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  3. 池山 栄一さんのレビュー一覧

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先月(2017年8月)

池山 栄一さんのレビュー一覧

投稿者:池山 栄一

14 件中 1 件~ 14 件を表示

世界的ハイテク企業を続々生み出しているイスラエルと,日本および日本企業はどう向き合うべきかを考察

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は続々とハイテク企業を生み出している現代イスラエルを紹介した上で,その独創力がどこに起源しているかを見事に解明している。またそうしたイスラエル企業と日本企業がパートナーシップを確立したときに生まれ得る豊かな相互補完性について,するどく深い考察をくわえている。
 情報通信,ソフトウエア,医療機器,マルチメディア・エレクトロニクス全般,農業・バイオテクノロジー,代替エネルギーなどの分野で事業展開する日本企業,あるいはそれらの辺縁にある日本企業の経営者にとって,必読の書と言えよう。
 93年まで東芝の副社長という要職にあった著者・川西剛氏は,現在も米国アプライド・マテリアルズ社をはじめ,多数の外国企業/機関でチェアマン・社外役員・アドバイザーなどを務めるだけあってきわめて博識。情報の鮮度も高く,文章も明晰で,比較文化論としても興味は尽きない。
(C) ブッククレビュー社 2000

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個々の社債の格付け理由を深く読み取れるようになる,債券投資の必携書。入門書のレベルは超える

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この本は,わが国最大の債券格付機関である格付投資情報センター(R&I)が「元利払いの確実性」という社債の品質をどのようにして格付けしているか,を詳述したもの。実際に債券投資をしている読者にとっては非常に有益と思われるが,債券投資の入門書ではない。
 1996年1月に起債市場が自由化されて以来,わが国では投資家の前におびただしい債券が登場してきた。これは発行体と債券種類の多様化がダブルで進行してきたことによる。ちなみに発行体と債券種類のマトリクスで見ると,約100通りの種別があることになるが,各々の発行体がさまざまな種類や償還期限の債券を幾つも発行しているので,実際の流通債券の数はさらに膨大なものとなる。これは,もし信用ある格付機関の格付けがなければ事実上,債券投資を不可能にするほどの数と言える。
 債券投資をしている向きには本書を読むことで,個別の社債に付けられた「格付け理由」を,より深く吟味できるようになるだろう。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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自分がたどった企業人生活から得た哲学を交えて,いかに人を生かすべきかを熱く語った経営書

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 1992年7月,NTTドコモは「電気通信市場における公正競争の確保」を掲げる政府措置により,NTTから分離独立させられた。本書は新会社のドコモを牽引した経営者の大星公二氏(98年より代表取締役会長)が,部下の社員たちへの強い感謝をこめてドコモ急成長の軌跡をつづったものだ。当時のNTTは売上高6兆円,従業員25万人のマンモス企業。かたや新会社に転籍したのは1800人。
 著者はこの門出を小さな帆船で大英帝国から新大陸に渡ったメイフラワー号の故事になぞらえている。
 今日,株式時価総額でわが国のトップ・ランクに躍り出たドコモを知らない企業人は少ないだろう。「巧みに時代の潮流に乗った」というような見方もないではない。だが本書を読むと,ドコモは幸運に恵まれて成長軌道に乗ったというより,経営者が率先垂範して「汗を流し」,それに社員たちがついて行ったことではじめて成功を勝ち得たということが分かる。その「汗」がどんなものだったかについては本書を読んでいただきたいが,1例だけ挙げると,著者はこの8年間に延べ5000人以上の社員と直接対話を重ねたと語っている。近年,ドコモの従業員数が急増したとはいえ,それでもまだ現在約4800人であることを思えば,この数字のすごさが分かるだろう。
 本書が想定している読者は若いビジネスマンだと思われる。彼らが読めば「将来,自分が責任ある役職に就いたときは,このようなリーダーでありたい」といった想いを熱くするに相違ない。
 だが評者がぜひ本書を読ませたいと思うのは,業績不振の原因を市場環境に転化するたぐいの,使命感に欠ける堕落した経営者群である。
(C) ブッククレビュー社 2000

