サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. ポコさんのレビュー一覧

レビューアーランキング
先月(2017年6月)

ポコさんのレビュー一覧

投稿者:ポコ

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本31歳ガン漂流

2005/08/06 13:26

ダンディズム

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、ガン告知から死にいたる、闘病日記3部作の第1部にあたります。2年前に刊行されたものですが、その時点では著者の奥山氏はまだご存命でした。ですから死の宣告を受けた後の、ガン患者としての日常生活が淡々と綴られるだけの本書は、刊行時点では、決して著名とはいえない30代の都会に生きる男性の、結末の見えない日常雑記に過ぎない印象は否めなかったと思います。しかしその奥山氏も、医師が予言した「後2年」の言葉通り、本年4月に亡くなられました。そしてテレビや書評で取り上げられたこともあり、多少は世間に名を知られるようになりました。そうした点も踏まえ、既に結末が明らかになったその後の運命の出発点として、2年前とでは比較にならぬほど本書の存在意義は大きくなりました。
私は10数年前、奥山氏とほぼ同じ年齢だった時に、ガンを告知され、1年間ほど闘病生活を送った経験があります。幸いなことに早期発見だったことと、治療が奏功したこともあって無事に完治しましたが、自分自身の経験と照らし合わせながら、本書を興味深く読みました。
告知から検査・治療にいたる過程での患者の心理状態は、私自身の経験からも、本書にある通り、意外に淡々としたものです。薬の副作用、採血時の苦痛、点滴ノイローゼ等の肉体的負担についても、本書にある通りでした。闘病生活についても、奥山氏が病室でプラモ作りに精を出すのと同様に、私も入退院を繰り返しながら読書三昧の日々でした。この辺りの行動は決して特別なものではありません。病気から逃避しているわけではなく、病気をものともせずに病気以外の日常を送っている自分への、陶酔なんですね。
また闘病とは、孤独なものです。孤独と向き合い、孤独を愛さなくては、やっていかれません。もちろん家族の支えも必要です。奥山氏の場合は、両親・兄弟・友人が支えになっています。とくに母親の存在が大きい。次の「32歳」から「33歳」になると、家族の比重が増していきます。しかし奥山氏の筆致はベタついていません。孤独感とのバランスを絶妙にとりながら、家族への感謝の気持ちをさりげなく表している。ここに奥山氏が理想とする家族関係を見ます。
この3部作、ガン告知と病院生活、闘病中の日常生活、家族との関係と、病状悪化に伴なって、1冊ごとに描写の比重も変化していきますが、それらをあからさまに出さずに、まるで鼻歌を歌うかのように淡々とした筆致を貫いている。一種のダンディズムですが、このダンディズムへの「こだわり」にこそ、奥山氏の生への執着が感じられます。3冊を読んでからこの第1部を振り返ってみると、それが良く解ります。その点を受け入れるか否かが、本書の評価の分かれ目になるのではないでしょうか。
なお本の形態としては、著者が亡くなられたことも踏まえ、この三部作を「ガン漂流」として一冊にまとめた方がよいのではないか、と思います。星5つは3部作合わせての評価です。ただ一点だけ難を言えば、第3部の最後に収録されているご両親の手記、あれは読みたくなかった。読者としての私は、奥山氏ご自身と向き合っているわけですから。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

狂気の愛

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

私は、海にもダイビングにもまったく無縁ですが、興味深く読みました。
以前、映画「グランブルー」を見たとき、なぜ主人公が海に潜るのか、なぜ過酷な競技に挑むのかが、いまいちピンと来なかったんですが、これはさすがに世界チャンピオン本人が書いているだけあり、そのあたりがよく解明されています。根底にあるのは、ナルシシズムと狂気である、と見ました。本書は、一人のナルシストが、自分自身の業と率直に向き合い、妻の死さえも悔恨とともに美化した奇書である、と思います。
マインドコントロールの面から読んでも面白いですね。記録を追わず、精神性を求めた妻オードリーを、「君なら出来る」という言葉で、追い込んでいく。弟子として師の言葉を信じ、そして夫の狂気を秘めた野心に命懸けで応えることで愛を立証しようとする妻(もちろん自分自身のために)。まさに狂気の愛ですね。まるで濃密なメロドラマを見ているようですが、「アビス」のジェームズ・キャメロンが映画化するんだとか。これは大いに期待できそうですね。
フリーダイビング界の対立に触れている点も興味深い。ライバルであるペリッツァーリが、フリーダイビングをあくまでも「スポーツ競技」として考えていたのに対し、著者ピピンは、むしろ「未知への冒険」として考えていたようです。冒険・スポーツ・精神性の三者葛藤のドラマとしても面白いです。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2 件中 1 件~ 2 件を表示