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  3. 遊子さんのレビュー一覧

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先月(2017年4月)

遊子さんのレビュー一覧

投稿者:遊子

25 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本永遠の出口

2006/03/02 11:47

思い出も大事でも今も大事

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ひとりの女の子の小学4年生から高校を卒業するまでの成長を描いた
連作短編集である。解説で北上次郎さんも書いているが、
卒業するまで何にもなかったなと今ではすっかり忘れているが
こんなにも多くのことが、感情のもつれと不安と怒りが、
その日々にあったことをこの小説は思い出させてくれる。
小学生のころ、友達のお誕生日会にお呼ばれした。そのプレゼントを選ぶために
500円を握り締め、ファンシーショップに行ったこと。しかも、500円の文房具を
選ぶのに1時間も2時間も吟味して、「リボンをかけてください!」と言うときの満足感。
小学生にとって先生は絶対の存在。先生の言うことはいつも正しいと信じ
逆らうなんて選択肢さえ持ち合わせていなかったあの頃。
かと思うと中学になると絶対の封建社会で先輩こそが従うべき絶対君主だったこと。
そういえば、私も中学生のころ先輩に呼び出されたことを思い出した。
たいしたことはないことだけど、そのころ私の中学では靴下は白。
ワンポイントまでならOKだった。それで、ワンポイントの靴下を履いていた私は
髪の赤茶けた、1年生でも名前をフルネームで知っている有名な先輩に
呼び止められたのだ。
「ちょっと、そこの1年。ワンポイント履いてるけど1年はダメなの。
私たちも1,2年のころ我慢したから今履けるんだから。わかった?」
別に怒るような口調でもなんでもない。でも、こんなことで当時の私は
ビビリあがり、必要以上にでっかい声で「すいません!」といってあやまった。
今思うと中学生なんてほんの子どもなのに、あの当時は1つ学年が上なだけで
ずいぶん大人に見えたなあ、とほほがゆるむ。
だれもが通過してきた小学生、中学生、高校生時代。それぞれのステップがあって
それぞれの時代にはそれぞれの倫理や譲れないものがあった。
今思うとなんでもないこと。でも当時の私には大問題。
ああ、もうあの時と同じことをしてもドキドキしないんだなと思うと
寂しくもあるけど、10年後20年後、今の私を思い出して同じ思いを抱くかもしれない。
そう思うと、今私がドキドキするものを大切にして、そのドキドキを
味わいつくそう。そんな気持ちになった。
だから、10年後20年後もずっと手元において、ときどき読み返してみよう。
そう思える小説。

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なれる自分の中で一番の自分になるために

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

母親から手渡された指輪、アレクサンドライト。
原価にして10万ドル。
そんな指輪と同じ名前のアレックス。
彼が親友、友達、恋人、家族と関係を築く中で成長し
自分のルーツと未来を模索する物語。
人は日々選択することで生きている。
それは、スタバでオーダーするコーヒーの種類であったり
受験する高校だったり、大小様々だ。
そして、生まれてこの方、何億、何兆・・いやそれ以上の
選択をしてきた末端に今の私がいる。
今までしてきた選択のすべてが正しいとは限らない。
無限に繰り返す選択のなかで、必ず後悔しうるのだ。
いくら真剣に出した答えでも、やっぱり後悔することもある。
アレックスも選択する。
どちらも努力し、精進して大きな大会にでても決して
引けをとらない柔道と空手。
けれども、彼はトップを目指すために柔道を捨てた。
友達に自分らしく生きてほしいから、10万ドルもの大金を
友達に投資することも決めた。
いろんな選択肢のなかから選び取る。
しかし、空手の試合のときにふと思う。
試合をしていると自分自身と戦っている気がする。
自分が「選択」しなかった方の影の自分と。
勝ったときは自分の選択は正しかったと思うけど
負けると自分が影なんじゃないかと思う。
私事になるが、私はこの春大学を出たが
企業に正社員として「就職」しなかった。
自分がやると決めたことが、企業に入って正社員になることとは
違ったのだ。リスクはたくさんある。
毎月の収入に波があるし、保険も年金も全額自分で払わなくてはいけない。
家族や親戚から大学まででたのに就職できなかった人と言われる。
不安で不安でたまらない夜もある。そして思う。
私は間違った選択をしたのではないか・・・・。
しかし、このマンガのなかでアレックスは教えてくれた。
『どっちを選んでも後悔するなら、どっちを選んでも同じだよ・・』と。
『欠点だらけの自分、でも、いつでも一生懸命だった。
自分を嫌いにならないために、おれは戦い続ける』
どちらを選んでも後悔しえる。ならば、信じて選んだ道を
素直に受け入れていこう。時には選んだ道を後悔し、
違った道を選んだ先の自分に思いをはせてもいいじゃないか。
欠点だらけの私だもの。そういうこともある。
でも、自分で自分が嫌いになるような選択だけはしないでおこう。
そう、思えた。
自分の中には「影の自分」どころか、選択選択のなかで切り捨てていった
無数の「なりえた自分」がいる。
ひとりになった時、つらいことがあった時、無数の切り捨てていった自分が
ひょっこり顔をだしてくる。
「ほら、私を選んでおけばよかったのに」といいながら。
でも、結局は自分の選んだ道しか前に広がってない。
なれる中で一番の自分になるために、たくさんの選択を繰り返し
選んだからにはその道を歩いていく。
最後、10万ドルのアラクサンドライトにふさわしい気分になれた
アレックスのように、私も今は順風満帆とはいかないけれど
きっと成功してやる!と心に誓った。

