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苦楽さんのレビュー一覧

投稿者:苦楽

32 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本予言の守護者 新装版

2005/02/24 16:20

アメリカン・ファンタジーの傑作新装版で復刻

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

  アメリカ人の理想の一つはインディペンデント・ファーマー(独立自営農民)であるとは遙か昔、アメリカ独立時のベンジャミン・フランクリンの頃から言われていることである。無学だが聡明、家族を愛し、自然に心を動かし、不屈の闘志で困難に立ち向かう独立した個人でありながら、ユーモアを忘れない。
 大統領選挙でも求められる魅力的なヒーロー像は元を辿れば独立自営農民に辿り着くのかも知れない。
 本書の主人公であるガリオン少年が育ったファルドー農園もそうした場所──理想的な独立自営農民の農場である。旅人を心からもてなす主人ファルドー、無口だが実のある鍛冶屋の青年ダーニク、ガリオンの子供時代を暖かく包み込む調理場の主ポルおばさん、そして少年ガリオンに外の世界のわくわくするような物語をもたらす語り部のミスター・ウルフ。まさに黄金の少年時代を送っていたガリオン少年だが、突然それまでの暖かい農園を後にして冒険の旅へと出ることになる。バイキングを彷彿とさせる赤毛の巨漢バラク、謎めいたすばしこいシルクなどを旅の仲間に加えて、ガリオンの冒険の旅が始まる。
 「指輪物語」がどこかイングランドの香りを漂わせる神話めいたイメージを与える叙事詩であるなら、このベルガリアード物語はまさにアメリカン・ユーモアやホームドラマの雰囲気を彷彿とさせるファンタジーである。
 「指輪物語」において一行を旅へと誘うガンダルフは半神であり、どこか威厳を漂わせているのに対し、本書でその役割を担うミスター・ウルフは台所から酒や料理をくすねる達人であり、そのコツをガリオン少年に伝授しようとするおよそ“教育上よろしくない”人物なのであり、同行するシルクもまたこそ泥であり、元農民だった王家を「キャベツをを忘れちゃいかん」と、当の王家に使える隊長の前で言ってのける茶目っ気たっぷりの人物なのである。
 このキャラクターの造形と掛け合いこそが、著者ディヴィッド・エディングスの真骨頂であり、凡百の翻訳ファンタジーと一線を画している。
 冒頭の取っつきにくいとも感じられる神話の部分は読み飛ばしてしまっても構わない。 少年が育つのに最適とも思えるファルドー農園でのガリオン少年の成長を目にし、一行が旅立ちを迎える頃には読者はきっと貪るように先を読んでいるだろうから。分厚い世界に関する設定本が出るほどの奥の深い設定や創作神話などは後からゆっくり理解していけばいい。
 壮大でありながら地に足がついた人物造形とキャラクターの魅力が織りなす物語、ベルガリアード物語は本書から始まるのだから。そして、本書を読み終えた頃には登場人物達が偶にたずねてくる面白い親戚の様に思え、次の本がでるのを指折り数えて待つことになるに違いない。
 「指輪物語」以降、無数の長編ファンタジー小説が出版されたが、本書はその中でも白眉であり、「指輪物語」とは違ったユーモアたっぷりの“アメリカン”ファンタジーを存分に楽しませてくれる物語の第一巻である。
 本書を新装版として復刻してくれたハヤカワ文庫に心からの感謝を捧げると共に、一人でも多くの人がこの本を読むことを願ってやまない。

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より多様性と魅力を増したD&Dの基本となるルールブック

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は会話型ロールプレイングゲームであるダンジョンズ&ドラゴンズ(以下D&D)の3.5版(以下v.3.5)をプレイする際に不可欠なルールブックの日本語版です。
 D&Dの魅力は、20面体サイコロ一個振ってその結果に各種修正を加えて難易度と比較するというシンプルな判定方法と、ファンタジー世界での冒険を盛り上げる数々のデータ──人間、エルフ、ドワーフ、ノーム、ハーフエルフ、ハーフオーク、ハーフリング、という7つの種族とウィザード、クレリック、ソーサラー、ドルイド、バード、バーバリアン、パラディン、ファイター、モンク、レンジャー、ローグというマルチクラス可能な11種類のクラス、信仰呪文、秘術呪文に大別され、クラス別にリスト化された、隕石を落とし、奇跡を生み出し、時間すら止めるまでに至る数百の呪文──、遮蔽、足払い、突撃などの様々な戦術を可能にする緻密な戦闘ルールなどと用語集、索引などが完備された分かり易いルールブックが挙げられますが、v.3.5はそれらの魅力を受け継いで、さらにより分かり易く、より選択の幅を広げるように改訂が行われています。
 より分かり易く、という点では、前の3版でわかりにくかった撤退、突撃、斜め移動、クリーチャーのサイズ、遮蔽などが、駒とスクエアマップを用いることを前提に明確化されたり簡略化されています。また、具体的な記述に関しても、スクエアマップと駒を用いた解説イラストと、手順を明記して判定の流れを示すことによって、より分かり易く記述されています。 
そして、より分かり易く、と並んで本書を貫くもう一つのコンセプトが、より選択の幅を広げるように、ということです。
 前述した7つの種族、11種類のクラス、数百の呪文もその中にはゲーム的な有利不利があるが故に、人気にも実際にゲーム中に用いられる頻度にも差がありました。これでは定番の選択ばかりが行われ、実際には選択の幅が狭い、ということにもなりかねません。それ故に、v.3.5では様々なデータやルールの見直しが行われました。
 幾つか例を挙げるのであれば、最も人気のあった使い魔のヒキガエルの弱体化、移動力が低い故に不人気だったドワーフは重装備でも移動力が落ちないように、1Lvの段階で基本的な能力を得てその後のレベルアップに伴う能力の習得に魅力に乏しいがゆえにマルチクラスで1Lvだけ取られることが多かったレンジャーには弓兵と二刀流という戦闘スタイルを導入してレゴラス(『指輪物語』)かドリッズト(『ダークエルフ物語』)のような活躍のスタイルを選べるように、そして呪文レベルごとに定番呪文となっていた、スリープ、ヘイスト、ポリモーフ、ストーンスキンや各種能力増強系呪文などを弱体化させ、より選択の幅を広げるようにバランスを再調整しています。
 これら二つのコンセプトは、どちらも最終的にはよりゲームに多様性をもたらそう、という意図に帰着すると考えられます。折角の多様な戦術を可能にするはずの詳細なルールも、わかりにくければ用いられずに多様性を損なうでしょうし、露骨にゲーム的な有利不利がはっきりしている要素もやはり実際のゲームにおいて選択の幅を狭めてしまうでしょう。v3.5においてD&Dは沢山のユーザーがプレイしている内に発見されたそういった欠点を改善しています。
 そして、より多様性を得たD&Dv.3.5はこれからD&Dを始めようとする人にも、既にD&Dを遊んでいる人にもお勧めできる奥の深い魅力があると思います。

