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先月(2017年6月)

森うさぎさんのレビュー一覧

投稿者:森うさぎ

5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本格闘する者に○

2001/12/26 05:16

社会性に悩みがちな就職学生と「元」就職学生に!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 わたしは今ひとつ社会性というものに乏しいらしく、就職活動が出来なかった。
 リクルートスーツとかセミナー会場は恐怖の対象以外の何ものでもなかく、さらに、某社で圧迫面接なる「いじめ」に限りなく近い面接を受けた。そのとき軽い発作が起きてしまい、そこで就職活動をあきらめた。しばらく心身が不調になり、蒲団から出られなかった。しかし正直に言えば、ホッとしたのも本当だ。できないものはできないのだと開き直ることもようやくできて、大学をあとにすることができた。その後、持ち合わせている社会性をなんとか活用して日々を生きている。

 三浦しをんさんの『格闘する者に○』は女子大生が就職活動をする小説だ。政治家一族の長女に生まれた可南子は、漫画が大好きで漫画編集者をめざし、出版社を受験する。就職活動での奮闘する合間に、ちょっと複雑な家庭の事情や、一族の跡継ぎ問題、ゲイに目覚めたばかりの同級生、可南子の「恋人」の老人、西園寺さんとの交流などが描かれる。

 作者も出版社をめざして就職活動をしたらしい。それゆえか、イニシャルや仮名で登場する出版社の就職試験や面接にはリアリティーがある。反面、可南子の周りの登場人物たちはどこか現実離れしていて、漫画のようだなと感じた。
 でも、それはマイナスじゃない。たぶん、この小説にはそういう仕掛けがあるんだと思う。作者は漫画を愛し、漫画の世界にオマージュを捧げるような小説を書きたかったのだ。漫画が好きなら漫画を描けと言われそうだが、漫画には「絵」というとてつもなく高いハードルがある。絵が苦手で、なおかつストーリー作りの才能があり、小説を書くだけの文才に恵まれれば、きっとこんな小説が生まれるだろう──この『格闘する者に○』を読んで、妄想気質の私はそんなことを思った。漫画と本を分け隔てなく享受して育った私のような人間にはなじみやすい世界だ。

 私がこの小説の中で好きなのは、少女漫画風の「地方の政治家一族」のエピソードだ。
 可南子の生みの母は可南子を生んで死んでしまった。父は入り婿で、再婚して息子が生まれた。つまり、一族の血を引くのは可南子だけ。その正統性を引き受けるつもりなんかこれっぽっちもない可南子だけど、「血」が家族をぎくしゃくさせていることに無頓着なほど鈍感でもない。親族と後援会の人たちが集まる「跡継ぎ決定会議」での波乱をきっかけに、それぞれに相手を思いやる気持ちが、実は彼らを縛ってきたのだとそれぞれが気付く。このエピソードはとてもよかった。彼らの間に「家族」の絆めいたものがやっと芽生えてくるのだ。「家族」大嫌いな私も、ここのところではなぜかホロリと来た。

 一見、ふざけているような『格闘する者に○』というタイトルだが、実は、就職活動中の、あるトンデモないエピソードから取られている。そのエピソードが含んでいる毒と、前向きに生きようとする可南子とその周りの人々に「格闘する者」が重なる。彼らに「○」をあげようというすてきなタイトルだと思った。

 三浦さんはこの小説がデビュー作だという。その後、すでに数冊の小説、エッセイを書いて好評とのこと。たしかに将来性豊かな書き手だと私も思った。その三浦さんの原点として、まだ読んでいない方にはお勧めしたい。

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紙の本神は日本を憎んでる

2002/01/24 13:22

イラスト、ストーリー、ブックデザインどれも個性的

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「神は日本を憎んでる」。挑発的なタイトルに、わたしは黙ってしまう。なぜ日本は神様に憎まれなければならないの? 
 しかし、この本はイジワルな可愛らしさにあふれてる。第一印象はとっつきにくいけど、仲良くなるとその良さがちゃんと伝わってくる。はじめて会ったときに嫌な奴だったコがいつの間にか親友になっているように。

