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澤井 仁さんのレビュー一覧

投稿者:澤井 仁

11 件中 1 件~ 11 件を表示

この本は定年を迎える人を勇気付ける

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 55歳をすぎると退職後のことを考える時間が多くなる。熱心に仕事に没頭してきた人ほど定年後は,時間の止まった混沌とした世界に感じる。人生がほぼ終わり,文字通り,余生だと感じる人が多いだろう。なにをしたらいいんだという自問に対し,答えに窮する。孤独感が襲う。
 こういう人は本書を読んでほしい。筆者は,脳の寿命は180歳で,その「3分の1足らずで寿命にしてしまうのでは,あまりにももったいないではないか」という。筆者自身も70歳からチェロをはじめた経験を語るが,70歳から絵を描き始めて101歳で亡くなるまで1500点の絵を残した女性の話,作家の松本清張氏は50歳を過ぎてから英会話を習って自分のものにした話など実例も愉しい。
 また,筆者は医学部の出身で,サルの研究者として著名だ。それだけに人の脳の活性化のポイントの指摘もユニークで説得性がある。「言語は脳内知識の整理,定着剤」「咀嚼(そしゃく)を大事にすると,脳が活性化する」「就寝直前の脳は利用価値が高い」など興味ある見出しが並ぶ。活力ある脳を長持ちさせるためにも,40歳代から自分の体の健康デザインを積極的にしたいものである。
(C) ブックレビュー社 2000-2001

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地球規模で進行するIT革命が,医療,健康,福祉に与えるインパクトと,21世紀へのe医療の道筋を描く

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 アメリカの医療は確かに合理主義に徹している。筆者はアメリカの医療が日本やEU諸国の医療に比べて高水準であるのは,『患者,消費者,市民がどんな医療サービスを受けたか,また受けようとしているかについて,「知る権利」を他の何よりも重要視し,社会システムを築き上げてきたことにある』と語っている。アメリカでは1960年代に,現在わが国で盛んになっている患者からの医療に対する積極的な干渉運動が起こった。医療ミスに対して積極的に訴訟に持ち込む運動である。その結果,73年に『患者の権利』が生まれ,インフォームド・コンセントが普及した。
 ITは,アメリカでは正に患者が知る権利を行使するための革命的な道具となった。筆者はeヘルス,eホスピタルという言葉で,アメリカでのインターネットを利用した患者,一般市民に対する医療情報の提供の活況を説明している。あらゆる情報が競って公開されている。インターネットによる情報収集の40%は医学医療情報の収集であるという。
 その波が日本に押し寄せつつある。しかし,日本の医療の閉鎖性は,アメリカの30年前にさかのぼる。ようやくインフォームド・コンセントが言われ始めたばかりである。しかし,病医院はカルテの公開を渋る。治療の治癒率も公開しない。どこがいい病院か,誰が優れた医師なのかまったくわからない。各疾患の治癒率などを勘案して,アメリカでは病院のランキングが毎年,発表される。わが国では欧米と違い処方薬は医療関係者のみにしか説明してはいけないことになっている。広告もいけない。しかし,最近になって,厚生省は医薬品の添付文書情報をインターネットで公表し始めている。副作用情報も誰もが見られるようになった。ようやく日本でも30年遅れで,医療システムが動き出した。本書は,単にインターネットの医療への導入の革命劇を語っているだけではなく,それを通して日米欧の医療システムの状況の違い,特に日本の医療システムの遅れをクリアカットに語っている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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医療過誤を防ぐには−−−−。米国は密室で議論してきたこの問題を多角的に検討。システムづくりに動いた

