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先月(2017年6月)

田尻 嗣夫さんのレビュー一覧

投稿者:田尻 嗣夫

3 件中 1 件~ 3 件を表示

信頼を媒介とした新しい通貨,エコマネー。その理念と仕組みを解説,国内外での運動の現状と将来を提言

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 調整インフレという円通貨を減価させる策謀が,ゼロ金利政策のもとで進行中である。デフレという現在進行形の通貨価値の上昇を一番を恐れているのは,「破滅的な債務残高」(宮沢財務相)に押しつぶされる危機に直面し,大増税も財政支出削減のどちらも断行する政治的エネルギーを失った政府・与党自身だからである。日本銀行という選挙による国民の審判を受けないで済む中央銀行が,「失われた10年」の政治的連帯責任もあいまいに,インフレに暴走する恐れの大きい物価下落阻止政策の先頭に立っている。
 管理通貨の時代における「信用通貨」は,中央銀行ですら当初からなんら債務を負わない形で発行されているのだ。著者は「その確かさは“蜃気楼(しんきろう)”のようなものであり,ある日,幻のごとく消えてエコマネーが一般化する」と予言してはばからない。エコマネーが流通しているのは,まだコミュニティーの市民レベル。ベビーシッターなどの助け合いを時間計算などで決済する,ボランティア経済の域にとどまっている。インターネットの普及による情報化社会の進展に伴って,経済社会の全般に拡大していくとみる。それによって,21世紀の社会は,貨幣を支える社会的な関係が,市場での交換を通じた「信用貨幣」から,さまざまなネットワーク上でくりかえされる「互酬(ごしゅう)」へと変容し,新しい信頼貨幣であるエコマネーによる「千年紀」へと転換すると予測する。
 われわれの暮らしは,商品やサービスを使用してはじめてその便益を享受できるが,経済活動は市場で取り引きされる「交換価値」によって成り立っている。個人の生活にとっては「使用価値」が重要なのに,市場機構では「使用価値」そのものが流通するのではなく,「交換価値」が決められる構造になっている。
 円という現代の通貨はこうした「交換価値」を具体化するもので,「交換価値」と「使用価値」が乖離(かいり)することが,通貨に対する人々の信頼獲得を困難にしている。
 変動相場制のもとで「使用価値」とは関係のないところで行われるマネーゲームが急膨張し,その実態が明るみに出るにつれて,「使用価値」と「交換価値」の乖離に対して,人々の疑念とそれに振りまわされる生活への憤懣(ふんまん)が高まっている。これを解決する本質的な解決策は,「使用価値」と「交換価値」が乖離しないように,「使用価値」そのものを流通させる仕組みを作ることしかなく,そこに生活者自身が信頼をベースに創造する,エコマネーの歴史的使命があると強調する。
 不安定極まりない「交換価値」主導の経済社会に決別するエコマネーを,1997年に提言した著者の視界には,信用システムではなく生活者間の信頼を基盤にした,21世紀の新しい経済学と社会の姿が広がっている。それは,大量生産・大量消費・大量廃棄型システムのなかで,物質的満足度をひたすら追求する社会から,コミュニティーの構成メンバーが自己実現を達成する機会が保障され,隣人や友人と多様なネットワークを構築する社会への転換である。気鋭のエコノミストとしての研究活動にとどまらず,まちづくり,地域社会の情報化に奔走する著者の世界観,人生観が随所に散りばめられ,通貨の専門書の域を越えた味わいのある力作である。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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紙の本決済システムのすべて

