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先月(2017年6月)

あやさんのレビュー一覧

投稿者:あや

14 件中 1 件~ 14 件を表示

紙の本白い巨塔 新装版 1

2004/06/25 01:20

人間の生命の大切さを思う

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 教授選出選挙と医事裁判。重いテーマと全5巻にわたる大作であるが、丁寧な人物描写、膨大な取材による正確な事実により、引き込まれるように、あっという間に読み終えることができた。
 前半は、教授選出選挙。前任教授東と対立し、財前は義父の金銭面や人的な面での援助をうけながら、様々な策略をめぐらせる。その様子はさながら政治の世界のようである。本を読みながら、ドラマで大河内教授が言っていた台詞が頭をよぎった。彼は確か、こう言っていた。「財前君は、いつから政治家になったのかね」と。
 後半は、医療裁判。国際学術会議前後の多忙さからか、誤診により看者を死亡させた財前は民事裁判で訴えられる。裁判に勝訴すべく、医局内を統一し、特に担当医・柳原に対しては、教授という力を利用してその証言までもコントロールしようとする。完全にコンロトールが効いていたかのように見えたが、医局員をコマとしか捉えていない考え方に反発した医局員により、裁判の流れは大きく変わり、財前は控訴審で敗訴してしまう。その後、病が発覚、物語は悲しい結末を迎える。

 権力へのすさまじい執念をもつ財前。方や真実を追究し、看者に対し誠意を見せる里見。2人は同期であるが、医療に対する姿勢は全く反対である。教授選においても、医事裁判においても。さらに、学会や評議会議員選挙においても。それゆえ、小説でもドラマでも、里見=善、財前=悪、というイメージが強い。しかし、一歩引いてみれば、あのような財前がいたからこそ里見という医師が存在し、里見がいたからこそ財前という医師が存在したはずだ。そして、財前は自分が病になってはじめて、医師による診療を受けることの大切さ、安心感に気付いたのだろう。
 財前が迎えた悲しい結末、財前の手紙には、医師としての良心が少しだけ見えたような気がして、涙した。
 今でもそうなのかは分からないが、少し前まで、医師は神様と思われているような節が確かにあった。そして、自分や家族の身体を治してくれる医師との間で、気が付かないうちに上下関係に立ってしまっていることもあった。
 しかし、相次ぐ誤診報道により、この見方自体が崩れ、医療全体のあり方が変わってきているように思われる。
 人間の生命が他のいかなるものよりも大事だということを、改めて認識した。

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紙の本理由

2005/01/28 21:10

内容は難しいかもしれない。けれど、家族について考えてみませんか?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「第120回(平成10年)直木賞」受賞作品。
ところが、同じく直木賞候補になりながら受賞を逃した『火車』の評価があまりにも高いため、本書についての評価はネット上ではまっぷたつに割れている模様。ちなみに私は、この手の作品も大好きです。読破するには時間がかかるけれど。

評価が分かれてしまう理由は、あまりにも多すぎる登場人物(この本を読むときは、メモを作成しながら読むのがオススメ)。民事執行妨害、すなわち法律の話(火車は多重債務者でした)、といったところにあるでしょう。

ただ、執行妨害自体は、事件として扱われており、本書のテーマそのものは「家族」です。
この本には様々な家族が登場し、そのひとりひとりの事情(生活、生い立ち、生き方などなど)を、丁寧に描写しつつ、その悲喜劇が綴られていきます。
「家族」は、世の中で一番小さな組織ですが、血で繋がっているゆえに難しい問題を起こすのも事実です。でも、この家族という繋がり、以前よりも希薄になっていませんか?

ニュースで見かけたのですが、家族の団欒時間の少なさが子供の暴力化の原因になっているそうです。
最近は、子供部屋にテレビが置いてあることが多く、テレビはそれぞれで見る。そして見たままの状態で、次の日に学校に行くのが原因の一つではないかと考えられているそうです。
以前は違った。家族でテレビを見て、団欒によってその内容を消化する役割を両親が担っていたそうです。今は、「消化」できていないんだそうです。