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 医療事故が連日新聞を賑わしている。医師が,薬の量の指示を間違えたり,薬の種類の指示を間違えたり,手術の患者を間違えたり,手術の際にガーゼやはさみ,針を体内に置き忘れたり,看護婦が薬の投与量を読み間違いしたり,同じような薬ビンを間違えて他の薬を投与したり,枚挙に暇がない。医療過誤の内容は,初歩的であきれるばかりである。
 これらの医療過誤の背景を考えると,日本の医療環境,医療レベルを反映していることがわかる。1つは医師が忙しすぎることだ。日本の医療制度は国民が等しく,安い費用で受診することができる制度で,このためちょっとした病気でも医師にかかり,また逆に病医院としてもたくさんの患者がこなくてはやっていけない仕組みだ。また,駅弁医大といわれるように多くの私立医大ができ医師が粗製濫造(らんぞう)され,質がばらばらなこと,医療過誤を防ぐためのシステムができていない,つまりリスクマネジメントがないこと。看護婦が少なく,しかも機能を生かしきれていないこと。医師,患者関係が確立されていないなどが挙げられる。
 本書は,米国での安全な医療システムづくりを多角的に検討した成果がまとめられている。米国の公的な医学研究所が設立した米国医療の質委員会が,クリントン大統領の求めに応じて,医療事故への対応を体系的に検討してシステムづくりを提言した報告書である。医療過誤の検討,安全な医療システムづくりに参加したのは,医師ばかりではなく,看護婦などの医療従事者,医療サービス購入者(保険者),医療消費者,法律家,政策者などである。
 発想の基本は,医師を含めて人間は誰でも過誤を起こすものである,ということだ。そして誤りを犯す人間が,犯さないようにするためのシステムを作っていこうという考えである。システム化では,過誤の報告を強制させること,公開にすること,もう1つは,薬剤,機器の使用法の標準化を行い,教育を徹底することをポイントに挙げている。
 米国では毎年4万4000人が医療過誤で亡くなっているといわれる。わが国でも医療の遅れを取り戻すために,こうしたシステムづくりを国を挙げて行う必要がある。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本インフルエンザウイルスを追う

2000/12/01 21:16

1918年のインフルエンザの世界大流行とウイルスの正体を突き止めた科学者たちを描いたノンフィクション

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 インフルエンザは単なるカゼと考えたら大間違いだ。1918年に起こったスペインカゼは世界で1500万人から2500万人もの死者を出したと推定されている。日本でも20万4000人が犠牲になったと記録されている。当時は日本でもインフルエンザの原因が,細菌なのか,ウイルスなのか,あるいは別の病原体なのか,人々はわからず,大きな不安にさらされた。
 しかし,世界中で受けた犠牲が大きかっただけに,欧米日の研究者は奮い立ち,インフルエンザについて猛烈な勢いで研究を開始する。たとえば,当時はまだ細菌の感染なのか,それともその他のものなのかについて議論された時期であった。1889年には,細菌よりもずっと小さいろ過性病毒素(ウイルス)の存在が明らかにされたが,スペインカゼの原因が細菌かどうかの議論は,日本でも北里研究所(インフルエンザ菌説)と伝染病研究所(現在の東京大学医科学研究所,未定説)が対立していたほどだった。
 インフルエンザが細菌ではなくウイルスの感染であることがはっきりわかったのは1933年になってからである。しかも,スペインカゼと同じ流行しやすいA型ウイルスの場合は,豚や鳥,馬などにも感染することもわかった。こうした動物に感染することによって変異を繰り返し,しかも地球を回るようにして翌年帰ってくる。再来したときには顔つき(ウイルス表面の形)がまったく変わって別人のように免疫機構をすり抜けて感染するのである。
 80年代になってインフルエンザ・ウイルスの遺伝子の解析ができるようになってからはさらに詳しいウイルス分析が可能になってきた。ウイルスの覆っている膜をエンベロープと呼ぶが,その外側にHA(血球凝集素蛋白)とNA(ノイラミニダーゼ蛋白)という2つの蛋白がある。この蛋白の型はそれぞれいくつかあり,その組み合わせでウイルスを呼ぶようになった。たとえばスペインカゼはH1N1型,50年代にはやったアジアカゼはH2N2型,70年前後にはやった香港カゼはH3N2型という具合だ。また,A型ウイルスには8本のRNAの分節遺伝子があり,この遺伝子の交雑によって新しいウイルスの株が誕生することもわかってきた。こうした研究の歴史については「インフルエンザ」(PHP研究所発行,中島・澤井共著)に詳しく述べたが,まだまだわからないことが多い。
 こうした研究の出発点に1918年のスペインカゼの大流行があるわけだ。本書はスペインカゼの流行を出発点にスペインカゼの謎解きを,その後の研究をたどりながら行っていく。研究者の人となりや考え方,エピソードを混ぜながら書いている。資料をたくさん集めてのノンフィクション小説と言える書き方で,読みやすく引き込まれる。筆者は最後に,スペイン風邪には2つの謎があるという。ひとつはあのインフルエンザはどこからきたかという謎,もうひとつは,当時20歳から40歳までの青壮年の死亡がほかの年代に比べて高かったのはなぜかという謎を挙げる。そしてその回答としてある科学者の謎解きとも言える仮説を挙げて締めくくる。その回答は読んでのお楽しみだ。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本人体再生

