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先月(2017年4月)

maoiさんのレビュー一覧

投稿者:maoi

3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本一千一秒の日々

2005/07/31 18:06

ガールズトーク

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表紙はピンクのもやにくるまれた女の子ふたりが仲良さそうに、向き合っている。
夜どおしベッドで眠りにつく前に、女の子同志で秘密の告白をしあう。そんな親密さが漂っている。
他人の事を自分のように感じる親密さは、この年頃がピークかなとも思う。もうすぐ、ここには居られなくなる。彼女達はそんな先の事も知りつつ、惜しむようにおしゃべりをしてる。
表紙事体が、丸っきり小説の内容を暗示してるみたいだ。
全ての話が、高校生から大学生くらいの子が主人公の短編集です。
二十歳前後で味わったり、見聞きするであろう、日常生活の細々が描写されており、好きな人の為に作るお弁当、やどかりの様に男の部屋を渡り歩く女子大生、なんとなく始まった同棲生活のピリオドであったり、今時のリアルな若い子達のはずなのに、みんな不器用の上に、スロースターターだ。
主人公達は多くの人達より、自分の周りにあるののを大切にしすぎるのかも知れない。
若い彼女たちは、駆引きなしのぎりぎりの気持で、日々過ごしている。相手を困らすようにしか、自分の気持を伝えられなかったり、時には刹那的にもふるまったりする。
そんな女の子達を受け止めるのは、優しくて寡黙な男の子達だ。
0・1トンの体重の針谷くんには、一紗という女の子の幼馴染みがいる。全体的に体温の低そうな、登場人物の中で一紗だけは、情熱的で思った事以上の事を口にし、いつも針谷くんを困らせる。
しょっちゅう、男と派手ないざこざをしてその都度、彼に助けてもらっている。針谷に助けてもらうのが最終目的で、適当な男と付合ってるみたいなものだ。
一紗は、針谷くんが大好きだ。いつも全身で訴えている。にもかかわらず
「僕って男なのに胸もあるんだよ、こんな奴を相手に恋だとか、好きだとか錯覚に決まっているだろう」と随分すげない。
このもどかしさ。すぐに手を出してくるような男ではなく、正しい男の子を好きになってしまった、もどかしさと常に大切にしてくれるうれしさ。
世の中、外見のいい男ばかりが、女から愛される訳ではないのに。針谷君本人は、外見にコンプレックスがあるけど、それは頼れる安心できる存在のクールな男の子だ。そんな男の子なかなか居ない。だからこそ一紗も執着するのだろう。
一紗が、彼に辿り着くには後何人の男と付合わないとダメなんだろう。
果たして、その内にでも受入れてくれるのだろうか。
一読者である私は、彼女らのその後が気になって、気になってじれったい。
作者は若くて、今時の子達の物語を淡々と描いてるけど、とても品のよい文章を書く人でもある。
その暖かい感じと冷静さの混じった、品の良さが読んでいて気分が良かった。