 わたしは遊び心のある本が好きだ。本もモノとして魅力的であって欲しいし、ブックデザインに工夫があるとトクした気分になる。この本も、表紙から変わっている。縞縞模様のカバーをずらすと絵が変わる。
 本のなかにもイラストがふんだんに使われている。個性的で、キュートで、ときにわざとバッドなテイストも盛り込む。そのセンスが楽しい。

 肝心の中身の方もかなり変わっている。
 ヒロはクラスメイトの女の子たちがモルモン教の宣教師にハマっているのを見て「僕らの世界から3人を奪った。人間消臭剤に変身させてしまった」と感じるトーキョーの高校生だ。

 ヒロは大学受験に失敗し、ハンサムでクールな東大生テツと、廃墟になりかけた都心のマンションに住み込んで生活をはじめる。
 ヒロは「親愛なるクローン」あてに、風変わりなことを呟いている。自分のロクでもないクローンに、ロクでもない現実を教えるためだ。

 「とにかく日本人」であることがDNAに刷り込まれている現実を見ろ、とヒロは「クローン」に語りかける。トーキョーに住む外国人と出会い、その距離を測りあぐねているヒロは日本人が作った窮屈な慣習も大嫌いだけど、ほかに何か新しい価値観が見つかったわけじゃない。そんなとき、サリン事件が起きる。テツの妹ナオミが被害にあってしまう! そしてヒロはカナダのバンクーバーへ。

 かなり濃い内容だけど、読み心地はポップ。著者のダグラス・クープランドといえば衝撃的なデビュー作『ジェネレーションX』が思い浮かぶけど、新刊当時、子どもだったわたしは読んでいない。だけど、X世代のお兄さん、お姉さんたちの消費主義文化はわたしたちまでも引き継がれている。

「物質主義はもう最終段階まできてるんだ」ってテツは言う。最終段階にいる若者たち(=私たち)ってどうなの? と思わずツッコミたくなるけど、それはわたしたち一人ひとりが考えなくちゃいけないことなんだろう。

 著者のクープランドはカナダ在住の作家。イラストは同じくカナダのアニメーター、マイク・ホワットソンが描いている。カナダっていう、とても微妙なポジションのアメリカの隣国とアメリカの同盟国日本というポジションもちょっとダブって、ヒロ、テツの軌跡を追ううちに、私たちの時代をちょっぴり考えさせてくれる。

こちらのページでイラストやブックデザインを確認できます。
→小説とアートの共犯関係『神は日本を憎んでる』

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紙の本東京タワー

2001/12/14 11:46

東京タワーが見守る男の子たちと年上の女性の恋

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 恋はなぜ切ないのだろうか? それはいつかその恋が終わってしまうことを、心のどこかで感じているから。でも、そのことに気付くなんて悲しすぎる。だから、それは心の中に隠された秘密なのだ。

 私が江國香織さんの小説が好きなのは、恋の秘密をとてつもなく上手に描き出しているから。でも、それは秘密を暴くという野蛮で直接的なやり方じゃない。もっと上品で、明るくて、優しい。でも、そういう美点が、恋の切なさを際立たせるんだと思う。どんなに光に満ちた部屋にも、どこかに必ず影ができているように。

 『東京タワー』は二人の大学生が主人公。透と耕二は高校時代の同級生で、いまは別々の大学にすすんでいる。

 透は高校時代から、母親の友人で高級輸入雑貨店を営んでいる詩史(しふみ)さんとつきあっている。でも、詩史さんは結婚している。
 詩史さんは透に「いっしょには暮らせないけど、いっしょに生きることはできる」という。詩史さんは優雅で読書家で、どこか謎めいている。
 透は詩史さんのすすめてくれた本を読むことで、詩史さんと会えない時間を紛らわせている。透の詩史さんへの恋情は一直線で、純粋だ。詩史さんも、透の気持ちに応えようとする。

