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    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

碧木理乃さんのレビュー一覧

投稿者:碧木理乃

14 件中 1 件~ 14 件を表示

紙の本皇太子誕生

2001/12/12 22:16

世紀の出産プロジェクト

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 医学の進歩は、まさに“日進月歩”だということを再認識させられる一冊である。
 昭和35年、民間から嫁いだ皇太子妃が、初の病院出産をされる。万分の一のミスも許されない出産プロジェクトの、はかり知れない緊張と努力の模様が、当時の宮内庁病院産婦人科医長、目崎鑛太氏が遺した「目崎ノート」に詳細に綴られている。『皇太子誕生』はこの貴重なメモを元に再現された、美智子妃のご出産のドキュメンタリーである。
 昭和30年代初期といえば、ようやく一般家庭にもテレビ受像機が普及し始めた時代。その高度経済成長期の入り口に皇太子のご成婚があり、"ミッチーブーム"を巻き起こした、皇太子妃美智子様のご出産とあっては、日本中がこの慶事に注目し、期待していたのは当然のことだろう。
 しかし、出産は人類の誕生とともに繰り返されてきた自然の営み。当時は他の医療分野と比較して軽く見られていた。メディカル・エンジニアリングの普及も30年代後半からなので、未熟児で生まれた場合の対処法が危惧されていたのだった。そんな中で構成された宮内庁病院、東宮侍医団、東大医学部からの選抜メンバーによる出産プロジェクトの労苦は、我々の想像を越えた緊迫したものだった。しかも当時の宮内庁病院は倉庫のような古い建物で、明るく清潔に使いやすく改造するという「出産場所の確保」から始めなければならない。また、胎児の健康状態を確認する、胎児心音監視装置はその日に合わせて開発作成したもので、現在のように子宮の中の胎児をカラーの立体像で映し出す機械などは夢にも考えられなかったという。
 難産であったが皇太子浩宮は無事に誕生した。次いで礼宮、紀宮と3人のお誕生について書かれたこの本は、宮中の産室でのご出産から病院出産に移行した際の皇室の記録であると同時に、誰にでも喜びと平和をもたらす赤ちゃん誕生の秘話でもある。(碧木理乃/文筆業)

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紙の本ロンドン暮らし自由自在

2001/09/04 18:39

ロンドン発暮らしのエッセイでイギリスの深い魅力を探る

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

日本人が一定の期間海外で生活をすると、それまでひかえめな性格だった人も行動的になり、はっきりと自己主張するようになるとはよく言われること。「出る杭は打たれる」の日本的意識を抱えたまま、何事も遠慮していては海外では生きていけないということだ。
数年前に帰国した岩野礼子さんにお会いした際にも、ロンドンで長く1人暮らしをしながら作家として身をたてているということで、もしや「ストロングウーマン」ではないだろうかと想像していた。ところがいざ会ってみると、岩野さんはカジュアルなパンツスタイルがお似合いの、気さくでとてもチャーミングな女性だったのだ。そんな岩野さんになぜかホッとしながら、夫の転勤とか現地の人との結婚といった理由でなく、自分の意思と力で10年以上ロンドン住まいを続け、永住権まで獲得したという、本来の「ストロングウーマン」ぶりに敬服と羨望をおぼえずにいられなかった。
私事だが、数年前イギリスで庭師の勉強をしようと思いたち、下見がてら庭を巡る旅をしたことがある。庭や町は想像以上に美しかったが、私にとってイギリスは手ごわい相手だった。ここを知るにはもっと深く関わらなければと思わせるような厳しさと深さがあったのだ。庭の作り方を真似たり、同じ植物を植えたりしても、そこにある国そのものの背景や人々の視点が日本とはまったく違うからだ。形だけのコピーを日本で再現してもとても太刀打ちできない。そう思えて仕方なかった。
岩野さんは単なるあこがれではない強い情熱を持って単身で渡り、イギリスを深く理解し、ロンドンを自分のものにして居住できるようになったのだと思う。

『ロンドン暮らし自由自在』は、ウェブエッセイ「ロンドン徒然草」のエッセイを中心に、チャットに投稿された読者のメッセージをまとめたものである。イギリスの季節の歳時や、紅茶、食卓、ビールなどの食事情。日本人と大きく異なる衛生観念やチャリティー精神。花便りの違い、リゾートや冬時間の過ごし方、そして人種のるつぼロンドンのマルチカルチャー化。暮らしを大切にし、ていねいに過ごすことの喜びと東洋人であることの厳しさ、イギリスという国の魅力と海外での生活の悲喜こもごもが率直に伝わってくる。