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豊富なマジックアイテムカタログと広汎なマスタリングガイド。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールの二冊目である本書は、その名の通りゲームの運営者であるダンジョンマスター向けが主な内容ですが、それだけに留まらない内容を有しています。

 本書の魅力として挙げられるのは、D&Dをさらに盛り上げる数々のルールとその運営のためのガイドラインです。
 まずは、キャラクターの個性化をさらに進める、条件を満たしたものだけが成れるアーケイン・アーチャー、アサシン、シャドウダンサー、ドワーブン・ディフェンダー、ブラックガードといった上級クラスの他、NPC用クラス、種族の拡張(モンスターすらキャラクターとして扱えるのです)、自作の指針と注意などがゲームにさらなる魅力をもたらしてくれます。
 魅了、石化、毒、病気、エネルギー吸引などの厄介な特殊能力の処理、気候や天候の影響、空中戦のルールなども明確に記述されています。
 そして、大きなルール的な特徴は、世界を記述するためのルールの充実です。街の規模、住人、購入できる商品の限界、その街に存在するクラス持ちのNPCの数、ダンジョンの扉、罠、内容物、遭遇などがルールとデータとして記述され、ダイスで決定することが可能です。
 その他、豊富なマジックアイテムの数々単に強力な武器や防具に留まらない、携帯用の要塞や潜水装置、伝説級のアーティーファクトなどの実例や、マジックアイテム作成ルールは、プレイヤーにも本書を有益かつ必要なものにしています。

 そして、本書のもう一つの魅力は、まとまったマスタリングガイドとしての価値です。
 セッションの運営、ルールを間違えた時の対応、ゲームを楽しくするための日ごろの努力、トラブルシューティングに始まって、シナリオ作成で注意するべき諸点、悪いシナリオの構造と実例、連続するキャンペーンの魅力と運営方法、世界をまるで存在するかのようにプレイヤーに感じさせるための、NPCの動かし方のアドバイス、世界の作成、管理、運営方法など、他のTRPGのマスタリングを行う際にも有効な記述が本書には多数書かれています。
 もちろん、本書の記述全てが自分の状況に適しているわけではありませんが、問題を認識して対処するための考え方の枠組みや方法論、叩き台としても有益であると思われます。

 以上の諸点から、本書はD&Dのダンジョンマスターに留まらず、D&Dのプレイヤーにとっても、そして他のTRPGのマスターにとっても有益な書籍だと思います。 

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本格的TRPGの基本ルールブック。

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 ダンジョンズ&ドラゴンズ第三版の日本語訳、その基本となるルールブックです。
 整理されたルールと膨大にして緻密なデータ、タクティカルでスリリングな戦闘ルールとバランスは胸躍る冒険を演出してくれるでしょう。
 基本的なルールは1d20(20面体サイコロを一回振る)の結果に修正を加えて難易度と比較するというシンプルなものですが、能力値、装備、各種状況による修正が明記されて成功の可能性の可視性と戦術性を同時に高めると共に、明確な基準を示すことによってマスターの負担を軽くすることにも繋がっています。

 本書は、プレイヤー(PL)とダンジョンマスター(DM)の双方が必要となる、最も基本となるルールブックです。

 種族及びクラスでは、人間、エルフ、ドワーフ、ノーム、ハーフエルフ、ハーフオーク、ハーフリング、という7つの種族とウィザード、クレリック、ソーサラー、ドルイド、バード、バーバリアン、パラディン、ファイター、モンク、レンジャー、ローグというマルチクラス可能な11種類のクラスの組み合わせに加えて、技能と特技の選択によって幅広いキャラクターの表現が可能です。

 システム的には、技能には使用例と難易度の基準が明記され、システムの可視性、キャラクターの可能行動を明記しています。
 コマとスクエアマップを使用を推奨しているタクティカルな戦闘ルールは、敵の間合いで迂闊な行動をすると攻撃を受ける機会攻撃のルールや豊富な戦闘オプションを提供する特技と共に、戦闘をエキサイティングでスリリングなものにすることに成功しています。
 特技や武器、戦闘オプションの組み合わせによって、ルール的にキャラクターの戦闘スタイルを構築することが可能であるばかりか、機会攻撃や遮蔽のルールによって、単なる移動すら戦術的な意味を持ち、弓などの遠距離攻撃が大きな役割を果たします。
 もちろん、スクエアマップとコマを使用することで、初心者でも一目で状況を理解することが可能です。