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紙の本プラネタリウムのふたご

2004/02/27 20:16

だまされる才覚

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

プラネタリウムの星々は近くで見たら電球だし、手品にはちゃんと
種がある。わかっている。わかっているけど、私たちは電球の星々に
思いをはせ、手品のまやかしにうっとりする。
これらは現実の世界から少しの間だけ私たちを連れ出してくれる
なくてはならないものだ。

プラネタリウムで育ったふたごはプラネタリウムの語り部と
人気沸騰の手品師になった。ふたりは別々の場所にいながら
同じことを仕事としてきた。みんなを日常から連れ出し、夢の世界へと
いざなうのだ。そして、明日からも頑張ろう!とお客さんに思わせる。

今、私たちは「癒し」を求めている。そう、プラネタリウムや手品や
いろんな非現実を求めているのだ。求めているのに、手に入れることが
できない。これは「だまされる才覚」をみなが持たなくなったからでは
ないだろうか。この物語に出てくるふたごや村の人々はみんな
「だまされる才覚」に秀でた人々だ。そしてふたごのひとりタットルは言う

『ひょっとしたら、より多くだまされるほど、ひとってしあわせ
なんじゃないんだろうか』

手品の種を執拗に見つけようとしたり、プラネタリウムなんて
ニセモノだと鼻で笑ったり。自分から「癒し」を放棄してないだろうか。
村の人々は自分が「だまされている」とわかっていて敢えて
わからないふりをする。なんて粋なんだろう。

ここで、「だまされる才覚」を身に付ける術を及ばずながら
伝授しようと思う。1つ、童心に返ってみること。2つ、素直な気持ちを
忘れないこと。3つ、『プラネタリウムのふたご』を読んでみること。
GOOD LUCK!

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紙の本手紙

2004/02/13 21:37

結局私たちはこの社会の中で生きていくしかない

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

結局誰が一番辛い目にあって、誰が一番悪いヤツなんだろうと
考えると「現代社会」ってヤツが問題なんだろうなと思った。
けれども、私たちはこの「社会」ってヤツのなかでしか生きられない
生き物なんだ。

弟の進学費用がほしくて犯してしまった強盗殺人。
被害者、被害者の家族は理不尽な死に本当に辛い思いをしたと思う。
そして、殺人犯の弟というレッテルを貼られてしまった加害者の弟。
彼はそんななかで、ひとりで生きていくしかなかった。
人生のターニングポイントではいつも、殺人を犯した兄の存在が
成功の邪魔をした。毎月送られてくる兄からの手紙は、だんだんと
疎ましいものになっていく。けれども、誰が弟を責められるだろう。

また、どんな思いで兄は毎月弟に手紙を書きつづけたのだろうか。
体を壊すまで働いて、行き詰まって、弟を進学させたいという
気持ちが膨らみすぎて。強盗殺人を肯定するつもりはない。
けれども、強盗の動機が悲しすぎるではないか。
塀の中で兄だって苦しんだに違いない。

