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篠原 興さんのレビュー一覧

投稿者:篠原 興

3 件中 1 件~ 3 件を表示

金融敗戦

2000/07/10 09:16

現在の金融危機の原因を,アメリカを先行事例として解説し,志の高い金融界・経済体の再建を説く

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書はいまや伝説的な存在となった長銀調査部の花形エコノミストで数々の著作で知られている竹内宏氏が,ここ20年程の金融界を題材にして,中に住み暮らしたが故に言える事柄をテーマ別に書いた論文集である。当然の事ながら全体の構成には十分に意を用いてあり極めて緊迫度の高い読物となっている。我が国の金融界が持つに至った困難を,米国のそれを先行事例としつつ,内側に居た人として理解と同情とを交じえて描いている。その語りには長期にわたって起きた一連の出来事に全体的なパースペクティブからの評価を加えつつ論理的にその構造を解き明かす風であり,筆者特有の平明な論法の中に大変多くの含意を有するものとなっている。当然の事ながら長銀の事例が典型的失敗例として取り上げられており,新生銀行としての再出発を目の当りにした我々には大変に興味深い下りがいくつも出て来る。アメリカを先行事例として論を進めてはいるが,凡百のジャーナリストやエコノミストの論と違い,アメリカ原理主義を持ち上げている訳ではない。むしろ市場至上主義のイデオロギーとしての例えばグローバリズムというキーワードに表されているようなものへの疑念が全体を通してのゲネラル・バスとして聴こえて来る。IMFのアジア危機の対応に当っての大チョンボは正面からそう書いてあるし,アジアはアジア的であったから危機を迎えたという論の土台となったキーワードである“クローニー”に関しても極めて知的刺激を受ける一章が用意されている。結論的に今や総体自信喪失・茫然自失の態で目先の細々とした事象に追われているが如きである銀行マン達に,先輩からの言葉という形で語りかけがなされ志の高い仕事への取組みが示唆されている。私はむしろ小器用に立回るジャーナリストやエコノミスト達にも是非読んで欲しいと思う。過去の事を忘れるのが彼等の特権かも知れないが,忘れてならない事もあるのだということを想い出してほしい。
(C) ブックレビュー社 2000

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近未来の中国を立体的に鳥瞰(ふかん)させてくれる格好の羅針盤

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 少し前までは,日本とアジア諸国とを結びつける何か新しいアイデアを言いだした人に,それが経済関連であれ文化交流であれ,もっともらしく鼻を折る言い方として“君ね,そんな事を言ってるけどアメリカがどう考えると思っているんだい”というのがあった。別に特にアメリカにご同意をもらわなくとも済みそうな問題に対しても使われたものだ。最近はさすがにアメリカ自体の南北アメリカ大陸回帰の方向が明確になったせいかこの言い方ははやらなくなっている。面白いことはこの時アメリカ,アメリカと連呼した人々は昨今,“君中国がなんと言うと思うのかい”と言いだしていることである。言われた人はここでなんとなく鼻白む。97年秋のアジア通貨基金(AMF)構想に米国が反対し中国が積極的に賛成しなかったために頓挫(とんざ)した辺りで米中の入れ換えがあり,98年冬のダボスで朱首相が“我れアジア危機の防波堤たらんとす”と宣言して大向うの喝采(かっさい)を取ってから半可通国際人が中国を持ち出す頻度が増えたのである。
 21世紀がアジアの世紀であろうということは,98年アジアを襲った(韓国風に言えば)IMF危機の有無にかかわらず未だ正しい問題把握の方向であることは言をまたない。その中で12億の人口を抱える中国が重要な構成員の一員であることも同様に言をまたない。しかし,さてその中国の現状と近未来に冷静な判断をすること自体,甚だ心許ないのが実情だろう。
 本書は日経センターが気鋭のエコノミスト十数人を糾合して組成した「中国研究会」の報告書であり上述の心許なさを埋めてくれる格好の読み物だ。2020年の中国を研究会のテーマとした由であるが,取上げた問題も政治経済社会外交と幅広く設定されており,中国カードを振り回す人にも振り回される人にも中国自体の身の丈をやや客観的に知ることができるように工夫されている。テーマごとに2020年に中国はどうなっているかというシナリオがその実現の蓋然(がいぜん)性の数値とともに3つ示されており,現状認識と近未来の展開がかなり分析的に述べられたうえで先のシナリオの蓋然性の数値を説明している。
 例を第4章「上海は国際金融センターになるか」に取ると,シナリオ1:国際金融センターとなる(30%)2:一進一退(60%)3:経済混乱(10%)と示されたうえで説明が続く。読者は上海が明日にも東京市場を凌駕(りょうが)する国際市場となるといわんがばかりの中国カード振り回し屋たちの言い条に疑念を挟む事になるだろう。
 中国がアジアの最も重要な一員である事は事実であるが,片や12億の民を抱える巨大国の顔と片や一人当たりの所得が日本の数十分の一という顔とを併せ持つ国家。いたずらに情緒的に流れない冷静な理解を持つことが求められている間,本書は誠に時宜を得た,そのための羅針盤としての役柄を提供してくれるものとなっている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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欧州通貨統合を人間ドラマとして識る本。欧州中央銀行の金融政策委員17人全員との単独面談

