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  3. 中宮崇さんのレビュー一覧

中宮崇さんのレビュー一覧

投稿者:中宮崇

19 件中 1 件~ 15 件を表示

保護すべき遺物

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 著者のラミスは、自分は「左翼思想の持ち主」ではないと、冒頭で宣言する。
 確かに彼は、左翼思想の持ち主ではありえない。彼の意見に耳を傾けようとしない大衆と日本社会を軽蔑し、自らの考えを「常識」と言ってはばからないこの人物は、思想などというものとは無縁な、ただの誇大妄想な選民思想に凝り固まった詐話師に過ぎない。
 本書はタイトルに反し、経済成長絶対主義に対する批判だけではなく、「軍隊がある限り民主主義国家とは呼べない」などという摩訶不思議な主張に見られるように、人類が連綿と築きあげてきた文明そのものを完全否定する珍論に満ち溢れた書となっている。
 帝国主義・労働搾取(用語だけは左翼である)を罵り、反戦平和、反国家、反原発、反開発を唱える彼の主張は、かつての共産党のパンフレット並に、扇動的なレトリックの割には中身がない。

 著者が目指している社会がどのようなものなのかはわかる。工業は消え去り、テレビCMも無く、人々は農村で牧歌的な暮らしを楽しみ毎日共に歌って踊り、働き者も怠け者も同じだけの生産物を消費し、軍隊も国家も無いユートピア。それがラミスの理想社会である。
 60年代から70年代にかけて学生運動家たちが声高に主張してきた、実に陳腐でカビの生えた、型どおりの理想社会である。
 ラミスの目指す理想社会の形がはっきりしている一方で、そこに至るまでの道程はまったく示されていないか、空理空論で欺いているかのいずれかである。

 例えば彼は「国家によって殺された人の数はこの百年間で二億人にのぼる」という怪しげな研究を引用し、「だから国家は国民を守ってくれない」と主張する。
 一方で彼は、国家が存在したことによってこの百年間にどれだけの人が命を落とさずにすみ、人権を侵害されずに来たかについては口を閉ざす。国家喪失の悲劇は、最近のパレスチナやクルドの例を見れば子供にでもわかることなのであるが。
 本書は一貫して、このような詐欺的な論理で強引な主張を押し通し、厚顔無恥にもそのような出張を「コモンセンス(常識)」とまで主張する。
 彼は自分の「常識」に耳を傾けない大衆を、氷山を目の前にしているのにエンジンを止めようとしないタイタニック号の乗客に例える。

 しかし10年前ならいざ知らず、賢明な大衆はもはや、彼のでっち上げる巨大な氷山に恐れをなし正気を失うことなどありえないのである。
 かつてラミスのような人間の書く無責任な書は、この社会において一定の支持を得ることが可能であった。しかし彼らが昔日の勢いを盛り返すことはもはやありえない。
 20世紀の遺物に過ぎない絶滅途上にあるこのような書を本棚の片隅に収めておくのも一興かも知れない。
(中宮崇/海坊主)

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紙の本軍学考

2000/11/26 22:27

ぶっ飛びの一冊

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 さすがに、雑誌『諸君!』などで日本核武装論を積極的に説いている著者らしい、なかなかにぶっ飛んだ書である。
 しかしこの書がぶっ飛んで見えるのは、読者の大半が日本人だからであるというただ一つの理由による。
 国内の外国軍どころか、まだ攻めて来てもいない外国の軍隊をどう押さえ込み、自国をどう守るべきかということを説いた書籍は、世界のどの国にでもあふれている。そのような書が異常に見える我々自身が、世界的に見れば異常なのだ。
 内容的には、クラウゼヴィッツや孫子などが欧米の軍事戦略に与えた影響の考察や、在アジアの米軍基地の存在意義といった問題について、他ではなかなか見られないユニークな見解が見られ、非常に興味深い。
 しかし一つ難があるとすれば、著者が軍事オタク本を毛嫌いしている割には、十二糎加農だの村田式猟銃だのと、軍事オタク的知識を何気なく自慢しているとしか思えない個所が多すぎるということである。
 それが軍事オタクをも読者として取り込むための戦略として意識的におこなわれているものならば良いのだが……。
 というわけで、軍事戦略全般に興味を持つ方だけではなく、ただの軍事オタクでも十分堪能できる内容に仕上がっているので、ぜひともご一読を。
(中宮崇/海坊主)

