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    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    体が硬い人のための柔軟講座 (NHKテキスト 趣味どきっ!)

    中野 ジェームズ修一 (講師),日本放送協会 (編集),NHK出版 (編集)

    5つ星のうち 4.0 レビュー詳細を見る

明けの明星さんのレビュー一覧

投稿者:明けの明星

47 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本般若心経 改版

2004/06/27 18:47

現代語訳つき

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

般若心経はとても短いので、いろいろ注釈書などが出ている。仏教をよく知らない人にも、入門として、とっつきやすいからだろう。図書館や書店などに行くと、「般若心経」の一句一句を取り上げて、詳細な解説を付す、という本がたくさんある。
この岩波文庫のはその種の本ではないが、サンスクリット語原典から直接に訳した現代語訳がついている。これが非常に参考になる。よく考えてみれば、日本の仏教の経典は、中国語訳だ。それを漢文として昔から読んでいるのだろうと思う。そういう意味では、この原典からの現代語訳というのは、とても意義が大きいように感じる。
仏教に少しでも興味がある人にはお勧め。
それから、論理的に言うと矛盾があるようなことがたくさん書いてあるが、この矛盾を矛盾でなくすところに、一種の悟りがあるのだと思う。宗教というものは、頭で理解するものではなく、全身全霊で体験するものだ。この矛盾が矛盾でなくなるところを、頭で理解するのではなく、身にしみて痛感するということになれば、立派なものだと思う。たんに「矛盾がある、めちゃくちゃだ」というのでは、馬の耳に念仏だろうと思う。

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叱咤激励の書

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この本はとてもお勧めできます。私は高校のときにはじめて読み、また最近読みましたが、2回目は1回目とは違った感銘を受けました。より深く理解できたからだけではないと思います。おそらく様々な人に別々の感銘を与える本だと思います。
「ツァラトゥストラ」は叱咤激励の書です(と私は思います)。ニーチェは厳しいことを言いますが、これは頓挫しつつある人すべてを励ます言葉です。この本によって勇気づけられる人がひとりでも多くいてほしいと思います。
ニーチェとはあわない、と言う人もたくさんいるでしょう。確かにニーチェの思想にはいくつもの欠点があります。ただニーチェの見方は新鮮であり、学ぶべきことも多いでしょう。
この本は、良くも悪くもニーチェ哲学のそれまでの総決算であり、以降への橋渡しであると思います。難解な哲学的述語は出てこないので、哲学初心者にも理解できます。そのうえ氷上さんの翻訳はとてもわかりやすく、読みやすいものなので、ぜひとも読んでほしいです。

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紙の本自殺について 他四篇 改版

2004/04/04 17:31

厭世哲学者

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ショーペンハウアーの哲学に触れたことがある人、彼の厭世主義に反発しながらもその魅力に強く惹かれざるを得なかった人、甘美な毒薬というに相応しい彼のペシミズムに一度でも脳を侵食された経験を持つ人は、およそそうではない人々とはまったく違った生き物であるかもしれない。彼は哲学者というよりはむしろ魔術師というべき人であって、滾々と尽きせぬ泉のように語られる厭世観に満ちた言葉は、心の奥底に癒しがたい秘密の傷痕を持つ人を、陶酔させ惑乱させ何よりも歓喜させる。彼のペシミズムに共感しうる感性を持つ人ならば、彼独特の認識不足・論理的錯誤・独断と偏見なども、大目に見ることができるばかりか、かえって一つの奇妙な魅力であるように思われるだろう。彼は我々にいろいろなことを教えてくれる。例えば、否定的なものを否定的なままに愛するということ━━つまり弁証法によって物事を転移させないこと、否定を肯定にすりかえたり、肯定と否定をぶつけ合ったりしないこと。それから、我々において知性に対する意志の絶対的優位があるということ。また、合理的でない「盲目性」、混沌の確認。そして性的なこと。
ショーペンハウアーは自殺を悪とする考えを糾弾し、暗に自殺を肯定している。だが彼ほど自殺が似合わない人はいない、「生きんとする意志」を説き、苦悩をあれほどに甘くすることができた彼が自殺するはずがない、事実彼は長寿を全うした。それは彼が否定的なものを否定的なままに受け止める強さを持っていたからだ。
ショーペンハウアーに対して、我々が我慢ならなくなるのは、まさにその我々を魅了するところのものだ。ペシミズム。彼自身が、みずからの哲学をペシミズムとして語るときに、自分の魔術に酔っている。現に今日の評価では、彼の哲学の最大の魅力であるペシミズムこそが、彼の哲学全体をいかがわしいものと感じさせる原因になっている。しかし彼の哲学には知性の閃きがある。

