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  3. 草野 厚さんのレビュー一覧

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先月(2017年5月)

草野 厚さんのレビュー一覧

投稿者:草野 厚

14 件中 1 件~ 14 件を表示

紙の本この国の失敗の本質

2000/10/26 00:16

日経ビジネス1999/2/22

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 阪神淡路大震災が起こって4年が過ぎ、人々の心から、あの時のショックが嘘のように消えつつある。その証拠に、当時村山内閣の危機管理に関して厳しい批判を浴びせたマスメディアもその後を十分には検証していない。何をあの大災害から我々は学んだのか。政府や地方自治体は、いずれは必ずや起きるであろう大震災に、村山内閣と同様の失敗を繰り返さないという自信はあるのか。そんなことを考えていたら、その点をより深く、問題の本質に迫って注意を喚起している書物に出合った。
 第2部の「大災害と生存の条件」から読み出したが、著者が当時すでに、災害の現場を歩きながら(本書は、既発表の作品を集めたもの)単なる感想ではなく、現在にも示唆的な処方箋を提示していることに驚いた。たとえば、極めて短い作品だが「阪神大震災に学ぶ危機管理の核心」では、情報キーパーソンの重要性を指摘している。
 要は、情報の把握と判断の遅れが、大震災の被害を拡大したのだから、政府は情報網の確立など対応策を講じるだろうが、それだけでは不十分であろう。必要なのは情報のプロで、それは1、2年で代わるような担当者ではだめだというのである。ほかの分野よりも余計に防災のプロは、情報の蓄積と勘が求められるということは素人の私でも理解できる。しかし、状況は著者の危惧する方向に進んでいる。
 「ゼロ戦コンセプトの成功と失敗」も興味深く読んだ。日米で戦闘機の設計思想が大きく異なり、日本の場合、機体の軽さを追求したために、強度や防弾は後回しにされ、結果的にパイロットの命は二の次になったというのである。その不利な点を精神力で補えといっても、米国の合理的設計思想には勝てるわけがない。
 この作品を含め、医療、高速増殖炉もんじゅなど効率追求の社会の事故がどのようにして起きるかなど、これまでの官僚機構、企業の失敗を検証し、実は多くの失敗は、日本軍の組織上の欠陥に起因するとしている。特に、人的ネットワークを偏重し、また学習を軽視していたことが問題だとしている。
 ではなぜ、失敗を学習しないのか。それは「文化的な欠陥遺伝子」、つまり、正面から失敗の原因を議論しようとすると、組織内で白い目で見られて孤立してしまう傾向が日本では強く、結局、「起こったことは仕方がない、今から蒸し返す必要はない」と封印してしまうからと指摘する。官僚機構は、なにも公的機関にのみ存在するわけではない。私企業においても、全く同様のことが生じているはずである。著者の指摘に学ばずに、我々は再び過ちを繰り返すことになるのであろうか。
Copyright (c)1998-2000 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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日経ビジネス2001/07/23

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歴史は、何も政府や政治家たちだけによって作られるわけではない。そうした当たり前のことはわかっていながら、つい、戦後の連合軍による占領期の歴史も、冷戦、朝鮮戦争、GHQ(連合国軍総司令部)、マッカーサー、天皇、吉田茂などのキーワードで一括りすることに、さほどの抵抗はないのではないか。
 私も占領期を含む戦後史は、随分と読んだが、多くの書物がそうした視点から書かれていた。本書は、占領期を中心とした日本の戦後を、普通の人々が、あるいは町工場がどのように生き抜いてきたかに相当ページを割きながら描いている。われわれの両親や、祖父母が直面した生活をこれほど活写した作品は知らない。しかもそれは、膨大な資料を駆使した米国の研究者の手によるという点が、二重にわれわれを驚かす。
 「鉄かぶとが鍋に代わり、出版業者たちは、かつての風船爆弾の製造工程を利用して安い再生紙をつくり、深刻な紙不足を解消した」などのエピソードから、敗戦直後の人々の顔が見える。
 肝心の読後感は、決して暗くはない。いや、逆に、困難に直面した人々が困難を乗り越えていく姿は、感心するほど明るい。敗戦までの戦いで、工業生産力は大幅に落ち、大陸やアジアのその他の地域からの引き揚げ者の急増で、飢餓には違いなかった。しかし、そうしたどん底の生活の下でも、とりわけ子供たちは無邪気だ。軍国教育を受けた彼らは、敗戦からわずか半年後には、「闇市ごっこ」、街娼とその客になりすます「パンパン遊び」に興じていたという。
 彼らが、日本の復興の過程の主役であったことを考えると、こうしたエピソードは示唆的だ。冷戦の勃発という要因もあったが、案外、日本人のこうした切り替えの巧みさが、経済復興を側面から支援したことは間違いがないだろう。
 著者は、もちろん、日本政府とGHQとの間の「政治」にも、強い関心を示す。とりわけ、天皇の戦争責任については3章を割いて丁寧に議論している。「戦闘と犠牲を奨励してきたのは、天皇の本当の意図によるものではなく、君側のかんが無理にさせたことなのだ」という戦後の日本統治を巡る考え方こそが、日本人が自らの戦争責任を曖昧にしてきた、と私は読んだ。
 訳語はこなれていて読みやすい。ただし直訳に近い『敗北を抱きしめて』の書名からは、著者が『吉田茂とその時代』を著すなど有数の日本研究者であることを知っている人は別にして、内容が想像しにくく、惜しい。
Copyright (c)1998-2001 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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日経ビジネス2001/05/28