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道具としての憲法

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 日本とドイツ。最近、これほど良く比べられる国はあるまい。本書でもドイツ在住の著者が、敗戦からほぼ同時に再出発したこの二国が歩んできた道を比較検討している。

 近年の日独比較論の特徴は戦後補償論に偏り、しかも「過去を清算したドイツ」と「未だに過去を清算していない日本」という、通俗的で誤った文脈で語られることが多いという点である。

 そんな中で本書は、憲法という、国の理念を具現化するもっとも基本的な道具に注目し、湾岸戦争を機に積極的な国際貢献を行うようになったドイツと、金だけ払って「平和平和」と念仏のように唱えるだけに終始した日本とを対比し、広く情報戦略や経済戦略にまで言及し、これからの日本のありようを示そうとしている。

 実のところ、憲法を媒介としたこのような日独比較は別に目新しい試みではなく、一昔前にはそれなりの数の書籍が出回っていたはずなのであるが、最近の戦後補償論に偏ったいささか後ろ向きに過ぎる風潮を反映してか、この種の本は、ここのところめっきり数が減っていた。

 ところどころ記述に事実誤認が散見されるため、いささか注意が必要では有るが、今すぐ日独比較論をかじりたいならば、もっとも手軽な手引書かも知れない。

(中宮崇/海坊主)

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お笑い文化比較論?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ある調査によると韓国人が最も嫌う外国人は、日本人だそうだ。その原因の多くが、子供のころからの「日本人は野蛮人」という教育にあることは間違いなかろう。

 その一方で、韓国のテレビや歌などといった文化の多くが、日本のパクリであることも有名である。

 しかしながら、海外情報、特に日本からの情報の流入を厳しく制限している韓国においては、そのことに気づいている人間はそれほど多くはない。

 日本に研究員として赴任してきた著者は、日本人蔑視で凝り固まっている韓国人が実は、日本文化の恩恵を多く受けているのだという事実に気づき、唖然とする。そしてさらに、韓国人が日本人に見習うべき点を数多く発見する。

 ところが、いったん自国民のあらが見えてきてしまうと、次々といやなところが目に付いてしまうらしい。韓国の過剰な袖の下文化や行き過ぎた個人主義を批判するのはわかるとしても、「単語を分かち書きする韓国と違い、日本語はカンマをつかう。これにより日本人は紙の使用量を25%も節約しているのだ」とまできては、いささか苦笑せざるを得ない。

 韓国人にとっては、自分たちの文化を見直すための書なのであろうが、われわれにとっては、外国人から日本を見るとこういう面白い見方ができるのかということが堪能できる珍書と言える。

(中宮崇/海坊主)

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「そこのあなた!笑っている場合ですか?」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 パソコンやソフトを買って、何か問題が発生したら電話するところ。それがサポートセンター。

 そんなサポートセンターで日々電話を受けている人たちの体験談をまとめたのが本書である。

 しかし、そこに収録されている事例の多くは実にすさまじいものであり「お客様は神様です!」などというのは真っ赤な嘘で、「お客様は悪魔です!」と言い換えたほうが適切に思えてくる。

 そもそも、「お客様」でさえない人間まで怒鳴り込んでくるというのだから、いくら仕事とはいえ、まことに気の毒だ。「おれはみのもんたじゃないぞ!」という叫びには、思わず拍手をしてしまうこと請け合いである。

 本書は間違いなく笑える。理不尽な客達を笑い飛ばすだけでも十分楽しい。

 ただ、本書に登場する非常識な客達は、実はあなた自身かもしれないのだ。心当たりがまったく無いと言い切れますか?