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患者学

2000/12/01 21:15

あなたやあなたの家族が病気にかかる前に読んでおいてほしい一冊。誰もがいつかは患者になる

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 本書は病院勤務の内科医として二十数年を経てきた著者・神前格(こうざき・ひとし)が,さまざまな病院・医師・患者を見てきた体験をもとに書かれている。
 著者は,日本の患者はあまりにも受け身で,自分の病気に関する勉強を怠っており,医師との良好な関係を築く能力にも欠けている,と指摘する。本書は(患者は)「自分の命は医療によって左右されるという重大事実を認識し,医者の選び方をはじめ,体や病気についてもっと勉強すべし」との立場から書かれている。言われてみればその通りで,評者自身,子供が重い疾患を背負い込むまでは,医師や病院のことなど気にもかけていなかった。
 私事で恐縮だが,どこにこの病気を治してくれる医者がいるのか必死になって探した。
 だが何をもって信頼に足る医者とするのか自分自身に明確な基準がない。その医者がどこにいるかに至っては皆目見当がつかない。探せば探すほど出会うのは奇人・変人・蛮人の類で,「医者は医者であると同時に常識人,できれば人格者でもあってほしい」と願っていた幻想はもろくも崩れた。患者や患者の家族はまず病気によって苦しむのだが,無思慮な医療関係者によってもまた,深く外傷されてゆくのである。
 内容は,名医の条件と医者の技量の見分け方/医者とどうコミュニケートするか/何科に行くべきか,どういう医療機関にかかるべきか,医療機関の評価は/医療過誤と誤診に遇わないために/今起こっている医療現場の問題(病院経営と医者の教育)など。後段になるにしたがい,日本の医療システム自体が重篤な病いに侵されている実態が明らかとなり,まさに患者は知識武装によって「自衛」しなくてはならないことがわかる。
(C) ブッククレビュー社 2000

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英国を知らない人にとっては,この国の特異な性格を知るための恰好の教養書

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 ロンドンには総面積2.5km平方の,通称「シティ」と呼ばれる石畳の金融街がある。この街は現在,サッチャー政権のもとで断行された金融制度改革「ビッグバン」によって,国際金融センターとしてニューヨークに次ぐ地位を占めている。一方,歴史的に見るとこの街は伝統的に英国経済の中枢を担う産業が主役となって,中央政府から相対的自治権を守り抜いてきたという特異な歴史を持つ。
 本書はこの「シティ」を通して,英国産業経済の栄枯盛衰を通観した書物である。著者・小林章夫が活写するロスチャイルド家の盛衰などは文句なく面白い。
 欲を言えば産油国経済としての英国経済や,いまなお階級社会であるために停滞している教育改革などにも触れてくれれば,なおいっそう読みごたえがあったろうにという思いが残る。英国を知らない人にとっては恰好の教養書だが,多少ともこの国を知る人なら誰もがそう思うのではないか。
(C) ブッククレビュー社 2000

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確かな理論と豊富な実践に裏打ちされた,株式投資の信頼すべき入門書

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 本書はわが国でとかくおとしめられてきた「投機」とは何かを解き明かしつつ,それをあらゆる善悪の軛(くびき)から解き放ち,純粋に経済的な行為として客観的に論じる。また理論経済学から古今東西の哲学や諺にいたる豊富な知識を駆使して,投機家(著者に従えば投資家と同義)に必要なリスク管理の心得や,自分が投機家に適する資質かどうかを知るための方法を説く。
その一方で景気の先行指標から株価を排除した経済企画庁の愚を学問的厳密さをもって批判している。こうした記述のあいまに景気循環のモデルを表す数式が現れたかと思うと,「デタラメ」や「ボンクラ」という言葉が丁半博打に由来するといった愉快な挿入があったりする。
 著者・山崎和邦は野村證券で22年間にわたって営業第一線に身を置き,おびただしい成功者・失敗者を見てきた。その体験の厚みが本書を読みごたえのあるものにしている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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ドキュメンタリー映画を観るような面白さと,現代の課題に正面から向き合う深くて鋭い考察の融合