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もし、著者が今頃自民党幹事長でなかったなら、本書はほとんど世間の注目を浴びることはなかっただろう。橋本龍太郎派の勢いが強かった1年前には、非主流だった山崎拓氏の幹事長就任などは考えられもしなかった。奇跡的に誕生した小泉純一郎内閣の、もう1つの奇跡だ。
 ところが、本書で著者が主張する女帝論や天皇の退位は、大新聞の1面トップを飾ることになったし、与野党間でも合意が得られつつある。流れは皇室典範の改正に向かっている。運命というものはわからないものだ。歴史が大きく変わる時は、案外こうした偶然の積み重ねが原動力になるのかもしれない。
 もっとも、著者の持論である集団的自衛権を憲法改正で実現するには道は険しい。小泉首相は、政府見解を変えることで、集団的自衛権は行使可能と述べたが(後日訂正)、著者は反対である。私も憲法改正による方がすっきりするとは思う。しかし、より重要なことは、憲法第9条が制約となって現行の法律にも欠陥がある点だ。
 山崎氏が政調会長としてまとめた周辺事態法の内容が一例だ。法律は日本の自衛隊による米軍への後方支援は、「紛争に巻き込まれない(憲法第9条に抵触しない)」限りにおいて可能としている。安全でなくなり「紛争に巻き込まれる」可能性が出てきたら移動するというのだ。これでは日米両国が真の同盟関係にあるとは言えない。
 首相公選制を手始めに憲法改正を実現するという小泉首相の主張にも著者は批判的だ。国会と内閣のあり方を含め、玉突き的に関連する条文をいじらなければならなくなるからというのが理由だ。小泉首相が言うほど容易ではないというのである。
 別の興味深い点もある。活力ある経済社会を実現するための自由競争は、現行憲法では「公共の福祉の利益に反しない限り」とされる。これが行き過ぎていると著者は考える。市場原理を生かす営業の自由を保障するには、「何人も公共の福祉に反しない限り、職業選択および営業の自由を有する」との条項を設けよとする主張に、私も賛成だ。
 本書の何よりの意義は、国会の憲法調査会での議論を活発化させる可能性があるということだろう。
 願わくは、本書とは違った切り口で憲法論を多数の政治家が語ることである。その意味では、社民党のような護憲政党の政治家が、説得力のある現行憲法改正不要論を展開すべき番だ。そうでなければ、議論のバランスが取れなくなってしまう。
Copyright (c)1998-2001 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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IT革命の日本の遅れを確認し,電子政府のあるべき姿を描くために欧米各国の状況を知る

