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しのはらさんのレビュー一覧

投稿者:しのはら

52 件中 1 件~ 15 件を表示

かあさん漫画家サイバラが語る「カネ」と「世界」の真実。「最下位には最下位の戦い方ってもんがある」!

28人中、28人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

理論社のヤングアダルト向け人生指南書「よりみちパン!セ」シリーズの一冊。
無頼な「かあさん漫画家」西原理恵子さん(以下サイバラ)が語る、とてもリアルな『カネ』の話。
総ルビで、親しみやすい話しコトバではあるけれど、大人たちにも、ぜひ読んで欲しい一冊。

 読者の皆さまならご存知のように、サイバラはなかなかの苦労人。
貧困と暴力の支配する環境で育ち、継父はギャンブルの借金から自殺。
知恵と根性で這い上がり、漫画家として成功したのもつかの間、夫のアルコール依存症が原因での離婚。病を克服しての復縁。しかし、ガンによる死別。
そして、続いていく、二人のお子さんたちとの生活。亡き夫と、お子さんたちと、日本を飛び出しては見て来た「世界」の形・・・。
仕事として、各種ギャンブルもFX(外国為替証拠金取引)も自腹で経験。

 彼女ほど、カネのない事の悲しさと、カネというモノの持つ怖さと、カネを稼げる事の喜びを知っている人はいないでしょう。
机上の経済理論でも一攫千金の儲け話でもない、人が生きて、生き続けて行くための、リアルな『カネ』を語るのに、これほど適した人物はいません。  

 この波乱万丈の人生を、決してお涙頂戴ではなく、非常にクールに客観的に分析し語っておられるのに、私は、後半、泣けて泣けて仕方がなかった。 
この世界の真実を、突き付けられる感じがして。
でも、その「真実」は悪い事ばかりじゃない。
パンドラの箱の底に残った、たった一つの、しかし力強く輝く「希望」のように、サイバラは大切な事を教えてくれる。

 いま、『カネ』の事に悩んでいる人が、たくさんいる。
勝ち組み負け組だの、経済の二極化だのいわれているけれど、家柄や財産がなくっても、ゼロから這い上がる方法はある。
「最下位には最下位の戦い方ってもんがある」のだ。

 「これは絶対、こども(小学校高学年)にも読ませよう」と、声を掛けてみた。すでに「毎日かあさん」をはじめ、サイバラ本は何冊か読ませている。
「『毎日かあさん』の人が、おカネについての本を書いたよ。面白いよ~」
「うん、(他の漫画で)『カネがないのは首がないのと一緒や~!』って言ってた人だよね」
・・・そう、その人だよ・・・(^^;)

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あの大人気漫画家は農家出身だった!「ハガレン」の作者が語る爆笑農業コミックエッセイ。

24人中、24人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

荒川弘さんのコミックエッセイ『百姓貴族』が、めっぽう面白いのです。
皆さま、ご存じでした?
大人気漫画『鋼の錬金術師』(通称ハガレン)の作者・荒川弘さんが、

1.名前の読み方は「ひろし」じゃなく「ひろむ」で、
2.男性でなく女性で、
3.北海道は十勝地方のご出身で、
4.ご実家は農家で、
5.農業高校で学び、
6.漫画家になる前は、7年間農業に従事されていた。

って事を。
私、知りませんでした。知りませんでした。すべて本書で知りました。(知らなさ過ぎ?)
 その荒川さんが、農業者からの視点で語る「食」と「家族」と「農家の暮らし」。
お父さんは-20℃の牛舎にパンイチで出動するし、ニャンコは直絞り牛乳ビームを肉球キャッチ飲みするし、畑で鹿や鮭は捕れるし、農家ってすごい!農家って刺激的!農家って、農家って・・・。

