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松園万亀雄さんのレビュー一覧

投稿者:松園万亀雄

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紙の本親族の基本構造

2000/12/13 11:52

フランス人類学の最高傑作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

レヴィ=ストロースの提唱した構造主義人類学は、烈風のように二十世紀後半の人類学と思想・哲学の世界を席巻した。いま、さすがに風は収まったかに見えるが、ポストモダン、ポスト構造主義、ポスト植民地主義などさまざまの名前で呼ばれる現代思想の潮流のなかにも強い影響力を残している。
 『親族の基本構造』は、レヴィ=ストロース最初期の著作であるが、斬新な論点と大胆な展望によって一九五〇年代からの数十年間、世界の人類学界に替否両論を巻き起こした。とくに親族とは「交換」のシステムだという考えと、結婚のシステムは「限定交換」「一般交換」の二タイプに分類できるという理論については、その解釈や事実の裏づけをめぐって議論が沸騰した。親族研究は社会人類学や文化人類学にとって基礎的な研究分野であり、学説上の蓄積も多いし自信満々の研究者も多かったからこそ、『親族の基本構造』は論争の的になったのである。当時の人類学者にとっては、レヴィ=ストロースの考えに対してどんな距離をとるかということが、すなわち人類学方法論に関するそれぞれの自己証明にもなっていた感がある。レヴィ=ストロースのもっとも独創的な点は、「基本構造」を人間精神のなかに求めたことにあるが、経験的な現実を重視する者はそれに違和感を覚えたということだろう。
 今日ではほとんどの文化人類学入門書にはレヴィ=ストロースの親族論が紹介されるまでになっているが、それが親族の一般理論と言えるかどうかについては、まだまだ議論が続いている。構造主義に反対する人類学者も、本書がフランス人類学の最高傑作であり、記念碑的な著作であることについては異論がない。本書は入門者にとっても読んでみる価値があるし、研究者にとっても過去の論争史を歴史的視野のなかで再検討する機会を与えることになるだろう。

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