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 IT革命は,怒濤のようにわれわれの生活を変えていく。批判されている日本政府も,IT戦略会議が報告を出し,ようやく2001年までに全国で,インターネットを誰でも利用できる環境を作ることを明言した。もっとも,そのことは,政府の期待のように,この分野で世界一になれることを保証するものではまったくない。本書が詳述する欧米各国のITの進展ぶりを知ると,2001年は,彼らが日本のはるか先に行くことは間違いがない。グローバル化の世界では,なにより知識産業時代における経済覇権をめぐり新たな国家間競争が展開されるからである。
 本書を読むと,いかにその点において日本の取り組みが遅れてきたかが確認できる。すでに,利便性,迅速性,透明性など電子政府の効用は知られているが,それを成功させるためには,どうすべきかは案外整理されてこなかった。本書は強力なリーダーシップ,官民のパートナーシップ,誰もが利用できるサービスの提供など10の条件をあげており便利だ。
 それを読むと,また暗い気分になる。リーダーシップ1つとっても,IT革命の意義をわかった上でのことか,心許ないからだ。電子政府を広めるには,日本の場合,古物営業法など法律や,印鑑を求める書面主義,対面主義などの障害をどう変えるかが大きな鍵だが,その点についての言及はなぜか少ない。他方,霞ヶ関の電子化について,共通の情報ネット(WAN)を評価するなど,リサーチ自身の甘さにに首を傾げざるを得ないところもある。
(C) ブッククレビュー社 2000

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21世紀の国際システムでは,領土に依存しない知的パワーの強い国がリードする。果たして日本は

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 第一次大戦に始まる20世紀は国家の堅い殻が破られていく時代であった。輸送,軍事,情報の技術が発達し,ヒト,モノ,カネは国境を超えて活動することが当たり前の時代になった。後半の50年間は,自国の運命は自分で決める主権国家の存在が,NGOの活動や,地域的な組織であれ,超国家的機関(EU)の誕生で脅かされるようになった。
 著者はそうした国際システムの変化を前提に,21世紀の国家の姿を予測する。本書の描く21世紀の国際システムの基本的姿は知的パワーを核とするヘッドネーション中心の世界であり,案外楽観的である。国家は変化しつつあり「軍事的な侵略と占領はもはや成果をあげず」,したがって「国々は力に訴えなくても国際的な経済関係を結ぶことができるようになった」とする。土地はもはや最も重要な生産要素ではなくなり,代わって資本,物資,労働の国際的なフローが重要になったからである。
 こうした社会では,現在の主要国家は著者によれば,ますますバーチャル国家の道を歩み,製造拠点は海外に移り,国内には中枢部分が残るだけになるだろうとみる。既に,こうした香港,シンガポールのような究極のバーチャル国家,米国,ドイツ,フランスなど生産拠点を国内に残しつつもサービス産業に特化するバーチャル国家,原材料や農産物の生産から軸足を工業製品の生産に移す中国,ブラジルなど発展途上国に区分される。
 興味深いのは,この3区分の代表的国家のなかに,日本が入っていないことである。著者の日本評は当然のことながら厳しい。日本のフローは外に向かうものであり,内に流れるものではなかったために,国際経済社会の一員になりきれていないとし,旧ソ連と同様に孤立しているとまでいう。創造性や教育制度,財,サービスの分野での競争が,バーチャル国家時代の競争の中身であるとすれば,日本は相当の覚悟で構造改革に取り組まねばならないだろう。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本組織の興亡 日本陸軍の教訓

2000/10/31 21:15

日経ビジネス2000/9/25

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 著名な経済評論家と、科学者の視点から日本軍を分析してきた研究者による日本陸軍の解剖である。対談は、1人の著者の書き下ろしとは異なり、ゴールに向かって議論が展開しないということがままある。論旨がつかみにくいのである。しかし、2人の会話のやり取りがうまくいくと、読者を飽きさせない知的論争となる。本書はそうした好例と言えよう。日本軍について、それほどの知識がない人にとっては、手に取る価値のある本だ。第1部陸軍の時代は満州事変から太平洋戦争まで6章を使って歴史を振り返り、第2部組織の本質は、決戦思想の組織と結果や、兵器の評価法など4章を割いている。
 問題意識は鮮明で、これまで海軍に比べて批判的に捉えられてきた陸軍の見直し論である。日下氏の思い入れは「日本陸軍はすごい。集団降伏や集団脱走は一件もなく、兵は戦死と餓死を目前にしても命令に背かなかった」という言葉に明らかだ。他方、三野氏は、日下氏より陸軍に批判的である。しかし両者の議論は、次第に陸軍の無謀な戦争を遂行した理由の解明に進む。もっとも感情的なあら探しの議論でなく、数字に基づき分析しているのが特徴だ。確かに陸軍が太平洋戦争末期に、350万人もの兵員(国鉄職員が最大時で35万人)を抱えていた巨大組織であり、失敗の原因が急膨張したゆえの歪みであることは案外忘れられている。
 驚いたことに、350万兵力のうち、最大時で百数十万の兵隊をアリューシャン列島から、インドまでに送ったという。面積で言えば、世界の20分の1である。この数字だけで、陸軍の無謀さが分かるとし、三野氏は、中国との戦争を終えてから、石油のあるインドネシアなどにのみ、進出すべきであったと述べる。結果的に、そうした決定は行えなかった。ここから、大きな難問が片付かないまま新しい分野に踏み出すのは、より大きな問題を抱え込み、失敗に至る可能性が高いこと、小さな成功を過大に評価し、自己の実力以上に手を広げるのは危険であるとの、現在の企業経営にも通ずる教訓を導く。
 海軍と陸軍の組織間対立から不可能であったと断じつつも、三野氏は、航空機の標準化を英国軍のように両軍が進めれば、日本ははるかに生産効率を高めることができ、大戦争に挑むことができたとする。もっとも、本書が戦争賛美でないことは言うまでもない。
 ただ、日下氏は義和団の乱の時など、陸軍は世界で一番紳士的な軍隊だと評価されたと言うが、なぜそうではなくなったのかという点については、もう少し深い議論が欲しかった。
Copyright (c)1998-2000 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.

