ユキアカリさんのレビュー一覧
投稿者:ユキアカリ
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紙の本人魚ひめ
2004/10/11 09:19
世界で一番美しい人魚姫の絵本
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「海のはるかおきでは、水は矢車草の花びらのように青く、ガラスのようにすきとおっています」
人魚姫のお話の定番のはじまりです。でもこの始まり方でなくては、意味が変わってきてしまうような、この言葉通りに、なんといってもどこまでも、ブルーが印象的な絵本です。
グレイがかったブルー、アクアブルー、紺、澄んだ水色、これらの色はこの絵本を何とも魅力的にする舞台装置の様です。冷たい水のしぶきが、絵本を通して飛んできそうなくらいです。
海の中の世界は異世界のムードたっぷりで、とても幻想的です。
しかも、ちゃんと海の底は濁っていて、ほの暗い感じが挿絵からも伝わってきます。
最初は、子供には大人っぽすぎる絵だなと感じました。それに素敵すぎて、ちょっぴり子供には勿体無な、とも。でも私は、この本の挿絵を描いたリスベート・ツヴェルガーが、挿絵を描いた絵本を子供の頃に図書館で見かけて、大人になっても忘れられなかった思い出があります。頭の中からはツヴェルガーという名前が、すっぽりと抜け落ちていたので辿り着くまでに随分と時間が、かかりましたが。
是非、親子で印象的なお話と絵を堪能して下さい。
文章も含め、こんなに綺麗な絵本は稀なのではないでしょうか。
なんだか誉めてばかりですが、そのくらい素晴らしいのです。
きっと小さなお子さんにも、透明感のある絵と美しいお話は心に響く事でしょう。
そして大人になっても、急に懐かしく思えてくる事があることでしょう。
紙の本はだかの王さま
2004/10/11 08:40
わがままな王様の行く末は?
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お話はアンデルセンの翻訳ではなく、「魔女の宅急便」などをお書きになってる児童文学作家の角野栄子さんです。
ですので原作より長く(原作だと2〜3ページの短編です)風刺が効いてるというよりは王様に同情したくなってしまうような、どこかほのぼのとしたお話に仕上がっています。
ちなみに、このシリーズの翻訳、及び再話はすべて角野栄子さんです。
挿絵もとても素敵です。挿絵を描かれた、こみねゆらさんは長らくパリに留学されてた方で、繊細なのにリアル、とびきり可愛らしい絵を描かれます。
緻密で大理石のひんやりとした質感まで伝わってくる様な硬質な挿絵達。
細かな模様はタペストリーのように繊細です。
色使いもシックなので、何度見ても飽きさせません。
この絵本を眺めてると半分、自分の滑稽さに気付きながらも、引き返せなくなった若い王様の冷や汗がじんわりと伝わって来ます。
自分の間違いに気付きながらも、素直になれない子があなたの側にもいませんか?
紙の本野の白鳥
2004/07/12 20:57
子供の頃大好きだった絵本にめぐり会う事ができました。
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タイトルからは想像つきにくいかも知れませんが、クラッシックなプリンセス物です。白雪姫やシンデレラ以外のお姫様に興味のある、子供さんにきっと喜んでもらえるはずです。
大好きなワッツの絵で、新作なので躊躇なく購入したのですが、届いてみると、これがなんと、タイトルも分からず終いの子供の頃に大好きなお話だったのです。大人になってすっかり忘れ去ったようでも、記憶の端っこに残っているものなんですね。
「野の白鳥」という題名だったことは勿論、アンデルセンが作者ということさえ知りませんでした。
それでも、金色の小さな冠をちょこんと頭に載せた11羽の白鳥のことだけは、しっかりと憶えてました。
こんな偶然で、子供の頃好きだったお話に、めぐり会う事が出来てうれしいです。更にワッツが絵なんて、私には良いプレゼントになりました。
ワッツは童話の挿絵が多いので、知らず知らずの内に目にされる方も多いと思います。「赤ずきん」なんかが、有名です。
内容は、主人公のお姫様が、白鳥に変えられた兄たちを救うために、指をいためながらも、イラクサで上着を編みます。その最中にある国の王様に見初められますが、ある行為から魔女だと疑われ、火あぶりの刑を言い渡されてしまいます。お姫様は果たして、白鳥になってしまった王子達を助けることが出来るのでしょうか?
めくるページの隅っこには、本文とは関係ないのに、小人や妖精が描かれてあって、ここはおとぎ話の世界なんだなと微笑ましい。
私が子供の頃に読んだのは、もっと暗い感じのお話と絵だったのですが、ワッツの挿絵は愛らしく、翻訳者の角野さんのおっとりと、優しい文章で言う事無しです。
長い間ずっと大切にできる絵本です。
私自身、大切にして、自分の子供にも受け継いで欲しいです。
2004/06/09 01:56
幸福なエスケープ
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まず、扉を開けると、カラフルで懐かしい感じのポップなイラストから始まります。
車の名前はアメリア、連れてるの犬の名はシルビア
そんな相棒達と配達の仕事をしてるミルク屋さんのお話なのですが……
この本は絵本なので、子供に向けて作られた本だとは思うのですが
30年以上前に描かれたお話なのに、現代に生きる大人の悩みが、結構リアルに描かれていて、仕事で疲れたり、新しい環境に戸惑ったり、この時期なんだか、だる〜い気分の方は、是非、読んでみて下さい。
(日常生活の処方せんにもなるかも??)
