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    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

コシイさんのレビュー一覧

投稿者:コシイ

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紙の本ヴァーチャル日本語役割語の謎

2003/08/08 15:06

ヒーローはなぜ標準語を話すか

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「さすがに疲れたのぅ」「もう足が痛くて、一歩も歩けなくてよ」「おい君、どこか休むところを探してきたまえ」「へぇ、ちょっと見てきますだ」「チョト、そこのアナタ。休むところ、ワタシ知ってるアルヨ」
たったこれだけのやりとりで、私たちはそれぞれの発言者の性別やおおよその年齢、人種などの情報を察知できる。もしかすると話し手の風貌さえ目に浮かぶかもしれない。
私たちは日常の生活であまりにも多様で膨大な情報を扱う。そのために、私たちの脳はある工夫をしている。似た情報同士を扱う時にすべての情報を知らなくてもいいように、情報の共通点を特徴として抽出し、分類を行っているのだ。「男の人」ならば、「背が高く」「髭が生えている」「声が低い」という感じだ。これをステレオタイプというのだが、それを言語の問題として扱おうとしたことが著者の着眼点だった。

冒頭の例でわかるように、コトバのステレオタイプは、語尾などを変化させることで、話し手の社会的属性を認識できるようになっている。問題はこうしたステレオタイプとしての日本語が、いつから存在していたのかということだ。著者は膨大な歴史的言語資料を繰りながら、そのルーツを辿っていく。
それぞれのルーツについては本書を読めば分かるのでここでは省くが、共通するのはこれらのコトバが話し手の役割を表現するために作られた仮想言語だということだ。さらに著者の指摘は、標準語もそうした仮想言語の一つであることを告げる。原文一致運動の動きとメディアによる情報の浸透が交差した明治期に、知識階級たちの手によって(いや、口によって)標準語が登場するのである。

時に新聞などで「ら抜き言葉」「短縮語」などの例が引かれて、言語の逸脱を危ぶむ指摘が見られるが、言語というもの、本来は流動的なものであったのだ。

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