さたおさんのレビュー一覧

興味深い「介護入門」

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長距離を電車で移動する暇つぶしに手に取った。
けれど、どうやら片手間で読むには向かない本だった。
介護という重いテーマを、ろくでなしの主人公が
独特の視点で描くのが印象的である。

小説は最初から最後まで独特の語り口調で進むので、
始めは違和感を覚えるかもしれないが、
特に読みにくいということもない。
むしろ、介護の話が進むにつれて、物語に引き込まれていった。

頻出する著者の痛烈な批判には、時折、笑い、強くうなずき、
時折、耳が痛くなり、考えさせられた。

直木賞と比較するのはルール違反を承知で言えば、
同賞を受賞した奥田氏の著作も面白く読ませてもらったが、
それは（あえて悪く言うならば）技巧を凝らした商業的文章であるのに対し、
モブ氏の文章はどこまでも真摯。そんな印象を抱いた。

今年、僕が読んだ本の中では最も感銘を受けた。
実体験をもとに書いている作品なのは明らかなので、
次作が今回のクオリティーを保っていられるか。
今から楽しみである。