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先月(2017年8月)

吉村 徹さんのレビュー一覧

投稿者:吉村 徹

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上手にまとめられた分子生物学のエッセンス

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 生物科学の進展は,分野を超えた科学技術のさまざまな領域に多大な影響を与えるようになった。今日,少なくとも理科系の学生にとって,生命の基本的なしくみや,生物科学の現況を知ることは必要不可欠であるように思う。しかし,爆発的に進展する分子生物学や細胞生物学の分野で,定評ある教科書はあまりに大部であり,直接,専門としない学生に適した教科書を見いだすことは難しかった。今回紹介する「ポイントがわかる分子生物学」は,120ページほどの冊子に,分子生物学の基礎から現状までをコンパクトに紹介しており,このような立場のものにとって,優れた学習書である。
 本書は,1)遺伝子の世界,2)細胞の世界,3)生命科学と技術の3部で構成している。このうち,2の「細胞の世界」を例にとれば,細胞複製,情報伝達,発生と分化,脳と神経,がん,免疫応答の項目を設定し,細胞複製のところでは,細胞周期,細菌の細胞複製,真核細胞のDNA複製という3つのテーマを各2ページで解説している。各テーマの解説はそれぞれの分野の専門家によってなされており,その内容の豊富さにもかかわらずおおむね平易で理解しやすく,通読するのにそれほど時間はかからない。同じ項目のなかでもテーマによって筆者が異なる場合もあるが,不統一感を覚えることは少ない。
 本書のカバーに「一気に通読して,何か利口になったと思っていただけたら著者たちの目標は達成される」とあるが,この目標は達せられたように思う。なお,第1部の「遺伝子の世界」では,最初に「分子生物学の夜明け」というテーマがあり,これが第1部全体のよい導入部となっている。第2,3部にもこのような導入部があれば,初学者が自習する場合により親切であったように思う。ともあれ,本書は分子生物学の基本を学ぶための優れた教科書であり,農学系,工学系大学院入試のためのよい参考書にもなろう。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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