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先月(2017年6月)

アリアドネさんのレビュー一覧

投稿者:アリアドネ

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本ワタシが決めた

2003/06/20 00:11

自分の言葉で語るということ。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ある身体障害者の方が「僕にとって辛いのは、ゆっくりとしか歩けないことじゃなくて、<あの人はゆっくりとしか歩けなくて可哀想だ>という目で見られることなんですよ。僕は僕のペースで歩いてるだけなのにね(笑)」と言われたのを思い出しました。
 本書は風俗で働く人たちが、自らの仕事について語った文集です。本書に続いて『ワタシが決めた2』も出版されています。
 私たちは風俗で働く人たちについて「好きでもない人とSEXするなんて辛くないの?」とか「親や彼氏に申し訳ないと思う?」という風に思いますが、彼女たち自身が感じていること・悩んでいることは、ちょっと違うみたいなのです。当事者の声を聞くことの大切さを感じました。

≪女性が性的サービスを売ることで、警察に捕まったり、差別を受けたり、自分を責めたりすることがない社会がいいなと思っている。≫(花房みつこさん)

 文芸評論家の福田和也さんが、こんなことを書いていらっしゃいます。

≪売春をしてはいけないという、日本以外の婦女子には万国共通で理解されている道理が、なぜ日本人には理解できないのか。それを個人の意志だの、自由だの、市場原理などで説明してやらなければ、納得させられないのか。
 私が、日本人はバカだと云うのは、こういうところです。明々白々の道理を、空論によって説明し、納得しようとする、しなければ気がすまないからです。
 それを「バカ」と云わなければ、何を一体「バカ」と云えばよいのでしょうか。≫
(福田和也『なぜ日本人はかくも幼稚になったのか』ハルキ文庫)

 この福田さんの問いへの答えのような言葉を、本書「ワタシが決めた」で見つけました。

≪ね、私の仕事、どう思う?
 わたしは、「あなた」がどう思うかが聞きたいの。
 あなたがもし、「君が他の人に裸を見せたり、他の人のおちんちんをくわえることが感情的に嫌なんだ。」と言うのなら、それについて私達は話をすることができると思う。
 あなたはまだ、自分がどう思うかについては話してくれていないよね。
 あなたとは何度かセックスしたけど、私はあなたとセックスだけでなく、話がしたいの。
 私のこと、どう思う?≫(内藤あかりさん)

 この内藤あかりさんをはじめ、本書に文を寄せている皆さんは、決して「幼稚」ではないと思います。むしろ、福田さんよりずっと知的にさえ思えたのですが、あなたはどう思われますか?

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紙の本ピス

2003/06/20 00:16

優しくて切ない「現代の童話」

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 現代の性風俗をテーマにしていても、どこか懐かしいような気がするのはなぜでしょう。ずっと昔、どこかで読んだような…。これって、「童話」ですよね。たぶん、アンデルセンあたり。『絵のない絵本』とか。

≪とつぜん目の前に現れたあたしを、あたしのなかのきれいな血や涙やおしっこを、おじさんはいつものように無言で確かめ、いつまでもいつまでもいつまでも記憶に留めてくれるだろう。それでいい。あたしは救われる。≫(「Piss」)

 「あたし」にとって、「おしっこ」は確かに「きれい」なのです。「おしっこ」をお金で買う「おじさん」は「優しい」のです。それはべつに「逆説」というほど珍しいことではないですよね。

≪スカトロは世間一般に、まったく認知されていない。もしそのことが会社や家庭でばれたなら、彼のみならず、私が出会ったすべてのマニアは、一生消えない烙印を押されるだろう。彼らがそんな目に遭うことを私は絶対に許せない。
 私が知る限り、彼らは皆紳士だ。自分らが虐げられることの痛みを知っているためなのか、優しさや美しさに人一倍敏感な人たちかもしれない。一体誰が、道に落ちた服を見て、その持ち主の子供のことを思いやり、花壇の花にまで気を配ることができるだろうか。醜さは、うんちを愛することではなく、うんちを愛するというだけで人の価値を判断する人々の心の中にある。≫(徳井唯「うんちまみれの紳士たち」、松沢呉一編『ワタシが決めた2』所収)

 もし漫画というメディアだったら残酷な絵になってしまうようなシーンも、室井さんは詩的な言葉で包み込んでしまうから、優しい暖かい手触りが心に残ります。

≪つま先でポチの背中をつついた。ポチはじっと丸まったままでいる。近づくと、彼女は細かく震えていた。怒りは来たときとおなじように、急速に去っていった。ただ惨めな気分だけが残っていた。
「おい」
 ポチの顔に指を伸ばす。頬にキョウタの指が触れると、ポチの背中がびくんと大きく波打った。キョウタはポチの身体を後ろから包みこんだ。彼女の震えが止まるよう、抱きしめつづけた。あー、あー、あー、ポチが我慢していた嗚咽を漏らす。キョウタはポチの身体を反対にして、自分の膝に彼女の頭を載せた。彼女は大きな瞳に涙をいっぱいためていた。キョウタは彼女の頭をいつまでも撫でつづけた。≫(「退屈な話」)

 この「あー、あー、あー、」という声、どうしてこんなに愛しいのでしょうか。

≪ある日、プレイの合間に一息つこうと布団から離れた瞬間、その人はいきなり私の半身を抱き寄せ頭を撫でた。そのとたん、私の目から涙がぽろぽろ落ち始めた。何故泣いたのか、いや、その時は泣いている事実にも気づいていなかったのかもしれない。そのくらい突然涙が落ちた。…もしプレイ中に私が死んでしまっても、きっとその人は逃げないだろう。けれどもちろんそれは後から気づいたこと。その時はただただ泣き続ける自分に驚いていた。「ばかだなあ」とその人は笑顔で答え、「辛かったのか」と言った。その人に私が思っていたような気持ちは無かったかもしれない。けれど私はその日から子供になり、そして文字通り犬になった。≫(麻倉かなえ「それが教えてくれたこと」、松沢呉一編『ワタシが決めた2』所収)

 どこか懐かしいから、登場人物の姿を「想像する」のではなくて、「思い出して」しまいます。漫画や映像でないと表現できないことも沢山あって、でも文学でないと表現できないことも確かにあって、だから室井さんの小説は、現代の「絵のない絵本」なのだと思います。

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