思いっきり脱線しました。でも「家族」について考えさせられる話です。そして、すごく難しい作品です。

2度読んだけれど、間を置いてもう1回。
それだけの価値がある本です。

追加;本書の執行妨害として出てくる「短期賃貸借」は、その後民法の改正(平成16年4月1日施行)により廃止されました。

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紙の本砂の器 改版 上巻

2004/04/03 00:14

ドラマは終わってしまったけれど。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 先日まで放送されていた同名ドラマの原作本である。
 テレビでドラマ化されたとき、私はなるべく原作にあたるようにしている。目的は二つ。一つは、原作で書かれた一つ一つのシーンがどのように解釈され、どのように映像となっているのかを見たいということ。そして、もう一つは、ドラマとの違い。勿論、完全に再現するのはつまらないので、多少違いが生まれてくる。新しい登場人物を出したり、違う行動をさせたり。しかしそれによって、原作の良さが失われてしまったら、ドラマ化の意味は半減する。それを確認するため(少し意地悪だが…)。
 私にとって、ドラマ化作品の原作を読むメリットは、実はもう一つある。それは、「速く読めること」。私は読書のスピードに恵まれていない。しかし、この類の小説はストーリーが予めインプットされているため、分かり易い。「和賀」と書いてあれば、「あぁ、中居くんね」という具合に進むのだ。その逆に、自分自身でイメージを作るのが難しくなるというデメリットはあるのだが…。
 原作を読み終えた感想は、さすがは松本清張、の一言。そして、日頃、新刊ばかりに目を奪われ、名作と言われる本を読まないことを反省した。
以下に、簡単に述べていくと…
 まず、犯人が見えないこと。ドラマで先に犯人を知っているにもかかわらず、本書を読んでいると、「本当に彼が犯人なのか、実は関川が…」と何度も疑ってしまいそうになった。また、今西刑事は、様々な推理をたてては、彼を追うことを試みるが、あと一歩のところで先手を打たれる。その苛立ちが松本清張のペンを通して、読者に伝わってくる。
 次に、言語学や音響学といった専門知識を使い、しかもそれを読者に分かり易く説明している点。また、主人公和賀の出生について、戦後の混乱の中で認められた戸籍の特別な扱いを使っているトリックは、驚いたと同時に勉強になった。
 この本の一つのテーマに「ハンセン病」がある。根拠のない差別であったことが裁判所によって認められた現在でも、悲しい事件が起こっているのだから、過去には極度の恐怖心から激しい差別がなされていたのだろう。それを思うと、過去を消し去りたかったであろう和賀の気持ちも分かるような気がしたし、「宿命」とは何と過酷なものであろうかと、考えさせられる。時代に流されない、いつまでの読み継がれていく本というのは、本書のようなものをいうのだろう。
 ドラマは終わってしまったけれど、いや、終わった今だからこそ、読むというべきか。とにかくおすすめの1冊です。

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紙の本堪忍箱

2004/02/22 23:59

行列をつくっている間に読み終えました!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 時代小説というと、(勝手なイメージだが)どうしても主人公は武士で、テーマは天下取りへの戦いやらお家騒動、というイメージがある。だが、どの時代にも一般市民というものはいるはずで、しかも彼らが大半を占める。
 この本の主人公は、こうした一般市民が主人公だ。時代劇では、ほんの少ししか登場することがない、長屋に住む人々である。
 彼らは一生懸命毎日を生きていて、ささいなことに怒ったり、泣いたりする。時代は違っても、そこはやはり同じ人間だから、秘め事だって持っている。『お墓の下まで』はそんな話だ。少し生意気な子供・小一郎との話が漫才のようで面白い『かどわかし』。途中までは笑えたが、物語の終盤では、本当にかどわかしに遭い、ハラハラさせられる。また、個人的に好きなのは、タイトルにもなっている『堪忍箱』。決して中を見てはいけないという箱。ダメと言われると見たくなってしまう不思議な人間の心理や、箱に振り回されてしまう周囲の人々の心理を巧みに描いている。
 著者宮部みゆきは、『理由』や『火車』などの社会派小説を手がけている一方で、江戸の市井の人々の日常を綴る時代小説を手がける。
 東京は深川で四代続く下町っ子として生まれ育ったことはあまりにも有名。深川は、地域の結びつきが強く、心豊かな町である。この町で培った庶民的感覚がとても生かされている作品だと思う。

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紙の本波のうえの魔術師

2004/08/31 23:42

経済を知らなくても分かる、株に興味を持ってしまいそうな本

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三流大学を卒業して就職浪人中の白戸は、毎日、パチンコに明け暮れる日々を送っていた。そんな彼の前に突然現れた謎の老投資家。彼の秘書をしながら株式市場を学んでいく白戸。老投資家の目的は何なのか。預金量第三位の大都市銀行を相手に二人が挑む「秋のディール」の行方は?