しかしイギリスは、日本人が技能や才能を発信するにはとても難しい国だそうだ。印象に残った本書のメッセージに「あなたのテーマや技能が、グローバルな意味で意義深いものなら、きっと道はあるはずだ。信じて進むべし。ただし、単にあこがれのイギリスでひと旗あげたい的な発想では厳しいと思う。(中略)自分がやっていることにどれだけ情熱を込めているか、信じているか、まずは考えてみたい。」とある。イギリス滞在希望者でなくても胸に留めておきたい、光ることばではないだろうか。そしてイギリスを訪ねて、この国のことをもっと知りたくなったのは私だけではないだろう。

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紙の本緒方貞子という生き方

2002/04/18 22:15

安全に暮らす保障をされていない2,200万の人々への尊厳を守リ続ける人

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 2,200万という数字から何を連想するだろうか。自戒を込めつつ言わせてもらえば、特にピンと来ないのが日本人ではないだろうか。この数字は全世界の難民の数である。東京都の人口が約1200万人だから、この2倍弱の人々が故郷を追われ、難民として流出しているのだ。そのうちアフガン難民は最多で460万人。気が遠くなるような人数だ。
 2001年の同時多発テロを契機に、世界中がアフガンに目をむけるようになったが、それまでは、国際社会から見捨てられたような存在だったのがアフガン難民なのだという。緒方貞子さんは、91年に国連難民高等弁務官に任命されて以来、アフガンを始めとした多くの国の難民への復興支援を続けてきた。ともすれば、仕事でも勉強でも新しいことを始めるのに「年齢の問題」という壁を作りたがるこの国の慣習の中で、60歳を過ぎてからのスタートだったのだ。
 2001年初頭に行われたアフガン復興支援会議は、日本最大級の国際会議として記憶に新しい。議長として見事に仕切った緒方貞子さんに、改めて誰もが目を向けたことだろう。生まれ育った環境と親や夫の理解という幸運に恵まれてはいたが、"寛容"や"才気"、"器の大きさ"といった特性は、それだけでは培われるものではない。「子育てに追われる女性とそうでない男性とではライフサイクルが違うから」という考えのもと、何事もあせらず自然体でこなしてきた人間の大きさに敬服せずにはいられない。
 『緒方貞子という生き方』は、日本人離れしたスケールの女性の生き方を通して、市井で働く我々に多くの勇気を与えてくれるばかりでなく、馴染みの薄かった難民の存在と彼等を生み出す国の在り方を考えるきっかけを作ってくれる。この分野に触れる機会がなかった人にとっては必読の書であろう。じっくりと最後まで熟読してほしい1冊である。

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オリーヴ讃歌

2002/01/22 15:16

旅と文化とおいしさが詰まった大作でオリーヴ崇拝者増加

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イタリアンレストランで、パンと一緒に小皿に入ったオリーヴオイルが出てきた時、パンに油をつけることに躊躇して、「すみません、バターはないですか?」と野暮なことを言ってしまった経験はないだろうか。
イタリア料理ブームと健康志向が高まる中、日本でもオリーヴオイル愛用者が増えている。常緑樹オリーヴの果実を絞った油、オリーヴオイルは、悪玉コレステロールをやっつけるなど体への効用が注目されている。
『オリーヴ賛歌』は、樹木と果実と油の話だけで450頁もの読み物である。そこに書かれた、ヨーロッパ、中東での、オリーヴの歴史と人々との関わり、果実から生まれる黄金の油の深さを知れば、まさしく「目からうろこ」。先の「パンにオリーヴオイル」も納得の食し方なのである。
オリーヴに魅せられたアメリカ人ジャーナリストの著者は、移り住んだプロヴァンスで、オリーヴの古木を蘇生させ、オリーヴオイルを味わったことからその魅力に取り付かれ、オリーヴを訪ねる旅を始める。フランス、パレスチナとイスラエル、スペイン、イタリア、チュニジア、ギリシア、クロアチア、カリフォルニアなど、各国の産地をめぐり、栽培農家、搾油業者、販売、料理人、研究者などに話を聞き、オリーヴオイルとマフィアの関係を調べるなど、通信社特派員ならではの取材力で、知られていなかったオリーヴの世界を称え紹介するのである。
オリーヴの木もオイルの搾油法にも多くの種類があり、香り、色、酸味、苦味などにそれぞれ特徴がある。オリーヴの小枝をくわえた鳩が、平和を象徴するシンボルとして描かれるように、歴史、文化の側面を読むと興味深い。料理という視点から見れば14の伝統的なレシピがよい。
ここまでオリーヴの深さを知ると、読む方もオリーヴ崇拝者になってしまいそうだ。

