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レビューアーランキング
先月(2017年5月)

UMIさんのレビュー一覧

投稿者:UMI

4 件中 1 件~ 4 件を表示

内向的だっていいじゃない

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ひきこもり」をテーマにした本は何冊か読んだことがある。外に出られない人間に少なからず興味があるし、興味があるというのは自分が社会人としてまともに生活はしているけれど、「ひきこもり気質」というか素質というかそういったものをあわせもっているからだと思う。ソツなく社会に溶け込んでいるけれど、やっぱりどこかで無理をしている。社交的な振りはしているけれど、本当は手広く人間関係を築きたいなんてちっとも思っていない。『ひきこもれ』なんてタイトルに惹かれてしまったのには、それなりの理由がある。
読んだ後、なんだか気持ちがふわっと軽くなったような、自分はヘンテコな人間ではないんだと認めてもらえたような、そんな安心感がある。じっくりものを考えたり、自分の殻に閉じこもって内側に向かって掘り下げてみたり、そんな作業工程も必要なのだと、自信を持って良いんだと、優しく頭を撫でられたような気持ちになる。
新刊でもないし、大ベストセラーというわけでもないけれど、ボクは誰かにこの本を読んでもらいたい。自分を騙し騙し外へ向かおうとする人にも、実際に今ひきこもりがちになっている人にも、何かしらの作用があると思うから。外交的であることが優で、内向的であることが劣とする風潮に、こうも真っ直ぐに、こうもバカ正直に抗っている本があるということに、小さな爽快感がある。

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紙の本黄昏の百合の骨

2004/04/23 23:30

一度に読んだらもったいない。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 板チョコ入りアイスモナカは必ず3分の1残して翌日食べる。一度に食べてはもったいない。明日のお楽しみが冷凍庫に残っているというのが非常に重要であり、枕もとでほんのりと噛み締める幸福感が疲れきった現代人の生活に潤いを与えるのだ。

 恩田作品は一度に読んだらもったいない。
 必ずぐっと堪えて栞を挟む。悶々としながら床につき、ニ、三回連続で寝返りをうって毛布が絡まってもやはり悶々と考えを廻らしている。そんなに気になるなら続きを読めばイイのに。我ながらそう思う。しかし、荒んだ現代人の心を潤すには、悶えるほどの「お楽しみ」が時に必要なのである。熟成が大切なのはハムだけではない。
 翌朝、目覚めると同時に本を読み始める。ベッドの隅で毛布が「みの虫状」になっていようが、髪の毛が修復不可能な立ち上がりをみせていようが関係ない。ごくごくとコップ一杯の水を飲み干すように読みきった時は、やっぱり恩田陸はすごいよな、なんて安易な感想を漏らしている。
 だから、恩田作品は金曜日の夜に読み始めるのが好ましい。

 『黄昏の百合の骨』も一晩寝かせた逸品である。
 『麦の海に沈む果実』の理瀬が、少女らしい危うさと少女離れした冷静さで読者を引きつける。恩田陸の描く少女は、あまりにも自身を客観視しすぎていて恐ろしい。少女を演じることを背負わされている可憐な少女とは、いかにも窮屈そうだ。

 祖母の遺言で半年の間だけ血の繋がらない二人のおばと暮らすことになった理瀬。祖母の残した洋館「白百合荘」は、「魔女の家」と呼ばれている。彼女はこの場所で、ある物を見つけ出さなければならない。
 祖母の死と、魔女の家と、変死する猫。
 理瀬の周辺には不可解な出来事が巻き起こる。
 失踪事件と百合の芳香、そして、骨。
 さあ、どれが本線だろう。

 栞を挟む位置を間違えてはいけない。間違えると大変なことになる。
 一気に読みきってしまえば謎も解けてすっきりするかもしれないが、何の咀嚼もしなかった自分にしばらく呆然とした後、亜脱臼並みに肩を落として落胆することだろう。モナカの皮がしんなりしていてがっかりするのとは比にならない。

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紙の本蹴りたい背中

2003/09/06 19:40

大学生になっていたんですね。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「そういえばさ、爽やかな夏って過ごしたことある?」という質問はあまりにも唐突だったらしい。友人は豆鉄砲をくらった三白眼の鳩のような顔をした。いやいやもう大学生になってたんだ、というボクの呟きもあっさり無視された。サーファーと呼ばれている真っ黒な友人には愚問だったのかもしれない。

