はしけいさんのレビュー一覧
投稿者:はしけい
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紙の本半島を出よ 下
2005/06/26 12:28
村上氏の問題提起ではないか?
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
小説としてみれば最後の結末についてもう一ひねり欲しかった。上下巻読む間ハラハラドキドキの連続で、のめり込んで一気に読んだが、最後の結末は何か物足りなさ、あっけなさを感じたが、おすすめしたい本のひとつだ。
しかし、この本では単純な小説物語とは思えない。村上龍氏の社会に対する問題提起ではないか。
この本では、現在日本がかかえるさまざまで複雑な社会、政治、経済問題が、=(イコール)高麗軍という感じに見え、そしてそれらの問題に対する日本人の意識がその本に描かれた日本政府に見えてしょうがない。日本政府は、問題を認識し、その問題に対して自分はどうするのかという選択ができない、そしてその問題を先送りしその場をとりあえず取り繕うとする。まさしく今の日本社会の問題の本質を突いている。
その本の中では皮肉にも社会の危険人物あるいは異物達が、高麗軍を敵と見なし、果敢にもそれに挑む。“皮肉にも”彼ら社会の底辺にいる人物達が”正常な意識と判断力”を持っていたからだ。
しかし大多数の日本人は、”正常な人間”と社会常識的には思われていながら、その本に描かれている日本政府に象徴されるように、社会の底辺の異物達と同様な”正常な意識と判断力”を持っていなかった。
この本は、我々社会の大多数の、“正常と思われている人間”は、“本当に正常なのか”を社会に対して問題提起している気がしてならない。ここに村上龍氏が、この本の中でもっとも言いたいことではなかったのではないだろうか。
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