「勧善懲悪」というのは人々がつくりあげた理想なんだとつねづね思う。
悪役をつくっておけば、自分はそうじゃないと区別して安心し、
そいつを懲らしめることで丸くおさまる。けれども世の中はそんなに
単純じゃない。

最後の最後で、涙をこらえた。ここで泣いたら涙といっしょに
主人公たちの苦悩や辛さが流れていってしまいそうだから。
ぐっとこらえて噛み締めるんだ。
世の中は白と黒だけで成り立ってるんじゃない。

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紙の本GOTH リストカット事件

2004/02/18 21:40

心地よいドンデンの裏切りはあなたの期待を裏切らない

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

やっぱり乙一作品はすごい。そう思った一冊だった。
前評判が高いと読者は期待して読み進める。
すると、ちょっとくらいの意外さ、面白さでは「こんなもんか…」
とがっかりしてしまうものだ。もし、前評判を聞かなければ
それなりに楽しめたかもしれないのに…なあんて。

この『GOTHリストカット事件』はこの世に乙一の名前を
知らしめるきっかけになった作品だ。
私は読む前からかなり期待していた。そして、ページをめくるごとに
先の展開をよみ、想像をめぐらしていた。
けれども、収録作品6本それぞれが私の予想の一歩先をいく
結末を迎えたのだった。小気味いいほど読者を翻弄し
最後のドンデンで裏切る。私としては「やられた!」の一言だ。

この物語は「僕」と「森野」という少女の周りで起きた
猟奇的な事件を描いたものだ。正直グロい描写も多い。
このような描写が生理的に受け付けない人にはお勧めしないが
この物語をおぞましい残酷殺人物語だとは思ってほしくない。
「生まれついてそうだった」殺人者を怪物として書くことによって
その怪物に付きまとう「死」を私は考えることができた。
そして、人間らしい感性とそれをもたない怪物とを比較することで
改めて「人間らしさ」それに伴なう「生」を考えたのだった。

「期待して読んでつまんなかったら…」なんて思わず大いに
期待して手にとってほしい。きっとあなたの想像をこえる結末が
そこにあるはずだ。

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紙の本センセイの鞄

2004/02/02 00:17

素敵な気持ちをありがとう

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

しみじみとした小説である。いつも、ひとりで楽しく生きてきた
ツキコさん。たまたま高校時代の国語のセンセイと居酒屋で
居合わせるようになった。お互いのことを思い出していっしょに
飲むようにもなった。けれども、ふたりの仲はとんとん拍子に
進展していくわけではない。会わないときは1ヶ月も会わないし、
数週間しゃべらなかったりする。かと思えば毎夜居酒屋に居合わせて
ふたりでしみじみ飲んだりする。
焦がれるような熱さはない。身震いするような冷たさもない。
陽だまりのような関係。

告白しよう。センセイに惚れてしまった。マジ惚れだ。
なんて言うと「女性がそのような言葉使いをしてはなりませんよ」
とセンセイにお説教されそうだ。…いや、してほしいのだけど。
ツイードの背広の背筋をピンと伸ばした後姿について行きたい。
突然「ツキコさん、ならぬ遊子さんデートをいたしましょう」
と誘ってほしい。きちんと整頓されてそうで、実はもやもやと
物が置いてあるセンセイのお家にお呼ばれしたい。
もはや、重症である。

センセイには「粋」とか「ハイカラ」という言葉がよく似合う。
それで、実は茶目っ気たっぷり。そんなセンセイと、小さい頃は
大人びていたのにだんだんと子供になっていったツキコさん。
お似合いだ。ふ〜む。「お慕いしております」とセンセイに
恋文でも書こうかと思ったがやめておこう。あきらめも肝心。
けれども、この小説の女性読者は少なからずセンセイに思いを
よせるだろう。淡いあこがれ。こんな素敵な感情を思い出させてくれて
ありがとうとこの小説にお礼が言いたい。

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広げようマンガの輪

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「マンガって面白いの? 何がいいの?」
と聞く人にすっと手渡してあげたいマンガ。マンガを通した人々の
心のふれあいをあったかく描いています。

