remさんのレビュー一覧
投稿者:rem
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2007/03/14 22:50
【辛くなるほどの孤独と切なくなるほどの暖かさ】
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
日本でこんなにも良質な長編の児童文学があったなんて。
「ハリーポッター」や「ハウルと火の悪魔」などの冒険小説も楽しいが、ひと味もふた味も違う魅力がこの本にはある。
貧困にあえぎ、暖かい家も食べ物もない13歳の少女ペチカ。「病気をばらまく存在として恐れられている妖精」フィッツ。
野良小猫を蹴り上げるペチカを信じられない思いで見つめるフィッツと、フィッツのせいで大切なお母さんの写真までなくしそうになるペチカ。
生きることの辛さと、ひとりじゃないことの暖かさがいっぱい詰まった、大人にも読んで欲しい一冊。
紙の本体は全部知っている
2007/03/14 22:59
【視力の良さとセンテンスのセンス】
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
どうしてこんなにも心に染みこんでくる文章が書けるのだろう。
久しぶりに読んだ吉本ばななの1冊。
短編なのに、登場人物の生活・人生が拡がる。
どんな情景も、それを見る本人の心象というフィルターを通してしか見えない。情景の描写がとても美しく、すばらしい。
心に支配され、心を支配するカラダ。頭で考えていたって、その頭もカラダで、血糖値が下がればイライラするし、注意力も落ちるし、それが続けばフラフラしたり、認識力が低下したり。
反対に気持ちが幸せだと、熱があったって楽しかったりもする。
手足が冷えるとブルーになりやすかったりもする。
後書きにもあるように、カラダのメンテナンスに時間をかけることが
心もメンテナンスすることに繋がっていきそうだと感じた。
紙の本死にカタログ
2007/08/10 22:53
抱腹な死の多様性
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
死んだらどうなる?
お星様になったり、仏様になったり、ミイラになったり、ゾンビになったり。いろいろな説がありますが、宗教や習慣によって全く違った死の形があるもんだなぁと驚きます。死というのは同じ現象なのに。
死に方の総合カタログ「死にカタログ」
・遺族が死の儀式に失敗すると、罰として死者はコオロギになる。
・死んだら近所の島に行く
などの死の考え方から
・死亡原因の割合
・死に際したら、あなたはどうする?
POP(?)な絵がまた、“死”は身近で誰にでも訪れるものとして楽しく面白く考えさせてくれる。
紙の本アルゼンチンババア
2007/03/14 23:13
【愛というよりむしろ掘りごたつの郷愁】
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
どこにでも必ずひとりはいそうな、小学生たちがちょっとの恐れと好奇心と強がりで、噂をしながら目を輝かせそうな、怪しげな「アルゼンチンババア」これをタイトルにしてしまうこと自体すごい・・・。
まさか映画化されるとは思っても見なかった。鈴木京香さんじゃ美しすぎるのではないかい?と思ってしまうが。
母が死んでからは空気の抜けた風船のようになってしまった父親がいなくなった。不思議に思っていると「アルゼンチンババア」のところにいるという。よりによって、なんで?
そこから始まる、不思議で当たり前な世界。
私が感じたのは郷愁かな。
今はもうない、小さい頃に隠れた掘りごたつ。
ちょっとほこりっぽくて、赤くて、あったかくて
ずっといると息苦しさを感じるんだけど、一度顔を出してから
もう一度もぐる。
そんな日常を思い出した1冊。
紙の本家守綺譚
2007/03/14 23:28
梨木さんはこういったものも書くのか・・と。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
『西の魔女が死んだ』にはまって、『からくりからくさ』でやられ、『りかさん』・『裏庭』・・・と構成のからくりと奥深さにすっかりやられてしまった私が出会ったこの1冊。
それまで読んできていた梨木風景とはまた違い、しかし空気感(?)はしっかりと流れている小説。売れない作家が亡くなった友人の実家に「家守」として住まわせてもらい、四季折々、森羅万象、あの世とこの世をも何となく繋ぎながら、過ごしている。
亡くなった友人がもやのかかった湖の絵の掛け軸から、舟をこいで現れたりもする。
もだえ苦しむ僧の背中をさすってやったら、僧が次々と返信していく様、それに驚きつつも、何者であれ苦しんでいるものを助けてやりたいと思う主人公の心の当たり前のはずの優しさ。
おとなりの奥さんも、犬のゴローも、山寺の和尚さんも、そして友人高堂も。みんな魅力的で、訳知り顔ながらそれぞれの価値観で生きている。そんな中、どんな価値観を持ったら良いのかよくわからぬまま、またそれが自分とも重なる主人公、綿引。
家の中にも外にも不思議さがワビサビとなってあふれている作品。
今の日本からすると、異国情緒あふれるとなってしまうのかもしれない。
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