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紙の本ポオ小説全集 4

2004/07/18 23:57

続・「犯人」の進化の四段階

5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

(『ポオ小説全集3』の書評の続き)
星アキラ「そして4、超犯人。━━究極の犯人だ。
このタイプの特徴は、「操る」ことだと言える。この犯人は「偽の証拠」によって、捜査陣や名探偵を操る。「偽の証拠」で、無実の人間に濡れ衣を着せる。捜査陣にくわわって、捜査をミスリードしようとする。「名探偵」役を買って出る。……またはこんな超犯人もいる。みずからは直接に手を下さない。計画だけを立て、実行犯に犯行を行わせる。……このタイプの犯人は悪魔的にずるがしこく、しばしば「完全犯罪」をやりとげそうになる」
ぼく「なるほど。これが「犯人」の進化の四段階ですか」
「納得してくれたかね。━━しかしまったく奇妙な暗合が、ここにあるのだ。偶然の一致にしては出来すぎている」
「え? なんですか」
「ポオには四つの探偵小説がある。「モルグ街の殺人」「マリー・ロジェの謎」「盗まれた手紙」「おまえが犯人だ」の四つだ。
「モルグ街の殺人」の犯人は、完全に衝動的犯行による犯人だろう。人知を超えた衝動があんな悲劇を起こした。犯人の知性はいちじるしく低い。つまりレベル1だ!
「マリー・ロジェの謎」は、ずばり衝動的犯行が隠蔽されようとしたのだ。死体を河に投げ込むというのは、じつにリアルな隠蔽行為だよ。レベル2だ。
「盗まれた手紙」が高く評価されるのは、犯人の計画のうまさだろう。これはもっとも原初的なミステリ的トリックさ。最初の「犯罪芸術家」だね。レベル3!
「おまえが犯人だ」は、おもしろくない作品だが、何と含蓄があるんだろうねえ! すでに「偽の証拠」と「操り」と「濡れ衣」が出ているじゃないか! 彼こそ最初の超犯人だよ。レベル4!」
「はは〜ん、ポオは犯人を進化させていたのですね!」
「私が言いたかったのはそれだよ。そして犯人が犯行計画を複雑にすればするほど、名探偵の影が薄くなっているのは示唆的だよ。
「おまえが犯人だ」にはデュパンは出てこない。ポオはむしろ探偵の推理よりも、犯人の犯罪計画に重点をおいたのだ。
「盗まれた手紙」では、デュパンの推理の冴えはほとんど見られない。「モルグ」や「マリー・ロジェ」で見せた創造的推理はない。彼は犯罪芸術の批評家になってしまった。
……ところでこういう点を、明白に理解していた作家は、(ポオと)エラリー・クイーンだと思うね。
『チャイナ橙の謎』は明らかに「モルグ街の殺人」を意識しているよ。クイーンが執拗に「密室的状況」を扱うのに気付いたかね? エラリー・クイーンの作品は、ほぼすべて密室だよ。注意深く読めば、わかるさ。
たとえば、『Xの悲劇』では電車が密室だった。『Yの悲劇』ではなぜパウダーに足跡がはっきり残っていたか? 『中途の家』のまわりはなぜ泥がぬかるんでいたか? 『ローマ帽子』にせよ『フランス白粉』にせよ、建物の出入り口には誰かがいたのだ。
それは彼が「モルグ街」をよく理解していることを証明している。「モルグ街」の「密室」は不可能犯罪のためではなく、脱出経路を限定するためなのだな! 「密室」とはつねに、そういう意味なのだよ! つまり「限定」なのだよ。密室状況のために、犯人がとった行動が限定される。カーの密室にしても、そういうことだよ。
クイーンが「偽の証拠」にこだわるのも、「超犯人」を知っているからじゃないか。また彼が「紛失」のテーマを執拗に繰り返すのは、「盗まれた手紙」以外の何でもない。そしていうまでもなく、エラリアナ・ロジックは、「マリー・ロジェ」的に執拗なのさ。
我々はまずエラリー・クイーンに追いつかなければならないよ」

