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藤村 幸義さんのレビュー一覧

投稿者:藤村 幸義

グローバル化を推進する中国の台頭により,大きく変化するアジアの経済関係を突っ込んで分析

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 アジア経済において中国の存在感が日増しに高まっている。アジア経済危機では人民元の切り下げ圧力に悩まされたが,2001年前半の今ではその心配は全くない。IT(情報技術)産業化をバネに,「世界の工場」の役割を果たしつつある。本書は,にわかに勢いの出てきた中国とアジア諸国との経済関係の深まりをさまざまな面から分析している。
 特に,この本では韓国・台湾と中国との結び付きに着目している。中国への生産シフトはめざましいばかり。それに伴って韓国・台湾から中国への原材料や資本財の輸出,中国から韓国・台湾への半製品・製品の輸出など貿易関係も緊密化している。
 中国の国内市場の魅力も大きい。本書は,アジア諸国のアブソーバー(需要吸収者)機能としての中国の役割が増大している実態を詳しく紹介している。こうした中で,アジアにおける日本企業のプレゼンス低下が懸念されるが,本書は遅ればせながら幾つかの新しい動きも出てきていると指摘している。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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紙の本中国経済の展望

2001/02/20 18:16

WTO加盟を機にさらなる改革・開放を進める中国の課題と問題点をわかりやすく解説

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 中国のWTO加盟を間近に控え,日米欧の対中進出の動きが再び活発化してきた。加盟となれば,中国は農業,自動車,金融,通信・インターネットなど多くの分野で関税を引き下げ,投資に対する障壁も撤廃していかねばならない。日米欧にとっては本格的な対中進出の絶好のチャンスとなる。
 本書はWTO加盟によって,一体中国のどこが変わるのか,課題と問題点をコンパクトにまとめている。中国が外資を迎え撃つには国有企業の改革が不可欠だが,大胆な改革はなかなか難しい。またこれまで中国の急速な発展の原動力となってきた郷鎮企業も,21世紀を迎え新たな変革を迫られている。
 本書ではこのほか,社会保障制度や都市部の住宅政策など,改革・開放の中で生じてきた新たな問題についても一章を設け,分析を加えている。WTO加盟となれば,新たな雇用の機会も増えようが,倒産する企業も出てこよう。失業保険,年金,医療保険の充実が急務だが,本書を読むといかに基盤が弱いかがわかる。住宅政策もマイホーム構想が動き出してはいるが,まだ一般庶民にとっては高根の花だ。本書ではいち早く改革に乗り出した上海を事例にして,どのような現状にあるか,紹介している。
 本書は大阪市立大学大学院経済学研究科の中国経済研究の演習に参加したメンバーが,それぞれの研究テーマから成果を持ち寄ったもの。メンバーには中国経済研究の専門職についている方だけでなく,現役の企業人,中国での実務経験者,中国人留学生など多彩な顔ぶれを揃えている。それだけに類書にはない具体的なデータや経験談なども盛り込まれていて,現状理解に役立つ。もっとも,多くのテーマを取り扱う必要上,一つのテーマにあまり紙数は割けない。このためそれぞれのテーマを深く知ろうとする読者にとっては,やや物足りないかもしれない。
(C) ブッククレビュー社 2000

