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先月(2017年4月)

松本克夫さんのレビュー一覧

投稿者:松本克夫

1 件中 1 件~ 1 件を表示

中山間地域の新たな展望を切り開く

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 先の衆議院総選挙では、都市対農村の対立があらわになった。公共事業や地方交付税などを通して、財政的に都市が農村を支える仕組みに、都市の有権者がノーを突き付けたわけである。都市部の財政が破綻寸前にあるいま、農村は都市に甘えてはいられない。
 農村でもとりわけ危機にあるのは、農業が不利な条件にあり、林業も崩壊しかかっている中山間地域である。この過疎・高齢化地域の展望を切り開こうというのが本書の意図である。
 これまでにも、村おこしや一村一品運動という言葉で、打開策は語られてきた。本書が目新しいのは、地球温暖化問題が顕在化し、「持続可能」が世界的な標語になった時代の中山間地域の役割は何かを問い直している点である。
 循環型社会が目標とすれば、都市と立場が逆転し、中山間地域こそ先進地域になる。まず地域の「宝さがし」をすべきだというのが本書の勧めだが、人と自然とが共生しているあり方がそのまま宝になる。自然の景観、生息する生き物、そこで培われた手の技、得られた産物、みな宝になり得る。
 この宝を売り物に、都市とどう連携し、経済的基盤を確立するか。物を売ることにこだわらなくてもいい。棚田で農業を体験してもらってもいいし、沖縄県西表島のように自然観察を中心にしたエコツーリズムを導入する手もある。
 自然エネルギーの供給基地にもなり得る。スウェーデンなどにならって、バイオマスメタノールを生産することも政策次第では可能になる。地球温暖化対策として、二酸化炭素の排出権取り引き市場が成立すれば、中山間地域は植林により排出権を売却する道も開ける。
 都市との関係は市場を通じたものに限らない。森林ボランティアのように、自然環境保全のために都市民の自発的な協力を求める道もある。洪水防止機能など中山間地域が持つ機能が正当に評価されれば、この地域への財政資金の投入にも都市側の理解が得られないこともない。
 以上が本書の基調である。中山間地域の目指すべき方向はおおむね本書の指摘する通りであろう。ただ、農村は助けられる側、都市は助ける側という一方通行の関係ではないことはもっと強調されていい。一方通行なら、都市側のいらだちは解消しない。
 少年の凶悪犯罪に見られるように、自然と人、人と人とが切り離され、人間の精神という自然の一部が病んでいるのは主に都市である。都市も農村の助けを必要としていることを自覚してこそ、相互の協力は進むだろう。
(C) 日本経済研究センター

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