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かわいい私の臓器さん

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 『かわいいからだ』『かわいいからだの救急箱』に続く、寺門琢己さんとイラストレーターふじわらかずえさんコンビの「かわいいシリーズ」第三弾『かわいいこころ』が出ました。表紙で、おなじみのコツバンちゃんと一緒にウルトラマンのようなポーズをとっているのは、「心臓さん」と「腎臓さん」。いやあ、今回も「ふーん、そうなんだ」と感心することばかり。
 「こころの野獣」に支配されて、自分の期待を裏切る私たちのこころ。人それぞれのこころのかたちを知るには、こころを方向づける臓器タイプがあるからだとか。こころと臓器?不思議な取り合わせみたいだけれど、判定シートでチェックしていくと、肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓の5つの臓器タイプに分かれるから面白い。因みに私は肝臓タイプなので怒りモードを切り替えるために顔のゆがみを整えて、色や音をイメージする。これで少しはキレなくなるかも…。どのタイプにも共通する朝夕のメニューや入浴法も新鮮な切り口で、すぐに実行できそうなことばかり。
 かわいいこころを育てるには、自分に合ったお日様に向かって好奇心の芽をどんどん伸ばす。思い出を整理して、どんな感情に彩られているかを見つめなおす。あの時怒っていたとか、嘆いていたとか、どうしてああなっちゃたんだろうとか、思い起こせばたくさんあるはず。頭蓋仙骨系とそこに満たされている液体など、聞きなれない名前もたくさん出てくるけれど、これらが私たちの重要な情報伝達経路だそうなので、是非一読をオススメしたい。
 心に染みこむ寺門さんの文章表現がとてもやさしい。自分の臓器も、どうしようもないと思っていたこころも、なんだかいとおしく感じてくる。かわいい私の臓器さんて感じ。(碧木理乃/文筆家)

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紙の本きっと、大丈夫

2001/10/04 22:16

あなたもわたしも大丈夫

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夏石鈴子さんの前作、短編集『バイブを買いに』はタイトルが強烈なので先入観を抱いて中身を想像しがちだ。で、今回の『きっと、大丈夫』はといえば、タンクトップらしきものを脱ごうとしているブラジャー姿の女性の写真…。
実は人気写真家平間至さんとのジョイント・エッセイということで、表紙モデルは素人女性。ほかに平間さんの写真が20数点。夏石鈴子さんはがんばっている自分自身と、これを読んでいる読者に対して「大丈夫」と言っているようだ。
会社員で作家の夏石さんには同居している恋人との間に二人の子供がいる。子供のお父さんとは入籍していないが彼は一家の父として存在している。
「わたしが好きになったのは、博打打みたいな人…」というくだりがある。こう聞けば、昼間は何もしないで寝ていて、夜な夜などこへともなく出かけるギャンブラーみたいな人の姿が浮かぶだろう。かたぎの勤め人の彼女がそんな男の子供を二人も生み、育てるのはさぞかしご苦労なこと。と、ありがちな話を連想しそうだが、どうもそれは間違っているようだ。鈴子さんはご飯をつくり夫にお茶を入れる。着物好きが高じて着付けを習い子供の産着を自分で縫う。時には家族全員で小旅行に行く。夫も子供を可愛がる寛大な大人の男。どう見ても"まっとうなお母さん"と"まっとうな家族"。もしかしたら古くさい私の思い込みのせいかもしれないけれど、このエッセイにはこんな風にたくさんの裏切りがある。自らが育った家庭環境を省みて、母と子、父と子の関係を思いながら子育てに挑む姿。誰にでもある日常にひそむささやかな想いをうまくことばに表していて読後感はすっきり。
表紙の印象やことばだけで判断してはいけない。アナーキーに見えるものほどコンサバなのかもしれない。やさしくて強い、勇気が出るエッセイです。(碧木理乃/文筆家 2001.10.05)