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毒入りチョコレート事件

2004/06/21 16:21

詩人で数学者

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ポオの「盗まれた手紙」にこんな名文句がある。「詩人でしかも数学者だからこそ、彼は推理に長けているのさ。」
名探偵は「詩人で数学者」でなければならない。つまり、詩人のように想像力や直観力や洞察力に優れていながら、なおかつ、数学者のように論理的思考力に長けていなければならない。
詩人で数学者━━ポオほど、この評言が似合う作家はいない。彼こそ、奔放な想像力の翼を持ちながら、緻密な思考力でそれを指揮することができた作家だった。
この「詩人で数学者」をエラリー・クイーン風に言いなおせば、「昔の公式どおりですよ。事実を拾いあげて、それをつなぎ合わせる。充分に論理を働かせてよく混ぜあわせる。そして、想像力の一撃を加える。いっちょうあがり、てわけです」(『中途の家』)。
「犯罪研究会」会員のチタウィック氏ならば、「詩人で数学者」をこんな風に表現するだろう。「帰納家で演繹家」。もろもろの明白な事実から、それらに矛盾しないひとつの仮説をぱっと思いつき、検証することのできる帰納家である。しかも、既知の事実から未知の事実を、論理によって割り出すことのできる演繹家である。このふたつの才能を持っていること。
つまり、要するに、ぼくが何を言いたいかといえば、『毒入りチョコレート事件』には「詩人」が多いな、ということである。それがひとつの事件にたくさんの解答を与えることができたひとつの秘密だといえるだろう。
この作品でバークリーがやりたかったのは、最後の幕切れのし方にあるだろう。つまりチタウィック氏の解釈も、最後の最後で、それまでの解釈と同様に、相対化される点にある。「真相」が解釈にずり落ちるのだ。ここで、全体の構成が別の意味を持つことになってくる。この幕切れのし方と、全体の構成結びついているので、絶妙な効果を生むのだ。読者ははなはだ混乱した頭のまま、読み終えることになる。この点を読めるかで、まったく読後感は違ってくるだろう。
久しぶりにすごい作品を読んだ。

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靴に棲む老婆

2004/07/11 23:26

マザーグース・ミステリ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

エラリー・クイーン・ファン・クラブのランキングで10位を獲得し、山口雅也氏もお気に入りの、人気がある作品のようです。
<靴に棲む老婆>コーネリアが支配するポッツ家には六人の兄弟姉妹がいました。サーロウ、ルーエラ、ホレイショは少し頭のねじが外れかかっている。ロバート、マクリン、シーラはいたってまとも。怒りっぽいサーロウがロバートに時代錯誤な「決闘」を申し込んだときから、不可思議な事件は幕を開けます。……あとは読んでのお楽しみ。
とても不思議な雰囲気を持った作品です。扉の解説に、「陰惨かぎりない雰囲気を、やわらかな童謡のユーモアでくるみ、一種独特の気品がにじみ出ている。」とあります。まったくその通りです。これぞ「マザーグース・ミステリ」でしょう。
作者はエラリー・クイーンですから、謎解きのほうでも堪能させてくれます。マザーグースの狂気と幻想のかげに隠れた、狡猾な真犯人は誰なのか? 作者はバッチリ読者の期待にこたえてくれます。
エラリー君は、ポッツ家の毒気に当てられて、少々カンが鈍くなっています。━━シーラ・ポッツのせいでもあるでしょう。我らがヒーロー、エラリー君は「分析」を語り出しながら、自分の正気を疑い出します。━━こんなところも、なんというか、マザーグースではありませんか。
犯人の正体を知ってみると、犯人のとった行動がいかに必然的だったかが、よくわかります。
一読の価値がある名品です。

