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先月(2017年8月)

水月伽夜さんのレビュー一覧

投稿者:水月伽夜

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本嗤う伊右衛門

2003/07/21 21:04

哀しい恋の物語

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 怖い。悲しい。面白い。
 読み終わったときの気持ちは、この三つが入り混じった複雑なものだった。

 内容としては、『岩と伊右衛門って人がお互い想ってるのに結ばれない話』である。簡単にいうなら上のように一言で終わる。それを見事に面白く、そして怖く複雑に描いてあるのはさすが京極夏彦、というところだろう。

 この本の怖さは、『人間の汚さ』が本を通して鮮明に見えるところだ。
 強い者、ここでいうのは権力のある人のことを指すが、その強い者たちは自分のしたいように、好き勝手に行動する。そのせいで弱者の人生が壊れていく。
 結ばれない二人、狂ってしまった女、復讐者となる男…それから、生まれたばかりの赤ん坊。
 強者たちは自分が破壊という行為をしていることに後悔しながら、もしくは歓びながら、それに気づいていないフリをする。

 どう見ても悪役としか思えない、『人間の汚さ』をありありと見せつけてくれる喜兵衛。
 読んでいる最中はこの人が憎くてしょうがなかった。そしてまた、怖い人でもあった。
 なぜなら、人間なら誰でも喜兵衛になることができるからだ。
 見事なまでに自己中心的な性格。計算高く、ずるがしこい。屈折した愛情表現。人が悲しんでたり、困ったりするのを見たいがために策略をめぐらす。他人が幸せなのは許せない。また、あまり人を信じていない人のようにも感じた。
 しかし最後にわかるのだが、喜兵衛は寂しい人だった。孤独だった。

 私は喜兵衛が言う、腹に「泥が湧く」という表現が一番印象に残っている。そして、その状態を理解することもできた。すごく腹が立っているときに感じる、不思議な感覚である。言葉にするのは本当に難しいのだけれど。
 ただ、そうなったからといって喜兵衛のようにはならない。たぶん自分でもわからないなんらかの方法で、解消してしまうからだろう。だから私の場合、その腹の「泥」は長続きしない。
 喜兵衛にはその方法がなかったのだろうか。どうしてもそう思わずにはいられない。

 読み終わるまではずっと、「岩が可哀相。伊右衛門が可哀相」とくりかえし、くりかえし思いながら読んでいた。
 けれども、本当に“可哀相”だったのは誰だったのだろう…

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