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税金システムがよくわかる

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我々も自分の国のことをまじめに考えていくためには、是非目を向けなくてはいけないことがある。税金の話だ。本書を読むと、この国のお金の流れとシステムがとてもよくわかる。オビに「滞納女王が税の大先生に挑む憂国の日本経済論」とある。滞納女王とは浪費家の作家中村うさぎさん。大先生は千葉商科大学学長で、元政府税制調査会会長の加藤寛先生のこと。税金滞納のため港区役所と闘いを続ける中村うさぎさんに、加藤先生がわかりやすく税の仕組みを説く。内容はシビアでもユーモラスな表現の加藤先生と、無邪気な質問をするうさぎさんの対比が実におかしい。箸休めのように出てくるマンガもとても冴えてる。
英語で「税」は「TAX」。「TAX」は「チケット」(入場料)と同義語。納得できるアメリカの税の本質。ところが日本の「税」の字は、「のぎへん」に「脱する」と書く。汗水流して作ったお米を、偉そうなお上に抜き取られていたのだ!もともとの成り立ちがこれだから、国民もお上がやることには逆らえないと税の行き先に無関心を装っていた。しかしそれではいつまでたっても暮らしやすい国にはならないということを切実に感じる。
公共事業という膨大な無駄遣いに使われている我々の税金。借金大国日本の真実の姿。郵政事業の民営化が急務なわけ。官と政のしてきたこと。納税者の権利とは…。
加藤先生、よくぞ言ってくれました。我々もこの国をよく見て発言し、時には怒らなければいけないのですね。

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「理想を信じる少年の心」を持ちつづけた、本物のニュースキャスターの姿

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ニュースキャスターの久和ひとみさんは、子宮ガンのため今年3月に若干40歳の若さで急逝した。少し早口でニュース解説をする、ニコニコした丸顔が印象に残っていたので、病死という最も似つかわしくない最後に痛ましさを感じずにいられなかった。 
『久和ひとみが伝えたかったこと』(小学館)は、両親を始め、親交のあった人たちが語る彼女の思い出と、過去に雑誌に載せた本人のエッセイで構成されている。
この本を手にしたとき、正直言ってさほど期待はしていなかった。亡くなった有名人をしのぶ本は、書物としての内容の充実度には欠けると思っていたからだ。ところが、読んでみてその思いは見事に裏切られた。95年から2001年初頭の死の直前までに綴られたエッセイには「理想を信じる少年の心」を持ちつづけた、本物のニュースキャスターの姿があったのだ。真摯に、果敢に自分の国のことを考え、弱者に目を向けて全速力で走り、ついには力尽きてしまったような生き様だったことがうかがえる。
「世の中の基本的な善悪の基準」がズレつつあることを嘆き、「児童虐待が放置される構図」に憂い、「子供たちが夢を持つことのできる世の中」を望み、「個として向き合う文化が遅れている日本」を反省し、「日本のサービスの質」に怒り、「人種差別に対する無知、無神経な日本人」に恥じた。病に伏してからは、それまで“健康な側”という強い方にいた自分が“病気の側”という弱者になったことで、いじめられる子といじめる子に目を向ける。そういった事件に対して「競争に勝って強くなればいじめにはあわない」と言った閣僚の発言に「強い者の驕り」と、激しい憤りを見せている。
久和ひとみさんは、すべての放送局のアナウンサー試験に落ち、フリーとしてCNNデイウォッチのキャスターになったのだという。今の女性局アナたちは本来の職業とは別のところで注目を浴びているようだが、久和ひとみさんを不採用にするテレビ局という巨大組織には、堂々と主張する彼女のような社員は好ましくなかったということなのだろうか。

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『男はなぜ新しい女が好きか?』—内容の濃さがタイトルの印象を裏切る。

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 チンパンジーのオスが、自分の子でないオスの小猿を母親から奪って食い殺してしまうという、ドキュメタリー番組を観た記憶がある。母ザルが必死に抵抗するのは子どもを取られるときだけで、その後は何事もなかったかのように、我が子を殺したかのサルと交尾をするのである。チンパンジーという動物はなんとも残虐で、オスもメスも節操がないのかバカなのか不快感を禁じえなかった。が、しかし、これはチンパンジーに限ったことではなく、人間も本質は同じなのだということをこの本を読んで知った。“妻のつれ子を虐待して死にいたらしめる若い父親。犠牲になるのはほとんどが男子の乳幼児”という事件が、昔から頻繁に起きていることからもわかるように、そのようなことを引き起こす男の性本能にも原因があること、そしてまったく異なる女の性について本書は深く考察している。