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紙の本私の個人主義

2004/06/12 07:55

漱石の講演集

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

漱石の「個人主義」は、他人も尊重する個人主義です。まず、そこは明白に書かれているのだから、読み違えてはいけないと思います。
「個と全」というのは、たいへんな問題だろうと思います。「全」は見方によっていろいろ違ってくるでしょう。国家、社会といったものから、もっと小さく見て、世間や学校、もっと大きく見るならば、人類全般━━これらは、個に対して全といってよいと思います。
漱石は、この個と全を秤にかけて、個の方が大事だ、と決め付けているのではありません。
漱石が「自己本位」という言葉を発見して、「その時私の不安は全く消えました。」と書いているのは、当時の日本の状況を抜きにしては、十分に理解できないところでしょう。当時の日本は西欧文明というものに、完全に圧倒されていた。それほど、西欧は日本の百歩も千歩も先を進んでいるように思われた、というわけです。科学や学問の方面だけでなく、文学のほうでも、西欧の影響が強かったのです。
まずそれがひとつと、それから、日本がその頃、色んな面で、時代の分岐点にあったということが留意されるべきです。日本の発展の方向性を決める、という非常に重い任務が、当時の明示のエリートには課せられていた(んだろうと思います)。
漱石はかなりの秀才で、英語を勉強するために、ロンドンへ留学しました。そこでたいへんなカルチャーショックを受け、劣等感を抱き、日本の未来を憂えるというのは、十分想像できることだと思います。
ここで、「自己本位」という言葉が生きてくる。そのような意味にとらなければいけないと思います。
…………
「現代日本の開化」では漱石は、開化は生活を便利にするが、その内実の苦労はますますひどくなるばかりだと言う。そのうえ「西洋の開化(すなわち一般の開化)は内発的であって、日本の開化は外発的で」あり、急速に西洋に追いつこうとする日本は、西洋本位になって「皮相上滑りの開化」をしている、と漱石は指摘する。「ただ上皮を滑って行き、また滑るまいと思って踏張るために神経衰弱になる」。
「私の個人主義」は漱石の若い頃の回想を基にしたもので、人間漱石を知るうえで非常に参考になるものだ。漱石は大学時代に英文学を専攻したが結局文学が何かわからなかった。これは西洋的「文学」に対する正当な懐疑だと言える。この懐疑が一因となって漱石は不安な日々を送るが、ロンドン留学中に「自己本位」という言葉を発見してこの不安から脱する。初期の漱石は自由闊達に筆を動かし、『猫』『ヨウ虚集』『草枕』『坊ちゃん』などの、「文学」という枠に囚われない破格の作品を書いていく。これは漱石の拠って立つところが「個人主義」だったから可能だった。後に『明暗』などで示される「則天去私」の境地は、このような「個人主義」との対照において理解しなければ意味がない。
他の講演も非常に面白いので、ぜひ読み飛ばさずに読んでみてください。