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紙の本中国は脅威か 幻想の日中友好

2000/10/26 00:23

日経ビジネス2000/7/17

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 日本ではなかなかお目にかかれない、優れた現代中国に関する問題提起の書だ。一言でいえば、豊富な証拠に基づく中国批判であり、中国は目先の利益を優先させる一方、長期的には覇権を求める国家だと見る。
 中国に関する情報は日本ではまだまだ一面的だ。江沢民はじめ指導者の権力闘争や、政府発表の政策は報じられるが、中国の人々の生活の実態や、経済政策の失敗の影響などは、十分には伝わってこない。本書でも指摘されているとおり、反中国的(一例が1つの中国を否定したり、人権問題に関する政府批判)な報道が事実上認められていないからだ。NHKが日中ビジネスに関するある問題点を報じたら、事実上中国支局長は、国外追放に遭ったという本書の伝える話は、1996年という最近の出来事だ。他方、著者らのスタンスとは違うが、私は個人的には、日本では感情的な中国批判が横行しすぎていると思っている。
 例えば、南京大虐殺の犠牲者の数を巡る不毛な議論が、中国の人々の神経を逆なでする。いい加減に、冷めた目で中国を、また日中関係を考えるべき時が来ている。そうした人々にとっては、格好の書である。
 ここまで中国に自由自在に振る舞わせているのは、政治家を含めて日本の責任が大きいというのが著者らのもう1つのメッセージである。政府の官僚が「ようやく中国はガイドラインを認めてくれた」と語ったり、民主党の訪中団が人権問題に言及しなかったとのエピソードがその一例だ。古森氏が中国要人に、日本憲法を変えるなと言うのは中国が最も嫌う内政干渉ではないかと問うたところ、要人は憤慨したものの、あとで、そういうことをまともに言う日本人が少ないのでとても参考になったと述べたという。
 もっとも、知識の乏しい私でもやや「本当かな」という指摘もあった。例えば、実は米国企業も中国市場に冷めているという点である。確かに、複雑な商慣行や、法律上の変更に辟易してはいるものの、米国は、中国系米国人を使って、政府中枢に働きかけることができ、日本企業より有利だと聞いた。政府開発援助(ODA)削減議論も説得力があるが、具体的な代案に乏しい点が気にかかる。
 共著ではあるが、章を分けての分担執筆ではなく、大きなテーマ(章)を設け、それに沿って、古森氏が語り、次いで中嶋氏が語るというリレー方式で話が膨らんでいく。結果的にこのスタイルがよかった。一方がエピソードとして挙げた事例を他方が、歴史を踏まえて取り上げることによって、臨場感が生まれている。
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日経ビジネス2000/3/13