古書店だけに登場するマンガはちょっと懐かしいものばかり。
若い人には題名くらいしか聞いたことのないマンガも多いかも。
でも、その本にまつわるエピソードがしっかりしているから
知らないマンガでも十分面白い! むしろ、そのマンガが
読みたくなってしまう。

登場人物は各エピソードごとに老若男女いろんな人が出てくる。
しかし、みんなの共通点はひとつ! 「マンガが好き」ってこと。
そして、最後にはみんなマンガのおかげで幸せになっていく。
マンガ好きとしては「そうそうそう! これがマンガの醍醐味だよ!」
と共感し、あまり読まない人は「…マンガ読んでみようかな」
という気になってしまう。なんて不思議な物語。

全国のマンガ好きさん、この「金魚屋古書店出納帳」をあまり
マンガを読まない友だちに勧めると、あなたの周りのマンガの輪は
どんどん広まっていくかもしれませんよ(笑)

さてさて、ここで問題です。この書評に「マンガ」という言葉は
何度でてくるでしょう? 題名も忘れずに!
よっぽど私もマンガがすきなようです。正解は第一巻の最初に
出てくる作品の題名×2(笑)

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紙の本天国までの百マイル

2004/01/04 21:29

百マイル突っ走った先に、天国はあった!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 出来すぎだと言う人もいる。泣かせに走っているという人もいる。でも、私はこの小説を読んで大いに泣ける私でいたい。頑張って女手ひとつで4人の子どもを育てた母。その母を救うために、世間的に見たらどうしようもない末息子は百マイル突っ走った。
 なにが出来すぎだと感じるのかというと、苦労性の母。育てた子どもは巣立ち、自分は心臓病でも子ども達には迷惑掛けたくない。今のご時世そうした人は少なくなったんだろうと思う。だから、「もう、そんな人いないよ」と感じてしまう。しかし、10年前、あるいは20年前には確実に苦労性の母は存在した。私たちが忘れているだけなのだ。苦労性の母がリアリティを失うほど少なくなった現代は素晴らしい。けれども、そんな人がいたということを忘却してしまってはいけないと思う。この小説は日本が苦しかった時代に頑張ってきた母を救う物語だ。
 母は言う「幸せはお金で買える」のだと。今私たちは口々に「本当の幸せはお金では買えない」と言う。これは衣食住が満足にできてから言える言葉だ。食べ物とか住むところとかに不自由したことないから言える言葉だ。毎日暖かいご飯が食べられる幸せ。毎晩暖かい布団に包まって眠る幸せ。こんな幸せを得る為にお金は必要だと母は言う。もっともだと思う。 
 モノがあふれた現代で、人間の基本的な幸せを再確認させてくれる小説。まさに「泣きながら一気に読みました」と柴崎コウさんにコメントして欲しい小説No1です。

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わが食いしん坊人生に一遍の悔い無し!

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いろんなところで公言してますが、私は外でおいしいご飯と
おいしいお酒を飲むことが大好き。自ら”食道楽”と認めるほど。
そんな私が生唾を飲み込みながら、何度も読み返すのがこのマンガ!
もう、本当にどの店もどの料理もおいしそう!
よしながふみさんの初グルメショートショートなんですが
登場人物はYながFみさん(笑)彼女も相当な食いしん坊。
恋人ではないけどいっしょに住んでるS原さんやゲイの友人
甘党の友人、食っても食ってもスレンダーな燃費の悪い友人
食いしん坊な友人たちを巻き込みながら食いしん坊街道をつっぱしる。
デートといえば飲茶を食べ、謝罪のためにすしをおごり
お別れ会といってはベトナム料理に舌鼓。
もう本当に何度もいうけどお-い-し-SO-!
あったかくって香ばしくってご飯と一緒にふわっと
ほどける焼き穴子のにぎり(タレ)とか
がっつりかにのダシの味のするトマトクリームソースの
かにのリゾットとか
踊りたい・・踊りたくなるほど悶絶する
甘くて濃厚で肉がとろける赤ワイン煮・・とかとかとか。
もう、東京まで新幹線乗ってでもたべに行きたくなってしまう。
ほらほら、食べたくなったでしょう。
そして、自分の連れてった店にけちを付けられんのだけは耐え切れん!
と言って、久々にできたヒットな彼氏に別れをつげて、なおかつ
わが(食いしん坊)人生に一遍の悔い無し!と言い切る
Yながさんには惚れる。
純粋にマンガとしても、グルメガイドブックとしても楽しめます。
願わくば、紹介するお店の関西バージョンでぜひ2作目を!

