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先月(2017年6月)

ユリコさんのレビュー一覧

投稿者:ユリコ

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本うたかた/サンクチュアリ

2004/03/26 01:23

正統派純愛小説

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。


 心にすっと爽快な風をおくるような、正統派純愛小説だ。

 飾り気のない素直な表現によりまだ若い青々とした新芽のような恋物語が描かれている。
 冒頭には「人を好きになることは本当に悲しい。かなしさのあまりそのほかのいろんなかなしいことまで知ってしまう。果てがない—。」という言葉がこの2中篇の物語を象徴している。

 「サンクチュアリ」で、主人公の智明は海辺で号泣する奇妙な女にであう。よくよく聞いてみると、女は長年連れ添い、平穏な青春時代とともにすごした夫と死別した過去をもつ。自分自身、最愛の女を失った経験のある智明は彼女に近づき、彼女の悲しみ、孤独を自分自身の経験と重ねる。回想シーンを重ねながら、本当に人を好きなることとはなにかを問う。その答えは、「人を好きなることは悲しい」ということだった。

 人は人と接していくうちに、自然に恋に落ちる。年齢を重ね、いろいろな人と出会い、その中で相手を見つけ、恋をしていく。恋をすると相手に全神経が向けられ、嫉妬したり、幸福感に浸ったり、心は大忙しをはじめる。心が自分の意思とは関係なく踊り始めると、時に隙をつかれたようなアッパーパンチを背後からくらうこともある。どうしてこんなにこころが痛いのだ、これが恋なのかと、安いメロドラマのように人は自分が恋をしていることに気づく。そう、心にちくっと針がさされたような痛みを感じたとき、人は恋をしていると認識する。「人を好きになることは本当に悲しい」と訴える作者は、「恋」という幸福そうな言葉の持つ本当の意味を説いているのだろうか。「恋」は悲しいものだと。

 ありきたりな純愛小説のようで、斜めに構えながらも、夢中になってしまう。忘れかけていた恋、まだ新鮮で、どきどきしていた恋を思い出させてくれる一冊だ。
 

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