2002年に放送されたフジテレビ「ビッグマネー!〜浮世の沙汰は株しだい〜」の原作本。作者は、2003年に第129回直木賞を受賞した石田衣良(いら)。

物語は、株式市場を中心に展開します。ちょっと注意が必要なのは、買った金額より高い金額で株を売れば儲かる、というのが普通の株取引ですが、本書では信用取引を行っているところ。つまり相場の高い時に先に売り注文を出して、株価が下がったら買い戻す。この時の差額が利益になる。このシステムを理解していないとこの話を読むのに「??」となってしまうので注意。

小塚老人の周到な計画によって、じわじわと銀行を追いつめます。小塚老人が仕掛ける作戦は、さながら波のようです。そして、目的は大成功…ところが、終盤では思わぬ展開を見せます。これもまた、この小説の面白さといえるでしょう。

経済小説はムズカシイという意識から敬遠しがちでしたが、作者の力量によっては面白いものにもなる分野なんですね。読了後、ちょっぴり株をやりたくなりました。

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紙の本天狗風

2004/08/08 12:26

美しさを求める気持ちはいつの時代でも同じ…だけれど、本当の美しさとは「一生懸命になること」。

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 「お初」シリーズの第2作目。宮部みゆきは現代小説も、時代ものも書きこなす作家だと常々思っているが、この「お初」シリーズは、時代ものにミステリーやファンタジーの要素が加わっていて、本当に面白い。

 お初は前作『震える岩』から1つ歳をとって、17歳。同じく前作で与力見習だった右京之介は、念願叶って算学の道を進むことになった。お初はキャラクター的に変化ないように思ったが、右京之介は大人びた感じがした。また、2人の距離も微妙に近づいているようで、微笑ましい。特に、右京之介の父で鬼と恐れられている吟味方与力の古沢武左衛門が、お初に好意をもち、何かと息子のサポート(宣伝)に回っているのを見ると、心あたたまる気がした。
 本作で起きる事件とキーワードは、「神隠し」「阿片中毒」。そして、「美しさとはなにか」。17歳のお初には少し難しいテーマだったか、描写が心許ない部分もあったが、それでも本作は存分に読ませる作りになっている。

 さて、前に述べた事件に対して、お初は、前作と同じように、兄で岡っ引きの六蔵や、姉嫁・およし、六蔵の子分・文吉の手を借りながら、事件を解決していく。今まで、腕のたつ板前さんというイメージしかなかった加吉が思いもかけぬ大活躍をしてくれて、目を丸くしながら読んだ。
 また今回、新しく登場した人物(?)は、鉄。お初と鉄が話しているシーンは微笑ましく、今後のシリーズでの再登場、いやレギュラー入りをお願いしたい。さらにいえば、せっかく右京之介が算学の道を歩むことになったのだから、今度は、それを生かした作品ができるとよいのにと思った。
 といろいろ書いてきましたが、やはり、宮部みゆき作品は大好きです。テンポよく面白く書かれている。歴史ものと構えずに、是非読んでいただきたい。

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紙の本あやし

2004/06/05 18:47

「鬼につけこまれませんように…」

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 宮部みゆきによる江戸の市井を舞台にした短編集。鬼や生霊といった魔物が出てくる話が9篇収録されているが、単に恐いだけの話ではなく、読後、鬼や生霊の寂しさに思いを馳せるような作品構成になっていて、読ませる内容になっている。

 急死した姉の後を継いで奉公に入った妹が経験する恐怖を綴った「布団部屋」では、奢りの心から隙ができ、そこにつけ込まれたお光の最後の語りが哀れだ。容姿のせいで決まりかけていた奉公先を他の娘に奪われ、たまたまひいた凶のおみくじを使って、その凶運をその娘にかぶせた「梅の雨降る」のおえんは、その罪悪感のために15年間も病み、亡くなった。
 どの話もラストは悲しい。ともすれば、鬼に同情してしまうかのように。
 だから、本を読み終えて、私はふと思った。「今の私は、鬼に同情して、心に隙が出来てしまっているかもしれない。ここにつけこまれませんように」、と。