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やはり、銀行業に対する外形標準課税の導入を提案した石原慎太郎・東京都知事は政治家であった。法律上は可能であったが、今まで47都道府県のどの知事も実行してはこなかった。税の公平性という専門家の議論は別にして、中央に反旗を翻せば、地方交付税などでしっぺ返しが来るに違いないと考えるのが普通である。石原構想への各知事の反応の曖昧さは、そうしたことが理由であろう。
 関西の各自治体の財政状況を分析した本書を読むと、財政再建を根本的に図るには、石原氏が提起した地方への課税自主権が不可欠なことを教えている。その歳入増加の前提には、各自治体は歳出のカットが求められるが、法人2税の減少に悩む大阪府は過去3カ年、行政サービスの低下を伴う毎年一律10%削減を実現してきた。
 しかし、問題は一律カットでは、構造改革は実現できないことだ。不要な大型プロジェクトは大きくカットし、府民の福利厚生にかかわる費目は増やすという決断がなければ、財政再建によって、再び無駄な投資や支出が行われる可能性がある。大阪府泉佐野市の下水道普及率は13%にとどまる(1997年度)という。
 財政再建の1つの手法としてのアウトソーシングやプライベート・ファイナンス・イニシアティブ(PFI)による民間活力の利用は、方向としては正しいことが、本書の事例でも明らかとなっている。
 粗大ゴミの事前申告による収集に踏み切った大阪市が、受付係を民間委託したら、ゴミが約7割減少、人件費も1割は節約できたという。堺市でも、50歳以上になると年収1000万円を超える調理職員の給与が、給食経費の6割以上を占める状況を迎え、ついに民間委託に徐々に切り替えつつある。
 もっとも、この例を含め、民間委託は本格化しているとはとても言えない。また本書のいくつかの事例からは、行政側の民間への拭い難き不信のようなものも感じられた。
 地方自治体の財政赤字は、これまでも議論されてきたが、今回は、東京や大阪という大都市に波及したこと、不良債権を抱える金融機関が地方自治体に貸し出しを控えるようになったという点で異なる。もちろん、地方分権推進法が成立し、中央と地方の関係が変化しつつあることも違いである。
 しかし、財政再建の処方箋は、既にあらかた書かれている。その意味では、石原都知事のように、中央政府を「怒らせて」までも、それらを実行する気概があるかどうかがカギであろう。
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日経ビジネス2000/1/3

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日本でも、政策形成過程の改革についての関心が、従来になく高まっている。2001年の中央省庁再編や、副大臣を前提とした総括政務次官の任命など、日本の政策形成過程の制度的変化のためだ。
 そうしたタイミングで、記者としてワシントンに駐在したときのエピソードを織り込みながら、米国の政策形成過程について手際良く整理した本が登場した。
 著者は、米国の政策決定過程上の特徴の1つとして、官僚機構の幹部職員に民間人を任命する政治的任命を挙げ、米国の政策形成の活力の源泉だとする。民間の頭脳や、識見を活用できる。政策の変化が容易になる。政策決定のスピードが増す。政策決定の透明度が増すなど、利点はいくつもあるとする。私も同感だ。
 もちろん政治的任命による職員は、在任期間にできる限り得点を上げようとするから、政策自身が打ち上げ花火に陥ったり、政策形成上の持続性が失われたりというデメリットはある。しかし、米国の政策にメリハリがあり、政府のメッセージが明確に伝わるのはこの制度と無関係ではない。
 翻って日本はどうか。終身雇用を前提にした、官僚機構が、実質的な政策過程を支配し、本来ならば活躍の場を与えられるべき、発想が豊かな民間の人材は活用されていないと述べる。
 確かに、政府が官から民へと強調しているにもかかわらず、実態は逆だ。特殊法人改革の一環として、国際協力銀行など、いくつかの政府系金融機関が10月に新たに発足したが、総裁や副総裁は、圧倒的に官僚、しかも大蔵OBだった。政府は、またとない機会を逸した。
 著者は、冒頭に挙げた、この数年間の日本の改革には批判的である。
 小渕恵三首相は、明治以来の行政システムを抜本的に改める大改革と述べたが、「なぜ、役所の数や配置を変え、政務次官という『盲腸』をなくしたくらいで、『大改革』なのだろうか」「こんなことと維新を比べられては、明治の元勲たちはさぞ迷惑なことだろう」と手厳しい。
 随所に感じられる著者の日本の改革の遅れに対する焦燥感は、私も共有するが、副大臣や中央省庁の再編は、やはり大改革なのだろうと思う。
 もちろん、中央省庁の再編は不完全であり、理想からは程遠い。しかし、変えられぬものと思われていた官僚機構を、2年余りで変更にこぎ着けたのである。政治が官を動かした点で評価したい。このことは、真の改革の実現者は、実は政治家だということを改めて教えている点で重要である。
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日経ビジネス1999/9/13