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 欧州中央銀行(ECB)創設とユーロ誕生を巡るドキュメンタリー・ノンフィクションだが,まるで大河小説のように面白い。欧州の歴史や思想,哲学も随所に織り込まれているので,一種の欧州文明論にもなっている。原著者は米国人ジャーナリストだが,その幅広い教養には頭が下がる。金融関係者に限らず,欧州事情に関心のある一般読者にも広く推奨できる好著と言えよう。この種の本としては訳文もこなれていて読みやすい。
 本書の最大のセールスポイントは人物評論にあり,ECBの金融政策委員17人全員との単独面談で裏付けられている。特にキープレーヤーについては,徹底的な取材に基づいて顔写真からも各人の「人となり」が彷彿するように描写してある。それがECB,引いてはユーロの深い理解に役立つと言う狙いがあるのだろう。いくつかの逸話を紹介してみよう。
 まず,第2章ではドイセンベルグ総裁が相当な野心家であることが明らかにされる。国際通貨基金(IMF)エコノミスト,オランダ中央銀行顧問,経済学教授など学究畑から,39歳の若さで大蔵大臣に飛躍した。この時期に「国際金融界の頂点に立つ」という野心を心に抱き,オランダ中銀総裁を経てついにはECB総裁職を射止めたのである。第3章はブンデスバンクのティートマイヤー総裁についてだ。欧州中央銀行界の重鎮だったが,すでに退職しているので,周りの人が恐れをなすほど厳しい人だったと言うにとどめておく。
 第4章にトリシェ・フランス中銀総裁,第6章でノワイエECB副総裁と,2人のフランス人が離れて登場するが,両人は大蔵省ではいつも上司・部下のペアだった。トリシェがECB総裁選に敗れたため,副総裁職が回ってきたのである。甘いマスクにうかがえるように,ノワイエは「忠実な公僕」として常に幸運な“不戦勝”によって昇進してきた貴公子で,確固たる金融哲学はないようだ。一方,詩人でもあるトリシェはいかつい顔つきからも想像できるように反骨精神が旺盛で,政治家の反対を押し切ってフランスの市場主義経済化を推進してきた。最近はクレディ・リヨネ問題で司法の追及を受けているようだが・・・。
 第5章は再びドイツ人だ。イッシング理事はブンデスバンクでもそうだったが,ECBでも「主任エコノミスト」という重責を担っている。長らく大学教授だったというほかに人柄に関する逸話はあまり書かれていないが,現実的なマネタリストとして金融政策運営のあり方に苦悩している。個人的に興味があるのは,第9章で詳述されているパドア=スキオパECB理事だ。頭脳明晰にして野心家の「マキャベリ」と表される同氏は,イタリア中銀の副総裁まで務めた後,「統合欧州」に新天地を求めた。1997年に全員でユーロに移行できなければ,適格国だけで99年には移行する,というのは彼の発案だったのである。
 このような人物評論を斜め読みするだけでも十分に楽しめる本である。
(C) ブッククレビュー社 2000

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