 コミックエッセイなので、絵柄も語り口もたいへんカジュアルでフレンドリー。ご本人は眼鏡掛けた乳牛姿。すごく笑える。
ですが、骨太な一面も。
365日・年中無休で牛乳や野菜を生産し、ニッポンの食をささえる農家。
ああそれなのに、それなのに、食料自給率の低さにもかかわらず「生産調整」と称して牛乳を捨てさせる農政。見た目のきれいさや値段で農産物を選ぶ消費者たち・・・。
街暮らしのヘダラな一消費者として、考えさせられる点が多々ありました。(反省)

 「(坪でなく)ヘクタールで言えー!」「水がなければ牛乳を飲めばいいのに」など名台詞も多数。
中でも同じ道産子として最も共感したのは、「母ちゃん花見って何?」「ジンギスカンを食べる口実よ」という母子の会話でした。(これ道産子の真理)
 「ハガレン」からの少年読者に配慮したのか、お値段もお手頃。主婦も嬉しい(^^)

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紙の本夕凪の街 桜の国

2012/05/18 03:14

戦争とは、「誰かに『死ねばいい』と思われる事」。爆弾など落とさなくても、ただそれだけで人は傷つくというのに。

19人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

こうの史代さんの漫画は、線がとても優しい。
枠線以外に定規を使わない柔らかなタッチは、原爆投下から10年後の、ようやく生き直そうとし始めた儚げな命を描くのにふさわしい。
 こうのさんが描く広島は、温かい人情と茶目っ気にあふれ、よく描き込まれた戦後の街並みや風俗も物珍しく、ほっこりした気持ちで見入ってしまう。
しかし、復興の活気や明日への希望を感じさせながらも、街も人も、またすぐに壊れてしまいそうな不確かな危うさを含んでいる。
そしてその予感は、当たってしまう。
 
 核兵器は、人を三度殺す。熱線で焼き、放射能で蝕み、遺伝子に影を落とす。
核兵器は、肉体だけでなく心にも大きな傷を残す。肉親や友を失った悲しみ。自分が生き残った苦しみ。死にゆく絶望。そして差別。
これが、人の手で作り出された道具の「機能」なのだから、嫌になる。
ケロイドも焼け跡の死体も、リアルに描いてはいないのだけれど、あの日、主人公の身に起きた事は、あの道具の冷徹な「機能」は、実に良く伝わってくる。そのフラッシュバックのシーンでは、鳥肌が立つ。
 しかし、作者は決して、ただ「核兵器廃絶」ひとつを訴えたいわけではないだろう。あるひとつの戦争や特定の国を責めているわけでもない。
自分以外の誰かに向かって「死ねばいい」と思う、またそう思わせる仕組みを作る、人の心の闇をこそ、絶えさせたいのだろう。
 昭和30年から語り始めたお話は、昭和62年、平成16年と主人公の血縁をたどって展開する。それぞれの時代、容赦のない運命に打たれても、人々は笑い、互いをいとおしみ、日々を生きていく。人々の「愛したい、生きたい思い」は、バラックの裏に芽吹く雑草にも似て、美しくきらめく。
 こうのさんの描く平成16年の風景は、やはり、街も桜も幻のようにあわあわとしている。それは、私たちが暮らす平和な日常の儚さをも表現してはいないだろうか。
お話は現在で止まっているのだから、「結末に救いがあるかどうかは、これから私たちが作る世界の有りよう次第」ともいえる。
責任重大だ。

****
私がこどもの頃、少女漫画雑誌にも時折り(疎開生活など含め)戦争モノは載りましたが、近頃はあまり見かけません。今の時代に、こうのさんがこの作品を描かれた事。それが各賞に輝き、より多くの読者の目に触れた事は、たいへん喜ばしいと思います。
こどもにも、いずれ読んで欲しくて、うちの本棚に入れました。