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紙の本ジェゼベルの死

2004/05/28 08:58

コックリルが密室殺人に挑む!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

密室ものの魅力はなんでしょう。
まず密室は不可能犯罪ですから、トリックが使われているはずです。密室の謎というのはだいたい似通ったものですね。部屋が内側から施錠されている。その部屋の中には殺された被害者のほか、誰もいない。「部屋の密室」は、だいたいにおいて、こんな感じです。要するに謎の設定が似通っている。この似通った謎に対して、たくさんの作家が、競い合うように別の解答を求めるというのが、ぼくにとってひとつの魅力です。よくある密室トリックでも、少しひねれば、すばらしいものに変わることがあります。トリックのおもしろさを堪能するというのが一つあるでしょう。
それから密室は神秘的です。完全な密室殺人は、本当にこの世ならぬものの力が働いた気さえ起こさせます。壁をすり抜ける犯人、足跡を残さない犯人、目に見えない犯人……という、まったく不気味な犯人の存在を暗示します。オカルトと密室がよく似合う理由ですね! 密室の神秘も魅力です。
他にもいろいろあるでしょうが、上のようなことがぼくにとっての魅力であります。
『ジェゼベルの死』も密室ものです。ページェントの最中に作り物の塔からイゼベルという悪女が落ちる。ところが塔につながっている控え室の中には誰もいないはずだった。控え室の出入り口は二つしかない。ひとつは、楽屋側で、そこにはある人物が座っていた。もうひとつは、観客席側で、つねに観客の目にさらされていた。
これほどすごい密室トリックにはなかなか出くわせません。すべての偽の解答よりも一番すっきりしていて、パンチがあります。一度読んだ方も、密室トリックとしてはどういうことなのかを確認してほしいです。この原理の密室トリックは、あとにもさきにも、これ一作きりじゃないでしょうか? あらゆる密室ものの中で、ベストテン級の作品だと、ぼくが太鼓判を押します。
たいへんに魅力あるキャラクターのコックリルも登場します。容疑者は、6人前後(ブランドはたいてい6人前後にしますね)。読まなきゃ損です。

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紙の本自宅にて急逝

2004/05/25 23:30

パズルと小説

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ミステリは人間を描くことが難しいと言われます。
たとえば、三太郎なる登場人物が殺された被害者を発見する。「三太郎は死体を目にしてハッと驚いた。」こんな記述があったら、三太郎は犯人ではありません。自分が殺したのに、死体を発見して驚けるはずがないですからね。
人間を描こうと書いていると、うっかりこういう失敗を犯しかねない。それでその点に自覚的に、ミステリ作家は人間を外面的に書いているのだと思います。「三太郎は驚いた表情をした。」と書けば、たんに表情の問題だから、それが演技かどうかわからないという逃げ道ができるわけです。三太郎は犯人かもしれないし、そうでないかもしれない。
推理小説に批判的な人は、そこをつらまえて、やれ人間が描けていないだの、やれパズルを小説化しただけだだの、口をすっぱくして批評します。しかしこれは作家本人が自覚的にやっていることなんですよ。
上のような事情にもかかわらず、人間がばっちり描けていて、しかもパズラーとして申し分のない傑作を書くことができる作家もいます。その一例が、(誰も否定しないでしょう!)クリスチアナ・ブランドです。
ブランドのペンは恐るべき切れ味を持っています。彼女は登場人物の心理を鋭くえぐりだします。彼女は残酷なまでに深く人間心理を洞察します。ブランドの筆にかかれば、エドワードのような複雑な青年の心理も、まったく単純明快に解きほぐされます。ブランドは、優れた小説家が誰でもそうであるように、独自の手法をもった心理学者なのです。
彼女のミステリでは殺人の動機に非常に説得力があるのも、人間が描けているからでしょう。あらすじは……。
リチャードの孫たちはセラフィタの命日に白鳥の湖邸に集った。その晩、誰も近寄れたはずがないロッジで当主サー・リチャードが殺された。この不可能犯罪にコックリル警部が挑む。
事件が起こるまでの60ページは伏線だらけです。不可能犯罪と多重解決の幸福な結婚。多重解決をたんに並べるだけではなく、プロットの中に織り込んでいるという超絶技巧。不可能犯罪なのに、容疑者のすべてに犯行のチャンスを与えるはなれわざ。すばらしくたくらみ抜かれた傑作です。