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 91年のバブル崩壊以降,日本はいまだに深刻な状況から抜け出せずにいる。打ち続く地価の下落と企業倒産,空前の失業率,膨大な公費注入によっても払拭できない金融不安,下落したままの物価,設備投資と個人消費の長期低迷,一方的に積み上がる財政赤字,少子・高齢化の下での年金/社会保障危機,政・財・官の眼を覆いたくなるモラル・ハザード……。
 株価については99年2月のゼロ金利政策以降一定の回復が見られるものの,これらの状況は基本的に今も変わっていない。ことに深刻なのはこうした状況をめぐる議論の中で,言葉の潔癖さが失われていることである。本書は1929年に端を発した世界大恐慌の経験を米国を中心にたどりつつ,現在われわれが直面している閉塞的状況を打開する鍵を探ろうとする。
 著者・秋元英一氏は長年にわたり大恐慌期の米国経済史を研究してきた経済学者。だがこの本にはアカデミズムにありがちな難解な専門用語や数式は一切出て来ない。その代わりに著者は当時の新聞記事やエピソードなど豊富な史料を駆使して,庶民の目に映った大恐慌期の米国を生き生きと再現する。この描写力が今日の日本と当時の米国のあいだにある国情の違いや時代のへだたりを超えて,読者を「この史実から何を学ぶべきか」「われわれの議論に欠落しているものは何か」という考察に向かわせる。
 学生時代に受けた経済学の講義に退屈した読者の中には,経済学とはこんなに刺激的で面白い学問だったのかと驚く人もあろう。本書の中身を推察するのに役立つと思われる目次の大項目を以下に紹介しておく。
 プロローグ/大恐慌はくりかえされるか,第1章/暗黒の木曜日,第2章/市民たちの大恐慌,第3章/市場崩壊のメカニズム,第4章/ニューディールの景気刺激策,第5章/ケインズ理論への道,エピローグ/1929年のアメリカと平成不況下の日本。
(C) ブックレビュー社 2000

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高度先端医療という名に惑わされて,自分や家族の人生を崩壊させてはならないという警世の書

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 高齢社会の到来とともにわが国ではガンや脳卒中の予防が国を挙げての国民的関心事となった。人間ドックを受診する人々は毎年300万人に達し,MRI(磁気共鳴映像)とMRA(磁気共鳴血管撮影)による脳卒中や脳血管性痴呆の予防を看板にする「脳ドック」も,年間数万〜数十万人の受診者を集めていると見られる。その診断に基づいて「予防的手術」なるものが行われているのだが,実はそれが多くの医療過誤を生んでいると著者・山口研一郎氏は主張する。脳外科医である著者自身がかつて予防的手術に携わり,1人の患者を死なせたという痛切な告白があるだけに,多数の実例に基づくこの告発は重たい。
 被害事例は「医療事故調査会」の世話人でもある著者が被害者から相談を受けたケースや,全国の医療被害者団体と医療事故担当弁護士を通じて実施したアンケートに基づいており,被害実態は以下の3群に分かれる。
 1)手術前にその危険性について充分な説明がなされなかったケース,2)一定の納得の上で受けたが,手術に際して生じた思わぬトラブルについて,医療側から誠意ある説明が得られなかったケース,3)手術後に患者が死亡し,その結果を家族がどうしても受容できないケース。いずれも専門知識のない患者や家族に対して優位に立つ医療側が,患者や家族の「知る権利」を侵害している点が共通する。わが国の医学界に巣くう「寄らしむべし・知らしむべからず」というおそるべき体質には戦慄を覚える。
 著者はまた,弱者救済に消極的なわが国の司法のありかたにも疑問を投げかける。
 医療過誤訴訟では本来,被害者と医療側は対等な立場にはない。たとえば国立大学の大学病院を相手取って一家の働き手を失った遺族が訴訟を起こす場合,原告は収入を絶たれながら私費で訴訟を維持しなくてはならない。だが被告側は国費で訴訟費用を賄い,最高裁まで延々と争うことができる。しかも原告は医学にも法律にもうとい一般人であるのに対して,被告は医学の専門家である上に金に糸目をつけずに医療過誤訴訟に精通した弁護人を雇うこともできる。鑑定人や証人として喚問される第三者(大学医学部の教授など)も多くは身内をかばうために被告側に有利な証言をする。医療側の常套手段は学会でも決着がついてないような専門領域に争点を持ち込むことであり,事実それが多くの医療過誤訴訟で奏功している。
 何より物質的にも精神的にも追い詰められている被害者側は,医療側の長期にわたる裁判引き延ばし戦術に耐えられない。
 このほか本書は一連の高度先端医療技術に伴う危うさと,医療サービスの消費者が身を守る知恵をつける必要を指摘する。この警世の書は心ある人にぜひ一読を薦めたい。
(C) ブックレビュー社 2000