 本書は、笑えてストレス解消ができ、自分自身にいて見直すための鏡ともなり得る、実にお得な書なのである。

(中宮崇/海坊主)

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紙の本教養論ノート

2000/12/07 14:28

「教養再構築のための青写真」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 教養なんてものは、まったく役に立たない。教養など無くても豊かな暮らしをおくれるし、幸せに生活することもできる。

 しかしながら、教養に対する幻想は未だ根強く、期待も大きい。その証拠に、バブルもはじけて自分を見失った人間であふれている昨今、教養だの思想だのに自分探しの手がかりを求めようとする人々は増加傾向にある。

 ところがそういった人々は教養書や大学の一般教養課程で「教養」なるものに触れたとたん、一様に失望する。なぜなら世間で「教養」と呼ばれているものには実のところ、「自分探しのための手がかり」などという実用的な効用が、まったくと言って良いほど見られないからである。

 著者は、そんな「教養」の悲惨な現状の原因を、大学等による教養の独占的非競争的供給にあると分析し、研究者の自己満足による趣味的自慰行為が「教養」を役立たずなものにしたと断じる。

 そして一般の人々のニーズに合った「教養」を再構築するための方策として、「臨床思想士」なる職業の創設を提唱している。

「臨床思想士」とは実にユニークな発想であるが、要するに、教養だの思想だのに救いを求めてやってくる人々に対し、古今東西の思想の中からその人に合ったものを提示してあげる職業らしい。

 一種のカウンセラー的な仕事ではあるが、中にはオウム真理教の教義のような極めて危険なものをお客に投与してしまう族も出てくるかもしれないし、もし思想士の資格を国家が与えるとするならば、反国家的な思想は排除されてゆくかもしれない。

 本書は浅羽による教養再構築作業のための総論に過ぎず、そういった危険性についての突っ込んだ考察は見られないが、これから出てくるであろう続編が早くも楽しみでならない。

「教養」「思想」というものに安易に手を出して失望する前に、ぜひとも一読していただきたい一冊である。

(中宮崇/海坊主)

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紙の本そしてぼくは銃口を向けた

2000/11/26 22:32

幻想を打ち砕くものとして

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 幻想。酒鬼薔薇で有名な神戸小学生連続殺傷事件が、我々日本人にもたらした副産物である。
 ワイドショーでは「文化人」と称する連中が、文壇・論壇では「良識派」「人権派」と呼ばれる族が、これらの幻想の定着を決定的にした。
「イジメは日本独特のものだ」「日本社会特有の矛盾が、子供をおかしくしている」「日本の学校特有の抑圧的なシステムが諸悪の根源だ」などといったような、日本社会をあしざまに言うことによってしか金を得ることのできない連中によって撒き散らされた悪質な幻想を、本書は一挙に打ち砕く。
 昨年4月にアメリカ・コロラド州の高校で発生した銃撃事件は、13名もの犠牲者を出したうえに犯人の男子生徒2名が自殺するという悲惨な結末により、アメリカ全土だけではなく、わが国にも大きな衝撃を与えた。
 本書は、アメリカで多発する学校内での銃撃事件の加害者、被害者、関係者へのインタビューを通して、何が少年達を暴力に走らせているのかを解明しようと試みている。
 本書を読み進むと、アメリカ社会の抱える問題が、わが国のそれとあまりにも共通していることに驚かされるだろう。
「個性を伸ばす教育を」「教育に自由を」と説いて回り、「欧米ではそれが常識です」などと言ってはばからない厚顔無恥な進歩的文化人達は、本書で加害者のほとんどが証言している、クラスメイトによる個性的で異質な者に対する排除行動についてどう説明するつもりか。わが国の学校を、アメリカ並みの危険な場にしたいのであろうか。
 著者はあとがきにおいて、彼女なりの処方箋を提示している。「十分な愛情を基盤にした、十分な罰が与えられる家庭」。自由と野放しとを履き違え、子供に十分な注意を払っていない親達に憤りつつ導き出された答えである。
 良き親ならんと志す方々には、ぜひとも手にとっていただきたい一冊である。
(中宮崇/海坊主)

