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先月(2017年6月)

大夢深根さんのレビュー一覧

投稿者:大夢深根

1 件中 1 件~ 1 件を表示

強い日本の造り方の教科書

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 強い日本を作るために、これからの日本は、ソフトインフラ(制度的社会関係資本)の造り替えが必要となることは間違いない。そして、それをする際に不可欠なのが、この本が主張する「変化への適応能力の高い、多元的な日本を造ろう」との理念哲学だ。その意味で、「哲学なくして改革なし」という松井証券の松井社長の言葉にはずっしりとした重みがある。

 ソフトインフラの見直しの重要性については、縦割り省庁ごとに出来上がった各種の法規制などのルールと行政指導などのレフェリーの仕組みを根本的に変えていくことが大切なことがわかる。そして、これまでそれができなかった理由も、背景にきちんとした新しい時代の哲学がなかったからだったのだということをこの本を読んで納得した。

 ここで著者が主張したいのは、個別撃破的、あるいはもぐらたたき的な規制改革は、できるところまでやりつくしたと言うことであろう。これ以上同じ方法をとっても、これ以上の規制改革は進まない。これから本当に必要となる構造改革の目玉は、もしかすると、法システムそのものの改革であると言うことを、この本は言いたいのではないかと感じる。

 官僚がいくら優秀でも、政治家がいくら志が高くても、時代の根本が液状化し、企業の活動や情報やお金の流れが国の枠組みをはるかに超越してしまっているわけだから、彼らだけでいいビジョンやいい法律が造れるはずがない。縦割りの蛸壷のなかではできることに限界があり、それですべてを律しようと考えること自体が傲慢といえよう。

 これから必要になるのは、志とやる気のある市民と市場の専門家である非官僚・非政治家の、政治と行政への積極的関与であることが、この本の行間から伝わってくる。また、個人と会社など団体と、中央と地方の政府と、社会との間の関係をもっと柔軟に考えていく必要があることをこの本は教えてくれる。

 また、例えば、法学とは今ある法律を解釈するだけの受動的な学問ではない。本書は、法律は守るべきもの、あるいは守らせるべきものではなく、市民の社会生活をより充実したものとするための道具であるという当たり前のことにも気づかせてくれる。ソフトインフラの代表としての法と規制システムの改革は、もっとも大事な構造改革のアイテムなのだ。

 最後に、ひとつだけ注文を。「イノベーションできない人は去りなさい!」という題は大変刺激的で、松井証券の松井社長などが言いそうな題名ではある。頭が固くなってなお居座ろうとする各界のリーダーやトップに引導を渡すのであればいい。しかし、正直でこつこつと一生懸命に働く大多数の一般の庶民まで排除するような否定的ニュアンスが、題名だけ見ると感じられるのは残念と言わざるを得ない。

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