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訳者さんのレビュー一覧

投稿者:訳者

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紙の本トゥイ・キォウの物語

2005/09/24 10:22

訳者コメント

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 この物語は、グエン・ズー(阮攸。1765~1820)が、中国の通俗小説『金雲翹伝』(清・青心才人編述)から翻案した3、254行の長編詩で、ベトナム文学の金字塔と言われています。『物語ヴェトナムの歴史』(小倉貞男著、中公新書)の中では、「一人のうら若い女性の波瀾万丈の悲しいストーリィに盛られた教訓は小学校から教科書に取り入れられ、ベトナム人はしばしばこの物語の文章を日常会話の中に交える」と紹介されています。
共訳者で詩人の黒田佳子さんは、「多くの日本人が見失った自分たちの判断の拠り所を考えさせてくれる。登場人物たちの描写は善人も悪人も生き生きとしていて、何度もの翻訳を経ても消えずに、なおも蘇ってくる力強い作品。一人の不運な女性の悲しみに読者も一緒に泣きたくなるような生々しく人間臭い面も、人間の一生を無限の闇にポッカリ漂うカプセルのように感じさせる宇宙感も備えた物語」と巻末に書いています。
翻訳に当たっては、外国人の方や高校生以上の学生諸君など日本語中級の読者にも読みやすいように、平易な表現の散文にするとともに、漢字にはルビを振りました。
この出版事業は、個人的には日越文化交流の促進を意図したものです。『トゥイ・キォウの物語』はベトナム人の心に触れる近道であるとも言われています。是非ご一読下さい。
(抜粋)
百年、それは人の命の長さ。一人の人に、非常に優れた才能と恵まれた人生が共に授けられることは滅多にありません。
 五百年、それは海を桑畑に変えるほどの時の長さ 。その間には、数多くの痛ましい出来事が起こるもので、佳人が不運につきまとわれることも少なくありません 。
 不幸な佳人は不思議に多いものですが、そんなに驚くようなことでもありません。紅の頬を持つ少女に嫉妬が向けられるのは、この青空の下で起こりがちな、人の世の習わしなのです。
    灯りの傍らで芳稿が開かれ
    古い竹簡に綴られた
    愛の物語が
    いま始まろうとしている
 明朝は嘉靖年間 、四域が平定され二京の守りも堅かった十六世紀のこと。程々の富と地位をもつ名士、ヴウン(王)家がありました。
 息子は末っ子のヴウン・クァン(王観)で、この家の跡継ぎでした。娘二人は姉のトゥイ・キォウ(翠翹)と妹のトゥイ・ヴァン(翠雲)。二人は共に神々しいまでに美しく、梅ほどにほっそりと、雪のように清い心を持ちながら、それぞれ異なる魅力を持っていました。
 妹のヴァンは、満月のように丸いふっくらとした顔立ち と蚕が臥したような二つの眉で、とても美しい印象を与えていました。雲よりも艶やかな髪と、雪よりも白い肌。花開くような暖かな微笑みと翡翠のように澄んだ美しい声は、人をうっとりとさせるものでした。
 姉のキォウは、妹よりもさらに優雅で、魅力的で、才能に溢れていました。瞳は透き通った秋の水面のように輝き、眉は春の山並みのよう。彼女の輝きに花はうらやみ、瑞々しさに柳もすねるほど。その一瞥は都市を倒し帝国を滅ぼすこともできたでしょう。比類ない美しさと才能に生まれつきの聡明さも加わったキォウは、詩や絵画だけでなく、歌謡や美しい韻文も好み、クン・トゥウン(宮商) の五音階をすっかり修得し、胡琴の演奏にも秀でていました。
彼女が自ら作曲し、好んで演奏した曲は「薄命」。なぜか聴く人の涙を誘わずにはいない、不思議な悲しい音色の曲でした。キォウは紅い裳裾を装う良家の花のような娘として、青春時代の始まり、髪にかんざしを挿す年頃となりました。

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