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紙の本震える岩

2004/04/06 23:46

時代設定をかえると、ミステリーはまた面白くなる。

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 人に見えぬものが見え、聞こえぬものが聞こえるという不思議な力を持つ「お初」が主人公のシリーズ。
岡っ引きの六蔵を兄にもつお初は、普段は兄嫁およしが切り回す一膳飯屋「姉妹屋」の看板娘として働いている。ある日、深川で起きた死人憑きの騒動に妙な胸騒ぎを感じたお初は、根岸肥前守鎮衛の許しを得て、この事件の調査を始める。死人憑きの吉次、お初の霊感で発見された少女の死体、その昔、浅野内匠頭が切腹した跡に置かれた石が鳴動する噂、バラバラに出てきたことが、背景を『忠臣蔵』とする一つの事件に繋がっていく。
 お初は、根岸肥前守に与力見習の右京之介を紹介され、一緒に調査をする。父は鬼と恐れられている吟味方与力なのに、右京之介は何事につけて頼りなく、お初も初めは呆れ顔。しかし、事件が進むにつれて成長していき、事件の核心部分を、あたかも得意の算学を解くかのように紐解いていく姿には、驚かされた。
それにしても、結局悲しい思いをするのは、権力に振り回される人たちなのだな、と寂しくなった。

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「時代が違ったら」とはよく言いますが、彼の運命も戦争によって大きく変えられてしまったのですね。

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 昨年(2003年)9月に劇団四季オリジナルミュージカル「異国の丘」を見た。時代は第二次世界大戦。日本の首相の息子・九重秀隆と中国の高官の令嬢・宋愛玲との恋愛、そして、シベリア抑留が描かれていた。シベリア抑留をよく知らない私には、一つ一つのシーンがとても重くのし掛かってきて、辛かった。
 この「異国の丘」は本書に発想を得た、とされる。

 本書の主人公は、元首相・近衛文麿の長男文隆。時代が違えば、ものすごいお坊ちゃん。出自は勿論のこと、財力もあり、プリンストン大学時代には、大学選手権で優勝するほどのゴルフの腕前をもつプレイボーイ。現代なら、周りの期待を一身に集め、将来は政治家に、という存在だったに違いない。
 しかしこういう人物は、戦争という局面では異なる方面に利用される。

 文隆は、プリンストン大学に留学し、奔放な生活を送っていた。しかし、首相となった父を秘書官としてサポートするため、帰国する。近衛内閣退陣後、上海にわたった文隆は、ある女性に出会い、たちまち激しい恋に陥る。だが、彼女は蒋介石一党のスパイ。戦争が二人を引き裂く。
 その一方で、文隆はリヒャルト・ゾルゲや尾崎秀実と親交があった。後に彼らは、日本政府の機密情報をソ連に流していたスパイであったとして(いわゆるゾルゲ事件)として逮捕されることとなる。
 上海での一件から、文隆は軍に監視される対象となり、異例の召集となる。そして旧満州で敗戦を迎え、そのまま抑留、シベリア各地の収容所を転々と移される。そして、シベリア収容所内で亡くなってしまう( 筆者は、病死したという文隆について、彼が、帰国後ソ連のスパイとなるように要請され、それを断ったために殺されたのではないかと、考えている)。
 本書は、文隆の人物像を、時に歴史的事実を交えながら小説という形で、うまく伝えており、おすすめの1冊。戦争が、如何に簡単に人の運命を変えてしまうものかを再認識させられる。

 気になるタイトルの「夢顔さんによろしく」という言葉は、文隆が日本に宛てた手紙にさりげなく、しかし頻繁に書く文章だ。ある願いをこめて、文隆は書き続けるが(本名を書けば即検閲の対象となってしまうからだ)謎掛けのような文章で、ついに弟通隆も妻正子も捜し当てることができず、文隆亡き後に判明する。とても意外な人物だったのだが、ここでも戦争の悲惨さをさらけ出すようで、少し悲しい。

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「女の争いは熾烈」なのっ!