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オヤジの床屋談義

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 著者の太田昌国と私は、同じ北海道の釧路市出身である。だからこそ私は、太田の北海道人的「心やさしき迷惑オヤジ」としての姿勢に幾ばくかの理解を示してしまうという自分の甘さに苛立ちを覚える。

 96年のペルー大使公邸人質事件に際して、無残に殺害された犯人たちのテレビ画像を見てシンパシーを覚える一方で、数ヶ月にわたって自由を奪われ絶えざる恐怖と緊張の下に置かれ続けていた人質たちについては、おそらく映像化されなかったゆえに無頓着でいられる太田の感性は、まさに、北海道の片田舎で酪農でもしている気のいいオヤジそのものである。

 本書は、そんな太田の、96年ごろから最近までの社会的発言をまとめたものであるが、オウムの麻原を擁護し、ガイドライン法を「戦争法」と罵り、ラテンアメリカの貧農に涙する太田は、本当の意味で心優しきオヤジなのであろう。彼の単純極まりない精神には、一点の曇りもないに違いない。

 フジモリ大統領による人質事件の武力解決について「ペルー人の心に傷跡となって残るだろう」などと、今読み返せば笑うしかない97年当時の戯言を、恥ずかしげもなく収録することができるという一点を見るだけでも、オヤジ太田の誠実さと気のよさを疑う理由は何もないのである。

 太田のような「気のいいオヤジ」が社会の前面に出てくることは、大衆にとって迷惑以外の何物でもない。しかし日本社会は、彼のような純朴なオヤジの床屋談義を受け入れる寛容さを今後も失ってはならない。

(中宮崇/海坊主)

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テロリズムとは何か

2000/10/17 01:28

現代人の生き残りマニュアル

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 日本は、テロリストにとって実に魅力的な目標となってしまったと、著者は嘆く。96年のペルー大使公邸人質事件は、「平和的解決」のみに固執する(したがってテロリストの身の安全が保障される)政府、無自覚にテロリストの宣伝に手を貸すマスコミという、他に類のない「好条件」が日本という標的に存在するということを、世界中のテロリストに暴露してしまった。

 その結果は最近の例では、キルギスにおける人質事件という形で、われわれ一般国民自身が代償を払いつつある。ある日突然、自分自身、あるいは親しい人間がテロリストに囚われ、あるいは害される可能性は格段に増大しつつある。

 本書はそんな政府やマスコミ、企業、一般市民の問題を指摘しつつ、膨大なテロリズムの歴史を紐解き、そこから体系だった教訓を導き出し、テロに対するための具体的方策を提示している。「対テロハンドブック」とでもいうべき書である。

 テロ対策といえば対テロ特殊部隊の創設しか聞かれないこの日本のお粗末な現状を変える一冊となることを望まずにいられない。(中宮崇/海坊主)

