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大石 彩さんのレビュー一覧

投稿者:大石 彩

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紙の本美天 天野喜孝画集

2000/12/15 15:41

天野喜孝の作る世界は鋭く漠然としている。

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天野喜孝画集、といえばだれもがぼんやりとその作風を頭の中に描くことができるのではないか。それは、ルノアールやスーラがどんな画風であるかを容易にイメージできることと同様にである。ただ、天野喜孝の作る世界は鋭く漠然としている。作者の持つイメージは様々で、赤塚不二夫といえば即座にバカボンが目の前に現れる、と同時に強烈なキャラクターとその世界観が浮んでくる。この「美天」の中ではそれとは対照的に、キャラクターと強烈な世界観が表現されている。正確には強烈な世界観がキャラクターなのである。子供の頃、父親のSFマガジンの扉絵を見てあまりの恐さにその雑誌を自分で隠してしまったことがある。しかし、どうしてもその他の扉絵も見たいという好奇心がページを開き、想像力で膨らんだ扉絵の世界がまたどこかへと隠すのであった。その絵は今見てみるとそれ程おどろおどろしい怪物などは描かれていない。ただ、当時の私の想像力を非常に掻き立てるものであったことは間違いないであろう。「美天」を最初に見てちょうどそのSFマガジンを見たときのような感覚があった。想像力豊かな子供の頃に見ていたら、見ては隠すの反復動作は最後まで繰り返されていたはずだ。今その頃にくらべ私は感性や想像力を知識で補ってしまっている。悪い事ではないかもしれないが、決してよい事でもないはずだ。絵画を見る際にもこれはいいがそこがだめだと偏屈になっている。「美天」を現代美術として見てああだこうだとも言いかねない。当然、良し悪しは自分できめるものであるが、なんとなく感性や想像力に乏しい判断ではある。昔のようにその世界にのめり込み過ぎてしまうのもなんではあるが、純粋にイメージを膨らませてくれるものとして「美天」は数少ない良い作品である。

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