 その他にも、数百種類に及ぶ呪文、単なるダメージ呪文ばかりでなく、移動、探知、戦闘補助、召喚、回復など、が剣と魔法のファンタジー世界を強力にアピールしています。

 膨大なデータを利用しやすくするための用語集や索引も付属し、ルール的な言葉は明確に定義、説明されて理解の助けになっています。
 また、巻末の付録として、若干のモンスターや宝物のデータ、ランダムダンジョンの作り方に加えて、シナリオ「病魔の坑道」も付属しており、この一冊だけでしばらくの間遊ぶことが可能です。
 他のTRPGにはない強力な個性と魅力を持ったD&Dを是非楽しんでみてください。

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紙の本蛇神の女王 新装版

2005/03/25 12:09

魅力的なキャラクターが織りなす、ユーモア溢れる道中劇

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 ここまで世界のディテールをキャラクターを通じて書けるとは、と本書を読了して唸り声を上げてしまった。
 剣と魔法のファンタジーである、「ベルガリアード物語」の第二巻である本書で、アメリカ的善良さを体現した“故郷”ファルドー農園を後にしたガリオン少年達一行は、“重要な何か”を求めて世界を旅する。
 農奴が虐げられ、二つの民族の争いが今も後を引くアレンディア、拝金主義のトルネドラ、そして密林と蛇の王国であるニーサなど、どの国も個性的だが、注目すべきはそれぞれの国の個性が単なる描写だけでなく、その国で出会うキャラクター達を通じて表現されていることであろう。
 アレンディアではガリオンと対立しつつも友情をはぐくむ直情な弓師のレルドリン、古めかしい言葉遣いを欠かさない謎めいた騎士のマンドラレン、トルネドラでは“自称”貴族の娘のセ・ネドラ、そしてニーサでは宦官のサディと蛇の女王サルミスラなど、どれをとってもその国を代表し、個性溢れるキャラクターである。
 特に、セ・ネドラは、一行を馬鹿にする誇り高さ、そして一行の正体を知っての年頃の少女らしい怯え、ガリオンへの反発と読み書きを教える優しさなど、新版の表紙と相まって魅力的な百面相を見せてくれる。
 さらに、旅の仲間や国の重要人物だけでなく、ちょっとした行きずりの人物達とそこでのエピソードも魅力的に書き込まれているのが本書の何よりの魅力であろう。
 アレンディアで一行の行く手を遮る頑なな騎士を大魔術師ベルガラスが手玉に取るシーンは、厳粛そうな外見の影でぼそりと呟く茶目っ気たっぷりのベルガラスの呟きが笑いを誘うし、宮廷で出会う貴族の令嬢とガリオンのやり取りの一幕は思わず噴き出してしまったほどユーモアに溢れている。
 こうした小さな、しかし魅力的なエピソードの積み重ねによってエディングスは架空世界を生き生きと表現している。
 この辺りのアメリカン・ホームコメディをも連想させるユーモアの感覚は、アメリカの作家であるエディングスならではの持ち味ではないだろうか。
 それでいて、物語の骨格も等閑にはされていない。今までの世界とは全く違う世界に放り込まれて、自分のアイデンティティが揺らぐガリオンは本書で何度も自分が何物か、そして自分の状況と如何に付き合っていくかについて悩み、時に駄々をこね、そして、周囲の人々との交流を通じて少しずつ様々なことを学んでいく、という物語の王道はきちんと押さえられている。
 とにかく、600ページ近くもある厚さが気にならないほど、魅力的な人物達が織りなす珍道中に引き込まれる一冊である。
 新版の表紙絵の魅力的なセ・ネドラも含めて、是非この機会にファンタジーや物語好きの人にお薦めの一冊である。

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ダンジョンズ&ドラゴンズを初めて遊ぶ人にこそお勧めの一冊

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 本書は、会話型ロールプレイングゲーム(TRPG)、ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)用のシナリオ集である。
 D&Dにおいてダンジョンマスター(DM)はゲーム機の代わりとなって、物語や敵、イベントをゲームの開始前に準備しておき、いざゲームの場では、CGで世界を表す代わりに口で世界を描写し(会話型RPGと呼ばれる所以である。もちろん、イラストやミニチュアを用いればなお分かり易い)、コンピュータの代わりに敵を動かし、プレイヤーの行動をルールに基づいて判定しなければならない。
 慣れれば自分が世界を構築し、敵を動かし(主人公であるプレイヤーキャラクター達を苦しめ)物語を演出するというデザイナー兼プロデューサー兼演出家兼ジャッジというこのDMという役割を楽しめるが、慣れるまでは面白さより難しさ、煩雑さが表に立つのがDMというものである。
 かく言う私も、初めてDMをする時は緊張して、今考えると恥ずかしいような失敗を何度も繰り返して、焦りながら300ページもあるD&Dのルールブックをひっくり返したものである。
 本書は、その迷えるDMに与えられた福音である。レベル1から6までに対応した7本のシナリオは、いずれもD&Dを知り尽くした人達によって生み出された逸品であり、これをよく読んで置けば、自分でシナリオを生み出すために頭を捻る必要はない。中身も、ほのぼのとしたシナリオあり、緊迫した戦闘物ありとバラエティに富んでいる。
 さらに、敵や味方といった登場人物の行動や、その場所で主人公達が取るべき行動に対する判定やルールもきちんと明記され、一々あの分厚いルールブックを必死になってめくる手間から解放されるようになっている。
 一度これらのシナリオを遊べば、次から自分がどんな判定をすればいいのか、どのルールを適用すればいいのかが分かるだろう。
特に、入門用のシナリオにおいては、冒険に出る前にどんな準備が必要かが順を追って書かれており、武器や鎧・冒険用具の購入、魔法を使うための準備や冒険の目的地について情報を集めること、お互いの能力を確認することなど、シナリオを遊ぶだけでD&Dの冒険の基本が身に付くように設計されているのには頭が下がる。
 また、変化に富んだ7本のシナリオは、きっと自分がシナリオを考える際の参考になるはずである。
 さらに、本書の価値はこれだけではない。巻末にはトーチ・ポートという、伝統ある東町と活気があるが柄の悪い西町からなる街の情報が記述され、冒険のホームタウンや都市での冒険の舞台として使えるようになっている。
 味のある街のイラストと、港の顔なじみである巨人などは、いかにもファンタジーの街、という感じを盛り上げてくれる。
 そして、この街に自分が新しい設定を付け加えることもできる。本書の最後には、トーチ・ポートの設定募集要項が書かれ、採用された設定などはHJが出しているゲームぎゃざ誌やD&D公式サイトに掲載されるのである。
 このように、様々な魅力が詰まった一冊である。D&Dを始めたばかりの人にこそ、本書は是非手にとって欲しい逸品である。

