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斎田亨彦さんのレビュー一覧

投稿者:斎田亨彦

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紙の本赤×黒 2巻セット

2001/08/17 15:43

光を持つ描線

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 近年はどうしても「寡作な」という形容詞がついてまわる上條淳士。今回の『赤×黒(アカクロ)』も連載終了から4年、新作単行本としては前作『Sex』の第2巻(未完・全7巻予定)から7年という歳月をかけて、大幅加筆の上刊行された。
 上條は、描線の抜き(ペンを紙からスッと離す)を駆使し、黒い線が引かれない部分=紙の白地が生きた部分に、「光」を感じさせることに成功した作家だ。描線の中に光を持つ、と言いかえられようか。手法としては少女マンガの一部などにみられたものだが、『TO−Y』(1985−87年)は、この描法と大胆な画面構成・人物描写で、音楽もののジャンルを超え、(今もってマンガ界に上條風の絵柄が溢れるほど)後進にインパクトを与える作となった。『赤×黒』は、そんな上條が「光と闇」そのものを描く、意欲的な中編である。
 話としてはまさにアイディア一発、ストリートファイター・柴蓮司が、能楽師で一撃必殺の「蹴り」を持つ高校生・大石紫と出会い、格闘する(だけ)というものだ。作者はこの二人に「光」と「闇」を割り振って、蹴りの応酬のうちに生じる言葉や芽生える友情を掬い取ってゆく。
 両者の格闘はまさに光と闇のせめぎ合いとなり、それを描く上條の線も官能的なほどの冴えを見せる。対決といえばエスカレートしていたずらに長編化する作品が多い中、こんなにもシンプルな設定のアクションマンガが成立したことは驚異的である。

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