2000/12/01 21:16

失われた体の一部や皮膚,臓器を患者の組織片から再生復元する驚異の医学,ティッシュ・エンジニアリング

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 人の胚性幹細胞(ES細胞)が米国ウィスコンシン大学で発見されたのが98年10月,ほんの最近の話である。胚性幹細胞というのは,組織や臓器になる前の細胞で,うまく培養さえすれば,望みどおりの組織や臓器が作り出せる可能性を秘めた細胞である。英国が人の胚から万能細胞を取り出して培養する研究を容認する法改正を打ち出したのが2000年8月,その直後に米国は万能細胞を使った研究に政府の資金を提供することを認めると発表した。
 また,わが国では再生医療研究にはことのほか力が入っている。再生医療研究の中核拠点として,政府は理化学研究所の発生・再生科学総合研究所,通産省のティッシュ・エンジニアリングセンター(仮称)を相次いで兵庫県内に新設した。大学と産業界にある壁を取り除き,産学協同で,臨床応用できる技術を開発することが狙いだ。
 ウィスコンシン大学に次いで京都大学は,2000年9月にサルの体外受精から,胚性幹細胞を作ることに成功している。サルは人間と体の構造が似ているだけに,再生医療の研究にはもってこいの研究対象である。このように日本の研究も進んでいる分野である。
 本格的な胚性幹細胞を利用しての再生医療実用化研究は,実りが出るのはまだ先の話だが,多くの既存組織を利用しての再生医療が進んでいる。とくに,軟骨や皮膚の分野では進歩が著しい。たとえば,スポーツや事故で関節を損傷した患者に対し,培養した軟骨細胞を関節に移植するという再生治療法が進んでいる。皮膚領域では切手代の患者の皮膚を培養することによって,3〜4週間で,全身をカバーする大きさの皮膚を得ることができるようになってきた。
 本書は,こうした既存の再生医学の研究現場を研究者との対談で構成している。これまで筆者の立花氏が「中央公論」誌上で連載してきた再生医学に関するシリーズ対談7本をまとめたものである。また,対談の前には,同氏が99年4月の日本医学会総会で行った講演「医学の人間化と非人間化」,さらに中央公論99年7月号掲載の「僕はなぜドナーカードに署名したか」を再録している。
 同氏は科学について,その進歩が生活に及ぼす影響について興味を持ち,一貫したテーマにしているようだ。研究の現場に行き,研究者と話をしながら自分の興味を引き出している。このテーマの基礎にはテレビ局の番組での欧米取材がある。こうした現場主義であるだけに説得性がある。
 彼は再生医学について「エンド・ポイントを向こうへ向こうへと押しやり続けたのが医学の歴史であり,この努力の積み重ねが開いたもう一つの生の向こう側の地平が死体利用であるといえる」と語っている。また,「自分という人格的個体の生の維持には役立たなくなった肉体を,他人の生に役立て得る可能性の領域といえる」と,彼の視点を語っている。
 再生医学は,死体利用ばかりとはいえないが,不老不死の人造人間作りの領域だけに,ものの考え方の視点が必要になってくる。本書は,その考え方をわかりやすく理解するのによい本である。
(C) ブッククレビュー社 2000

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5000件以上の中から選ばれた,西洋医学の10大発見。人類の命を救ったこれら偉人たちの奮闘努力の物語