お子さんには、休日にお父さんが読んであげるのが、しみじみ味わい深いかも知れません。
毎日が、お決まりの挨拶にお決まりの仕事
そんなこんなに耐えられなくなった、ある朝、ミルク屋さんは行方不明になってしまいます。アメリアを駆り、人気の無い遠い森へと、どんどんと進んで行くのです。
そしてその先は、森の中のすばらしい生活が、始まってゆくのです。
変化は挿絵にも現れます。日常生活から、エスケープした後のミルク屋さんはとろ〜んとした目つきから、きびきびとした明るい目付きに、どんどん変化して行きます。
だけど、いつまでも続くと思われた、森の生活にもやがて終わりが来ます。
読んでて、「これからどうするんだろう、社会に戻れるのだろうか」と
結構、不安になったりもしましたが、当のミルク屋さんは、相変わらず呑気です。こちらが心配する迄も無く、街の人たちも、何の違和感も無くミルク屋さんを受け入れて、すんなりと元通りに、生活して行くのです。
私なら、あんな風に日常生活に戻れるのなら、何度でもエスケープしてしまうかも……。
帰ってから今まで退屈と思ってた仕事が、楽しく感じたり出来るのは
あの森での生活の記憶があるからだと思います。
まるで、私まで疑似体験したみたいに、爽やかな森で過ごした気分になりました。癒されてしまったのでしょうか?
もしかして、自分の生活も少しだけ道がそれれば、フクロウが歌い、クマがアイスクリームを盗むところに出くわせるかな。そんな気分にさせてくれる絵本です。
紙の本ちょうちょのくに
2004/05/19 01:30
このまま美しい魂のままで
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オルファースの絵本は大好きで、いつも心待ちにしています。
今回、発売されたこの絵本は彼女の死後すぐの1916年に出版されたそうです。
いも虫の赤ちゃん達が、綺麗な蝶になるまでの様子が淡〜く、言葉少なに、あたたかく、詩のように進行してゆきます。
アイリスやユリ、レースフラワーなんかも描かれていて、芽吹くような色合いのグリーンと茶色が多く使われており、春〜夏を感じさせます。
愛らしい絵を子供さんと、ゆっくりと眺める一日も素敵なのではないでしょうか。
以下は、大人の目線で書いてみました。
愛らしいオルファースの絵なのですが、いつもより違っていることに気がつきました。この絵本では登場人物が微妙に大人びた顔つきをしてるのです。敬虔な表情はさらに増してる気がします。
彼女は、修道院に入ってた敬虔なクリスチャンなのでその影響でしょうか?
また、絵本に書かれてる事だろうと、あまり気に留めてなかったのですが
以外にも彼女の観察眼にも驚かされました。
さなぎから孵化して蝶になり、春の野原を飛んでくくだりがあるのですが
「最初に飛び立っていけるのは、もんしろちょうにもんきちょう〜」という箇所があるのですが、まさにその通りだったのです。絵本に書いてある順番に、蝶達が飛び回るのです。単純なことかもしれませんが、深く感激しました。
私はよく自宅のベランダから何の気は無しに、目の前の緑地をポーッと眺めるのですが、確かに春の初めは紋白蝶や紋黄蝶が、飛び回ってました。
最近は揚羽蝶や、ターコイズに黒い模様の入った綺麗な蝶(名前わからないのです)を見かけます。
空想的な可愛らしさだけを追求するのではなく、自然のことも研究してる、彼女の、改めてファンになりました。
最後のページは、圧巻です。
夕暮れの中、ちょうちょ達が、行列で飛ぶのですが、静かで夕暮れの空気を、そのまま切り取ったような絵です。
そして、繊細で少し悲しくて、美しいのです。
古代からヨーロッパでは、蝶は魂に例えられたりしますが、
彼女の最後の絵本が蝶がテーマなのは、不思議な因縁な気がします。
患っていた病気で亡くなられたので、もしかして、彼女自身も何か感じる事があったのかもしれません。
彼女は写真を見る限り大変美しい人です。
きっと彼女の絵本のように、控えめで美しい魂をもっていたのではないでしょうか。
2004/04/28 02:56
チョコレートの包み紙みたいに、かわいい絵本です
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待ちに待った、カロリーヌシリーズの新しい絵本です。
これから毎月2巻ずつ出版されるなんて、なんてうれしいのでしょう。
本のサイズもちいさくって、表紙のかわいさを裏切らない、どうしようもなく、かわいい中身です。お話も単純で、プフとノワローがキャンプに行った一日が、あどけなく描かれてます。
わがままで甘えん坊の子猫達ですが、ちゃんとテントだって立てる事が出来るし、食料調達もがんばってましたよ。カロリーヌシリーズのお話とおりのちょっぴり間抜けなお話で、ちゃんとオチもあります。
お話が、単純なのですが、起承転結がちゃんとあるので、小さなお子さんの読聞かせにも適していると思います。
作者のプロブストさんは、古い年代に出版された御自分の絵本を描き替えて
出版されてるそうなので、昔に出版されたカロリーヌの絵本とは、印象が違う事が、多々あるのですが、この「プフとノワロー たのしいキャンプ」は、フランスでの出版年も、1992年と比較的新しいものにも関わらず、私が子供の頃に読んだ、カロリーヌの絵本に近いような、懐かしいタッチの絵だなあと感じました。
主役の子猫達以外にも、ねずみやうさぎ、縞模様の猫なんかも出て来るのですが、その脇役の動物達が、レトロタッチで描かれていて、ものすご〜く愛らしいのです。
この中の挿絵が、チョコレートやキャンディの缶や包み紙になったらいいなあ、なんて思う程、可愛くて気に入ってしまいました。
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