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紙の本トニー流幸せを栽培する方法

2012/05/18 03:10

ご存知!「ダーリン」ことトニー・ラズロ氏が、世界各地のことわざを引いて考える「幸せ栽培法」。

16人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表紙を見れば一目瞭然。小栗左多里さん「ダーリンは外国人」の「ダーリン」こと、トニー・ラズロ氏のご本です。
 「ダーリン・・・」シリーズの読者はご存知の通り、ライターやNGO運営をされているトニー氏は、また、語学オタクにして地球上のあらゆる文化に造詣が深い方であります。

 そのトニー氏が、古今東西のことわざから紡ぎ出す「幸せ」についての考察の数々・・・。
なにしろ彼の「古今東西」といったら、そんじょそこらの「古今東西」とは違うのです。
英語・ロシア語・韓国語・中国語・アルメニア語・タガログ語・スクマ語・アムハラ語・カビル語・ゾンカ語・トゥゲン語・・・。今こうして書いていても、変換もされないような(^^;)馴染みのない言語・民族のことわざたちを、頭の中にずらりと並んだ引出しから、惜しげもなく取り出して見せてくれます。各章の扉には、ことわざが原語で書かれていますが、初めてお目にかかる文字も少なくありません。
つまり、トニー氏は、それだけ多くの文化を、多面的なものの見方を知っているのです。

 けれども、不思議です。
そんな、私が見た事も聞いた事もない地域の、時代の人のことわざが、現代日本の私にもちゃんと理解できるし、腑に落ちる。「ふふっ、うまい事いうなぁ!」と思う。
ことばや習慣が違っても、大昔から、人間は人間なんだよなあ、と。

 人類全体がスッポリ収まるような、フリーサイズの「幸せ」はないかもしれない。
けれど、どんな文化と言語でも、どこか共通する「教え」はある。
「多文化共生」の研究者トニー氏が、それを探して、まとめたのが本書です。
 人類に共通の「幸せの芽」が、ここにあります。
あとは、あなたの心の中で育てるだけ。

奥さまである小栗左多里さんのイラストコラムも、ほっとしますよ。

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紙の本不思議の国のアリス

2012/05/18 03:08

「不思議の国」の不思議倍増。子どもも大人も魅了する極上精密仕掛け絵本。

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

読み聞かせを楽しんだり、絵を眺めてページをめくる事はあっても、あまりすすんでは本を読まなかった幼稚園時代の我が子。その子がすっかりはまったのが、クリスマスプレゼントに贈った大日本絵画の飛び出し仕掛け絵本『不思議の国のアリス』です。
 「ルイス・キャロル作/ジョン・テニエル画の原作に忠実に」と作られたこの本は、精密なポップアップの仕掛けもすばらしく、大人でも「こりゃいったい、どうなってるの!?」と、思わずその世界に引き込まれてしまいます。
 文章部分は字も小さめでルビつきの漢字混じり。幼稚園児にとってはかなりのボリューム。それなのに、「この深い穴は何?」「アリスはどうしてお家から出られないほど大きくなってしまったの?」と、パッと飛び出す「不思議の国」の謎を解くため、小さな指で文字をたどりながら、長い時間を掛けて一人で読みきってしまったのです。
 子ども用としては高価に思えるかもしれませんが、「これをきっかけに、もっと本が好きになってくれそう!」と手ごたえを感じた1冊です。
・・・・・・いえ、正直に言います。
本当は私が欲しくて買いました。子どもは口実です(-_-;)
お子さま用に、ご自分用に、ちょっと豪華で不思議なプレゼントは、いかがでしょうか?