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「一国二制度」下の香港

2000/12/28 12:15

返還後の香港における「一国二制度」の未曾有の実験をつぶさに検証

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 香港は1997年7月の返還前後に世界の注目を集めたが,返還されてからはアジア通貨・金融危機の嵐に巻き込まれたこともあって,関心の低下が目立っていた。ショッピング目当ての旅行者もめっきり減ってしまった。しかし香港をウォッチする興味の度合いは,返還前よりも返還後の方がはるかに大きい。なぜならばいま香港では,異なった体制が共存するという「一国二制度」の未曾有の実験が進められているからだ。
 本書は返還から3年経った香港がどのように変わったか,政治,経済,法律,社会,外交など多面的な角度から分析している。筆者は返還をはさんで96年から99年まで現地に駐在していただけに,材料も豊富で十分に読み応えがある。
 返還前の香港を知るには,限られた空間である「香港」を中心に分析していれば十分だった。しかし返還後の香港は「二制度」という壁で一応区切られてはいるが,「一国」を代表する北京の影響力が徐々に浸透してきている。このため中国という拡大された空間の中で語らねばならなくなっている。「一国二制度」とはまさしく,香港と北京との水面下も含めた様々なレベルでの「駆け引き」の総体,と言うこともできる。
 北京は返還後,香港に対し露骨な干渉を避けてはいるのは確かだ。ところが実際には香港側が北京の顔色をうかがい,自己規制しているのが現実である。本書は結局,香港の将来を握っているのは北京の中央政府ではないか,とみている。
 もっとも北京も香港を中国大陸と同じシステムに変えてしまっては,せっかくの「金の卵」をつぶしてしまう。自らも香港から多くのことを学び,香港を通して自らを改造していかねばならない。
 最後に双方が融合し,ハイレベルの「一国一制度」に収斂(れん)させていけるかどうか。本書はそのための課題が何であるか,多くのスペースを割いて分析している。
(C) ブッククレビュー社 2000

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中国のグローバル化は日中関係,ひいてはアジアにとってプラスか,マイナスか

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 2000年3月に北京で行われたシンポジウムの報告書である。日中双方の10人余りの研究者が「グローバル化」をキーワードに,その進展が今後の日中関係にどのような影響を与えるか,さまざまな角度から話し合っている。
 中国側から聞こえてくるのは,中国独自のグローバル化を実現していくんだという,強気の姿勢である。グローバル化の機会をうまく活用し,国際社会の豊かな資本,先進技術,先進的な管理モデルを積極的に導入していく。しかし決して米国主導のグローバル化は受け入れず,そうならないための歯止めを設けていく。
 世界貿易機関(WTO)への加盟にしても,一時は欧米巨大資本の中国上陸や中国企業の倒産に伴う大量の失業者発生などを懸念する声が多かった。ところがこのシンポジウムでは,中国国内の改革を促進することによって中長期的には必ず中国の利益になるんだという前向きの姿勢に変わってきている。
 日本側が懸念するのは,中国が国際社会に果敢に打って出ようとすれば,日本との間に何らかの摩擦を生み出すことにならないか,という点である。それでなくともここ数年の日中関係は悪化の一途をたどっている。世論調査を実施すると,「相手国を好ましく思わない」との答えが,日中双方ともに目立って増えている。
 日本側は中国がこれまで目標としてきた「平和」と「発展」,「改革」と「開放」という基本路線を今後も維持するように求める。ところが中国側は「日中間には安全保障戦略に大きな違いが存在する」として,日本の米国依存にこそ問題があると批判する。
 日中関係がアジアの平和と安定を左右する度合いは,今後ますます大きくなろう。
 そうした中で,双方の考え方が予想以上に離反してしまっている現状をどのように打開していくか,本書は重い課題を突きつけている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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中国がどれだけ成長し,格差はどこまで広がったか,各種データで丹念に追跡

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 中国のデータを国土・自然から始まって歴史,政治,経済,産業,社会,生活などと幅広く,コンパクトに拾い上げていて,使い勝手がよい。
 しかも中国が改革・開放政策を開始した1980年代初めにまでさかのぼってデータを載せているので,過去20年余りの変化がいかに大きかったかが手に取るように分かる。
 もう一つの特徴は発展によって生じた沿海部と内陸部の格差の問題にも注意を払っていることだ。各省別のデータを加工し,どのくらいの格差が生じているか,一見できるようになっている。これらの数字をみると,中国が2000年になって「西部大開発」政策を打ち出さざるを得なくなった背景が理解できる。
 データの出所は中国統計年鑑(中国国家統計局編)が中心だが,そのほか各省統計年鑑や雑誌類,さらに現地視察での見聞まで織り交ぜている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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中国の社会・経済を実証的に分析し,4000年の歴史の本質に迫る