 耕二は由利という同い年の彼女がいるけれど、年上の人妻喜美子とも会ってセックスをしている。透が高校のときに詩史さんとのことを耕二に話したことがきっかけで、年上の女性に興味を持った耕二は同級生のお母さんと関係を持ったことがあった。そのことが娘の同級生にバレて二人の仲はおしまい。しかし、耕二はそれから年上の女の人とつねにつきあっている。二股野郎だ。

 透の詩史さんへの気持ちはストレートで純情。耕二の喜美子への気持ちはふしだらで動物的。二人の対照的な物語が交互に語られていく。

 でも、二人は仲がいい。男の友情というものはいつも女には不可解だけど、この小説の中ではその男の子たちも女たちに翻弄される。だから男同士は仲がいいのかな。
 夫との仲むつまじい様子を隠さない詩史さん。彼女は夫に透を紹介して悪びれるふうでもない。喜美子は情緒不安定の傾向があって、激しく耕二を求めている。だけど、「私はいい妻なのよ」なんてしれっと言ったりもするのだ。

 私は、この男の子たちの気持ちになってハラハラしたり、女たちの側に立って、ふざけんなよとかわかってないなーと思ったりした。だけど、それよりもなによりもわからないな、と思うことが多かった。それは私がまだ女として未熟なせいだろうか?

 この小説のヒロイン、詩史さんは謎めいて魅力的な女性だけど、本当に困ったひとだと思う。でも、もしも私の近くに彼女がいたら、やはり愛さずにはいられないだろう。

 この本のオビに書かれているように「恋はするものじゃなく、おちるもの」。だとしたら詩史さんほど恋するにふさわしい人はいない。彼女の心には秘密が入った小箱があるのだ。だけど、その鍵を持っている人は誰もいない。それが恋の才能だろうか。だとしたら、恋の才能を持った人は魅力的だけど、切なくもある。だから愛おしいのだろう。

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合鍵の森

2001/12/09 01:17

「恋を生業とするホステス」の本気の恋

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 ホステスという仕事をやってみたいと思ったことはない。自分の容姿に自信がないし、お酒を飲むのは好きだけど、気が利かないと怒られる方だ。酔っぱらいおじさんにサービスする自信もない。でも、いや、だからかもしれないけど、ちょっぴり憧れてしまうところがある。派手な格好と化粧は、戦闘態勢にある「女」そのもの。女らしさに自信がない私は、水商売のお姉さんたちをまぶしく感じるのだ。

 『合鍵の森』は33歳のホステス「蛍」が主人公だ。キャバレー「赤羽ファンタジー」で働いている。小柄でおっぱいの大きい蛍はお客さんの指名もちゃんと入る売れっ子のホステスだ。だけど、恋愛体質を辞任する蛍は、恋愛ごっこもサービスのうちのホステス稼業にちょっと苦しいものも感じている。ウソっこの恋で相手をだませるような女じゃないのだ。
 だから、高価な贈り物をしてセックスを狙うお客さんや、身体をべたべたと触ってくる「サワリーマン」は嫌いだ。蛍が好きなのは自分の担当をしてくれている「黒服」の谷瀬だけ。
 谷瀬は蛍を抱いて眠らせてくれる。でもセックスはなしだ。谷瀬は交通事故が原因でできないのである。しかし、その谷瀬が19歳の新入りホステス明日香と怪しい関係だと知って、蛍の心は乱れる。そんなところに、ホステスを本気にさせることで有名なスケコマシの横嶋という男が現れる。客と寝たことは一度もなかった蛍だが、横嶋とは……。このあと、物語は二転、三転。思いがけない展開が待っている。

 「赤羽ファンタジー」というお店が面白い。170人が在籍し、常時その半分は店に出ているというから大きなお店だ。びっくりしたのはお店のナンバーワンが60歳の「峰」という人だということ。若い女の子ばかりがモテるわけじゃないんだ。
 著者の末永直海さんはキャバレーでホステスをしていた経験もあるし、「あとがき」で取材したお店への謝辞も述べている。デビュー作は『薔薇の鬼ごっこ』という印象的なタイトルのノンフィクションで、やはりキャバレーの世界を描いた本である。だから、こういう世界が夜の東京にあるのだろう。こういう店でなら、わたしも働けるかも知れないとどきどきしてしまった。