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紙の本麦ふみクーツェ

2005/08/10 22:46

この社会を最先端でつくっているのは「へんてこ」な人間なんだと思う

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この物語に出てくる人たちは「変わった人」が多い。
主人公は「ねこ」。人一倍体がひょろ長くて、
誰よりもねこの鳴きまねがうまい。
ねこのお父さんは数学者。素数をこの世でもっとも美しいのものと信じ、
ねずみと素数の実験に没頭している。
ねこのお祖父ちゃんは、誰もが認めるティンパニスト。
普段は好々爺なのに、一度打楽器のバチをにぎったら
人がかわったように怒鳴りちらして楽団をまとめあげる。
三人が暮らす町にはたくさんの変わった人たちがいて、変わった事件がおこる。
時にそれは笑いに満ち、時にそれは絶望的なまでに悲しい。
そして、いろんな経験をしながらも、自分の「わざ」は音楽だと気づき
ねこは音楽の世界へと進んでいく。
ねこの先生である世界的な音楽家のチェロリストはいう。
へんてこはめだつ。めだつから人よりひどいめにあう。
それは、森にハトの群れがいて、その中に一羽だけ白いハトがいたら
真っ先に狙われるのはその白いハト。
りんごの木にひときわ大きなりんごがあれば、一番にきつねやキツツキに
狙われるのはその大きなりんご。
へんてこってだいたい、真っ先にひどいめにあう。
へんてこで弱いやつは、結局はひとり。だからそれぞれ
自分のわざを磨かなくてはならない。
そのわざのせいで余計めだっちゃって、いっそうひどいめに
あうかもしれない。でもわざをみがかなくてはいけない。
そこで、ねこは気づいた。
なんで、へんてこはそうまでしてわざを磨かなくてはならないのか。
それは、つまりへんてこさに誇りをもっていられる
たったひとつの方法だから
ねこにとってそのわざは、音楽だった。
私は、日本なり、社会の最先端を開拓していっている人種って
ここでいう「へんてこ」な人。今風にいうと「オタク」という
人種なんじゃないかって思う。
ひとつのことを突き詰めて、わざを極めていった人たち。
いまやITなんてもてはやされているけど、その最先端を担った人たちって
きっと学生時代は「オタク」と呼ばれていたかもしれない。
その他、日本のアニメーションは世界中で注目されている。
彼らは自分のへんてこさを極めて、へんてこさに誇りがもてた人たちなんだと思う。
そして、へんてこな人たちは、ひどいめにあってきたから人に優しい。
人の痛みを知っている・・・。
世はいじめだ引きこもりだと悩む青少年が増えている。
自分がへんてこだからいじめられる。自分がへんてこだから人に受け入れられない。
いろんな悩みがあって、つらいと思う。
けれども、いっそそのへんてこさを極めていってみてはいかがだろう。
きっと、明日の日本を作っていくのはそんなあなただから。
『麦ふみクーツェ』
読み終わったらきっと優しくなれる。大人にも読んでほしい。
でも、思春期と呼ばれる人たちに私は一番読んでほしい。

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紙の本ツ、イ、ラ、ク

2004/02/24 23:15

姫野カオルコの集大成

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

姫野カオルコ作品の集大成である。
以前からエッセイに笑い転げ、恋愛ベタな主人公のでてくる小説を
読んでは「女」ってヤツは…なんて思っていた。
特にエッセイは何度読んでも面白いと他人にまで勧めるくらいだ。

この『ツ、イ、ラ、ク』はそんな姫野作品の集大成ではないだろうか。
物語のなかでナレーターに徹していた作者がチラリと顔をみせ
自己主張していったりする。それがまたエスプリが効いていて小気味いい。
また、これまで作者が主張してきた「男」というのは小さい頃は
少年だったり、男の子だったりするが「女」は生まれながらにして
「女」という固有の生き物であるという持論を前面に押し出している。