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紙の本高齢者虐待

2000/10/06 15:22

介護者と被介護者の双方が,社会に優しく甘えることを学ばないと高齢者虐待はなくならない

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 高齢者の介護は容易なことではない。医療的介護はむろんのこと,食事,排泄,入浴などの家事的介護にしても,それが24時間×365日続くとなると実は大変な労力と精神力を要する。ましてその高齢者が寝たきり老人や痴呆老人であれば,その負担は到底個人や家族が負える範囲ではなくなる。それなのに「老人の面倒を見るのは女性の役割」という意識が強いわが国では,このヘビーワークを担っているのは圧倒的に家庭の主婦(嫁・娘)が多い。彼女たちはやがてストレスのはけ口を高齢者虐待に求め始める……。
 本書は著者・いのうえせつこが,多くの専門家に取材を重ねて高齢者虐待の実態を紹介,それをなくす手だてを考察した作品。家庭内の虐待だけでなく,特養ホームなどの施設内虐待も取り上げ,しかも多角的に検討している点が評価できる。
(C) ブックレビュー社 2000

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紙の本生命をめぐる対話

2000/10/06 15:22

免疫学によって起きた知のパラダイム・シフト。異分野の知的精神が出会ったときの白熱が面白い

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 本書は免疫学者・多田富雄氏と,日本の各界を代表する専門家11氏による対談集である。対談の面白さは2つの光源に照射されて主題が複雑な陰影を帯び,同時に異なる知性が触発し合って発想や連想が自在に飛躍してゆくところにある。この対談集ではさらに,言わば放射状に形成された11の対話軸が,「免疫系を通して見た生命現象」の不思議さや不気味さを,多面的に浮かび上がらせる面白さが加わる。
 対談相手は以下の各氏。作家では五木寛之・井上ひさし・日野啓三・白洲正子の4氏。能楽師の橋岡久馬氏。ジャーナリストの田原総一朗氏。自然科学の分野では解剖学の養老孟司,遺伝学の中村桂子,ウイルス学の畑中正一の3氏。さらに宗教民族学の青木保氏・情報科学の高安秀樹氏・多田氏による3者対談。どれに刺激を受けるかは読者によって違うだろうが,評者にとってはガンから生還した日野氏の切迫した息づかいが聴こえてくる,「生命のシステムと言葉」が最も面白く読めた。
 各氏とも,多田氏が紹介する免疫系細胞による「自己-非自己の認識作用」と,それがもたらす「非自己の排除」「自己-非自己の融合」「非自己排除の抑制」「非自己を排除した細胞の自死」という4パターンから非常に大きな刺激を受けている。
 また多田氏の提出する「免疫系=スーパーシステム」という概念が,心と身体の2元論やデカルト的な還元論,さらには遺伝子レベルでの決定論をも超えて,きわめてダイナミックに運動することがわかる。多田氏はこの「スーパーシステム」という概念を,言語の生成・都市や文化の発展などにも適用しようとする。
 むろん,そこに行き過ぎや異和感を感じる読者もあろう。しかし知的精神にとっては,ある意味で異和感の方が共感以上に生産的であることを知るならば,これもまた多田氏から読者への,素晴らしい贈り物であると言えよう。
(C) ブックレビュー社 2000