 ヒロインの蛍は泣き虫で、寂しがり屋。でも、負けん気は強い。ピュアなものを求めて生きている、女らしい女なんだろうなと思う。『合鍵の森』は、その彼女が「赤羽ファンタジー」で出会うお客さんやホステス、恋愛相手との関係に巻き込まれつつ、自分らしく生きていこうとする物語だ。
 33歳というのは、女の人としてはもう若くないと感じる年頃だろう。でも、蛍さんは若い。それはきっと、彼女が恋愛に命をかけている乙女だからだ。そんな蛍さんが、わたしはうらやましいと思った。わたしにこういう生き方ができるかどうかは心許ないけれど、こういう友だちがいたら応援してあげたいと思う。女だったら、かくありたいと思わせてくれるまっすぐさがあるからだ。

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紙の本アイソパラメトリック

2001/10/10 09:02

森博嗣の多芸多才にまたまたびっくりさせられる素敵な本

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 デビュー作『すべてがFになる』以来、あの手この手でいつも私たち読者を驚かせてきた森博嗣が、またまたびっくりするような本を出した。
 タイトルは『アイソパラメトリック』。意味はわからなくても、口にしてみるとクセになりそうな、そんなタイトル。森自身も「まえがき」の中で「ずっとポケットに仕舞ってあったとっておきのタイトル」と表現している。

 そう、この本は作家・森博嗣の世界を愛する人にとっては必携の一冊だ。

もう四年ほど前になる。ある夜突然、「今夜から毎晩一作づつ超短篇を書きなさい」という天啓を受けた。それに従い、寝るまえに一作づつ真っ白な頭のままキーボードに向かい、できるだけディスプレイをスクロールしないですむ量を目標にして作品を書いた。これが四十日間続き、四十作が揃った次の朝、起きてみると自宅の周囲は海になっていて、道路も隣のコンビニも海底に沈んでいた。我が家は孤島となり、その後、外敵の侵略など数々の難を逃れた。現在では、向かいの海岸に堤防が築かれ、我が家に橋が架けられている。こうして、一年に何十万人もの人々が訪れる観光名所になった。(「まえがき」より)

「まえがき」の書き出しから、さっそく森ワールドの軽快なメタファーが登場する。こんなふうに書かれてこの本を読みたくならない人はいないだろう。
 そして、ページをめくった私たちはショートストーリーを一つづつ、ゆっくりと味わうことになる。そして、テキストといっしょに、森博嗣自身による写真が添えられている。私たちが住んでいるこの世界から繊細な手つきで取り出された、ちょっと不思議な写真だ。テキストとの持つ温度とピッタリと合ったビジュアルなのだ。

 つまり、この小さな本の中に、森博嗣が時間を掛けて作った世界が封じ込められているってこと。

 さらに、この本はペーパーケースの中に格納されている。そのケースは二つ折りになっていて、半分は5つのピンズを収めるフレームである。フレームは、切り取り線に従って切り分け、裏側のスタンド部分を立てると、ちゃんとピンズフレームとなる。うーん、さすが、凝ってる。

 そう、この本のもう一人の主役が5つのピンズである。森博嗣自身によるデザイン! 可愛いピンズだ。この人の多才にはいつも驚かされてしまう。このピンズがまたいい具合の力の抜け加減だったりする。とぼけているというか、のほほんとしているというか、懐かしささえ感じるユーモラスなデザインだ。

 小さなピンズ一つが、森博嗣ワールドの一部をしっかりとかたちづくっている。その世界の魅力を一度知ってしまったら、その引力から逃れることは難しい。森ファン必携というのは、その世界を味わうには資格が必要だからだ。そして、このフォトブック&ピンズはギフトとしても最適だ。愛するあの人の感性を知るうえでも、きっと有効なプレゼントになると思う。


中身をご覧になりたい方はこちらをどうぞ。
テキストの立ち読みコーナーもあります。
→ギフトにも最適! 森博嗣ファン必携の『アイソパラメトリック』

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