小学校だろうが、中学校だろうが「女の子グループ」という
一見かわいらしいサロンは、実はどんな集団よりも恐ろしい。
新撰組の局中法度は何をしてはいけないと箇条書きになっているが
女の子グループのご法度は犯しても犯したことに気づかない
ことだってある。いかに自分がこのグループで安泰にやっていけるか
日々切磋琢磨しなきゃいけない。
そして、幼いからこそ、不条理が通る。オピニオンリーダーの
意見は絶対なのだ。…よく私もそんな世界を生きてきたなと
今になってしみじみ思う。

そんなサロンのなかでだんだんと社会性を身に付けていく少女の成長を縦軸に
大人の男との恋愛で見も心も成熟していく女としての成長を横軸に
物語は進んでいく。
ここまで顕著じゃないにしろ誰しも学校というサロンの中で
社会性という名のずるさや妥協を覚えて大人になっていくものだ。
「学生時代はよかったなあ」なんて口癖になっている人多いでしょう?
本当にそうだったかこの小説を読んで、振り返ってみては
いかがだろうか。

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紙の本ニシノユキヒコの恋と冒険

2004/04/02 14:17

完璧な人間より、人間臭い人間が幸せなのです

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


かわいそうなニシノユキヒコ。

これが私の率直な感想。ニシノユキヒコはたくさんの女性と知り合って、
たくさんの恋愛をするけれど、結局成就することはなかった。
これは、彼が付き合ってるさなかに他の女の人と関係をもったり、
たくさんの女の人に愛想をふりまくからではない。
本人は「自分はきちんと女の人を愛せない」と嘆くけれどそうでも
ないと思う。(浮気性はおいといて)ニシノユキヒコはけっこう女の人と
誠実に向き合っていると思う。自分の考えを相手に押し付けたり
相手の気持ちを無視したりはしない。
ではなぜ、彼が最後には振られてしまうのか。

完璧すぎたからである。

もちろんニシノユキヒコは完璧な人間なんかじゃない。けれども
女の人から見ると完璧な人間に映ってしまうのである。
かっこよくて、フェミニストで、頭もいいし、かと思うと少年のようで。
理想なのである。そんな男と付き合って、最初はとってもうれしいんだけど
ふと冷静になる。こんな人が本当に本当に私のことが好きなのか?
今は好きでもこれからもずっと私を好きなのか?
ニシノユキヒコに捨てられたら私生きていけない・・・。
口でどんなに愛してるといっても、人の気持ちはわからない。

そう、わからないのだ、人の気持ちは。ニシノユキヒコがどんなに
その女の人を愛していても、彼の完璧さがうそ臭くしてしまう。
浮気性の彼だけど、もし女の人が結婚にOKを出したら浮気なんて
しなくなったんじゃないかなと思う。

ああ、かわいそうなニシノユキヒコ。

完璧な人間。それよりもどこか不器用で女性よりも劣ったところを
もってる男のほうが幸せになれちゃう世界。
世の中ってこういうものですね。

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紙の本蹴りたい背中

2004/03/29 01:03

にな川っていい男だよ

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この小説を読んで、友人たちと討論してみた。
意外だったのは、あまりにもハツに共感する人が多かったこと。
「自分も高校時代まわりを冷めた目で見てた」とか
「群れる意味がわからなかった」とかetc…。
誰しも学校という場所に疑問を抱いているものなのだと実感した。

私がこの小説でよかったなと思うのはハツが被害者のいい子ちゃんじゃないこと。
「そんなに馴れ合って、群れて楽しいか?」と周りを冷めた目で見てる割に
虚勢を張ってるのが丸わかりでかわいい。
結局ハツがまわりと壁を作って、周りを見下して、孤独な自分をなぐさめる。
この人間くささがいとおしい。

あと、討論するなかで、誰もうなずいてくれなかったがにな川って
かなりイイ男だと思う。
ちょっとコアにアイドルが好きなだけで、誰に迷惑をかけてるわけでない。
オタクというと清潔感がないように思われるけど、彼は自分で洗濯まで
やってる。おまけに女の子に部屋を譲って死ぬほど蒸し暑いベランダで
眠るような男。ハツに対してもとても紳士的だ(時々自分の世界に没頭
してしまうけれど…)。
周りが自分をどうみてるか、どういうポジションにいるかも把握していて
客観的に自分をみれる。