2001/01/07 18:16

決済専門のコンビニ銀行や金融破綻リスクなどで注目される決済システムの現状と進化の方向を紹介した

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 高速道路,電話,電力など実物経済を支えるネットワークに劣らず重要なライフラインが,マネー経済の世界にもある。全地球規模へ拡大する巨大なマネーのネットワークである決済システムの内部では,商品やサービスの取引などで生じる国内為替や外国為替,証券取引の資金決済が間断なく行われている。時々刻々生じる資金余剰の銀行と資金不足の銀行が,即時に資金を融通しあうことで,決済システムははじめて経済の動脈として機能しているのである。
 しかし,IT(情報通信)革命が加速する21世紀のコンピューター社会は,マネーの世界における“巨大システムの反乱”に極めて傷つきやすく,危機管理の備えもまだ十分ではないという現実はほとんど知られていない。ハッカーの侵入やサイバー(電子)戦争が発生せずとも,単なる技術的障害でいったんオンラインの決済ネットワークが誤作動ないし停止すれば,企業活動や日常の生活,さらには地域社会全体が崩壊の危機に巻き込まれる可能性があるのだ。 
 1985年11月--。経営的には健全だった銀行が突如倒産の危機に瀕した。その日,いつものように資金や証券類の受け渡し業務を行っていたバンク・オブ・ニューヨークの幹部は,銀行間市場で同行が巨額の資金不足(赤残)に陥っていることを告げるコンピューター画面に驚愕することとなった。数多くの銀行相手に,現実とは思えない巨額の資金放出を契約したことになっているのだ。
 決済を停止すれば,同行からの入金を当てにしている他の銀行が資金不足に陥り,信用不安の渦がたちまちニューヨーク市場全体に広がる。かといって,同行ではどうにも応じようのない規模のお金である。結局,ニューヨーク連銀が300億ドルもの日中与信と230億ドルのオーバーナイト貸出に踏み切り,同行と金融市場を破滅の淵からやっと引き戻すことができたのだった。
 米国で9500もの金融機関が毎日資金決済を行っている連銀運営のFEDWIREは1日平均41万件,1兆4000億ドル,民間銀行運営のCHIPSは同23万件,1兆2000億ドルにも上るだけに,コンピューターと通信回線の誤作動がこの種のマネー危機に直結する潜在的リスクは増大している。わが国も,こんな恐怖のシナリオと無縁ではありえない。日銀ネットでは同約2万件,141兆円,東京銀行協会運営の全銀システムでも同457万件,約9兆円の決済が行われているからだ。世界の決済システムに関する最新かつ豊富なデータ,専門家から学生まで十分に納得させる客観性の高い記述など中身の濃さで類書をみない好解説書である。
(C) ブッククレビュー社 2000

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護送船団行政の功罪や経済復興など20世紀後半の金融財政史を刻んできた大蔵官僚たちによる論文,証言集

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 イカロスは蝋(ろう)で固めた羽根をつけて太陽に向って飛び立った。だが,あまりにも太陽に接近しすぎたため,イカロスは蝋が溶け,羽根を失って海中に墜落した−−20世紀後半の権力の象徴でもあった「MOF」の落日は,さながらギリシャ神話のイカロスの運命をみる思いである。
 21世紀の幕開けとともに,大蔵省はその省名を1300年前までさかのぼる栄光の歴史に終止符を打ち,「財務省」として再スタートする。英語名はなお「The Ministry of Finance」と残光をとどめるが,金融行政と監督機能は金融庁に分離され,金融政策の実権もまた日本銀行に奉還した後の「財務省」は,予算編成権すら経済財政諮問会議の基本方針に服する現実には,財政金融政策の総司令部としての威光はもはやない。 
 本書は,大蔵省所管の社団法人金融財政事情研究会が同省幹部の寄稿を中心に刊行してきた週刊『金融財政事情』誌の過去50年の記事から,戦後の金融財政史を浮き彫りにする象徴的な論稿を集めた700ぺージ近い大論文集である。
 護送船団行政の功罪とビッグバンへの軌跡,慢性化したインフレとの戦い,あのニクソン・ショックから変動相場制,そして為替管理の自由化へ激動の1970年代の記録,統制金融からビッグバンへの大転換と4編に大別された論文集は,ほとんどが当時の政策担当者自身の筆による政策意図の説明や主張,回顧を内容とするだけに貴重な歴史の証言集としての文献的価値は非常に高い。たとえば,ニクソン・ショックの1年10カ月前に大蔵省中枢部で極秘裏に進められた円切り上げ断行のための“アルファー作業”とその挫折の記録は,学問的にも貴重な戦後史のひとつである。
 「法は法,行政は行政」という大蔵官僚の独善,独断専行ともいうべき論旨展開や表現があちこちにみられるだけに,いささかならず抵抗感を覚えようが,戦後の日本経済史に人生を刻んできた昭和世代にとっては政策自体への賛否を超えて大蔵官僚なりの闘いに共通の原体験を見出す向きも少なくないだろう。
(C) ブッククレビュー社 2000

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