 『男はなぜ新しい女が好きか?』—内容の濃さがタイトルの印象を裏切る。非常に多くの研究者の「性」や「愛」や「脳」についての文献を、イギリスのジャーナリストがまとめたものである。
人間には、有利な遺伝子を残すため、体型や容貌、匂いで、本能的に自分に合う相手を見つけるプログラミングされた脳の働きがある。そして子どもを授かると、男はエネルギーと財産を費やして子どもを育てる。女もまた自分の遺伝子を残すべく、有利な相手を探すが、相手に求める基準は厳しく、妊娠、出産、育児というハンディキャップがあるために、より長く暮らせる生活力のある男を求めるのである。しかし、幸か不幸かどちらも長期の相手と短期の相手を選び分ける心理メカニズムを与えられているそうだ。ここに、なぜ男が新しい女性を求めるかの“カギ”がある。

ヨーロッパでの宗教と性の関わり、現在も一部地域で残る一夫多妻制の理由など、男女の「性」の歴史から社会との関係、好みの相手がどのように決まるかなど、「性」に関連する多くの問題を取り上げて興味がつきない。しかしながら、人類誕生からつい最近まで、なんという長い年月、女の性は男に管理されてきたことか。男と女は最も小さな人間関係。お互いを尊重し合えば、さらに大きな人間関係も円滑になるのだろうか。

かつて、子どもを作る目的以外のセックスは罪悪とみなされていた時代があった。やがて罪悪感はなくなりフリーセックスが台頭したが、それはエイズという新たな感染病を生み出した。「性」の問題は命あるものにとって最大のテーマなのだ。しかし永遠に結論の出ないテーマでもあるようだ。歴史をつくってきたのは「性」であり、これからの歴史もつくっていくのである。
タイトルのせいか、名前を確認するまで著者を女性と思い込んでいた。また、日本の性事情に関する記述が何箇所か登場するが、とらえ方がいかにも“外人が見た日本”風。苦笑してしまったのは私だけだろうか。

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紙の本妖精愛

2001/03/01 15:03

静謐な、愛の予感

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 どの作品もそれぞれのシーンが鮮明に浮かんでくる。コンビニの袋をさげて夜道を歩く二人の足音、夜景にそびえ光る新宿の高層ビル群、風が吹き抜ける南の島のリゾートホテルの一室。雰囲気のある短編を書く人は多いけれど、特に導入部の数行で、主人公の痛みを伝えるあたり、谷村志穂は巧い人だなと感心してしまう。

 『妖精愛』は、1997年から2000年までの間に雑誌に掲載された8作品と、書き下ろし『ガラス魚』を加えた9つの短編からなる。表題作『妖精愛』は、妻ある男との長いつきあいに心身が壊れそうになり、戯言で自分を「妖精」という女と、彼女への深い情欲になす術がない男の話。図らずも年下の男に惑わされ、彼の在室を確認しないとたまらなくなる『のぞき部屋』。リゾート・アイランドで現地の若い男と遊びながら何も満たされない『ブルー・ラグーン』。ほとんどの作品に、寝る、食べるという場面が多く登場するところに静かな生命力を感じる。この基本的なヒトの営みが、淡々と描かれ、かつ登場する男女には“一緒にいても寂しい、けれど生きる望みはある”という潔さが漂う。

 9編の中でも、サッポロを舞台にした『大地がお腹をすかせて』が特に印象に残った。女は男とともに故郷のサッポロを訪ねる。外気と室内の温度差が激しい雪国。部屋にこもり何度も交わる二人。女は別れた母に電話をかける…。しんしんと降る雪は音を吸い込み、過去の記憶も痛みも輪郭をあいまいにしていくように、静かにドラマを進行させる。

 少女の頃夢中になったコミックの主人公のように、物憂げな表紙の妖精が、少々エロチックでどこか懐かしい。『妖精愛』は、耳をすませて心の音を聞くような、これから始まる静謐な愛を予感させる短編集だ。
(碧木理乃/ライター/2001.2.21)

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長編映画のような深みと立体感を感じさせる大作

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カナダの新進女流作家、ゲイル・アンダーソン=ダーカッツによるベストセラー小説の邦訳。広大で過酷な自然の中で営まれる人々の暮らしが、長編映画のような深みと立体感を感じさせる大作である。