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紙の本夢をかなえるゾウ 1

2012/05/18 02:46

ここで一句。「関西弁の ゾウの話術に 一気読み」 『ウケる技術』の著者による、笑いと涙のファンタジック自己啓発ストーリー。

15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

帯には「ファンタジー小説」とあるけれど、本書は「ファンタジー仕立ての自己啓発本」といった方が正確かもしれません。
だけど、だけどね、こんなに面白い自己啓発本って、なかった。もう一気読みです。

 だって、関西弁を話すゾウですよ?
自分を変えたいサラリーマン「僕」の願いを叶えるため、ある日突然現われた自称「神様」のゾウ、ガネーシャ。これが実は、とんでもないお騒がせゾウだった。
ガネーシャは、関西弁の巧みな話術(というかケムに巻くよなガネーシャ式論理)で「僕」と契約を交わし、アパートに住みついて押入れに寝床まで作ってしまう。好物は、あんみつ。
 そう、これ、「ドラえもん」などに代表される「異人同居譚」とでもいうべきシチュエーションですよね。なので、馴染みある状況設定にハマって、お話の中にスッと入れちゃう。

 わがままで食いしん坊で非常識なガネーシャとの暮らしは、「僕」にとっては冷や汗と「ありえねぇ!」の連続で、ハタ迷惑もいいところなのですが、読者としては、も、大爆笑なのです。
 ともすれば説教臭くなりがちなこの手のお話を、「美味しい青汁」みたいにイヤミなく面白くゲラゲラ笑いながら飲み込ませてしまうのは、さすが『ウケる技術』水野敬也氏の面目躍如というところ。

 自己変革のために、ガネーシャが毎日ひとつ「僕」に課す課題は、そんなに目新しい事でも、難しい事でもない。
曰く「靴を磨け」「トイレ掃除しろ」「コンビニで募金」「会った人を笑わせろ」・・・。
 でも、ひとつひとつの課題の目的や背景を、ガネーシャが(ウソかマコトか)これまで育てた「子」たちの実例を引きながら、親切丁寧に教えてくれます。(もちろん関西弁で)
そして、これがまた説得力あるんですわ。なにしろ育てた「子」たちってのが「(松下)幸ちゃん」「(本田)宗ちゃん」「ロックフェラーくん」・・・(以下、名だたる大物が続々と)なんですから。

 ガネーシャに振り回されながらも、着々と教えを知り、少しずつ意識が変わっていく「僕」。しかし、どんなにたくさんの教えも、知っただけでは自分を変える事はできない。最後の決め手となるものとは・・・。

 この本を読んだ人が、みんな、有名人やお金持ちになったり、大きな仕事を成し遂げるとは、思いません。
でも、この本を、ガネーシャの教えをすべて実行した時、その人は確実に「いいヤツ」になっていると思う。
 この本がベストセラーになって売れれば売れるほど、日本は「いいヤツ」だらけの「いい国」になるんじゃないかしら。
偽装だらけの「美しい国」なんて全然信用できないけれど、ガネーシャ式のそんな「いい国」なら、信じてみたいかも。
水野敬也氏の意図するところも、意外とそんな事だったりして。「成功者を作る」なんて事じゃなくね。

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紙の本ターシャの輝ける庭

2012/05/18 02:36

ターシャの遺した広大な庭の四季を、リビングで眺める幸せ。

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ガーデナーの憧れ、ターシャ・テューダーは、2008年6月18日92歳で亡くなりました。
ターシャは、いまごろ極楽の蓮池に愛用の樹皮製カヌーを浮かべて、見回っているのかしら?
え?西洋の天国には、蓮池なんかない?
いやいや、蓮、植えちゃうでしょう。ターシャだもの。
池、掘っちゃうでしょう。ターシャだもの。

 没後一年を期して出版された本書は、B4版の大きな写真集。(見開きにすると、うちのおんぼろテレビの画面より大きかったデス。ええ、もちろんブラウン管ですが何か?)
それも、見開きB3のスペースに写真1点という、なんとも贅沢なレイアウト。
なので、ページをめくるたび、眼前に、ターシャの愛したバーモントの豊かな四季が、予想外のスケールで広がります。

 写真はすべて、ターシャと彼女の庭を数多く撮り続けてきた、リチャード・W・ブラウン氏の手によるもの。
ブラウン氏の写真は、画面全体が、非常に絵画的に計算された色面で構成されており、もはや「写真」ではなく「一幅の絵」と呼びたいくらい。
巻末の経歴で絵画の勉強をされたと知り、なるほど納得。
 巻末には、個々の写真の解説(その庭の成り立ちや四季折々の植生など)や、ターシャのご長男であるセス・テューダー氏のエッセイも。

