脳の本

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 ひとの脳の中には「海馬」と呼ばれる場所がある。海馬は記憶を扱う部位だ。この本は、その海馬を研究対象に定めた新進気鋭の学者である池谷さんと「ほぼ日刊イトイ新聞」の糸井さんが、脳をテーマに対談したものである。親しみやすい言葉と日常の例をあげて話してくれるので、するすると理解できる。

 例えば「年のせいか物忘れがひどくて」と笑いながらもほろ苦い思いを抱いているひとはいませんか。でもね、池谷さんによると「物忘れ=老化」って誤解なんだそうだ。大人は経験値が子供より高いし、知識も豊富。だから上手く刺激すると、情報を整理し、推理する論理的な思考能力は30歳を越えたところから飛躍的に伸びる。だけど逆に歳を喰うと視点がマンネリ化し、情報のインプットを抑えてしまう。それが「物忘れ」に繋がっているのだ。

 脳の記憶の仕方の特色は「可塑性」。情報を受け入れて留めて記憶する、ということ。可塑性がないと記憶はできない。海馬は最も可塑性に富んだ場所だから、海馬が発達していると新しい局面や価値観に柔軟に対応できる、と池谷さんは説明する。それに対する糸井さんは、「変わることはいいこと」という人生観や物事の受けとめ方に広げていく。
 池谷さんと糸井さんの会話は絶妙だ。池谷さんが脳の機能を話すと、糸井さんがそれを実生活の中で起きているケースに変換する。この本は、脳の本でありつつ、ポジティブに生きるための方法論になっている。
 会話はざっくばらんに、思いは真摯に、発想は奔放に。二人の話題はとぎれる事がなく、読みながらわくわくしてしまう。

 さて、脳を働かすコツは、がんがん脳に刺激的な情報を与え、睡眠時間をきっちり取ること。眠っている間に海馬が情報を整理しているから、睡眠時間は6時間は必要らしい。みんな、ネットばっかりしてないで寝て頭を良くしよう!

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
第一章 脳の導火線
第二章 海馬は増える
第三章 脳に効く薬
第四章 やりすぎが天才をつくる

【関連書籍】
池谷裕二著『記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』講談社ブルーバックス
ラマチャンドラン&ブレイクスリー著『脳のなかの幽霊』角川書店
多田富雄&南伸坊著『免疫学個人授業』新潮文庫

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