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紙の本やがて中国の崩壊がはじまる

2001/11/27 18:17

崩壊するなら迷惑かけないでね

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 実に、この地球上にいる人間の4人に1人が中国人。改めて聞くと凄い数字だ。
 そんな巨人の中国が、近いうちに崩壊してしまうかもしれないというのがこの著者の主張である。
 何しろこの国、あれだけ多くの人間を抱えながら未だに共産党の一党独裁。基本的人権も保障されず言論の自由もなく、チベットなどでは住民をがんがんぶち殺して平気な顔。
 そんな国はなくなってくれればいろいろ好都合なのかもしれないが、本当に崩壊するのかい?という疑問に、この本はあらゆる角度から答えてくれる。
 現在、中国には政治的、経済的、社会的、各分野に数多くの問題が山積している。そしてそれらの問題は突き詰めると、中国共産党という抑圧的で腐敗しきった連中が政権を握っているという一事に集約される。
 国営企業がぼろぼろなのも、銀行が不良債権まみれなのも、農村が貧困なのも、都会に失業者があふれているのも、国民が銃で弾圧されるのもみーんな中国共産党のせい。
 そんな中国が、先日WTO(世界貿易機関)に加盟したわけだが、WTOに加盟するといろいろと国際的に監視されるため、共産党も今までのようなむちゃくちゃなことが出来なくなる。給料をもらえずに騒いでいる労働者を銃で脅して解散させるなどということも出来なくなるわけだ。
 ところが、WTOに入ったからといって経済状況がすぐに改善されるわけではなく、それどころか一時的には、国営企業はがんがんつぶれ、失業者はますます町にあふれ、国民は海外の情報に自由に接するようになりこれまで以上に不満を高める。
 ところが共産党には、そうした不満を抑えるために今まで用いてきた暴虐な手段が使えなくなる。結果、抑えきれなくなり崩壊。と、これが本書の描くシナリオである。多くの取材に裏付けられており、説得力に富んでいる。
 ただ一つ物足りないのは、中国の崩壊が日本に及ぼす影響について記述が乏しいこと。そのあたりも充実していれば100点満点なのだが。 (bk1ブックナビゲーター:中宮崇/ライター)

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地上の楽園の物語

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 題名に反して、金正日の色恋沙汰に関する記述は比較的少ない。どちらかというと、金ファミリーの放蕩振りを告発した書といえる。したがって、正日のだらしない性生活の描写を期待していた読者は、多少肩透かしを食わされることになるだろう。
 著者の李韓永は金正日の親戚であり、ロイヤルファミリーの一員として金王国の特権を享受して来たが、海外留学を機に自由主義にあこがれ韓国に亡命、その後謎の銃撃事件で死亡するという数奇な運命をたどった。そのことがまた、本書の信憑性を補強する材料ともなっている。
 書中、我々日本人が最も興味を引かれるのは、金正日の息子正男についての体験談ではないだろうか。「ディズニーランドに行きたかった」と偽造パスポートで訪日し物議をかもした男に関する記憶は、未だ生々しい。
 そのあまりにも稚拙な入国手段から、私自身、彼が本物の金正男であることを大いに疑ったが、本書を読んで合点がいった。あの幼稚さは、信じられないほど多くのおべっか使いに囲まれて、スイスに留学した際にも毎月一千万円も浪費し続けていた男にまったくもって、あいふさわしいものであったのである。
 しかし、金王朝の暴虐ぶりは予想をはるかに越えている。確かに、金ファミリーの資質自体にも原因があることは確かであろうが、それ以上に、「世襲による社会主義国家」という摩訶不思議な体制そのものによる弊害が大きいように思える。何しろ、国全体が一つの家族のためだけに奉仕し、その気まぐれな「指導」に怯え、首領様の耳には、ご機嫌取りのために都合の良いことしか伝えないのだから。
 一部の左翼勢力は、「金正男はすばらしい知性の持ち主である」などと喧伝しているようであるが、いくら天才的な男でも、熟睡しているあかの他人の顔をひっぱたいて喜んでいるような人間を国家指導者にはいただきたくないものである。おもしろ半分でテポドンの発射ボタンを押されたのではたまらない。