 ここで、私、本書の素晴らしい活用法を発見しました。
お気に入りのページを開いた状態で、お部屋の収納棚やリビングボードの上に飾るのです。
すると、まるでそこに大きな窓が開いたかのような視覚効果が!
ウサギ小屋のベランダの向こうに、30万坪の庭が広がっているかのような錯覚が!(T∇T)

 この極東の島国の、ウサギ小屋のリビングにいて、ターシャの遺した広大な庭を、季節の花々を、美しい雪景色を眺めるという幸せ・・・。
本書は、それを味わう事のできる一冊なのです。

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紙の本失踪日記 1

2012/05/18 03:20

SF以上に不条理で奇想天外な実人生のスペクタクルを、最高水準の漫画で。

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

我が目を疑いました。かわいいキャラしてマニアックな「不条理SF漫画」で、ディープな読者の熱狂的指示を受けていた著者が、『失踪日記』だなんて。
 でも確かに、実際に著者が仕事への行き詰まりから失踪した日々のエピソードが、淡々と描かれているのです。孤独な野外生活・漫画とはかけ離れたガテン系の仕事・アルコール依存症での強制入院と、ビッグウエーブの連続に、涙よりもめまいが。
 しかし、仕事場からふらりと逃げてしまったり、幻覚への恐怖から連続飲酒の深みにはまるような「人の心の弱さ・危うさ」を描く一方で、それ以上に、漫画家の七つ道具を武器に拾った素材で寝床を整え、漁ったゴミを時には調理し、工夫を重ねて生き延びる「命根性・強さ・したたかさ」をも描き、ひとりの人間の中に、その両方がちゃんと存在している事を思い出させてくれます。
そんな中で出会う、個性的な人々との係わり合いからは、「生きていく事の、ややこしさと面白さ」を、さらに実感させられます。
 そして何より、漫画としての表現が超一流!
あの、独特の丸っこいキャラと乾いたタッチ、クールな視点は健在。王道のコマ割り・構図・背景・濃淡も美しく、リアルに描けばシャレにならないような痛いエピソードを、絵柄と語り口で「あはは」と読ませてしまうのです。
これは、小説や実写ではちょっときつい、「吾妻ひでおの漫画」でなければ、成立しない作品かもしれません。
 本書は衝撃的な内容ではあるけれど、同時に最高に面白く、最終的には「こんな完成度の高い漫画を描かれたのだから、吾妻先生は大丈夫!」=「弱いけど強い、人間は大丈夫!」と心強く思える本でした。
 時折登場する奥さまが、口はへの字で仁王立ち。お不動様みたいで頼り甲斐があって、後光がさしてみえました。家内安全の守り神ですね。

 奥さまといえば、同時期に読んだ西原理恵子さんの『毎日かあさん・入学編』は、本書と同じテーマを女性の側から書いてある、互いに裏と表の本ではないかと感じました。男もつらいけど、女もたいへん。本書をお読みの方は、そちらもぜひ。