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こち亀と下町と、そして秋本さんの魅力を存分に引き出す珠玉の一冊

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 本書は、大人気・大長編コミックス「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(通称こち亀)の扉絵を集め、その背景となる東京の下町について作者である秋本治氏が少年期の思い出や取材、そしてその場所を扱った話のこぼれ話や反響について書いたものである。
 順に、葛飾、千住・浅草、隅田川、上野、神田とこち亀にとってなじみ深い場所を扱い、最後には「男はつらいよ」シリーズの監督である山田洋次氏との対談が付いている。
 本書の魅力は、緻密に描かれた扉絵もさることながら、郷愁を誘う秋本氏の過去の思い出と作品に描かれた過去の下町の姿、取材で秋本氏が目にした下町の変化と変わらない風景、そしてそれらが作品にどう描かれ、どんな反響があったか、というものであるが、それらを通して秋本氏の魅力が読み手に伝わってくる。
 “お化け煙突”こと千住火力発電所についての行では、秘密基地を作ったが中で火を焚いたために消防車が出てくる大騒ぎになったこと、葛飾の水路に飛び込んだ友人のエピソードなど、こち亀の回想編の元になったエピソードや、不忍池で感じた都会の中の闇と一歩出て目にした松坂屋の光というコントラストに象徴される、秋本氏の土地への愛情が伝わってくる。
 さらに、秋本氏の背景への書き込みの拘りには定評があるが、既に失われた東京球場について書いた「光の球場!」の巻きの裏話では、資料を基にして書いた背景が、掲載後に見つかった荒川ふるさと文化館の写真と一致してほっとした、というエピソードが語られ、秋本氏の拘りを改めて実感できたことを報告しておきたい。
 何せ、背景には徹底的に拘る秋本氏だから、フィクションの作品でありながら街や実在の施設、名所などに関する拘りは一級品で、それと作品の解説が相まって独特の魅力を形成している。葛飾伊勢屋の両さんどら焼きや上野大黒屋のてんぷら、水天宮三原屋本店の塩せんべいなどの食べ物を始め、上野アメ横のミリタリーグッズの中田商店といった取材や秋本氏お勧めのお店、浅草三社祭とその取材のこぼれ話、神田祭とお茶の水から明神下の神田散歩と作中に出てくる超神田寿司の擬宝珠ファミリーの裏話、佃島を1989年、1996年と取材に訪れた時、そのモダンな変化に驚き、対照的に全く変化してない家の前の車まで同じだったというエピソードが扉絵付きで紹介されているなど、両さん好きには何よりのガイドブックとして仕上がっている。とにかく、紹介されている過去、取材時、作品にまつわるエピソードが非常に魅力的で、凡百のガイドブックとは一線を画している。一例を挙げるならば、浅草の花屋敷が取材時には休みだったというような取材時のハプニングも上手く作品に盛り込み、それを作者自らが具体的な作品名を挙げて解説しているから、こち亀好きには副読本としても必見である。
 最後の、山田洋次監督との対談では、共に下町を舞台にした長期作品のクリエイターとしての共通項、マンネリと変化の二律背反や、世代の違いによる秋本氏から山田氏へのリスペクト、山田氏から秋本氏へのエールもあり、互いにファンとしての一面を見ることが出来て興味深い。
 本書は、こち亀好きには絶対に買うべきだ、と断言できる一冊であり、こち亀を知らない人にも、東京の下町で育ち、今もそこを歩き、愛している一人の人間の下町への愛が詰まったエッセイ・画集・ガイドブックとしてお勧めしたい珠玉の一冊である。