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21世紀防衛問題の基本テキスト

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 1990年、イラクによるクウェート侵攻により始まった湾岸戦争は、その意外な結末により世界中に大きな衝撃を与えた。
 91年1月17日に空爆を開始した多国籍軍は、42日間(地上戦が始まってから100時間)でイラク軍に致命的打撃を与え、フセインに忠誠を誓う軍隊はクウェートから一掃された。
 多国籍軍側の被害は戦死、行方不明あわせても200人に満たなかった。一方でイラク軍は多数の捕虜を出し、多国籍軍側は3万を数えたところで計算をあきらめてしまったという。戦死者は10万とも言われるが、具体的な数字は未だに判明していない。
 開戦当初、多国籍軍側は数万人単位の損害が予想されていた。100万に及ぶ兵力とソ連製の優秀な兵器を装備した強大な敵を相手にするのであれば、当然の推計といえる。
 多国籍軍に圧倒的勝利をもたらしたものは、アメリカ軍のハイテク装備とそれをフルに活用したドクトリンである。
 衛星や航空機による一方的な情報収集により、多国籍軍は敵の位置を正確に知ることができた。一方で、イラク軍は偵察手段も無く通信も妨害され、自分が今どこにいるのかさえわからなかった。そして、戦闘機は敵の姿を見ぬまま次々と打ち落とされ制空権を失い、陸軍は一方的な爆撃を受け半身不随となった。
 確かにイラク軍は、兵力において多国籍軍を上回っていたが、目隠しをさ手かせ足かせをはめられた巨人は、石礫を投げてくる子供には勝てないのである。10年前、世界中の軍事専門家が、そのことを思い知った。
 しかし本書を読んだ者は、21世紀の戦争は、湾岸戦争におけるハイテク戦の次元をはるかに超えていることに衝撃を受けること間違いない。
 あくまで自衛隊におけるハイテク戦と装備の状況・問題点を検証している本書であるが、世界的レベルについての解説も豊富であり、その分自衛隊の(比較的)お寒い現状に眉をしかめざるを得ないであろう。
 特に、化学兵器や核兵器に対する防御に関してはお寒い限りで、ガスマスク一つ満足に装備していないというのでは、まったくお話にならない。
 また、ステルス機が主流になりつつある中で、その調達にまったく動こうとせずに在来型機の購入・生産に狂奔する姿は、滑稽とさえ言える。
 我々納税者には、税を納める義務だけではなく、それがどう使われているかをチェックする義務もあるのではないだろうか。その義務を怠ったとき、愚にもつかないポンコツに金をつぎ込んでいる軍人や政治家を批判する権利もまた放棄していることになる。
 本書によって、わが国の軍事力について基礎的な知識を身に付け、健全な批判力を備えていただけることを切に願うものである。

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紙の本北朝鮮を知りすぎた医者

2001/06/18 20:23

狂気の地の日記——医療ボランティアとして18ヶ月間北朝鮮に滞在した筆者が見たものは

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 何をやっているのかわからない、どうなっているのか見当もつかない謎の国、それが北朝鮮。
 旅行者はもちろんのこと、ボランティアで来た人間にも監視役がついてまわり、笑顔の仮面をかぶった作られた人民しか見ることのできない人造国家。
 そんな奇怪な国に医療ボランティアとして18ヶ月間滞在した筆者が、最後に「破壊活動分子」とされて国外追放されるまでの体験を綴ったのが本書である。
 指導者金正日の無謀な農業政策によって飢えに苦しむ北朝鮮人民を救うためにやってきた筆者は、入国直後からおおいに幻滅する。
 外国からはるばる助けにやってきた医師たちから一人あたり5万ドルもの金をむしりとる北朝鮮政府、24時間つきまとう監視役、医薬品を隠匿し、ろくな治療をしない現地の医者達。
 子供は飢えてやせ細り、人々は寒さをしのぐためにガソリンに火をつけるため、頻繁に大火傷で命を落とす。
 そんな地獄を垣間見た筆者は、金王朝の転覆こそが、全ての問題を解決する唯一の道であることを確信する。
 その信念に従い、海外のマスコミに北朝鮮の社会情勢を伝え続けるのであるが、昨年、それが元で国外追放になってしまう。
 興味深いことに、本書のいたるところから、北朝鮮人民に対する著者の敬愛の念が伝わってくる。極限の状況の中で精一杯生きる人たちに対する尊敬の念を、彼は隠そうとしていない。
 そうした思いがあるからこそ、金王朝打倒の念も強くならざるをえないのであろう。この本、なかなかに各方面で話題になっているようで、先日も筑紫哲也のNEWS23で「正しい内容かどうかわからない」などと否定的な紹介のされ方をしていたが、誰か引田天功を取材してくれないものか。
 というのも、引田は昨年、金正日の招きで北朝鮮を訪れているのであるが、筆者はその折に、「金正日の側近に誘拐されるのではないかと怯えて」神経症にかかっていた彼女を診察しているのだそうだ。
 彼女の口から何かが語られれば、本書の信憑性について何らかの手がかりが得られるかもしれない。

