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先月(2017年6月)

川勝 平太さんのレビュー一覧

投稿者:川勝 平太

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本「強国」論

2000/10/21 00:17

日本経済新聞2000/3/19朝刊

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 原題は「諸国民の富裕と貧困」ないし「富国・貧国論」である。富裕になった欧米日の強大国のみならず、貧困になった中国・旧ソ連・アフリカの弱小国にも同じ紙数を割いている。強大国、弱小国には、そうなる原因がある。もとより、運命論ではない。両者は相互に影響しあっている。その理由、原因、条件を、過去千年の歴史を視野にいれ、網羅的に文献を渉猟し、かつ、自己の豊富な海外経験をもとに立論されており、訳文の良さもあって、説得力がある。
 著者はアメリカを代表する経済史家だ。なぜ、イギリスが最初の工業国家になったのか、この点について、技術革新を柱にすえた古典的名著がある。また、西洋時計の歴史研究の第一人者でもある。来日時に江戸時代の和時計を見て、それが西洋のより精巧なこと(とその保存の悪さ)に目をむいた。日本開眼である(私はその瞬間を目にした)。隣の清国では時計がオモチャ扱いされていたことを彼は熟知していたから、日本がなぜ最先進国になり、中国が「眠れる獅子」に堕したのか、その理由をたちどころに洞察した。これらの知見を盛り込み、日本については五百年の視野のもとに二章を割き、後半になるにつれて言及を増やしているが、それは技術という客観的視点から諸国を比較したときの、日本の実力を見る著者の眼がしっかりしているからである。
 二百年前のアダム・スミスの時代に比べ貧困が目を覆うばかりになり、著者は貧困、不衛生、環境破壊の因ってきたるところを冷徹にみつめ、いかにそれをなくすかという倫理の観点を行間に据えている。アダム・スミス『国富論』が分業を基礎に国富を上げる技術論を展開しつつ人倫を論じたのと同様、ランデスは技術革新を柱にしつつ、貧困を克服し富国になるための文化・倫理の重要性を強く論じている。著者はこの書によって「アメリカのアダム・スミス」と評価されるであろう。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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