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紙の本まついさんちの子どもめし

2012/05/18 03:01

お待ちかね、まつい家の近況は夕ご飯の匂いと共に。愛と笑いの子育て&食べさせエッセイ。

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

まついファン待望の、ご飯にまつわる漫画&エッセイ。
日本全国母達にとっての重要案件「365日、子どもに何食べさせる!?」という悲痛な叫びに、男子3人育成中のまついさんが「うちは、こんなだよ〜」と答えてくれる、まさに現場からの生のレポート。
 といっても、いわゆる「レシピ本」ではありません。
だいいち、料理、失敗してる!(笑)
「広島風お好み焼き」をフライパンで作ろうと工夫した結果、味はイマイチだったり、子どもの頃に食べた「煮っころがし」の味が再現できない〜!とぼやいたり。
あまつさえ「料理してない話」も。献立に行き詰まってサンドイッチ屋に走り、体調崩して宅配弁当が続く。(でも実は、参考になるお料理もいっぱい載ってるんですけどね。えへっ)
 どちらかというと、この本は、ママ友とのおしゃべりみたい。
バッタリ会ってお茶しつつ、「その後どうしてた〜?」「それがさ、いろいろあって体調崩しちゃって。食い扶持は稼がにゃならんし、男子どもは腹減らして帰って来るし、もう夕飯なんかこうでこうでこうよ」「おお〜、その手もアリか!」みたいな。
 子育て期って、そう。仕事の責任は重く、親は老い、自分は更年期。それでも、日は昇り日は沈み、食事の時間はやって来る。
 だけど全然大丈夫!だって、ここには愛と笑いがあるから!
おうちで何か食べる時の、子ども達のリラックスした笑顔。ベランダのテーブル。オモチャ。そんな、ほっこりする写真の数々。
「手作りのもの食べさせたいけど、今日は作れなくてごめん」という切なさを、あったかく包んでくれる近所のお店の人達。体調不良でもギャグを飛ばし食卓を和ませる母・・・。漫画部分が、また妙にぶっ飛んでて可笑しくて、肩がぷるぷる。
 そしてエピローグで、私は泣けた。次男くんの危機に際して、まついさんがとったその行動に。その言葉に。
 というわけで本書は、リアルな子育て生活のエッセイであります。
女の人生たいへんだけど、さあ今日も「ごはんだよー!」って叫びましょ。
「まついワールド」の疾走感と安心感を、あなたにも、ぜひ。

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「失踪日記」出版前夜。大人の、人生の夏休み絵日記。読書感想文も、いっぱい(^^)

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、ベストセラー「失踪日記」出版前夜の日常を描いた日記漫画。
事件はなく仕事は少なく、寝て起きて書店行って図書館行ってアイス買って昼寝して麺類食べて本読んで薬飲んで漫画描いてテレビ見て寝る日々。何に一番似ているかというと、「夏休み」です。
 なので、一瞬「いいなあ〜こんな暮らし」と思ってしまうけど、もちろんそれはとんだ勘違い。私ども凡人の「夏休み」とは大きな違いが。
 第一に、その半端でない読書量。
誰に頼まれたわけでもなく、大量の本を読み続ける日々。SF、文学、ミステリ、エンタテイメント、漫画、短歌・・・とジャンルは様々。これらがすべて「あじまワールド」を形作る糧になっているのか、と感慨深い。
日記中の読書感想がまた魅力で、本書は読書ガイドとしても価千金。
 第二に、漫画を描いている事。
「漫画家だから当然」と言うなかれ。著者はかつて、創作の苦しみから逃れるために失踪を重ねアルコール依存症に陥り、現在も断酒会に通い抗鬱剤を飲んでいる状態。それでもなお、依頼されずとも出版のあてがなくとも描いている。これぞ漫画家魂!
 お金を稼ぐのなら他の方法もある。(吾妻先生はガスの配管だってできる!)だけど、苦しみ悩みながらも、やむにやまれぬ何かが描かせているのだなあ。
 日記中、読者はついにそんな日々が報われる瞬間を目撃します。
「失踪日記」の出版元が決まり、(それが大ヒットする事を知っている私達には特に)雲間から光が射し天使のコーラスが聞こえるのです。
吾妻先生に漫画を描かせている「何か」に、心から感謝する瞬間です。

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テーブルの上に、ターシャの家が建っちゃった!自然の恵みあふれる素朴な暮らしを描いたポップアップ絵本。