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 人類の歴史は,病気との闘いの歴史であるということもできるだろう。6世紀から16世紀ころまでライ病(レプラ),ペスト,梅毒の3大疾患によって人類は苦しめられた。14世紀の中ごろを頂点とするペストの猛威によって,欧州を中心として2500万人の生命が奪われたといわれる。当時の人口の3分の1から4分の1が失われた計算になる。このペストは,ペスト菌によって感染するわけだが,ノミを媒介にして人に感染する。このノミは,クマネズミなど人家に住むねずみに寄生している。こうした原因については20世紀になって分かったことで,当然当時は何が原因かはまったくわからなかった。
 19世紀から20世紀にかけて,結核が猛威を振るった。スペインカゼ(インフルエンザ),エイズなどのウイルスも人類を悩ましている。さらに現代では,糖尿病,高血圧,高コレステロール血症など生活習慣病に悩ませられ続けている。
 では人類が,病気とどう闘ってきたのか。その武器となった医学がどう発展してきたのか。本書は,医学発展の歴史を概観するのに大変便利な本である。医学の歴史の中からエポックメーキングな発見を10挙げて,それぞれの出来事の周辺をていねいに語っている。2人の筆者は,医学の出来事をまず5000選び,その中から,体の構造や機能,病気の診断,治療の3つの分野ですばらしい進歩は何かを考え,100に絞り,さらに25にして,最終的に10に絞ったという。10の物語を読むことによって医学の歴史全体の流れを知ったようになるからである。しかも筆者は医学の専門用語をなるべく避けて,一般の読者にも読めるようにやさしく解説している点がいい。
 10の発見というのは,(1)ベサリウスの人体解剖学,(2)ハーベイの血液循環,(3)レーベンフックのバクテリアの発見,(4)ジェンナーのワクチン接種,(5)ロングの外科麻酔,(6)レントゲンのX線,(7)ハリソンの組織培養,(8)アニチコフのコレステロールの発見,(9)フレミングの抗生物質の発見,(10)ウィルキンスのDNAの発見———である。
 筆者は最後の章で,この中でもっとも大きな出来事は最初のベサリウスの人体解剖学の確立であるといっている。キリスト教の世界観の中であえて真実を書き記した勇気をたたえてのことだろう。しかし,人類の歴史を病気の歴史ととらえるとき,私はフレミングの抗生物質を挙げたい。前に書いたように人類は恐ろしい原因不明の感染症に叩かれ続けてきた。たくさんの細菌が入れ代わり立ち代わり生命を脅かした。しかし,我々は抗生物質という武器を手に入れることによって,初めて感染症との闘いに勝つことができるようになった。ペニシリン,ストレプトマイシン,・・・・,次々に発見される抗生物質によって,人類は細菌の感染によっては死ななくてすむようになった。死の病気と恐れられていた結核でさえ治る病気になってしまったのである。
 読者は,これらの10大発見の中でどれを第1とするか,読みながら考えてほしいと思う。それぞれ違ってくるかもしれない。歴史観によって選び方が変わってくるからである。
(C) ブッククレビュー社 2000

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回復の見込みもなく苦痛にさいなまれる末期患者の死を選ぶ権利と医師の義務について,問題提起を行う

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 安楽死は,別名尊厳死ともいわれる。癌の末期のようにもう手を施しても治る見込みがなく,心身両面にわたって痛み,苦痛にさいなまれているような場合でも,医の倫理としては1分でも1秒でも長生きさせるのが医師の務めということになる。しかし,最後まで人間らしく尊厳を保って生きたい,酸素,栄養,薬剤をチューブで与えられ,苦痛の中で死を迎えるのはいやだという意識が患者の間に強くなってきている。最後まで人間らしく生き,人間らしく死んでいくという意味で尊厳死というのである。
 安楽死には,積極的安楽死と消極的安楽死がある。消極的安楽死というのは,末期に積極的に治療をしないとか,栄養を与えないとか,直接死の引き金を引くのではない,結果として死を早めさせる安楽死をいう。これに対して積極的安楽死というのは,患者が医師に対して死を要求し,それに基づき医師が死の引き金を直接引く安楽死をいう。消極的安楽死はこれまでかなり行われるようになってきているが,積極的な安楽死は,医師の殺人罪につながる行為として医師は行ってはならない行為とされてきた。
 しかし,本書の筆者は,自ら死の決断を下した患者に対して,医師が自殺に手を貸すことの合法性を訴え,法律の改正の必要性を主張している。世間では安楽死を支持する声が高まり,医師の間にも賛成派が大勢いるとしている。尊厳の問題は日本よりも欧米で強く求められるだけに,安楽死についても積極派が多いことは確かだ。また安楽死の問題には,末期治療が経済負担が大きいことも絡んでいる。無意味な延命にばく大な経費をかける意味があるのかという問いかけもある。
 筆者は,自殺は長い間神や自然,社会に背く恥ずべき行為と考えられてきたが,必要な例外として合理的自殺があると主張する。終末期の医師の役割は緩和ケアと安楽死であるとしている。30人もの終末期の患者とインタビューし,安楽死の実際の例を比較し,法制化した場合の悪用の恐れなども指摘しながら最終的には適切な法律を作ることが必要不可欠であると主張している。
(C) ブックレビュー社 2000