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紙の本三屋清左衛門残日録

2004/11/08 12:51

交響曲「残照」とでも評すべき物語

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 本書を読み終えて、交響曲「残照」という言葉が頭に浮かんだ。落ち着いた文章と巧みな構成で奏でられるこの物語には、その表現こそが相応しい。
 本書は、やり手の用人であった隠居して家督を息子に譲った三屋清左衛門が主人公であり、全編を通じて二つの主旋律が存在する。すなわち、積み重ねられた歳月と付き合っていく清左衛門の姿と、藩の内部で蠢く陰謀である。連作短編の形式で綴られる日々の中で、その二つが交錯しつつ、共に物語の主題として最後まで物語を貫き、盛り上げていく。
 「歳月」は様々な形で清左衛門の前にひょっこりと姿を現す。例えばそれは同年配の人物の病気だったり、自分の風邪が治りにくかったり、嫁の看病に気詰まりを感じたりする些細な事であったりする。あるいは、初恋の人の面影を追って、その初恋の人の娘の縁談の世話をする巡り合わせになる、また、眼前の少年達の姿を見て、清左衛門が自らの少年時代を回想することもある。
 同じ「歳月」の現れでも、前者は時が自然にもたらしたものであり、後者は自らが積み重ねてきたものが違った形で現れているのであろう。もちろん、後者の清左衛門が積み重ねてきた物は必ずしも良い物ばかりではない。同僚についての意見を述べ、彼がそれによって失脚した、自分が讒言を行ったのではないかという後悔や、友ではなかったかも知れないが馴染みの人物との関係の終わりなども「歳月」の一つの形として清左衛門の前に現れる。
 しかし、清左衛門はそれらの「歳月」を目を背けることなく受け止めていく、あるいは自ら気がかりを晴らすべく動くのである。それらを受け止める今の清左衛門自身もまた「歳月」が鍛え上げた「歳月」と清左衛門自身共同の産物であるが故に。
 もう一方の主旋律は、藩内の二つの派閥──現在の藩政を握る浅田派と遠藤派──の対立とその影で蠢く陰謀に清左衛門は様々な形で関わるのを描いて、物語に緊迫感と先の読めない楽しみを与えてくれる。個々の短編で語られた断片がクライマックスで一つの流れとして繋がり、清左衛門が最後のご奉公としての務めを果たす有様は、派手さこそ無いものの、静かで力強い盛り上がりを見せる。

 また、主旋律以外に目を向けるならば、個性豊かな人々との関わり合いが清左衛門を孤独にせず、清左衛門を外の世界につなぎ止めると共に、様々な楽器のパートのように主題を盛り上げる。それは清左衛門の旧友だが、隠居した清左衛門と異なり、エネルギッシュで未だ現役の町奉行として活躍している佐伯熊太であったり、娘のようでいてそれ以上のものを感じた行きつけの店の女性、みさであったり、中風で倒れた旧友の大塚平八だったりする。彼らの生き様を通して清左衛門は様々な事を感じ、そして彼らと関わり合うことで清左衛門もまた若い頃とは違った形で世間と付き合うのである。
 そして、それらが渾然一体となってハーモニーを奏で、物語の総決算として藩を動かした事件の後始末とそこに見える清左衛門の辿り着いた境地として結ばれる。それは是非自分で確かめて頂きたい。
 残照によって照らされる景色は、やがて来る夜を考えれば淋しいのかも知れない。しかし、そこには朝や昼時にはない魅力が溢れている。
 読み終えた今も、心のどこかで「歳月を受け入れて生きる」、という題名の静かな旋律が流れている。本書はそんな読後感を与えてくれる作品である。

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紙の本一夢庵風流記

2004/11/06 15:22

痛快無比な男の生き様に溜息と苦笑

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 この作品を最初に手に取ったのは、十数年前、まだ学生の頃だった。一読して主人公である前田慶次郎の生き様に痺れ、貪るように読破した。なにせ、その生き方は痛快無比にして、独自の美学が痺れるほどカッコいい。関白相手に「人としての意地」を守るために生命を度外視して挑むその男としての矜持、傾き者として異様な風体を好みながらも古今伝授を受けた希代の風流人、そして最も難しいとされる撤退戦で、最上義光の本陣めがけて八人で突撃して敵を打ち破るという天下無双のいくさ人にして、自分に挑んできた若侍の生命を惜しむなど、情けを知る武将でもあるこの魅力的な人物と、それをこの上もなく魅力的に書ききった著者の隆慶一郎氏に心の底から惚れ込んで、それから一気に氏の著作を読破した覚えがある。

 普通の武士、天下や領土を狙う武士でなく、撤退戦や負け戦で活躍した前田慶次郎という人物を見抜き、漂泊民や山の民など、定住民以外の存在に目を向けた隆慶一郎氏の着眼と、僅かな史料を元に魅力的なエピソードを掘り起こし、それらを繋げて慶次郎の生き様、美意識、そして「いくさ人」としての苛烈にして合理主義に裏打ちされた思考法を余すことなく描ききった氏の筆力にはただただ脱帽するばかりである。
 子供、動物に分け隔て無く本気で個として向かい合い、既存の秩序や権威に屈せず、風のように自由で水のように闊達に生きる男の中の漢の姿と、彼を取り巻く男達──家臣としての義と友情の狭間で慶次郎を切れずに泣いた加賀随一の武将、奥村助右衛門や百二十万石が三十万石になったなかで濡れ鼠になりながら慶次郎を迎えに来た直江兼続──との友情は、十数年を経て読み返してみてもいささかの魅力も減じてはいなかった。

