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山下洋輔(ジャズピアニスト)さんのレビュー一覧

投稿者:山下洋輔(ジャズピアニスト)

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本西江雅之自選紀行集

2002/01/11 13:48

とぴきり面白い特別講義

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 西江雅之さんのことを人に話す時に必ず言うエピソードがある。それは、一緒にアート・プレイキーの「アフリカン・ドラム」というレコードを聴いていた時に、すぐにアフリカの地図を描き、「この音はここのもの、この音はここのもの、ということは、この音楽をやっている人はアフリカ人ではない」と実証してしまったことだ。これ一発で他のジャズマンともどもぼくは西江さんのファンになってしまった。この方のお言葉には、常にこのような仰天的発見があって、お会いするのがいつも楽しみなのだ。
 直接話を聞く以外に西江さんの言葉を受け取れる機会はあまりないと思っていたが、やがてエッセイの数々が届けられるようになった。これは我々にとって大きな贈りものだった。

 この選集は特に「旅」にまつわるものを集めたものだが、当然そこには、あまたの旅物とは全く異なる西江世界が展開する。旅は単なる身体の移動ではなく、異郷とは私の皮膚の外すべてだ、と言うこの人にしか体験出来ない時間と空間がある。思わず「西江さんじゃなきゃあ無理だよなあ」とつぶやく光景が次々に展開するのだ。夜の砂漠で無音の音を聴くかと思えば、アフリカの監獄に行って知りあった女の子を助けたりする。それも使命感などではなく、ついそうなるという西江流が気持ちいい。それは「何のためにと問われても困る。結局そこに行って“なるほど”とひと言だけ口にしたいためとしか言うほかはない」(149頁)というスタンスの故なのだろう。
 我々は西江さんに連れられて、あらゆるアフリカの、カリブの、コモロの、南米の、兵庫の河原の、与那国島の、様相にさまよいこむ。そこからは常識を覆す発見が報告される。ラフカディオ・ハーンとゴーギャンがハイチで会っていたかもしれないなどの圧倒的資料研究までが含まれる。ご自分の専門分野であるクレオール語についての言及なども分かりやすく、とぴきり面白い特別講義を受けたような得をした気分になる。
 ついこの間もあるラジオ番組でお会いしたが、すぐに「今はマサイ族が携帯電話を使って草原で牛を追っている」「人が外に出ただけで、銀行やコンビニの入り口で写真を何枚も自動的に撮られる。そういう時代にここ数年でなった」「カナダにはケベック州とは別の本当の“フランス”の国がある」などなどの話題が出て、それらが論ぜられた。また生い立ちから今日までを伺う話は抱腹絶倒で、まさに異人としか言い様がない。世界中で話せない言葉は無く、たとえ話せなくても三十分でぺラぺラになるという噂も本当らしい。
 人には絶対真似の出来ない体験が無尽蔵にあり、それが明晰な頭脳で分析され、自らの言葉になって我々に伝えられる。西江さんにしかなれない「旅人」の姿がそこにある。(JTBより提供)

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