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マクロの視点とミクロの視点を合わせもつ,ダイオキシン問題解決への実践的シナリオ

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 ダイオキシンは自然環境下では分解されにくく,生体に有害な有機塩素化合物約200種類の総称。主要排出源は一般廃棄物と産業廃棄物の焼却施設。毒性は催奇性・発がん性・免疫毒性・内分泌かく乱など。摂取経路は焼却施設から大気中への放出→地表への沈降→土壌や水質の汚染→飲料水や,魚/野菜の摂取というルートをたどる。このため90年代は各地で「脱焼却・リサイクル」を叫ぶ住民パワーが荒れ狂った。
 しかし本書は,ダイオキシンが象徴しているのは大量生産・大量消費・大量廃棄を追求した20世紀的な社会/経済システムの破綻だと指摘する。問題解決のためにはこれをいかに変革するかという全地球的なマクロの視点と,廃棄物のなかに含まれる個々の物質の物性に見合ったリサイクル技術を探る,ミクロの視点が必要だという論旨。本書はこの立場からさまざまなケーススタディーを展開する。その実証性とディテールの厚みが本書の特徴。
(C) ブックレビュー社 2000

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お仕着せでもなくほどこしでもなく金儲けでもない,自前のコミュニティー・ケアを可能にするパワー

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 高齢化は誰もが避けて通れないだけに,「日本の社会福祉をどうすべきか」というテーマは重大。わが国では現在,高齢者1人の社会保障の原資を4.2人の現役が負担しているが,実際の介護サービスの大半を支えているのは主婦の無償労働であり,「老・老介護」が放置されるケースも目立つ。
 しかもその費用負担は今後の人口推移によってさらに重くなる。わが国の総人口は2007年をピークに減少に転じ,21世紀末には約6700万人に激減するが,高齢人口の割合は相対的に増大するので後続世代の負担が激増するのだ。高齢者1人の社会保障負担は,2025年には現役2.2人の肩に,2050年には現役1.7人の肩にのしかかろうとしている。
 一方,2000年4月にスタートした介護保険法が早くもつまづきを見せている。費用負担(徴税)だけは平等化したが,期待されたサービスの機会均等や質の向上は見られない。介護保険制度では実際の介護サービスを提供するのは都道府県指定の介護ビジネスだが,ビジネスである以上利潤追求は必然で,大手介護ビジネスは不採算地域から早くも撤退し始めている。このままでは税金だけは取られながら,一部の地域では介護サービスが受けられないという,公権力による「やらずぶったくり」がまかり通ることにもなりかねない。
 本書はこうした福祉の商品化に代えて「参加型福祉」を提唱する。そしてその背景にはすでに15年を経て来た実践の裏付けもある。その狙いは「地域の中で自立をたすけ合い,自分のかかわり合った人たちの中で,幸福に生きかつ死ねるコミュニティー・ケアを自前で創り出すこと」にある。つまりお仕着せでもなくほどこしでもなく金儲けでもない,地域における福祉負担の共有化と世代間の順送りなのだ。
 もしわれわれが「人間らしい顔をした福祉」を望むとしたら,ここから出発するしかないのではないか。この一書にはそう思わせるだけの説得力が確かにあると言えよう。
(C) ブックレビュー社 2000