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 冷戦が終わって10年たったが、世界の安全はかえって危うくなった。旧ユーゴのコソボ紛争が記憶に新しいが、1991年には湾岸戦争があり、核開発競争も堰を切るようにして始まった。その背後で、冷戦の「敗者」である旧ソ連の技術者が協力しているというのだから皮肉な話だ。冷戦期は最近よく言われているように「冷たい平和の時代」だったのかもしれない。
 読者の中には、世界を駆け回って仕事をしている人も多いだろう。そうした方々にお聞きしたい。諸外国の人々と、日本人の安全保障観がいかに異なるか感じたことはないだろうか。日本人は、陸続きに国境を持たないせいか、平和と安全は祈れば訪れると考えている雰囲気がいまだにある。
 諸外国では国際紛争の背景や兵器の近代化が常識の1つであり、本書のようなテキストが数多く出版されている。ようやく日本でも良書が手に入ることになった。著者は湾岸戦争の頃から特に注目されるようになった専門家だが、分析が緻密であるうえに偏りがなく、安心して読める。
 本書は、主としてビジネスマンや学生の読者を念頭に置いており、丁寧に構成されている。地図や、図表が豊富で、その点も薦められる。冷戦後の安全保障環境が、いかに予測できない時代に入ったかをまず紹介し、次いで冷戦期とそれ以降の安全保障体制の違いについて分析する。
 たとえば、冷戦後のアジアにおける多国間協力といえば、経済ではアジア太平洋経済協力会議(APEC)を思い出すが、安全保障ではASEAN地域フォーラム(ARF)がある。アジアでは各国の利害や歴史的経緯などから北大西洋条約機構(NATO)のようにはいかないが、多国間で問題を解決しようという姿勢はみられ、冷戦期と違うポジティブな現象だ。
 しかし、本書の第三章「新しい時代の新しい脅威」を読むと愕然とする。テポドン発射でなじみができたが、弾道ミサイルの拡散と、それに搭載可能な核兵器や生物・化学兵器の実態はすごい。確かに、どんなに高性能の大量破壊兵器も、運搬手段がなければ脅威ではなく、その意味でテポドン発射は怖い。運搬手段を開発した今、いつでも大量破壊兵器の搭載が可能になったからだ。
 それでは日本は何ができるのか。日米同盟を機軸としつつ、集団的自衛権を回避する現在の政策を批判する筆者に私も同感だ。周辺事態が発生したときの、米国に対する日本の協力については法律ができたが、有事法制など残された課題は多い。今からでも遅くはない。本書を読んで、最低限この分野に関する知識を身につけよう。
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日経ビジネス1999/7/19

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 最近のTOEFL、つまり米国に留学する際の英語力試験のスコアによれば、日本人の英語力はアジアで最も低いらしい。ということは、全世界でもかなり低いところに位置する。そのことを懸念する人々からは、英語を公用語にせよという提案まで出てきている。
 他方、日本人の英語学校好き、英会話レッスン好きも半端ではない。読者も例外ではないだろう。それもこれも、学校で習った英語がちっとも役に立たなかったことの裏返しというのはもはや常識である。もちろん、学校の先生の責任だけではないが。
 自動翻訳機械ができるのも時間の問題だろうが、それでも、日本人の英語力が低くてよいということにはならない。本書で取り上げられたいくつものヒントから、改めて英語をどう勉強すべきか考えてみたい。
 英会話上達法などの本はどの書店でも置いてあるが、残念ながら、知的好奇心を刺激されながら読めるものは少ない。本書はその点例外的な好書だ。
 第1に本書は現役の外交官、それも首脳会談の通訳まで務めた著者が、英語練達の過程で書き留めたノートを素材にしている点がユニークだ。よくも、普段の会話の中で、相手の表現方法や著者の英語に対する相手の反応を観察したものだ。その点にも感心した。つまりフィールドワーク的な作業を土台にした英会話の本なのである。
 第2に、読者の中には読んでいる人もいるであろう、英国のエコノミストや英字紙ヘラルド・トリビューンなど、例文が「大人」なところがよい。
 私も英語は好きだが、なかなか上手にはならず、いらいらすることが多い。本書からはかなり多くのヒントを得た。特に、前半で強調しているSimple English、つまり簡単な英語を心掛けよう、という主張については、なるほどと思いながら、読み進んだ。これからはできるだけ、気を付けたい。婉曲表現など、回りくどさがある日本語を使っている我々には、ここら辺りが、最も高いハードルなのかもしれない。
 1章分を割いている、英語によるスピーチでのユーモアの大切さは、まったく同感である。私も10年以上前にアメリカの地方をチームを組んで講演して歩いたときに、そのことを痛感した。そのなかに、とてもアメリカに慣れている人が1人いて、ずいぶんと笑いを取っていたことを思い出す。
 もっとも、いかに笑いを取るかについての懇切丁寧な説明には、「本来、ユーモアはそれほど綿密に計算されたものではない」という反論も可能だろう。ともあれ、英語国民でなくても、英語の自己添削能力は、身につくそうである。大いに勇気が湧いた。
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紙の本日本国憲法を考える