第二次大戦下、カナダ西部の農場に暮らす15歳の少女ベスが、自らとその家族に起きた1年間の出来事を、母親が愛用していたスクラップブックの記録を追いながら語る。登場するのは、農場で働く家族と使用人、先住民族、近隣の住人たち、そして家畜や野生動物。奇妙な書名「雷にうたれて死んだ人を生き返らせるには」は、このスクラップブックの中の一項目なのである。スクラップブックには、料理やケーキのレシピのほかに、このような言い伝えの民間療法、クマの襲撃、隣家の火事、新聞記事の切り抜きなど、日々の出来事が書きとめられている。少女の記録がスクラップブックの内容と重なり物語は進行していく。

レシピの記載に見るリアルな設定と、魔力を持つと恐れらている、先住民族のコヨーテ神話を登場させるミステリアスなドラマ展開は、不思議なバランス感覚を持ち、独特の緊迫感をあたえる。
事故に遭い、次第に心を病んでいく暴力的な父親への嫌悪と愛情、母や兄との関係など、どの時代にもある「家族」というテーマ。学校でのいじめ、街への憧憬、恋愛など誰もが通る思春期の「痛み」。畏怖される自然を背景に、コヨーテ神話に恐怖を抱きながら、少しずつ成長していく少女ベスが、淡々と語る日々のドラマには、鋭い人間洞察と少女の心の機微が壮大な叙事詩のように見事に表現されている。

映像を想像させるこのドラマは、また、強烈な色彩と香りと音までも連想させる。嵐の後、一面に散った青い亜麻の花びら、産卵のために道路を横断する無数のカメの甲羅の緑、心がこわれた父親が馬車でそれをひき殺す時の甲羅が砕ける音、コヨーテの遠吠え、鉄分の多い土で赤く固まった、通称〈血染めの道〉。ケーキを焼くにおい、死んだ動物の腐臭、白い雪原に続く赤い血のあと…。

ベスが16歳の誕生日を終えた春に物語は終わる。恐怖や驚きを克服して成長した姿には、強さとやさしさを得て大人になっていく少女の美しさと、これからもこの土地で生きていくであろうたくましさを感じる。

カナダとイギリスでロング&ベストセラーになったこの作品は、日本でどのように受けとめられるのか。大いに期待されるところである。
書名が市場に媚びず、原題そのままの和訳であるところにも好感が持てる。

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ハーブはセルフ・キュア時代の主役

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 いまだに“ハーブはガーデニング好きな女性が慈しむ可憐な草花”というだけだと思っている方は、ただちに本書を読みハーブ生活を実践してみよう。
 「体にやさしいハーブ生活」は、古来より薬草として利用されてきたハーブを見直し、さまざまなアプローチで体のために使うノウハウを、橋口玲子医師が専門的立場から説いた健康の本である。
 予防よりさらに積極的なセルフ・キュア(自分で保護し、自分で治癒させる)を担うのがハーブだと提唱。風邪をひきそうなら第2章パート3、寝つきが悪いなら第4章パート5と、シソなどの和製も含む39のハーブを症状別に解説。必要なハーブがわかったら、まずは簡単なハーブティーから始め、さらに料理に応用する。デザートまで入れた料理のレシピが27、ハーブ酒、オイルの作り方、さらにハーブティーや苗の購入先から、ハーブ療法が受けられるクリニックまでを紹介するという徹底ぶりだ。
 世は自己責任の時代。積極的なセルフ・キュアで疲れた心と体に元気を取り戻そう。

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怒りを爆発させ、取り返しがつかなくなる前に。

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■「ムカツク」、「キレル」現象は、日本の若年層ばかりでなく、人種や世代を超えて世界中に蔓延している、現代社会の流行り病のようだ。

 “怒り”は、家庭や職場や公共の場所、車内など、いたるところにあふれている。日常生活の中のささいな原因のイライラ、親しい人との諍い、低年齢層の怒り。しかし、“怒り”をむやみに爆発させることも、抑えて抱え込むことも、身体へ悪影響を与える。本書は、常に高いストレス・レベルにさらされている現代人に是非読んでほしい1冊である。

 健康問題だけでなく、一度怒りを爆発させたために失ってしまった家庭の平和や、職場での人間関係を元に戻すことは非常に困難なことだ。取り返しがつかなくなる前に、なぜ自分は怒ってしまうか、なぜ人を怒らせてしまうかについて考えてみたい。

