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    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

渥美 裕子さんのレビュー一覧

投稿者:渥美 裕子

1 件中 1 件~ 1 件を表示

不思議の国ニッポンを戦後システムの矛盾から読み解く。分裂状態に陥った「イエ社会」への鋭い舌鋒

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 近頃,外国人による「ニッポンのここがヘン」といった本がはやりだ。それらは日本人がごく当たり前と考えていることが実は非常に特殊であることを教えてくれ,しばしばわれわれを驚かす。そして,多くの場合,笑わせてくれる。だが,この本はそうした軽妙なタッチの日本人論の類ではまったくない。
 ここに描かれているのは,「途方もなく腐敗しており,市場支配に取り憑かれており,個人を押し殺しており,政治が正常に機能せず,リーダーは不在で,決断力はまったくない」日本人だ。この本では,それがいったいなぜなのかを,多岐にわたる取材や法律,文献の再検討などによって浮彫りにする。とりわけ特徴的なのは,日本の「政治」と「歴史」の側面をとくに掘り下げている点だろう。
 筆者はニューヨーク・タイムズ紙,インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙などの記者・編集者を歴任(20年のキャリアのうち14年間アジアに駐在)してきた米国人ジャーナリスト。日本人論をつづる筆者にままある「親日家」ではない。それだけに,「日本」を文字どおりの「対象」として距離を置いて見つめ,同時に,日本と深くかかわっている自分たち「米国」をも距離を置いて見つめる。
 日本人は古くから伝統的に「イエ社会」のなかに生きてきた。国家というイエのなかで仮面を被り,個性を主張せず,差別を隠蔽して,「みな同じ」というタテマエのなかに生きてきた。それは現在もたいして変わらない。人々はかつてのサムライから企業戦士に装いを変えただけで,相も変わらず国家というイエを集団でせっせと支え続けている。国際社会のなかでも,教育現場でも,それは同じだ。日本人はいまも伝統と革新の折り合いをどうつけていいかわからない分裂状態にある。
 「日本が変われたかもしれない」もっとも大きなチャンス,そして結局は取り逃がしてしまった大きな失敗として,筆者は1945年の「敗戦」時の日米関係について,とくに熱を入れて語る。米国の占領政策における「逆コース」,それによる政治システムの麻痺,外から押しつけられた憲法の悪弊,そして,天皇の戦争責任と天皇制の問題——。
 米国が戦後日本に「プレゼント」したつもりでいる民主主義は,ライシャワーの言うようなすばらしいものではなかったと筆者は強調する。その最大の過ちは「米国が脇へよけ,日本を静かに眺めることをしなかったこと」。米国は日本にかまいすぎ,日本の政治家は米国の顔色をうかがいすぎ,その結果,奇妙奇天烈な民主主義もどきができあがってしまった。その側面は,確かにあるだろう。では,筆者の言うように米国が脇へ退いていたら,日本は自分の足で立てていたろうか。いろいろ考えさせられる本だ。
(C) ブッククレビュー社 2000

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