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介護保険の現場から

2000/07/22 06:17

どんな介護サービスが提供されれば安心か。全国の福祉現場の姿を中心に超高齢化社会の介護のあり方を問う

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 65歳以上の老人の数が増えるのはこれからが本格的である。わが国の高齢化の速度は 世界でも類を見ない程の速さである。国連の定義による高齢社会は全人口に占める65歳 以上の高齢者の比率が14%以上の社会を言うが,すでに日本では1994年にこの比率を超えた。しかも,2015年には25%になる超高齢社会になろうとしている。14%というと 65歳以上の老人が人口の7人に1人の割だが,25%というと4人に1人になる。厚生省によると寝たきり老人や痴呆,あるいは介護が必要になる老人の数は2000年で約280万人だが,2025年には約520万人へと倍増する見通しだ。介護の必要になる老人社会がこれから本格的になる。
 本書では介護とは何かについて,記者が現場を取材して,分かりやすく具体例を書いている。2000年4月から始まった介護保険制度だが,本書は制度が始まる前の出版であるために,介護保険の始まる前の状況を追っている。
 まず,3000を超える介護保険の運営主体である地方自治体の工夫や悩みを追う。次いで民間事業体の進出についてでは,介護サービスの競争状態について,また,病院の介護 分野への進出について述べている。介護で大変なのは痴呆老人の扱いで,これについても章を割いている。また,介護先進国であるドイツ,イギリスの質の高さを取材している 。面白いのは記者自身がヘルパー2級の資格を得るための研修を受験し,その体験記を 書いていることだ。おむつの取り換え,食事の介助などの仕方を学び,そのポイントをまとめている。
 具体例で書かれていて,さっと呼んで介護を理解するには読みやすいのだが,難点を言えば,新聞掲載を本にしているために例が短すぎ掘り下げが浅い。もう少し書き込んでほしい所が多いところだろうか。
(C) ブックレビュー社 2000

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人類に恩恵をもたらす遺伝子治療は,遺伝情報の管理問題があるため,誰もがその知識を持つ必要がある

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 ヒト遺伝子の解析が世界中で急ピッチで進んでおり,その成果は遺伝子診断や遺伝子治療で発揮される。最近ではすでに遺伝子診断キットが発売されており,研究室での検査に利用され始めている。遺伝子治療は臨床実験は多いが,はっきりとした成果はこれからだ。しかし,遺伝子診断の結果は,関係する人々の生活に大きく影響する。人生観,家族計画,保険,就職,結婚…。筆者は,遺伝子診断,治療を受ける本人ばかりでなく,家族,医師を含めて,遺伝情報が意味すすることとその限界を知ることが絶対に必要であると強調する。
 本書では,遺伝子の構造からその機能まで,さらに遺伝子の単離,クローン化,細胞への導入など,遺伝子治療の仕組みについて丁寧に解説する。13の章のうち5までは遺伝子の説明に割いている。そのうえで,ADA-SCIDの臨床例,嚢胞性繊維症の臨床試験,単一遺伝子病,癌遺伝子治療,エイズなど遺伝子治療の広がりが解説がつづられている。