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 朝日新聞夕刊(8月29日)の「コミック・ブレーク」を何気なく見ていたら、この本が紹介されていた。「一条ゆかり最新嫉妬作」…ちょっと気になったので、久しぶりに漫画を購入した。
 私にとって一条ゆかりは、「有閑倶楽部」や「ロマンチックください」。絵が綺麗で(特に「男の子」は美しい)、現実にはないよねっという話なのは分かっていても、つい、わくわくしながら読んでしまう。
 さて、本書はというと、主人公は麻見史緒と緑川萌というオペラ歌手を目指している学生。史緒は美貌・才能・財産・コネクション、とあげたらキリがないほど、様々なものに恵まれているお嬢様。それと対極をなしている萌。才能はあるが、家は貧しく、学校は三流。この設定が、「ガラスの仮面」を思わせる。でも、萌は北島マヤみたいに性格がいいわけじゃない。コンクールで史緒を陥れるところなんか、嫌な女丸出し。いや、この設定を喜んでいる私の方が嫌かもしれない。
 まだ1巻ながら、「女の争いは熾烈」とばかり、かなりの盛り上がりを見せている。さすが一条ゆかり。読者を楽しませることを知っている!
 少し突っ込みをいれるなら、父親の会社が倒産したあたり。ここは納得いかない。代表者であったろう父親が外国に行けるはずがない。確か自宅の家財道具は全部持って行かれないはず…。
 でも、これも史緒クン(父親にこんな風に呼ばれるあたりがお嬢様?)が成長していく姿を表現するために必要なネタなのだから、これ以上野暮ったい突っ込みはナシ。今後を楽しみにしましょう。

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紙の本クライマーズ・ハイ

2003/09/29 11:03

久しぶりに「熱い男」を見た。

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横山秀夫氏といえば警察小説というイメージがある。しかし、今回は古巣「新聞社」。しかも初めての長編、と聞いて挑戦しないわけにはいかないと、本書を購入した。
 本書はあの日航機墜落事故を題材としているが、むしろ主眼は人間関係にある。すなわち、会社内における社長派と専務派、編集局と販売局の対立、そして親子関係、という様々な人間関係が、横山氏らしい雄渾な筆致で描かれている。
 主人公悠木は北関東新聞の最古参記者。同期は出世しはじめているが、彼は数年前のある事故のために、部下はもたない「遊軍記者」の立場にいる。そんな彼に部下は憧れる。しかし、上司は処遇に困っていたことであろう。昭和60年8月12日、航空機墜落事故が起き、彼は全権デスクに任命される。
 実はこの日、悠木は同僚の安西と山登りの約束をしていた。しかし、一人で山に行ったはずの安西は、山登りとは縁のない繁華街でクモ膜下出血で倒れ、病院に運ばれてしまう。
 新聞作成における記者たちの葛藤、そして「下るために登る」という安西の謎の言葉の追及、物語はこの二本立てで進む。
 葛藤は主に新聞を作成する場面で現れる。中央の大手新聞社が多くの機材、人材を投入する中での地方紙の苦戦。選挙やコンクールなどの地方紙ならではのネタを掲載しなければならないというしがらみ。随所に出てくる話は、上毛新聞記者時代の横山氏の実体験ではないかと思うほどリアルである。
 そして、冒頭から出てきた安西の言葉。最後の最後に謎が分かるのだが、この演出は心憎い。
 ところで、途中、悠木は事故に関するドキュメントを出そうと出版局にかけあう。悠木がそこに載せたかったのは、引き出しの中に眠っている掲載されなかった若手による記事。もしかしたら、本書はその役割も担っているのかもしれない。
 また、随所に現われる配信記事はヘッド部分が多いのだが、当時の記憶を呼び起こすのには十分だ。横山氏は「事故を忘れるな」と警鐘を鳴らしているのかもしれない。520名の尊い犠牲を忘れるな、と。
 考えれば考えるほど、いろいろな仕掛けがなされているように思えてくる。とにかく一読をお勧めしたい。

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火の粉

2003/08/21 11:36

人物描写がすばらしい!