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新しい歴史教科書の夜明けは来るか?

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 今もっともホットな話題の一つ、歴史教科諸問題の書である。

 これまでの歴史教科書を「自虐的」であるとし、日本に誇りを持てる新しい教科書を作ろうとしている西尾達の主張がまとめられている。

 内容的には、これまで西尾をはじめとする「新しい歴史教科書を作る会」が出版してきた書籍の内容とかぶる点が多いが、本書には二つの目新しい点がある。

 一つは、昨年明らかになった、中国などによる教科書検定作業への干渉事件。

 これは、本来検定作業中は部外秘であるはずの教科書の内容が、朝日新聞や市民団体の手によって暴露され、それに対して中国が、日本の政治家や官僚に圧力をかけて葬り去ろうとした事件である。これについての顛末が、詳しく記されている。

 二つ目は台湾問題。これは最近、かつて西尾と行動を共にしていた漫画家の小林よしのりが、親台湾の作品を発表したことに対する反発であろう。

 台湾の親日姿勢を歓迎する小林に対し、西尾は、台湾のそのような姿勢は、中国からの脅威に対抗するためのものであり、決して手放しに喜べるものではないと主張する。

 西尾らの作成した教科書が検定作業に入ったことによって、彼らの運動は一つの転換期に入ったと言える。

 それに伴い、本書でも触れられているように、各方面から激しいリアクションがすでに起きており、今後の行方が見逃せない。

 本問題の基本的なポイントと最近の流れを押さえて置くためには、必読の書であるといえる。

(中宮崇/海坊主/2001.03.01.)

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中国呪詛の呪縛

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 漢字に対する恨み、それが著者を動かす原動力のようである。

 とにかく、漢字というものがいかに劣等な存在であるかということを証明することに、全力を投入している。

 中国、日本、朝鮮半島などに根付く漢字文化圏は、習得困難な漢字の存在によって、文明の発展にブレーキをかけられているとまで断ずる。

 そもそも、英語はアルファベット26文字を覚えるだけで良いが、漢字は数万覚える必要があるなどという比較自体に無理が無いか。英語はアルファベットだけ覚えれば良い分けではなく、発音と表記が必ずしも一致しないことも多い数多くの単語を記憶する必要があるのだから。

 このような主張は、敗戦直後の日本でも多く聞かれたものである。

 漢字を廃し、それどころかカタカナひらがなまでなくして、すべてローマ字にしてしまえというなんとも乱暴なたわごとが、大まじめに語られていたのである。

 そうした主張をしていた者の多くが、戦中は軍部に尻尾を振っていた、すねに傷もつ連中であったということを忘れてはならない。彼らは、自分達の後ろめたい過去を覆い隠すために過激に走っただけであった。

 著者の黄についても、同種のことが言えないか。彼は、祖国台湾を狙う最後の帝国主義国家中国を憎むあまり、中国の臭いのするあらゆるものに反発し、祖国に手を貸してくれそうな日本に尻尾を振っているだけなのではないだろうか。

 漢字を否定する一方で、ハングルはさておきつつ特に章を設けて日本のかな文字のすばらしさを説いているところに、その片鱗がうかがえる。

(中宮崇/海坊主/2001.02.19.)

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