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乾 侑美子さんのレビュー一覧

投稿者:乾 侑美子

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紙の本第九軍団のワシ

2000/10/27 17:22

生きるとは———

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 成長する子どもの心を深くとらえている疑問の一つは、自分がどこから来て、どこへ行く存在なのだろうか、ということだろう。親のこと、その親のこと、そうしてそれ以前のことを知り、自分の位置を知ろうとする。そういう子どもたちにとって、歴史に題材をとった作品は、多くの意味を持つ。自分より前に生きてきた人たちは、何を考え、何をよろこび、どんな悲しみを味わい、どんな思いで消えていったのだろう。サトクリフの『第九軍団のワシ』は、たとえ無意識的にではあっても、そういう問いと向き合っている子どもたちに、一つの方向を示してくれる。希望と挫折のくりかえし、時の流れの底にきえて名は後世に残さなくとも、誠実にせいいっぱい生きた一人の人間の物語を通じて。
 ローマン・ブリテンという舞台は、時も場所も、日本の読者にはなじみがうすい。だが、そのはるか昔、遠い彼方に、サトクリフはなんとやすやすと、私たちを連れていってくれることだろう。風や雲や木々のありさま、日々のいとなみの中のささやかな心の揺れを伝える描写は、それぞれ的確で美しく、心に残る。
 ところで本書は、『ともしびをかかげて』『銀の枝』とともに、サトクリフのローマン・ブリテン三部作の一つであり、百人隊長だった若いローマ人を主人公とする。負傷して、軍人として生きることをあきらめねばならなくなった主人公が、どうやって、新しい人生をきりひらいてゆくか。それが、一編のテーマであり、主人公はあくまでローマ人。征服した側である。被征服民族の青年も登場はするが、ここでは主人公の影のような存在でしかない。そこに、私はかすかな不満を抱いていた。イギリス人であるサトクリフが、征服者の側の人間を主人公にするのでは、単純すぎるように思えた。
 だがサトクリフは後に、被征服民族を主人公に、征服される側の抵抗と挫折を描くことになる。『第九軍団のワシ』に一度だけその名が出るイケニ族の女王、ボーディッカの物語として。女王によりそって生きた竪琴弾きが語る、暗くはげしい女王の生涯である。この物語が邦訳されれば、ローマン・ブリテン二部作とも響きあって、読後に広がる理想の世界はひときわ豊かになることだろう。

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