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 「裁判で無罪判決を言い渡した被告人が隣に引っ越してきた」という文句に惹かれたこの書籍、迫真の展開でどんどん読み進めることができた。
 「恐い」「気持ち悪い」隣人武内が何を考えているのか全く分からない。自ら申し出て元裁判官梶間勲の母の介護をする。勲の妻尋恵には蘭の鉢植えをあげる。気の利いた贈り物。一方で、梶間家をよく見張っているのである。勲の孫まどかにまどかの母雪見が手を上げているところを隣からじっと見ている。電話の盗み聞きをする。 そして彼が隣に引っ越してきてから、梶間家には不思議な事件が次々と起こるのだ。
 ストーリー展開もさるところながら、著者がそれぞれの人物の性格を見事に作り上げているのは驚かされた。
 元裁判官の勲。家のことには関心を払っている様子もない。何も口出ししない。肝心なところで決断を下せない。そのうえ、過去の、無罪を言い渡した裁判に雁字搦めになっている。
 勲の息子、司法試験受験生の俊郎。同じ立場の私には、「よくいるよね、こんな人」と思えるシーンが多々あった。妙に理屈っぽいところ。人権尊重を振り回して警察官相手に演説をぶってしまうところ。母の話をよく聞かないところ。読んでいて自分と重ね合わせてしまうところも多く、気を付けなくては、と思ってしまった。
 初めての雫井作品だったが、氏の解説によると、「新人作家」とか。1968年生まれ。まだ若い。これからの作品も期待大である

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紙の本グロテスク

2003/12/25 15:36

女性ゆえの悲しさかもしれない…。

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 「10年前のお姉ちゃんがいた世界だよ」。先に読んだ妹は何度もこう言っていた。この本のモデルは「東電OL殺人事件」だと言われているが、そうだったら−私は確かにいた。Q高校に。
 物語は、語り部として「わたし」、「ユリコ」、「張」、「和恵」が登場する。それぞれ日記だったり陳述書だったりし、同じ話が繰り返されることが多い。全体として、陰の部分が多く、何度も本を閉じては溜息をつく、その繰り返しだった。書評を書くのだって、何度も書いては消し、書いては消しの繰り返しだった。
 神様がなかなか与えてくれない「美貌」、「頭脳」、「家柄」、それゆえに持っている者に対して向けられる羨望の眼差しと嫉妬。この本はこれでもかというほどに、目を背けたくなるほどに、鋭く訴えてくる。
 中学時代努力をし続け、やっと入った高校ではただの人だった和恵。その中でも頑張ろう、頑張ろうとするが、それが空回りして、逆に変わった人として目立ってしまった和恵。段々変化していく和恵に哀れさを覚えてしまった。
 そして、思った。「気持ちは分かる」と。多分、人ってこうやって生きている。雑誌に「女性受けしている」と紹介されていた。私の推測だが、この本の登場人物の姿に、自分の姿を見る人が多いのではないだろうか。
 ところで、この本はQ学園(あるいはそのモデル)の日常生活がとてもよく書かれていた。著者の徹底した取材ぶりに本当に驚かされた。入学式から現われる階級差、部活動のこと、リズミック(リトミックと呼んでいた)、そして果ては卒業リングまで、私自身が「あった、あった」と思い出すほどで、本当に懐かしかった。
 描写がややオーバー気味のきらいはあるが、それは小説、やむを得ないだろう。
 誰しもが心の中にもっている羨望、嫉妬。この難しくてやっかいな感情に、これからどうやって付き合っていくか、考えていこうと思った。

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国債は「例外的」に発行されるものだなんて、知らなかった…

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 9月に自由民主党総裁選が終わり、もうあと数日で衆議院が解散を迎えようとしている。改めて「政治って何?」と思い、本書を読んだ。
 本書はまず、政治のしくみから入り、国会・内閣のしくみを経て、選挙の説明へと続く。選ばれたテーマは60余り。原則として見開き1ページの右側が説明文、左側が分かり易いイラストで構成されている。その他に、トピックスと称して実例が紹介されている。
 政治は私達の生活のあらゆる面に関わってきている。景気がよくなるのか悪くなるのか、年金はどうなるのか、医療費は、消費税は、とあげはじめればキリがない。
 それなのに、分かり難い。2001年の省庁再編のように大々的になされれば分かることも、どうもカゲでやっていることが多いような気がして(あくまでもイメージである)、事を分かり難くしている。
 この点をズバリ解決してくれるのが本書。著者自らが政治の入門書として位置づけているように、使われている言葉もやさしく、分かり易い。本書で興味を持った点を、さらに専門的な書物で発展させていくのも面白そうだ。
 もっとも、政治は生き物。時々刻々と変わっていくものだけに、すぐに内容が古くなってしまう点が悩み。
 とはいえ、基礎をおさえるためなら、この程度のことは不自由には感じないだろう。

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