 しかし、十数年を経て読み返して、前とは違った印象を受けたこともある。出奔するまでの主君として、その後も劣等感や慶次郎が継ぐはずだった荒子の城に関する罪悪感から事につけ慶次郎を苦々しく思い続けた前田利家、慶次郎に恨みを抱いて命を狙い続けた四井主馬、朝鮮で慶次郎に振りまわされ続けた案内人の弥助、そして慶次郎を「貴様に何が分かる!」と子供のように泣きながら罵った石田三成、彼らの姿がどうしようもなく愛おしく感じられたのである。
 それは、彼らが「天に愛された」「一切の欲を切り捨てた」「傾き者」慶次郎に対して、「天に愛されない」「欲を切り捨てられない」「凡人」だからであり、この十年で、自分もまた、「天に愛されない」「欲を切り捨てられない」「凡人」であることを痛いほど自覚したからであろう。
 作中で直江兼続は慶次郎の生き方について「天に愛されている」「天は不公平だ」との述懐を漏らす。今はその述懐がよく分かる。
 「天に愛された」男の中の漢、前田慶次郎の生き方に羨望の溜息を漏らしつつ、「天に愛されない」周りの人々の反応に共感しつつ苦笑する。
 それが、私にこの十年が与えてくれた本書との新しい付き合い方であろう、と思いつつ、本棚で視線が止まると何気なく『一夢庵風流記』を手に取ってみる。今の私にとってはどうやらそんな本のようだ。

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紙の本旭日の鉄騎兵

2004/11/01 11:09

戦車を軸にしたもう一つの歴史にして手に汗握る戦記

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 第二次世界大戦における日本軍の戦車は哀れを通り越して痛ましさすら覚える代物だった。ブリキのように小口径の砲弾に貫通される装甲と、いくら撃っても軽戦車すら撃破できない短砲身、低初速の戦車砲。戦車の命は火力、装甲、機動力だが、そのうちの二つまでが箸にも棒にもかからない代物だったのである。
 本書は、そんな日本製戦車がノモンハン事件や英米との関係改善による満州の工業化によって、戦車先進国である独ソの戦車を凌駕するまでに至るという仮想戦記である。

 ノモンハン事件をきっかけに満州で製造された戦車がアメリカでトライアルを受け、そこで見せられたM4戦車やソ連がドイツに売却してアフリカ戦線で英軍と戦ったT-34を凌駕するべきものとして開発された三式中戦車はイギリス製の17ポンド砲を装備した強力な戦車として誕生する。さらに、三式戦車と日本兵は義勇軍として連合国に参加し、イタリア、フランスでT-34やタイガー、パンテル2と過酷な戦車戦を行う、という設定は、聞いただけで戦車好きの魂を揺さぶるものがある。
 さらに本書では、戦車に関わる人々──企業人、陸軍内部で戦車開発を進める士官、現場の戦車兵や教官、史実からはウィンゲート司令官、ドイツ側の戦車生産の立役者であるシュペーア軍需相、そして紅一点、ベドウィンに育てられた女傑のフィクサーなど、様々な人々が戦車と戦闘に関わり、様々な表情を見せる。本書は、単なる戦車の活躍する仮想戦記ではなく、仮想の歴史を戦車開発を軸に読み解くという色合いが強い。
 前線の戦車兵が血で購った戦訓を戦車開発に向ける技術者、前線で確保した敵の戦車を日本に運ぶために活躍する女フィクサー、そして戦車に無理解な陸軍中央とねばり強く折衝を続ける戦車推進派の士官などの様々な群像は、話に深みと広がりを与えてくれる。

 もちろん、エンターテイメントとしての魅力も十分である。独ソの同盟関係が継続したため、連合軍を苦しめるソ連製の名戦車T-34ドイツ仕様、そしてジェット戦闘機や高性能レシプロ戦闘機の導入によって大陸反抗後も連合国が制空権を確保できないため、猛威を振るうドイツ戦車。中でも史実ではタイガー2(キングタイガー)重戦車に搭載された71口径88mm砲を搭載した「特型」ことパンテル2戦車が最強の敵として三式戦車の前に立ちはだかる。
 イタリア、フランス、オランダを舞台に展開する戦車戦は、戦車一両レベルから書き込まれ、小隊、中隊と連携や戦術を描きつつ、手に汗握るような戦車戦を緻密な筆致で描いている。

 戦車を軸にしたもう一つの歴史にして手に汗握る戦記として、本書は一読の価値がある仮想戦記である。

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広大無辺な神々と悪魔の住処である多次元宇宙への案内書

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 本書は、ダンジョンズ&ドラゴンズの追加ルール集である。本書を用いることで、ゲームの世界を拡張し、様々な異世界をゲームに導入することが可能である。
 異界、異世界、あるいは異次元、いずれもファンタジーやSFではお馴染みの概念である。しかし、それをゲームとしてどのように扱えばいいのか、それはどんな世界でどのように繋がり、どのようにすればキャラクター達が訪れることが出来るのか? それらの疑問への答えがここにある。

 次元界とは何か、という概説から始まって、それまでキャラクター達が活躍してきた物質界、次元間移動に用いられるエーテル界、アストラル界、影界の三つの中継界、地水火風と正負のエネルギーのそれぞれに分かれた内方次元界、そして、神々や悪魔の住処である外方次元界やうたかたの小世界である疑似次元界それぞれについて、重力、時間、形状と大きさ、変動制(世界の安定性)、エネルギー的特性、属性的特性、魔法的特性、他の次元界との繋がり、そして個性溢れる住人達などについて記述されている。
 これらの世界の記述の中で特に魅力的なのが、神々や悪魔の住処である外方次元界についての記述である。無限の階層なす“奈落界”アビスにはデーモン達や邪悪な神々が住み、善の勢力と争うだけでなく、“九層地獄”バートルに住むデヴィル達とも数千年にも及ぶ「流血戦争」と呼ばれる宇宙規模の戦いを繰り広げている。それに対して、善なる神が住む“七つの層なす天界山セレスティア”の先には邪悪が決してたどり着けぬ善なる根元があると伝えられる。
 そして、全ての外方次元界に通じる“属性入り乱るる異境”アウトランズには、神々の力さえ押さえ込む巨塔が建ち、その頂上には謎めいた“苦痛の貴婦人”が統治する“扉の街”シギルが存在する……。