(C) ブックレビュー社 2000

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環境ホルモンについて,基礎解説から最前線の研究まで丁寧に解説。最近話題の環境病についても情報を紹介

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 世界で使われている化学物質は8万種類もあり,そのうち環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と疑われている物質は,ダイオキシン,PCB,ビスフェノールA,…など,70種類にもなると言われる。
 環境ホルモンの問題はこれまでの環境公害の問題とは違うところが厄介な点だ。人の健康がすぐに損なわれ,生命が脅かされるというものではなく,ほんの少量の溶けだした物質が,人の体にホルモンに似た作用を長年の間に及ぼすらしいことが分かってきたからだ。しかし,疑われている物質の中では因果関係のはっきりしているものはごく少ない。筆者らは,マスコミは少し過剰反応気味であると指摘する。警鐘を鳴らすという意味ではわからぬでもないが,特に週刊誌では興味本位に毒性を強調しているきらいがないではない。
 そこで,本書では多くの文献を丹念にたどって,研究の原点にさかのぼって,解説している。どこまで正確なことが言えるのかを大切に,しかもわかりやすく書こうとしている。しかし,それぞれの研究には,いろいろな制限,条件があるために,なかなかはっきりしたことが言えないことも分かるだろう。
 環境ホルモンの問題は,微量の化学物質が長期間作用して影響が出てくるために,実験が難しい。また,動物実験の結果がそのまま人にはあてはまらないということもある。男性の精子の数が最近少なくなってきているという調査結果がいろいろなところから提出されているが,母集団の地域差では,測定方法や統計法が一定でないなど賛否両論の報告が相次いでいる。さらに,減少しているとすると原因は何かとなるといずれも推論の域を出ないのが現実である。
 文献は1998年までのものを追っており,情報としては新しいといえる。200ページ弱の手軽に読める本といえる。環境ホルモンの影響をできるだけ少なくするためには,科学者だけでなく産業,経済,社会,政治などの問題が絡んでくるために多くの人が関心を持ち正しく理解する必要がある。
(C) ブックレビュー社 2000

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ウイルス感染症発見から防御の歩みをウイルス学の第一人者が赤裸々に語る

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 これまで人類の生命を脅かしてきた多くの病気の中で,我々の大きな敵は主に細菌や寄生虫であった。ハンセン病(らい菌による感染),ペスト,結核,コレラ,梅毒,赤痢,破傷風,チフス,淋病,肺炎,マラリア…。細菌や寄生虫に対して,人類は長い間まったく無力であった。感染されるままに病魔にむしばまれ,為す術もなく餌食になった。
 我々が対抗手段を考案したのは,抗生物質の発見,実用化が進んだ20世紀の半ば過ぎである。
 ところが細菌に代わって,ウイルス感染症が人類の生命を脅かす大敵になってきた。ウイルスに対しては,我々は概して有効な治療法がない。この点は拙著「ウイルスの恐怖」(PHP研究所発行)に詳しく書いたが,その意味で,これからはウイルスとの対決の時代であると言ってもいい。
 本書は,主要な10ほどのウイルスについて,病原体の発見,とりわけ病気が初めて記載されたときに何が分かっていたのか,そのウイルスに特有な問題は何か,被害を食い止めるために研究者,医師をはじめ社会や政府がどう取り組んだかについて書かれている。著者も強調しているようにウイルスのまん延を防ぐためには国のきちんとした防御体制が必要である。
 天然痘のように20世紀に3億人もの犠牲者を出した末に,撲滅されたものもある。
 エイズのように,1981年に記載されて以来,社会に深く入り込み今も感染が広がっているもの,エボラ,ラッサ熱のように未開の地の生物から感染し,体の至る所で出血して死に至る恐ろしいウイルスもある。一方インフルエンザのように毎年形を変えて流行するものもある。こうしたウイルスのタイプを分け,その特徴をはっきりと説明している点はわかりやすい。
 全体の記述で気になるのは,筆者が米国での研究者であるため,米国での動きが中心になっている点だ。西欧,日本での対応については記述が少ない。ただ,エイズについては日本の厚生省の対応のまずさをきちんと指摘している。
(C) ブックレビュー社 2000

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