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伊奈久喜さんのレビュー一覧

投稿者:伊奈久喜

2 件中 1 件~ 2 件を表示

日本経済新聞2000/4/23朝刊

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ろうそくの炎は燃え尽きる寸前、輝きを増す。村山政権は社会党にとってのそれだったのだろうか。かつて日本社会党と呼ばれた社会民主党に往時の輝きはない。社会党は九六年一月の村山退陣、その直後の党名変更によって、歴史的使命を終えたようにも思える。
 本書は、戦後政治のなかでの同党の歩みを文献だけでなく、多くの関係者へのインタビューに基づいて再現する。社会党に対する視点は一貫して批判的である。
 社会党はとうとう一度も過半数の議席を与えられず、単独政権を担えなかった。この党の外交・安全保障政策にはあまりにも問題点が多すぎた。
 例えば「反米」を叫びながら「中立」を主張した。毛沢東は「日本の社会党は不思議な政党ですね」と皮肉ったという。日中関係の正常化では公明党が大きな役割を果たした事実が知られるが、社会党はほとんど役割がなかった。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と極めて近く、韓国の存在は長い間、この党のなかでは否定されていた。
 社会党を担い、支持した人々の間にあった理想主義が、冷戦という国際的文脈のなかで変形した結果なのだろうか。変形の過程で生じたのが、路線をめぐり、あるいは人間関係がこれに絡んだ党内の派閥抗争だった。著者はこれらの流れを淡々と描いてゆく。
 秀逸なのは現実主義と理想主義との関係をめぐる著者の分析である。現実主義が権力のための権力追求にうつつを抜かせばシニシズム(急進右翼)に堕落する危険がある。理想主義が現実から遊離するときにはドリーミズム(夢想主義)とでもいうべき急進左翼に堕してゆき、それはシニシズムと重なり合う。
 要するに社会党の理想主義は、日本の現実と離れてしまったのだろう。本書は、棺を覆っての社会党の歴史的意味を考えさせる。それは、社会党の流れをくみ、同じような政策的対立を党内に抱えて伸び悩む現在の民主党に対する警告のようにも読める。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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日本経済新聞2000/6/4朝刊

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日米安全保障体制の形成過程は、外交史としての研究対象の領域に入ったのだろう。本書は、サンフランシスコ講和条約とともに一九五一年に結ばれた旧安保条約、六〇年の現行安保条約がどうできあがったかを日米双方の文書を丹念に調べた結果をもとに考察した労作である。
 占領軍による戦後日本の非武装化、憲法、それに逆行する方向で深まる冷戦状況のなかで日米の当局者は、日本の政治情勢や世論、米国の軍事的要請を背景に意見をぶつけあった。多くは、日本が基地、米国が軍隊を提供するという安保体制の「非対称な相互性」のためだった。
 学問的な意味もあるのだろうが、それだけでなく、本書は読み物として面白いのも確かである。安保条約の条文を読んだことのない一般の読者にとっては、いくつかの意外な事実に驚かされる。
 例えば、現行の安保条約第一〇条に「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する」とある。旧安保条約第四条の類似の条文を継承したものであり、五〇年代初頭の日米双方の国連観がうかがえる。
 冷戦の深まりは、日本の再軍備を必要とさせ、憲法第九条が障害とされた時期があった。米統合参謀本部には改憲が実現するまでは講和交渉はすべきでないとの研究結果もあったという。時期は違うが、鳩山政権のもとで対米自立外交を進めようとした重光葵外相は対米交渉で現行憲法下でも海外派兵が可能との見解を述べたという。
 安保問題は国際問題でもあり、内政問題でもあった。程度は違うかもしれないが、それは今も変わっていない。吉田流の対米協調路線と鳩山流の対米自立路線の二つの流れは、様々な形で混じりあいながらも、現在に至っている。総選挙の結果できる政権は、どちらの色合いを濃くするのか、それは憲法論議や日米関係をどう展開させていくのか。そんなことも考えさせられる。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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