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篠田  伸二さんのレビュー一覧

投稿者:篠田  伸二

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日経コミュニケーション1999/4/5

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 マスメディアの外堀は少しずつ埋められてきている。娯楽産業,総合商社,流通大手,コンピュータ・メーカー,ネットワーク関連企業など,これまでメディアとは縁のなかった異業種企業群がマスメディア業界との国境線を軽く飛び越えて攻め入りつつある。
 すべては,コンピュータの発達から始まった。株式時価総額で見ると,すでにAOLが米国テレビの三大ネットワークの一つCBSの5倍以上になり,ヤフーがNYタイムズを追い抜き,Amazon.comが全米書籍販売最大手バーンズ・アンド・ノーブルの約2倍になっているという事実。株式市場の動きはメディアの地殻変動の明らかな予兆だ。
 昔は「足の速いやつ」がクラスのヒーローだったが,今じゃ「指の速いやつ」,「ゲームのうまいやつ」がヒーローらしい。起承転結を用意した懇切丁寧なドラマを作っても,冒頭に面白いところがないとディジタル世代には簡単に飛ばされてしまう。しかも,そういうディジタル感性が,コンピュータやゲーム以外の分野でもどんどん新しいマーケットを生んでいる。
 マスメディアを当たり前のものとして受け入れてきた旧世代が大勢を占めている限り存続の余地はあるものの,新世代がそれを追い越すとき,マスメディアの地位は確実に揺らぐ。自らのアイデンティティを見失いそうになりながらも,生き残りのためには他の産業とともに「新しいかたち」を目指すしかなく,その場に立ち止まっていてはいずれ消え行くのも仕方がない。官僚組織と同じく,護送船団方式で守られてきたマスメディア独占の時代は世紀末に来て終わりを宣告された。
 朝日新聞というマスメディアの本流にいた著者がコンピュータという「素材」に出会い,その後インターネットをはじめとした「情報革命」の渦に巻き込まれ,本書タイトルに思い至る過程を冷徹にドキュメンタリで語る。本書は,現在マスメディアの傘の下で安穏と暮らしている鈍感でプライド高き時代遅れのマスコミ人と,これから大いなる夢を抱いてマスメディアという幻想を目指す若者へ,辛らつでインテリジェンスに富んだ警鐘を鳴らす。
 しかし今は,ただ終わりを悲観的に眺める時期ではなく,新旧メディアを融合させながら「新しいかたち」を生み落とす絶好の機会でもある。これを読んでただ暗くなるやつはもうマスメディア・サイドから去った方がいい。
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