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紙の本男女平等への道

2000/10/06 15:22

性差別という永遠のテーマに挑んだ勇気ある一書。日本社会における性差による役割固定の愚を撃つ

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 男女雇用均等法の施行で女性の職域が以前に較べれば少しは広がったというものの,意欲ある女性にとって企業における活躍の場はまだまだ限られているのがわが国の実情。その一方でフェミニズムの論調の一つに,「日本では男が王様で女は奴隷だ」という極端な主張がある。だが,これは果たして真なのか? 何かというと「差別だ」というコトバ狩りが横行するこの問題で,著者/古舘真は自分が体験して来たさまざまな事実に基づき,この説の誤謬と不毛を指摘してゆく。居丈高な女性フェミニストの極論は女性の解放をかえって妨げている,女性の解放は男性のなかの弱者解放とともにあるというのがその主張だ。
 「そもそも日本中の全ての女性を束にして考えるのが間違い」という著者は,企業内の性差別問題を考える座標として,男/女の性差軸に,年齢差(中高年/若年)の軸を交差させた座標を設定する。著者の体験によれば,かつての職場における支配と従属の序列は,(1)男性中高年,(2)若い女性,(3)女性中高年,(4)若い男性の順であり,なかでも「いわゆる男らしさ」に欠ける若手男性社員が,男性中高年の管理職から屈辱的隷属を強いられたと言う。このことから古舘は,フェミニズムに若手男性労働者との連帯を呼びかける。
 だが,問題がないわけではない。著者が普通なら公言しにくいみずからの被虐体験を明かしてまでこの問題に挑んだ勇気は評価出来るが,性差別の根源的素因を「石器時代の名残」で片づけてしまったのは短絡的に過ぎる。著者が撃ちたかったのは陰湿な差別(イジメ)が横行する日本社会の特殊性であるはずなのに,それをすべての民族社会が通過した(つまり普遍的な)石器時代に還元したのでは,論理的に破綻してしまうからだ。著者には「水利」が個を集団に隷属させる稲作農業の遺制や,封建主義の男尊女卑イデオロギーの源流にあった伝統宗教の役割などを勉強してほしかった。
(C) ブックレビュー社 2000

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流通入門書として好適。流通関係者にとっても業界全体が現在に至った流れを再認識するのに役立つ

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 かつてP.F.ドラッカーの『経済の暗黒大陸』(1962年)は,近代化の波に取り残された流通業界の後進性を指摘して各方面に衝撃を与えた。だがその後の国際化や情報化の進展は,流通業界を激しい業態革新の渦に巻き込んでいる。その最たるものはインターネットを利用した商取引だろう。
 卸にしろ小売にしろ,既存の流通業者は好むと好まざるとを問わず今後はサイバー・マーケットの影響を受けざるを得ない。従来の競合関係にのみ眼を奪われていると,長年の業界経験がある日突然,無価値になる危険すらある。
 本書は流通・商業を論じる際の用語や概念の定義・学説を紹介した1章から,流通政策を考察した12章まで,全41節からなる網羅的内容の労作である。生産者の動向や消費者動向と併せて,小売業や卸売業の営業形態ごとに特質が解説されており,入門書として好適。また国際化の影響,物流機能,情報化,価格形成のメカニズム,流通政策を通覧した部分は,流通関係者が自分の知識・経験を整理するのに役立つだろう。豊富な図表や,一般経済誌からの引用記事も理解を助ける。
 ただ全体の網羅を意図したためか,諸学説の紹介は多くの場合各論併記であり,生産者・流通関係者・消費者の利害が対立する問題についても触れていない。また個々の流通関係者が直面するであろう課題,すなわち「ではどうすべきか」という問題意識で読んでゆくと,筆者がすでにある現在とそれを招来した過去についての説明に終始しているため,食いたりなさを感じる。「生産者はこう自己革新してゆくべきである」「流通関係者はこれを忘れてはいないか」「消費者はこうして自分を守れ」といった,一歩踏み込んだ問題提起が欲しかった。
(C) ブックレビュー社 2000

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