 これらの魅力的な素材は、冒険の舞台を果てしない多次元宇宙に拡大するだけでなく、そこからやって来た来訪者達──天使、悪魔、エレメンタルなど──の行動や目的を明確にし、生き生きと振る舞わせるのに有用である。あるデヴィルは、自らの戦士として流血戦争で宿敵のデーモンを打ち破るための人材を求めているのかも知れない。

 また、プレイヤーとしての観点から本書を捉えるならば、各世界のルール的な記述はもちろん、次元に関する追加呪文や待望の上級クラス、新たなる種族やモンスター、アイテムなどが記載されている。これらはダンジョンマスターのみならず、プレイヤーにとっても有用な情報である。
 本書の素晴らしい点は、これらをダンジョンマスターが自由に活用できることであろう。一部分だけを採用する、あるいは改変するための丁寧なガイドラインと、豊富なアイディア、それを活用するための具体的なサンプルが本書には含まれている。これだけ自作のための素材が丁寧に提供されているルール集は珍しいのではないだろうか。

 本書は、他では提供できない新たな楽しみを提供してくれるルールブックとして非常に有用だと言える。多次元宇宙のこれだけまとまった解説書は日本語では初めての出版となる。是非本書に目を通して、その魅力に触れて欲しい。

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フルカラーのモンスター図鑑。

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 本書、モンスターマニュアルはダンジョンズ&ドラゴンズの三冊目の基本ルールブックであり、一冊丸ごとモンスターの図鑑である。
 240pにも及ぶこの本には、オーク、ドラゴンなど有名なものから、地底に住んで人間を操る怪魚アボレスのような独特で馴染みのないモンスターまで、500種類ものモンスター達がフルカラーのイラストと共に記述され、今や遅しとゲームに登場するのを待ちかまえている。

 アンデッド、異形、エレメンタル、巨人、植物、人怪、人造、動物、粘体、人型生物、変身生物、魔獣、蟲、野獣、来訪者、竜に分類されたモンスター達は各々の分類に応じた基本的な能力を持つ。例えば、アンデッドにはクリティカル・ヒットが無効であり、蟲には精神作用をもたらす呪文が効果を現さない、など。
 それに加えて、各クリーチャーが有する様々な特殊能力……魔術師の天敵であるビホルダーの円錐形のアンティマジックの場や、戦士系を震え上がらせる愛らしいラストモンスターの接触した金属を錆に変えてしまう能力などは、プレイヤーキャラクター達を大いに苦しめ、絶望のうめき声を上げさせてくれる筈だ。
 もちろん、データはゲームで使うものが使いやすく整理されて記述されている。日本語版独自の工夫として、各モンスターの基本攻撃ボーナスや組み付き判定ボーナスの明確化、通常攻撃と全力攻撃の二段表示などが行われている。
 戦闘時に使用するデータだけでなく、能力値や技能も記述されているため、DMが自由にモンスターを行動させることが出来る。

 そして、何よりも本書を他のモンスター関係の資料と異なるものにしているのは、モンスターの社会や他のモンスターとの関係についての記述だろう。
 乾燥した地域に住むお喋り好きのブラス・ドラゴン(真鍮竜)は善なる性格を持ち、旅人とお喋りするのを好む。彼が望む”ちょっとした会話”に付き合わない旅人は、押さえ込まれたり首まで砂に埋められて強制的に彼とのお喋りに付き合わされるかも知れない!
 さらに、彼らは悪しき竜であるブルー・ドラゴン(青竜)を宿敵としており、戦いにプレイヤーキャラクター達の力を借りたがっているかも知れない。
 こうした記述は、モンスター達を単なる打ち倒すべき障害や敵のコマから、生きた世界の住人へと高めてくれるだろう。様々なモンスターが住む世界。その世界の姿がモンスターマニュアルから見えてくるのだ。

 唯一にして最大の問題は、この本が5800円もするという如何ともしがたい事実であるが、他の資料では代え難い魅力を持つ本書はD&Dのプレイ時に不可欠なだけでなく、他のゲームをプレイする時にも有効な資料だと言えるのではないだろうか。

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現在進行中の日韓問題とその背景を冷静に分析した良著

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 著者の呉 善花女史はこれまでも親日韓国人というスタンスから、日韓関係、母国である韓国の歴史認識などを分析、批判してきた。
 本書は、その著者が、“韓流”ブームの裏で進行している韓国の政治的潮流、国民意識の変化に警鐘を鳴らしている一冊である。
盧武鉉政権のスタンスや、それを支える支持者の意識がこれまでの親米・反北朝鮮路線から変化し、親北・そして反日を前面に押し出していること、北朝鮮とのドイツ型の統一を受け止めきれない韓国の実情から、太陽政策を引き継ぐ宥和政策を展開していることなどを最新のトピックを盛り込みながら冷静に分析している。
 その具体的な表れとしての政策の変化、マスコミの論調など、興味深い話題が多い。特に北朝鮮の核開発や日本人拉致・韓国人拉致問題に対する盧武鉉政権の親北的なスタンス、既に解決済みの補償問題や、領土問題に見られる表だった反日的なスタンスの背後にあるものは無視して良いものではないことを教えてくれる。
 この手の出版物においては、韓国と日本の関係を冷静に捉えられないものが多いのだが、呉女史は自国の行く手を憂いながら辛辣とも言える分析と意見を展開する。
 折しも、教科書採択・歴史認識の問題や竹島問題で日韓関係がクローズアップされている中、例外的親日家の視点から見た二国間の問題を再認識するものとして、本書は実に興味深い。
 「韓流」ブームを取り上げるワイドショーや出版物では見えない二国間関係と問題が本書では取り上げられており、現在進行中の問題を考える上で無視できない一冊だと言える。