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 東洋経済史学会(研究会)の30周年記念論文集である。この研究会は福岡大学経済学部が大学院学生の研究指導のために始めたもので,東洋史の権威である今堀誠二教授が指導していた時期もある。中国とは地理的に近いこともあって,さすがに各論文の水準は高く,読みごたえがある。
 一見して関係のなさそうなテーマが並んでいるが,研究の手法には共通性がみられる。中国のある時代の社会・経済の断面を実証的に分析し,中国の本質をとらえようとするやり方である。
 対象とする時代も幅広い。最初の2論文は現代中国を扱っているが,元・宋,さらには唐の時代あたりまでさかのぼる。しかし古い時代をテーマにしていても,現代の中国に通じるところが多々見受けられる。中国の社会・経済組織には時代を超えた共通性が存在するということだろう。4000年の歴史の重みを感ぜざるを得ない。
 たとえば「光緒新政下における潮汕鉄道の建設とその意義」(堤和幸)では,華僑資本の鉄道への投資を呼び起こした点が強調されている。いま中国はインフラ整備や近代的な企業経営に外国からの資金を盛んに呼び込んでいるが,そうした開発方式の原型をこの時代にみることができる。
 「北宋期の商税について」(足立公徳)では,商税を巡って中央政府と地方政府の対立が激化した状況が浮き彫りにされている。つい数年前には中央政府が大胆な税制改革を断行し,中央政府の取り分を大幅に引き上げたため,それを不満とする地方政府との間で深刻な対立が起きたばかりである。 
 「四川成都の都市形成と水利問題」(西岡弘晃)も現代に通じるテーマである。有名な「都江堰」の建設が成都の経済発展を促したが,最近は深刻な水質汚染という新たな問題の解決に迫られている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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世界の国ごとの最新データ・情報を見開き2ページに収録。豊富な各種データを一覧できる

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 全独立国・地域199の最新のデータと情報を国ごとに見開き2ページに収録している。激動する世界情勢を短時間で的確にとらえるには便利だ。
 類書に比べ,豊富な各種データを一覧できるのが特徴だ。右側のページには,国民総生産(GNP)や人口などの基礎的なデータだけでなく,労働,貿易,保険,教育,マスコミ・文化,国防といった部門ごとの情報もかなり掲載されている。日本との関係も比較的詳しい。たとえば在日人数,在留法人数の最近時点での数字も載っている。在日大使館などのホームページ・アドレスが掲載されているのも役立ちそうだ。
 残念なのは左側ページの国別解説がやや平板で突っ込みが足りないところだ。政治・経済の項目をみてもスペースが短いこともあって,若干情報不足。もう少し焦点を絞って過去1年程度の最新の情報を入れてほしい。
(C) ブッククレビュー社 2000

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中国経済発展論

2000/07/22 06:16

中国経済を長期的視野に立ち,東アジアとの比較や既存の開発理論の中で位置づけたテキスト

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 筆者は東京大学で「中国経済」の講義を受け持った時,教科書とすべき適当な本がないことに気づいたと言う。それが本書の執筆動機となっている。中国経済を論じた書物は数多くあるが,ほとんどは中国だけを論じている。中国での80年代に入ってからの改革・開放政策が,どういった性格をもつものなのか,世界経済の歴史や既存の開発理論の中に位置づけてやるという作業は,部分的にしか行われてこなかった。本書は中国での改革・開放の試みは,なにも中国だけの専売特許ではない,というところから出発している。
 たとえば,経済の成長と分配については,クズネッツの「逆U字仮説」がある。一定の所得水準までは成長と分配は背反した関係にあるが,それを過ぎると逆に平等化が進む,という仮説である。中国では改革・開放の過程で所得の格差拡大が進んでいるが,今後こうした仮説通りに,格差縮小に向かうのかどうか興味深い。
 貿易と直接投資については,フェイ氏らが東アジアの開発経験をもとに提起した「4つの局面」が,中国に当てはまるかどうか検証している。中国でも輸入代替から始まって,工業生産財や耐久消費財の輸出に至る過程がそれなりに存在するが,必ずしも明確な形では当てはまらないことがわかる。やはり社会主義国の特殊性が反映しているのだ。
 もっとも,本書は筆者の当初の意図とは違って「やさしい,教科書風の中国経済論」にはなっていない。中国経済の現実の動きについてはあまり紹介されていない。したがって,中国経済の実体を知らない読者が本書を読んでも,理論や仮説が当てはまるか否か,容易には判断できないからだ。
 本書はある程度中国経済の実態を知ったうえで,それを他国と比較したり,経済理論の中で位置づけてみたりする場合に,大いに参考になるし,知的刺激も受ける。
(C) ブックレビュー社 2000