2000/10/26 00:17

日経ビジネス1999/6/28

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 国会に憲法調査会が設置され、これまで手つかずだった憲法論議がようやく公の場で行われることになった。そのタイミングにふさわしい好著が刊行された。内容は刺激的で論議を活性化させるに違いない。
 第1章の「日本国憲法四つの神話」というタイトルからすでに挑戦的だ。護憲派の人々はがっかりするかもしれない。彼らが強調する世界で唯一の平和主義憲法というのは誤りで、なんと124カ国もの憲法が平和主義条項をもっている。
 意外だったのは、日本国憲法は決して新しくはなく、15番目に古いのだそうだ。確かに、1950年代以降、第三世界の大半の国々が独立を果たした。つまり100を超える国々が、つい最近、憲法をもったことになる。しかし、45年に発足した国際連合の原加盟国は50カ国程度だったはずだ。だとすれば、それらの国々は、必要に応じて憲法を改正してきたということになろう。
 改正論議は、発布当時から行われてきたが、ついぞ、公にその是非が議論されることはなかった。党の方針として憲法改正を謳ってきた自民党でさえ、積極的には活動しなかった。それどころか、94年、自社さ政権の村山内閣が発足する際、自民党は社会党に対して憲法は守ると約束した経緯がある。自民党も本気ではなかったのだ。
 著者の指摘する現行憲法の欠陥を知れば早期の改正が必要だと思うに違いない。第9条に加えて、国会や、司法の規定にも著者は疑問を呈している。私は集団的自衛権だけでも早期に何とかしてもらいたいと思う。国会での周辺事態法の論議にあきれ果ててしまったからだ。
 どのような後方支援が集団的自衛権に抵触しないか、重箱の隅をつつくような話ばかりで、有事の際に日本の安全をどう守るかという肝心な論議がなかった。政府が従来、集団的自衛権を有するが、憲法の制約により行使できないという、不思議な解釈をしてきたためである。
 それほどの曖昧さを含んでいるのであれば、「集団的自衛権を行使できる」と、だれもがわかる書き方に変えるべきだろう。それをせず解釈改憲を続けることは、護憲派の疑心暗鬼をつのらせるだけだ。国のあり方を議論するためにも、安全保障については国論が統一されたほうがよい。
 本書で唯一私の考え方と異なるのは、前文の評価である。国際協力について講演するときに、私は前文の後半の「自国のみのことに専念するのではなく…」のところを、よく紹介する。聴衆の多くは、この部分を知らない。日本製でなくとも、良いものは良いのである。
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日経ビジネス1999/3/22

