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投稿者:編集委員

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紙の本それでも私は腐敗と闘う

2002/06/21 18:15

日本経済新聞2002/06/16朝刊

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 誘拐された女性大統領候補の自伝
 ワールドカップ米国大会でのことだ。オウンゴールを記録した南米コロンビアの選手が帰国直後射殺された。背後で麻薬組織の巨額な掛け金が動いていたためらしい。暴力と死がゲームに組み込まれたこの国の病巣の深さを印象づけるには十分すぎる惨劇だった。
 そして先の大統領選。その破たんぶりは覆いがたいところまできてしまったようだ。政治腐敗を糾弾し続けた四十歳の女性候補者が左翼ゲリラ、コロンビア革命軍に誘拐されたのだ。本書は、今も行方不明のその大統領選の“陰の主役”、イングリッド・ベタンクール前上院議員が昨年出版した自伝の邦訳である。冒頭、白昼の国会事務所を訪れた中年の紳士に「われわれは殺し屋を雇いました」と殺人を予告されるシーンはハリウッド映画の様に刺激的だ。
 だが、年間三万人が殺害され、三千五百人が誘拐されるコロンビアの現実を知って読む側は混乱する。殺人が「異常な死」でなくては映画は成り立たない。ところが、ここでは、死は身近にある。当選したウリベ次期大統領の父親はゲリラに殺され、ベタンクールの知人で、かつての大統領候補ガランも選挙遊説中に暗殺された。
 日常の非日常性がはらむ狂気、ガルシア・マルケスの神話世界に紛れ込んだかのような錯覚はどこから来るのだろうか。
 この国には「ビオレンシア」(政治社会的暴力)の伝統がある。左翼ゲリラ、麻薬密売組織などの参入と、これに対抗する右派非合法武装組織の出現で複雑化しているが、誘拐、テロ、暗殺の諸相は貧困を背景にした歴史的おん念の表出にほかならない。
 本書でのヤマは、麻薬組織から六百万ドルを受け取ったとサンペール大統領を追及するところだが、著者自身、特権階級の出身で、下院選に立候補した時にはサンペールにあいさつに出向いている。仏人外交官と離婚して帰国するまでコロンビアを離れていた経歴も故国への複雑な感情を思わせる。
 誘拐されたのは、危険地域に自ら乗り込んでいったためだという。無邪気なドンキホーテに過ぎないのか、真に、族長の中に現れたジャンヌ・ダルクなのか。見極めるのは読者である。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001

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