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夢を形にする三つの試み

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 本書は三つの試みが詰まっている。一つ目は、実際に「マジンガーZ」という人気作品の目玉である、マジンガーZの格納庫及び発進施設である下水処理施設を実際に設計・施工をシミュレートしてみるという試み、二つ目は、それを可能にした企業のイメージアップのためにフィクションの中の建造物を実際に設計してみようという試み、そして三つ目はその試みをWebで公開するという試みである。
 一つ目の各種映像や資料を基に現実的にフィクションの設定を検討するという部分は『空想科学読本』などでお馴染みであるが、それを実際の大手ゼネコンが他社の協力を得て実際の施工経験などを元にして行い、企業のイメージアップ、かつ、PRの為にWeb上で公開するという新しい試みが本書を価値あるものにしている。
 映像を元にしたサイズ、強度、仕様の見積もり──なにせ汚水処理施設のプールが割れて18m、20tのロボットがせり上がるだけでなく、横にずれて地中から出撃したりもするのだ──に始まり、それに続く実際の大深度の掘削とそれに伴う工法・岩盤・地下水などの問題点、水槽の水圧に耐えて開閉構造をもった施設の構造、マジンガーZを出撃させるための機械設備、外注の検討などを含めて出された見積もり、と、プロジェクトが形になっていく様は、プロが検討しているだけあって非常にディテールに富んで面白い。
 さらに、その過程でこれまで前田建設が関わってきた過去のプロジェクトや社内の担当者、工法などが紹介され、マジンガーZを離れても一つのプロジェクトが形になっていく過程としても、前田建設という会社の紹介としても楽しめる見事な構成となっている。
 私は土木や大規模建築物に疎い門外漢で、「マジンガーZ」や「光子力研究所」の文字に惹かれて本書を手に取ったのだが、そんな門外漢の私でも、興味をそそる対象を扱って具体的につめていくというプロセスを楽しむことができた。
 遊び心を形にすることに前田建設や、関連会社の方々が楽しんでチャレンジしている姿も非常に好印象だった。
 そして、その副産物として完成した格納庫と発進設備の模型は、超合金EXPOというイベントにも出展されていることを考えると、企業のイメージアッププロジェクトとしても大成功の部類に入るのではないだろうか。
 さらに、その様子が本書に収録されるばかりでなく、Web上の前田建設ファンタジー営業部のページでは、本書の出版すら記事にしてしまうという徹底振りである。
 Webコンテンツが本になって大ブレイクしたという例は、『電車男』という例もあるが、こちらはそのリアクションすらネタにしてしまうという点で、ネットコンテンツと出版の新しい関係を示唆していると考えられる。
 マジンガーZ好きにはもちろん、企業のPRやネットと出版という新しいあり方にも示唆を与えてくれる、面白くて様々なことを考えさせられる一冊である。

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古代へのロマンと現実のしがらみの向こうに見えるもの

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 「苛政は虎よりも猛し」とは中国の諺であるが、さしずめ「人間はティラノサウルスより凶悪である」とでも言うべきだろうか。
 1990年8月にサウス・ダコタで調査隊のパンク修理の合間に発見されたスー(SUE:発見者の名前を取って命名された)は、これまでに見つかったティラノサウルスの化石の中で、最も大きく、そして全身の骨格の殆どが揃った最も完全な標本というとてつもない発見だった。およそ恐竜に興味がある者でこの発見に興奮しない者はいないであろう。
 しかし、あまりにも貴重な化石故に所有権に関する争いが勃発して事態は裁判にもつれ込み、その間は誰もFBIに押収されたスーを研究・展示することができなくなった。
 本書は、そのスーの発見、裁判、その後を、当事者達──ピーター・ラーソンは発掘を行ったブラックヒルズ地質研究所の所長でもあり、裁判でも矢面に立たされたまさに事件の中心人物である──が綴ったドキュメンタリーである。
 所有権を巡る裁判に関しては何というか、いかにもアメリカ的、としか言いようがないが、その現実を片方におきながらも、スーやそれ以降のティラノサウルスの化石の発掘によってわかったティラノサウルスに関する新たな知見──雌雄の判別や社会生活、食事内容や怪我の状況──、ティラノサウルス発掘・研究史などが詳細な注や図解、コラムと共に記述され、ティラノサウルスについての新しい知識を得ると共に、現実に苦しめられながらも失われない関係者の恐竜への愛と化石発掘への情熱やロマンが伝わってくる。
 文中に、タイムマシンは必要か、との問いには、既に持っていると答える、という一節があるが、まさにそこに書かれた通り、科学的想像力こそは我々が既に持っているタイムマシンであり、その自家製タイムマシンの燃料となってくれる一冊である。
 折しも、2005年3月19日から7月3日まで、国立科学博物館で恐竜博2005が開催され、そこにスーの全身複製骨格や門外不出だった実物化石の一部がやって来ている。
 展示に関する裏話なども書かれているので、本書を読了後、恐竜博2005に出かけてみるのがお勧めである。
 現物には体験しなければ味わえない確かなインパクトがあるのに対して、書物で得られる知識や思い入れ、現物を支える人達についての知見がある。
 その両方を味わえば、かつて地上を闊歩していたこの巨大な生き物、ティラノサウルス・スーと恐竜に魅せられた人々がより一層身近に感じられるはずである。

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