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紙の本古道具中野商店

2005/09/23 19:16

ケーキ4つ分の真実味

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

登場人物の中野さんもマサヨさんも大人としては変な人達だ。
中野さんにいたっては、いつも正ちゃん帽をかぶっているし(2〜3年前の流行とは関係なさそう)
いいかげんなおっさんださし、言葉遣いもくねくねしてるし、笑った笑顔は加齢のせいでこぎたないのに、愛人が2人もいて日々悩んでいるし。古道具屋のあこぎな商売をする親父のイメージとは、程遠い。
中野さんの姉のマサヨさんも創作人形を作る傍ら、ふらりと中野商店を手伝いに来る。
男の人とも奔放なんだか貞淑なんだか、分からないような付合い方をしてて、変わっいてるのに、妙に世間慣れしている。
そんな中野商店で働く、ヒトミは「最近、姉の行動が怪しい、様子見て欲しい。」と中野さんのかけ声の元、ケーキを買い、マサヨさんの家を訪ねる。
私が川上弘美ってすごいなと思うのは、ヒトミがパイばかりを中心に4つ買うとこである。
二人で食べる場合、女の人はケーキ店で、潔く2つだけ買うか、それだと持って行く先にも、お店の人にもけちだと思われないのか常に気になってしまう。ひとりで食べる予定でも、ケーキ1個だけでは買いにくいのと似ている。
マサヨさんは、その中でレモンパイしか気に入らなく、ヒトミはブルーベリーパイをのそのそと食べる。大抵はレモンパイは昔からある安心出来る味だし、年代からいっても意外な所で、保守的な彼女が食べるのはこれしかないだろうと気がするし、
ヒトミと同年代であろう私は、ベリー系の載ったパイを選ぶ事がすごく多い。
こんな小さなエピソードが絵空事でないのが、他の出来事にも真実味を与えている。
ケーキ4つ分の真実味は、案外と大きいと思う。
季節が巡っていく中で、ヒトミの恋も進行してゆく。
そんな中で、相手のタケオはヒトミをほぼ無視(を決め込む)
タケオなんて子供だし、相手にする必要もなく思えるけど、彼女はタケオが好きだ。
店から自宅に戻って、年下のタケオに いつも自分のほうから電話するヒトミ。
二人の思いがずれている関係が、手に取るように伝わってしまう。
中野商店で過ごす日々が、あまりにもスムーズでゆるゆると楽しそうに綴られていくので、すっかり忘れていたけど、これは恋愛小説なのだった。
狭い人間関係の中での恋愛は、相当辛い。
当然まわりも気付いてしまうはず。けれど、知らんぷりしてくれていた、いかにも噂好きそうな中野さんもマサヨさんも、やっぱり大人だった。
この人間関係が、やっぱり魅力的で何度読んでも、自分の事のように赤面してしまったり、少しづつがんばって未来を手に入れた、登場人物たちにも励まされてしまう。

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檸檬のころ

2005/07/19 15:45

まだ瑞々しい記憶

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

東京から新幹線で北へ四時間。そこから更にローカル線を乗り
継ぐと、りんご畑もある、のどかな田園に囲まれた高校がある。
本書は、コンビニさえ存在しない、そんな田舎の何もない高校で、その中でも決して目立つ存在ではなかった子達が、高校生だったり、卒業生となって辿っていく人生を綴ってゆく短編集
です。
著者は小説の舞台となった、北国の高校を卒業してまだ数年。
そのせいか、まだ、こんなにも瑞々しく、妙に生々しく記憶が
保存されている。
思い返すと私の高校時代は、もはや他人の記憶のように感じて
しまうくらい遠いことがある。小説の環境とは違うけど、私の
高校生活も「平凡」という一言で括られてしまう類いだろう。
主人公のひとりに、小嶋サトという少女がいる。その世代に特
徴的な自意識過剰なのに、凄くナイーブな面を持っており、本
人もなんだか日々を持て余し気味だ。回りの人間も彼女の事で、相当悩んでいる。
当初、回りの人達が、必要以上に彼女を追い立てている気がし
たのだけど、彼女がふわふわと、もがき苦しんでいる姿は、も
しかして著者の自己投影かもしれないと思った。
そして、何故だかサトの日常が、共通点のないはずの自分の高
校時代と重なってゆく。
他人の記憶のように遠かった、今まで懐かしいとも思わなかった、でも今なら大切に思える、心の奥底に沈みこんでいた記憶が、私はサトを通して蘇って来た。
小説がこんな風に、自分の記憶とクロスするのは稀な事ではな
いだろうか。
一見、平易な文章で綴られている文章なのに、著者の小説家と
しての力量を見た気がする。
ただ、ここに出て来る登場人物達は、あまり幸せには思えない。
当たり前の事だけど、自分の思い描いた通りに人生は運んでゆ
かないし、その後の人生も、高校時代に縛られすぎているような、気がしないでもない。
言えるのは、どこで過ごそうと、高校時代なんて思い返すと、
意外と苦味の強い皮を持ったレモンの様なものなのかも知れな
いと思った。

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