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塩谷喜雄さんのレビュー一覧

投稿者:塩谷喜雄

21世紀「意志の時代」の工学のあり方を探る

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 サブタイトルに「東京大学工学部は考える」とある。もちろん普通に素直に読めば、東大工学部という日本における知の拠点が、大転換期にさしかかった「工学」という学問を、きまじめに問い直して、次世代の工学の方向を模索しているきわめてまっとうな書である。
 ただし、少々斜めからこの本を眺めると、「東大」と「技術」という、この半世紀の間に幻想や神話も含めて日本社会の中枢を占めてきた一種の「王朝」が、時代の激しい変化の中で苦悶し、その存在理由も含めて変身をとげようとしている姿が浮かび上がってくる。
 ちょっぴり浮世離れしたアカデミズムと知的な好奇心を背景に、人類の知的資産を継承・発展させる場としての大学。そこに、実利の術である工学のコースを置いた東京帝国大学は、当時としては世界でも稀有な例だった。帝大の工学部が研究開発と人材供給の両面で、きわめて日本的な和魂洋才の技術革新をリードしてきたことは間違いない。
 西欧社会では、知的探究のサイエンス(科学)と、産業や市民生活と直結するテクノロジー(技術)は、峻別されていた。しかし、欧米のキャッチアップに懸命な日本は、実学の普及を急いで両者の境界をあいまいにした。
 それは、西洋の科学技術が東洋の島国に洪水のように流入してくるに際して、思想的・哲学的な葛藤や文化的な摩擦を最小限に抑える巧みな方便だったのかもしれない。
 結果として、工学は国家体制や思想などとは別の、時代や政治に左右されない中立的な価値を持つという、奇妙な技術中立説が日本人の心の底に染みついた。帝大の権威と、便利で役にたつものを生むという技術中立説は、戦後の復興や高度成長を支えてきたといっていい。
 今、工学が生みだしてきた価値、利便性や効率性や高速性も、実は一種の社会思想であることを、世間も工学者自身も身にしみて感じている。核兵器や環境ホルモンを語らなくとも、技術がその過剰な攻撃性を捨て、地球環境との共生、あるいは個と全体との調和、循環の思想を求められていることは自明だ。
 さらに、個性や精神など、これまで工学が敬して遠ざけてきた分野に、いや応なしに巻き込まれてゆくことも予想される。
 本書は工学部内の議論の集大成で、先鋭な問題意識が随所にみられる。ただ、21世紀の工学の行方を示唆するヒントらしきものは、外部からの批判も含めた巻末の座談会にあるようだ。
(C) 日本経済研究センター

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