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恐怖の研究

2004/05/25 11:44

ホームズVS切り裂きジャック

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

シャーロック・ホームズは切り裂きジャック事件を解決していた!
エラリイの友人グラント・エームズが偶然(?)発見したワトスン博士の未公開原稿には、あのもっとも有名な名探偵ともっとも有名な殺人鬼との恐るべき闘いが記録されていた。その原稿を読んでいくうちに、エラリイの頭脳も静かに回転しはじめた……
とてもおもしろかった。僕のミステリの原体験は、(ご多分に漏れず)中学生のときに読んだホームズなので、「初歩だよ、ワトスンくん!」「……したまえ」などの台詞があるだけで、なんとなくわくわくしてしまう。
そのホームズが、切り裂きジャックと対決する、というだけで★五つあげたい。
長編といっても200ページくらいで、文体も読みやすい。プロットもとてもおもしろく、一気呵成に読ませる迫力を持っている。ホームズは冒険する名探偵なので、謎の襲撃者との格闘シーンなどもある。
肝心のエラリイ・クイーンはほとんど活躍していない。最後のちょっとしたどんでん返しは、とってつけたようで、重厚な謎解きという感じはないが、ワトスンの原稿がおもしろいので許せてしまう。(こういう実際の事件を使うのは、賛否両論あるだろうけど……。)
ロジックもトリックもほとんど使われていないのに、おもしろいのは、ホームズ物語のようなプロットのおもしろさがあるからだろう。
ホームズ・ファンにはお勧め。

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とびっきりの不可能犯罪

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

素人探偵アルジー・ローレンスはピーター・クウィリンから依頼を受けます。━━兄ロジャーが呪われた<通路の間>に閉じこもると言って聞かない、ぜひ兄の安全のために一緒に護衛をしてくれ。
しぶしぶ護衛をひきうけたアルジーはピーターと地元警察と一緒に、通路の間を見張ります。悲鳴を聞いて駆けつけたアルジーたちは、ロジャーが背中をさされて、いま息絶えようとしているのを発見します。
通路の間は施錠されていました。折からの雨でぬかるんでいた庭にも足跡がありません。そのうえ通路の間の周囲は3人もの人物の厳重な監視の目があったのです。……
━━とびっきりの不可能犯罪です。密室ものはたくさんありますが、これほど不可能に思えるのもそうありません。二つの事件がありますが、第二の事件も不可能犯罪です。
最終的には、まったく無理だと思われたことが、すこしのごまかしもなく解決されます。第二の事件のトリックは、あれの応用であり、何ということはありませんが、第一の事件のトリックは素晴らしい。解決編も、凝っていて面白いです。
デレック・スミスという人は、アマチュア作家なのですが、密室ミステリの研究者としてはすごい人のようです。それだからこれだけのものを書けるのでしょう。
しかし、いくつか欠点がないわけではないと思います。解説でも言われているけど、「困難は分割せよ」に頼りすぎているという欠点があります。それから、データの提示不足です。解決で指摘されているのがひとつ、それと、もうひとつ。
「引用癖のある青年」とはエラリー・クイーンのことじゃないですか? エラリー・クイーンの悪口を言われると、ファンとしては、見逃せないですね。それも個人的には大きな欠点です。
とてもおもしろい密室ものです。密室ファンなら必読でしょう。