 ニューヨーク市の高校教師だったシビル・エバンズは、学生をはじめとする周囲の人々のいがみ合いを仲裁しているうちに、諍いを処理する能力があることを発見。その抗争解決技術が評価され、今では、自分や相手の“怒りのホットボタン”(感情の引き金)を押さずに対処する法を説く、争い専門のコンサルタント「けんかのコーチ」として活躍している。

 『人生をだいなしにする「怒り」を鎮める5つの方法』の5つとは、怒りを散らすための基本的な秘訣を5つのステップに分けたもので、具体例を読んでいくうちに自然と身につくようだ。自分がどのタイプのホットボタンを抱えているかの自己診断法、具体的な争いの事例など、精神論や科学ではなく、実践的な方法で表している。誰かに対して不満が募り、今にもホットボタンが押されそうになったら、プツンとキレてしまう前に、本書にある“怒りを鎮める方法”を試してみよう。

 例にあがっているアメリカ人の怒りのパターンは、文化や生活環境が異なる我々日本人にも共通している事柄なので容易に応用できる。夫婦や家族間、職場や友人の間での“怒り”は、どの国にも常に存在している大きなテーマらしい。特に「第九章 怒りのホットボタンと子どもたち」は、親子の会話の重要性について触れた、見逃したくない章である。

 それにしても、自分自身に最上の喜びを与えてくれるのは他者である人間で、最悪の不幸や不快感を与えられるのもまた人間だとは皮肉なものだ。人間どうしの関わりというのはなんと複雑なものなのだろう。

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自然のことのは

2000/12/04 12:24

自然に心情をなぞらえる日本人には、昔から自然への深い憧憬と鋭い感性があるようだ。

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 わが国に、まだ少しだけ誇れることがあるとしたら、趣の異なる「4つの季節」と、その移り変わりや動植物を繊細に表した「ことば」があげられるだろう。そして偉大な先達は、実に多くの作品に、この「4つの季節」と「ことば」を取り入れている。

 『自然のことのは』は、自然の描写や、自然になぞらえたことばを集め、テーマに沿った写真と古典の引用を収めた、光琳社出版の一連のロングセラーを彷彿とさせる美しい本である。タイトルにも、“ことば”を木の葉になぞらえた“ことのは”が使われている。
 ここに登場する「自然のことのは」の多くが、古今和歌集や万葉集、源氏物語や現代文学、さらに歌謡曲の歌詞にまで巧みに引用されている。自然に心情をなぞらえる日本人には、昔から自然への深い憧憬と鋭い感性があるようだ。

 私には、この本に出会ったことの別な幸運がある。長い年月疑問を抱いていたけれど、とりたてて調べようともしなかった「ふしぎなことば」が解明できたことだ。それらの「ふしぎなことば」のほとんどが、「自然のことのは」だったのだ。

 北原白秋の『城ヶ島の雨』の詞に「利休鼠の雨がふる…」とある。「利休鼠」とはねずみ色の一色らしいが、どのような色なのか。子どもの頃誰もが一度は疑問に感じたことだろう。それが、江戸時代に四十八茶百鼠といわれるほど流行した、ねずみ色の1つとは知らなかった。利休鼠は緑色を帯びたねずみ色で、利休鼠の雨は5月から6月に降る霧のような雨なのだそうだ。 
 海援隊のヒット曲「贈る言葉」に出てくる「暮れなずむまち」のなずむは、日が暮れそうでなかなか暮れない。なずむ泥むとは、滞るという意味。「小ぬか雨ふる御堂筋…」の「小ぬか雨」はとても細かい霧雨。NHKの連続ドラマ「澪(みお)つくし」は「身をつくす」と「船が通ったあとや通れるところを知らせる杭」の二つの意味があった。

 ロマンチストないにしえの歌人はこのほかにも、「一日千秋の思い」、「紅指し指」、「待宵」、「暁の別れ」など、男と女が過ごす時間や色気を表すことばも粋に操った。文学も流行歌も恋愛も、自然のことのはとは縁が深いのだ。これらのことばの多くを知らないまま過ごすのは、とてももったいない気がする。
 さしずめ、今の季節なら「冬ざれの霜月」だろうか。「雪暮れ」の宵に「悠久」を感じ、たまには静かに過ごすのもおつな時間ではないだろうか。

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