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中国市場で目立つ生産と販売の乖離の問題を「生販並行展開問題」と名付け,その克服策を探る

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 中国市場に進出した企業の現場管理者の苦労は並大抵のものではない。日本とは全く異なる経営風土の中で,悪戦苦闘を強いられている。なかでも困難を極めるのは販売の分野である。生産体制を整えるのは対象となる相手も空間も限られているため,それほど難しくはない。ところが,販売は大げさに言えば,中国全体を相手にしなければならない。中国の特異なシステムに足をすくわれ,消耗してしまうケースがきわめて多い。
 本書は発展途上国,とりわけ中国において目立つ生産と販売の乖離の問題を「生販並行展開問題」と名付け,分析の中心テーマに据えている。まず,これまでの研究成果を整理し,その中から筆者独自の分析フレームを提示している。その上で実際に進出した企業の実態を紹介し,どこに問題が存在するかを摘出,さらに突っ込んだ分析を加えている。
 筆者が特に注目したのは進出企業のアマダ,資生堂が例外的に「生販並行展開問題」を乗り越え,成功している事実である。確かに問題の根源は中国にあるが,成功した2社の対応をみると,進出した日本の企業側にも問題の一部はある。つまり,進出企業が社内体制をしっかりと構築し,現地のスタッフに接していけば,難しい問題でも解決できる場合がある。要は現地に派遣された日本人管理者の資質の問題だと,筆者は強調する。
 中国の世界貿易機構(WTO)加盟はまもなく実現する。加盟となれば,中国は自国の経済システムをできるだけ国際標準に合わせて行かねばならない。流通の分野でもさまざまな改革が進められよう。それにしても人材の教育・訓練,外部情報の収集体制,営業要員の管理体制,取引面での対応など,現地の日本人管理者に任された責任の大きいことが本書によって確認される。
 対中進出を論ずる際の核心となるテーマではあるが,論理展開が必要以上に込み入っていて,読みづらいのが欠点である。
(C) ブックレビュー社 2000

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韓国は通貨危機から立ち直ったとはいえない。米国のアジア市場制覇の戦略に惑わされてはならない

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 アジア通貨・金融危機がなぜ起きたか,その発生原因を分析した書物はすでに多く出されているが,各国別の突っ込んだ分析となると意外なほどに少ない。特に,韓国についてはあれほど深刻な危機に見舞われたにもかかわらず,これまでまとまった分析はほとんどなされていない。本書はその数少ない一冊といえよう。
 危機の発生原因については,各国の経済構造のぜい弱性に問題があったという見方と,ヘッジファンドに代表される大量な国際資本の移動こそが元凶であるとの見方に大別されよう。本書は,前者の要因もさることながら,米国のアジア市場制覇というグローバルな観点から見なければ,今回の危機は説明できないと強調している。
 韓国経済は1997,98年の危機を克服し,昨年からは急速に回復し始めたかにみえる。確かに株式市場は活気を取り戻し,経済成長率も昨年は10%台を記録した。かつての高成長軌道を取り戻しそうな勢いである。
 しかし,筆者はそうした楽観的な見方に警鐘を鳴らしている。回復したかに見えるのは,米国の資金が韓国の株式市場に大量に流入したり,韓国の銀行・製造業をM&Aの形で合併・買収したりしているからだという。こうした資金はきわめて移り気で,先行きの見通しが悪くなれば,再び流出してしまう。したがって,韓国経済の構造改革による本格的な回復ではないと断じている。
 確かに,米国のアジア市場制覇の戦略が見え隠れするのは間違いない。こうした米国主導による世界経済秩序の再構築が,米国流スタンダードの押しつけとなり,アジア各国の経済発展にとって必ずしもプラスでないのも事実であろう。
 それにしても筆者は韓国の構造改革の努力を過小評価しすぎているきらいがある。金大中政権は財閥再編に決意のほどをみせており,その効果は徐々に現れているのではなかろうか。
(C) ブックレビュー社 2000

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