ハツがなんでにな川を蹴りたかったのか。それは自分よりレベルとして
下だと思って近づいたにな川が自分よりもはるかにしっかりとしていて大きくて
もどかしくなってしまったからだろう。

自分が知りたくて、自分とまわり、自分と相手を比較して、試行錯誤して。
思春期の女の子のリアルな気持ち。
とっても人間くさくて、心をゆさぶる。
この小説が評価される所以はこの辺なのだろうと思う。

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紙の本ネバーランド

2004/03/17 14:57

子どもたちの社会

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「寮」それは、親からも教師からもあらゆる大人からも侵すことの
できない子どもたちのソサエティ。一般家庭というのは平和そうに見えて
(いや、平和なのかもしれないが)フェアじゃない。学費をだして
やってるんだから、育ててやってるんだから、そう言われたら
子どもとしては俯くしかない。実際親はそんなこと思ってないかも
しれないが、子どもっていうのは妙な引け目を感じているもんだ。

しかし、寮において、誰かに引け目を感じながら生活することはない。
先輩後輩なんてのもあるけど、たかだか数年寮での経験が多いだけ。
後輩は寮での生活をうまくやっていくために、先輩をたてることは
あっても引け目なんて感じない。文中の言葉を使わせてもらうなら

『この一見乱雑でどうしようもない世界では誰もが対等だ。それでいて
 親も教師も侵すことのできない一種の聖域』

なのである。とある冬休み、みなが長期休暇で実家に帰るなか
居残りを決めた4人の少年の寮での生活を描いたのが本作品だ。

4人のキャラクターはさまざま。冷静沈着な光宏。天才肌の統。
おおらかで男らしい寛司。まじめでいい奴な美国。
はじめはおっかなびっくりに接する4人だが、同じ鍋をつついて
けんかして、だんだんと自分をされけだすうちに4人の中の
自分の役割をつかんでいく。
寮というところで生活すると、おのずと自分の役割がはっきり
していくものだ。「あ、あいつとここがかぶっている」
「これだったらあいつのほうがうまいんだよな」なんて考えるうちに
自分の個性が磨かれていく。個性とかキャラクターなんて人との
コミュニケーションのなかで作られていくものだと思う。
そうやってできた親密な関係はとても居心地がいい。

たわいもない寮の謎や、ちょっとヘビーな家庭の事情。
そんなものに立ち向かって大人になっていく4人を自分も
ハラハラしながら見守っていた。高校生はなんて速さで大人に
なっていくんだろう。気づくと近所のおせっかいオバサンみたいな
心境になっていた。やれやれ。

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紙の本蛇にピアス

2004/03/08 15:03

私にとってのニュージャンル

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現代を象徴した小説ではないだろうか。
この小説の登場人物、ピアスに刺青、スプリットタン。
外見こそキテレツだけど、今の若者を具現化したような性格。
面倒くさい、キレやすい、希望的観測で行動する。
悩み、日々の辛さを自分のなかで対処できずに、具現化したがる。
もしくは、具現化しようと思わなくても体の異常という形で表に出る。
自分を制御できない。こんなことを言う私も若者の部類に入るので、
いささかイタイなあと思う。が、これが現代の若者なのだ。
しかし、それでも生きている。ボロボロになってしまった主人公だけど
最後彼女は生きることを選んだ。

正直読み始めたとき、言い切り調の文体が幼稚に思えた。
芥川賞の選考委員の方で、歯切れよい文体と称した方がいたが
私にはつたないように思えたのだ。けれども、読んでいくごとにどんどんと
物語の世界に引っ張られる。文体なんて途中から気にならない。
ラストも結局どうなのかはっきりしないところが、この小説を
生きさせたと思う。読後は不思議な哀しさに満ちている。
誰に対する悲しみなのか、主人公ルイになのか、はたまた彼女を
とりまく男たちになのか。それはわからない。

私が読んだ小説のなかで、ニュージャンルの小説だった。
未知の領域。怖いもの見たさで手にとってみたが、読んでみて
よかったと強く思う。

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