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本を開いたとたん、こどもが「うわあー」と声を上げました。なぜって、茶の間のテーブルの上に、家が建ったから。
 家といっても、ただの家じゃない。匠がリフォームするような、建坪10坪の都会の狭小住宅でもありません。この家は、森を背に建つ18世紀風の農家。母屋に別棟、納屋もある。敷地は30万坪だあ!
挿絵画家・絵本作家にしてガーデナーのカリスマ、ターシャ・テューダーが犬たちと暮らした、通称「コーギコテージ」です。

 本書は、ターシャ自らが描いたポップアップ絵本。
美しい水彩画と仕掛けで、バーモントの移りゆく四季や、そこで暮らす人々の生きいきとした様子が伝わってきます。

 冒頭のコーギコテージ全景には、ついつい目を凝らしてしまいます。(ターシャの写真集をうっとり眺めていたファンは、特にそうなるでしょう)
よく見ると、壁際には、こどもたち。納屋の方には山羊。石積みのテラスも、ちゃんとある。クラブアップルの木は、これかしら。
 各ページの仕掛けも、楽しい。
夏のスクエアダンスではパートナーをチェンジ。秋のリンゴ食い競争ではリンゴを咥えようとジタバタ。冬は、せっせとバター作り。
クリスマスには、人形劇と大きなツリーを囲むこどもたち。そして、それを見守るのは、部屋の片隅でコーギ犬を抱いたターシャ・・・。

 この本は、人間が自然から受ける恵みの豊かさと、それに対する感謝の心を、とても楽しく思い出させてくれるのです。

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紙の本女の子ものがたり

2012/05/18 03:17

この本は、命の匂いがする。女の子たちは、命の匂いをさせながら、大人になっていく。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本を「まんが」といって良いのか、私にはわかりません。
「絵本」?いえ、もしかしたら「文学」なのかもしれません。
どこまでも迷いのない線と、どこまでも果てのない色彩で描かれた、とても、とても、うつくしい本です。
 「女である」事をあたりまえに背負って、田舎の、自分の影が薄紫色に見える強い太陽の下で、大人になっていく女の子たち。
工場の影が西日のあたる原っぱに落ちて、女の子たちは子猫の死体を埋める。
「いのち」や「からだ」は、いつも、女の子のそばにある。草や水や土の中に、そして自分の中にも。
 前作『上京ものがたり』の「エピソード1」とも言える本書は、幼児期〜思春期にかけての幼なじみたちとの濃密な時間と、それを見守る町や自然を、西原理恵子さんの鋭利な、しかし暖かいペンで描いた自伝的な作品。
この本からは、土ぼこりと、草いきれと、魚のいる海と、夕ご飯の匂いが、本当にするのです。

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紙の本「朝日」ともあろうものが。

2012/05/18 03:12

17年間の「朝日新聞社」社員生活と自ら決別した著者の、葛藤するピュアな魂の軌跡。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルがタイトルなので誤解されやすいと思うのですが、本書は「朝日新聞社」を敵視して糾弾するような「『朝日』バッシング本」ではありません。
 また、私も一瞬、著者自身が「『朝日』ともあろうものが。」と言っているのかと思い、「そうだとしたら、ずいぶん偉そうじゃん。奉ってるのか貶してるのか分からんな」と思ったのですが、それも勘違いでした。
 「『朝日』ともあろうものが。」というのは、朝日新聞社にかかってくる「読者からのお叱りの電話」で決まって使われるセリフであり、それに対する著者の激しい「違和感」を取っ掛かりに話を展開するため、ピックアップされた言葉のようです。
 この本は、むしろ、ひとりの生真面目で純粋な若者が、巨大な組織の中で身を粉にして働き、あるいは自費でアメリカ留学を果たすなどして苦闘のうちにキャリアを積み、やがては一個のジャーナリストとして、自らの志とはあまりに違う形を要求する会社から脱皮していく「成長譚=ビルドゥングスロマン」のように思われます。
 もしも「小説」という形をとりプライベートな部分なども書きこんでいれば、椎名誠さんの「新橋烏森口青春編」ばりの作品になっていたような気もします。しかし、著者である烏賀陽氏はジャーナリストであって小説家ではないので、それは望むべくもない事なのでしょう。(それに、この話を、フィクションではない「事実」として世に問わなければ、著者はこの先の人生へ進めなかったのかもしれません。そんな気がしました)
 ともあれ、ここに書かれた新聞社の内部事情など、部外者には知る事のできない事々に新鮮な驚きがあるのも事実です。
私たちがイメージする、志高く正義感にあふれ世の不正を正すような「社会の木鐸」たる大新聞社は、すでに絵空事なのでしょうか?
本書を読み、ニュースで某放送局の不祥事の数々を知る時、「確かに、この病は単に朝日にとどまらない巨大マスコミに共通のものなのかも」と、思われてなりません。
しかし、著者の「朝日」に対する視線は、決して「敵」に向けるような冷徹なものではなく、自分を育てた「親」に対するような、どこまでもせつないものを感じます。
「朝日」という皮を脱ぎ捨てた後の烏賀陽氏の、のびのびとしたご活躍を期待いたします。