 前作「インストール」も賛否両論だったけれど、二作目は一体どんなものを書いてくれるのだろうかと密かに楽しみにしていた。密かに密かに待っていたら二年が経っていた。「ひきこもりの高校生が風俗チャット!」「最年少受賞!!」なんて衝撃的な文字が書店で躍り狂っていた当時、作家・綿矢りさを斜めに見ていた。目に見えてしまうわかりやすい不良ではなくて、冷めた目でほとんど観察していると言ってしまってもいい日常を送る少女。それゆえ上手く世間に馴染めない少女。そういう主人公を著者に重ねていた。だいたい、17歳かなんかで文藝賞をとってしまうこと自体不良っぽい。

 クラスに馴染めないハツとにな川。馴染めないのではなくてあえて馴染まないことを選ぶ。無理矢理誰かに合わせたりしない。そういうのがちょっとかっこいい。教室でたった一人で過ごす休み時間ほど孤独で永遠に思える時間はない。それでも意にそぐわない「仲間」をつくろうとはしない。それってちょっとかっこいい。あぶれ者の負け惜しみと言ってしまえば呆気ないけれど。
 モデルのおっかけにな川(「にな」はたぶん「蜷」)に振り回されつつも、そんなにな川から目が離せないハツ。決して甘酸っぱい想いではないけれど、にな川がもっと惨めになる姿を期待しているハツには、もしかしたら屈折した想いがあるのかもしれない。いや、もしかしなくても。

 ちなみに友人は鳩の顔のまま「俺って冬でも爽やかだがらよくわかんねー」と本気で言っていた。夏は暑いけれど、塞いでいた気持ちが午後八時の思いがけず涼しい風にさらさらと吹き消されていく、ああいう瞬間が好きだ。『蹴りたい背中』はたぶんそんな作用を持っている。

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四十九日

2006/12/10 01:50

「整理する」ということについて

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 十九歳の息子の突然の事故死から、四十九日の法要を終えるまでの五十二日間を綴った記録。あとがきも著者紹介もない美しい装丁の本は、緑の美しさとは裏腹に静かな悲しみを湛えている。
 率直で飾らない言葉は優しさに溢れていて、それでも混沌とした思いは言葉になりきれずに、国語の教師である著者の思いをすべては表現してくれない。そのもどかしさが、文字から滲んでくる。書くという行為で、悲しみも怒りも整理していこうとする様が、淡々と綴られている。
 人はこれほど大勢の人たちに支えられて生きているのかと気付かされ、家族とはこれほどまでに温かい存在なのかと目を開かされる。学校カウンセラーとして多くの子供やその親たちを救ってきた著者は、いかに自分が人に救われてきたのかを知ったと、何度もいう。
 いじめを苦にした自殺が続く中、人の命とはなんだろうかと考えることが多くなった。人が一人いなくなるということは、肉親だけでなくその人の人生に関わった多くの人たちを深く傷つけることなのだと思う。傷口に残されるのは混沌とした思いで、誰かを責めたり悲しみに浸かったりすることでなんとか埋め合わせようと皆もがく。
 先生。覚えていますか? 黒板に川の流れのような筋を幾本か書き出して「これが人生だとします。人生は必ず幸せの方向に流れています」と話してくれたことを。その川の中心に大きな岩を書いて、その周りに渦や逆流する流れを書き加えて穏やかな調子でこう続けたことを。
「今君たちがいるのは、この渦の中かもしれないし、幸せからは逆行しているように見えるかもしれない。でもね、人生は必ず幸福に向かって流れているんだから、もう少し我慢してごらん」
 あれは確か受験期で、皆息切れしていた頃だった。勉強するのが苦しくて仕方のない時期だった。僕は先生のそんな一言に救われた人間の一人で、まさかこうした形であなたの文章を目にすることになるとは思ってもみなかった。「本を読みなさい。本を読むことは他人の人生を追体験することだから」と授業の合間に言われた意味が、ようやく実感できたような気がする。
 先生。今あなたは川の流れに翻弄されているのかもしれません。でも、先生の乗った小船はたくさんの卒業生に支えられています。微力ながら僕もあなたを支える人間の一人でありたいと思います。

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