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先月(2017年6月)

吉野 文子さんのレビュー一覧

投稿者:吉野 文子

1 件中 1 件~ 1 件を表示

十二支の民俗誌

2000/12/27 17:16

現代にも息づく12の動物たちの伝承

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 毎年の年賀状を書く季節になると、私たちは「えと」を意識する。しかし、それも12の動物達が年毎に割り当てられていて、生まれ年を表す時に使うこともある、という程度で、その成り立ちについてはあまり考えたことはないのではなかろうか。

 「えと」の動物には、一見して好ましいものばかりではなく、怖いものや不気味なものも入っている。不思議な取り合わせの動物達である。「えと」は「干支」と書き、正しくは十干十二支のことであるが、現在では専ら十二支の方の意味でのみ用いられている。「干支」の起源は古代中国に遡り、十二支おのおのに今のような動物が振り当てられたのも同様であるという。「子」にはネズミ、「丑」に牛、「寅」に虎、のように対応するが、何故このような対応になっているかはわかっていない。意味の上で関連があるわけではなく、どういうわけかペアになっている、というのは、この本を読んで初めて知ったことである。

 十二支の動物群には、その成り立ちが外来である故か、もともと日本に存在しないものもある。虎、羊などは知識として知られていたり、まれに外国からもたらされたりしたが、定着するには至らなかった。ところが、例えば虎では、その外見や性質から「強さ」のイメージをだぶらせて、具体的には五月人形の題材になる等のほかに、神秘的な力の象徴として、農耕的世界の人々の心に根付いた一面もあるのだ、という。動物達は、単純にその姿形から連想されるイメージによってではなく、むしろ御しがたい自然に向き合って暮らす人々にとっての、生きていく知恵を共有し、伝えるための存在として、長く我々の習慣の中に残ったのであろう。

 これら12の動物のうち、虎、羊と想像上の動物である龍を除いては、どれも日本人にとって身近で親しい生き物である。人間の生活の都合から考えると、ねずみは害をもたらす、牛は農作業の動力として役立ってくれる、というように片付けてしまいそうになるが、伝承されてきた諺や民話をみると、人々はいずれの動物にも神秘を見出し、敬して付き合ってきたことがわかる。たとえば、21世紀最初のえとである「巳・蛇」は、ただ不気味な怖い存在としてとらえがちであるが、昔の人たちはそうではなかった。蛇の強い生命力に執念深さをイメージし、「蛇のようにしつこい」と言ったり、安珍を恋する清姫が蛇体に変じて川を泳ぎ渡る、という説話が生まれたり、というのはわかりやすい例である。しかし、蛇は悪役を演ずるばかりではない。「蛇を3匹見ると夜はご馳走がある」「蛇がとぐろを巻いているのを見ると、良い事がある」というように吉兆にとらえる地域もある。「蛇に巻かれている夢はよい」「蛇が懐へ入った夢を見るとお金が入る」という解釈もある。無論、悪い予兆の材とする場合も同じ位あるが、要は吉凶禍福さまざまに見なしていたということである。また、各地の伝説では、蛇は水や雨との関わりが深く、人々はそれを神として祀ることによって、人力の及ばない部分の多い自然界において安定を得ようとしたという。

 この本には、十二支の動物各々についての様々な伝承が丹念に集められている。そして、動物たちを見る人々の謙虚な観察的態度と豊かな想像力に驚かされる。いつか、小さい頃に聞いた昔話の原型に出会うこともあり、こうしたものが現代に生きる我々にも脈々と伝わってきているという事実に、改めて気付かされる。

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