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 四谷ラウンドという不思議な名前の出版社による前2作、『政治家の通信簿』(1996年)、『国会議員の公約と行動』(97年)に続く第3作。
 在米中に米国議会における日米関係を研究していた私は、各議員の職場での投票行動など詳細なデータをもとにした議会専門の週刊誌を定期購読しており、日本の国会についても同じような刊行物があればよいのにと思っていた。
 新著は日本の衆議院議員の、現在の経済危機に対する考え方に関する分析である。回答率は51%で、分析データは議員に対するアンケート調査とインタビューによる。従来、政党や政党幹部は別にして、個々の議員がどのように考えているかを知る機会がなかった。その意味で画期的な試みだ。
 日本のように多数会派が政権を担当する議院内閣制では、議員への党議拘束は強い。各自の利害で投票すれば議員内閣制の意味が失われるからだ。
 つまり経済政策に関して、個々の議員の見解を聞いても意味がないという指摘がある。しかし政党の離合集散が激しい現在のような状況では、各議員の個々のスタンスを見ることで将来の日本を見極めることができる。
 アンケート結果を見れば、あの一枚岩であるはずの共産党ですら、日本経済の現状を、「危機的状況と見ている」議員が3人、「政策不況で実力は保持している」議員が7人と割れている。この一例のように、各議員の認識が同一政党でも異なる点は興味深い。
 短期的経済対策について6つのメニューを提示し、2つを選んでもらった結果では、総合第1位が所得・法人減税、第2、3位が僅差で、大都市への公共投資と消費税率引き下げであった。しかし、党としては反対していたはずの民主党議員でさえ、消費税率引き下げを相当数支持しているなど対応が分かれていて興味深い。
 今後の政策課題で重要なのは地方と中央の関係だが、自民党を含めて圧倒的に、地方の自主財源確立で一致している。このように総論では一致していても、各論でばらばらだからこそ、地方分権が進まないのだ。
 新産業の創造についても、多くの議員が政治・官僚主導を否定し、規制緩和・市場優先と回答しているにもかかわらず、実際には政治主導で、規制緩和が進んできたとは言えない。
 規制緩和に関心がある私としては、せっかくの面接調査なのだから、総論は賛成していても、各論のどこで意見が異なるのかを、インタビューではなくてアンケートからわかるように、社会調査法のような、より厳密な手法を用いて明らかにしてほしかった。もとより、各議員へのインタビューが興味深い内容であることは間違いない。
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二十世紀をどう見るか

2000/10/26 00:15

日経ビジネス1999/1/18

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 20世紀とはどんな時代だったのか。だれでも関心はあるが、明確な答えを見いだすことはできない。著者は、大胆に、しかも説得力をもってその作業を行っている。
 「20世紀が幕を開けたとき、世界にはまだいくつかの有力な帝国が存在し、地球上の大きな部分を支配していた」との叙述で始まる本書は、結論として、「さまざまの問題や地域に関する考察を重ねた後、20世紀は『帝国』復活の兆候をもって幕を閉じようとしている」と述べる。
 多くの読者は、「おや」と思うに違いない。冷戦が終結して10年、国際社会は、旧ユーゴの紛争やイラクなど不安定要因は抱えながらも秩序の方向に向かいつつあるのではなかったか。通貨統合まで進んだ欧州連合(EU)、アジアでは経済のアジア太平洋経済協力会議(APEC)などの地域フォーラムの形成は、脱国家へ向けた協力の証であり、20世紀の初頭には考えられなかった動きではなかったのか。
 しかし、こうした通説とも言える見方は、著者の議論に耳を傾けていくうちに、一面的であるとの疑いを持たざるを得なくなった。たとえば、冷戦後の欧州ではEUの統合という、脱主権国家の動きの裏にさえ、ドイツ帝国復権への戦略が見え隠れするというのである。統一ドイツが直ちに、チェコ、ポーランドと結んだ善隣友好条約の解釈など、現実主義者ならではの鋭い考察と教えられた。
 しからばアジアのリーダーはどこか。それはドイツと比較される日本ではなくて中国だと筆者は述べる。日本には「確定した領土の上で官僚制度を通じて緻密な統治を行うノウ・ハウはあっても、広漠たる他民族的な領域の秩序を大まかに取り仕切ってゆくためのノウ・ハウはない」、つまりグローバル化が進む国際社会では、日本の国の成り立ちそのものが、不適合を起こすというのである。
 では、日本はどうすべきなのか。残念なことに、著者は、帰属意識を複数の組織に対して持つべきと、個人に関する処方箋は提示しているものの、国のなすべき点については、「広域的な発想」の必要性以外言及がない。
 著者が本書で繰り返し問うているのは、ボーダーレス化が進んだ今日の国際社会で、多くの日本人が気づいていないジレンマだ。つまり、自国の経済の発展を目指せばボーダーレス化を避けることができず、他方、それに身を任せれば、徴税権、犯罪の防止など主権国家の基盤を切り崩されてしまう。ジレンマをジレンマとして自覚すれば、それを克服する意欲も生まれてくるはずだとの指摘は規制緩和論者の評者にも耳が痛かった。
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