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紙の本逃亡日記

2012/05/18 02:57

あの「失踪日記」の背景が分かる!貴重なインタビュー本

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

まず、この本、タイトルは「逃亡日記」ですけれど、日記ではなくインタビュー本ですので、お間違えなきよう。
多くの賞に輝いた著書「失踪日記」にまつわるアレコレから、生い立ちに関するモロモロ、これまでの漫画人生のしかじかまで、貴重なお話が吾妻先生ご自身の言葉で語られます。
 各賞授賞式を描いた漫画や、奥様&娘さんへのアンケート(これが泣ける!)なども収録されており、旧来のファンに嬉しいばかりか、「失踪日記」からの読者にも、その背景がよーく分かる一冊。
ああ!こんな本が読めるなんて、「失踪日記」が売れて本当に良かった(T∇T)
 失踪生活の現場巡り写真(withメイドさん)もあり、大判のムックにしても楽しかったような気はしますが、「失踪日記」と似た版型・装丁にしたかったのね。きっと(^^)

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紙の本神も仏もありませぬ

2012/05/18 02:38

痛快!北軽井沢の自然と友人たちに囲まれて、絵本作家が物語る老いと暮らし。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書は、『100万回生きたねこ』で有名な絵本作家・佐野洋子さんのエッセイ集。この方のエッセイを読むのは初めてでしたが、一読で魅了されました。
これは、「絵本作家の文章」だ!

 ご存知のように、絵本というものはページ数が少ない。1ページあたりの文章量も限られている。そんな中で、読者をそのオリジナルな世界に引き込み、何事かを語り切らねばなりません。
 それで、なのでしょうか。洋子さんの文章は簡にして潔。平易なのに個性横溢。痛快に、ずばりずばりと核心を突いて来る。
だから癖になる。彼女の世界に「もっと、もっと」と足を踏み入れたくなる。

 内容も、「母親の痴呆や自らの老いを見つめながら、北軽井沢での田舎暮らしや愉快な友人たちとの交流を描く身辺雑記」なーんていってしまうと、何だか違う。なにしろこれは、絵本作家の文章なのだ。
 どこかにある「キタカルイザワ」という村を舞台に、個性的な友人たちの話と同等に、「呆け」や「老い」そして「死」までもが「物語」として語られている、そんな錯覚をおぼえる。
そして、そこで語られている事々は、「現実」というよりも、むしろ「真実」と呼ぶのがふさわしい。
「うーん、佐野洋子さんのエッセイもっと読みたい!」と思わせる一冊でした。

※蛇足ですが、このエッセイ、長嶋有の読者は読み進むうち、なんともいえぬ既視感を覚える事でしょう。そして「なるほど、そういう事か!」と思うでしょう。
ここで詳しくは申しませんが、長嶋有著『ジャージの二人』と併せて、ぜひご一読をお勧めいたします。

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