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紙の本第四の扉

2004/05/25 01:14

フランスのディクスン・カー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

スティーヴンズ家、ダーンリー家、ホワイト家が隣接する村の一角では、このところ奇怪な事件が続発していた。ヘンリーが失踪して数年後、「ぼく」ことジェイムズ・スティーヴンズは隣のダーンリー家で行われる交霊会に参加する。数年前に屋根裏で変死したエレノア・ダーンリーの霊を呼び起こそうというのだ。ところが、密室状態に封印された部屋に、突如意外な人物の死体が出現した!
「フランスのディクスン・カー」ポール・アルテの出世作です。とにかくハイテンションな作品でした。こんなに「!」マークが多い小説を読んだのははじめてです。
問題編までは普通の密室ミステリですが、第三部に入ってからがメタ・ミステリっぽくなります。ここからが本当の読みどころです。このラストの50ページは、まったくおみごとです。このハイテンションな文体とあいまって絶妙な効果をあげています。「○○が犯人」をうまく成功させていますし、ラストの1行はちょっとぞっとします。
ミステリ作家にはこういう遊び心が大事です。ミステリは娯楽なんだから、読者を存分に楽しませないとね。この趣向はよかったと思います。
メインの密室トリックは注意深く読んでいれば予想がつくものですが、最後まで読めば、そんなことはどうでもよくなってしまいます。
よい意味で軽くて、楽しい作品でした。今後も、どんどん翻訳紹介していってほしい作家です。

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ギリシア棺の謎

2004/04/16 20:12

隠れがちな傑作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これは探偵エラリーの大学卒業まもない頃の活躍を描いた「エラリー・クイーン最初の事件」だと思います。
クイーンは同年にバーナビー・ロスという別名で『Xの悲劇』を書いています。この『ギリシア』は凝った文体と重厚なプロットを持っているので、国名シリーズの他の諸作の軽い感じとは違って、雰囲気的にはむしろレーン4部作に近いものを感じさせます。
犯人はとてもずるがしこい奴で、エラリーはたびたび「ニセの証拠」に翻弄されて失敗を重ねます。でも最後には我らがエラリーが犯人を手玉に取って事件は解決されます。彼らの知的闘争は読んでいるこちらも頭痛に巻き込むほど、複雑なものです。
この推理小説の欠点を上げるとすれば、1、長すぎること、2、犯人を決定する決め手が副次的事件によること、でしょう。
エラリーの快刀乱麻を断つ名推理はとても厳密かつ明確なものです。出来事の組み立ての巧妙さ、犯人の意外性、推理の論理的厳密性、どれをとっても超一級で、これほどのものを書ける作家は今後現れないかも、です。

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紙の本深夜の散歩 ミステリの愉しみ

2004/04/13 06:56

文学者の散歩

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

福永武彦、中村真一郎、丸谷才一、という、日本文学をちょっとでもかじったことのある人なら、誰でも知っている三人の作家が、ミステリへの愛を軽妙洒脱に語った好著。
こういう公的なレビューで、私事が余計であるということは百も承知だが、あえて自分のことを言わせてもらえれば、じつは僕も、文学とミステリが死ぬほど好きだ。ときどき文学をメインで読んでいるのか、ミステリをメインで読んでいるのか、わからなくなる。僕にとってミステリは、文学に疲弊させられた心を癒す、大事な精神療養なのだ。
三人のなかでも福永武彦さんは加田伶太郎という変名で自分で推理小説も書いている。それも生半可なものではない━━がちがちの本格ミステリである。扶桑社文庫から福永武彦著『加田伶太郎全集』として出版されているので読んでほしい。福永氏は恐ろしい量の推理小説を読んでいるらしい。
とにかくお勧めだ。僕のように文学もミステリも好きだという人には特に。推理小説しか読まないミステリ専門の批評家の本よりも、数倍ためになるかもしれない。最後に丸谷氏の言葉を引く。
「『Yの悲劇』を読んでいない位なら、同じエラリー・クイーンの『Xの悲劇』も『Zの悲劇』も、手にとったことはないだろう。そしてまた、アガサ・クリスティーの『ABC殺人事件』も覗いたことがないだろう。つまり、探偵小説のAからZまで知らないだろう。」
まったく同感。かりにもミステリ好きを自称するなら、最近の新本格や軽ミステリーやサスペンス小説ばかり読むのではなく、探偵小説の伝統の重みを知ってからにしてほしいと、僕個人としては思うのだが。

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フランス白粉の謎

2004/04/09 05:15

ミステリの薀蓄

3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ミステリ(または推理小説または探偵小説または……)の定義については、これまで様々なことが言われてきた。現代において完全な定義をすることは不可能である。ミステリは本当に多様に発展したので、それをひとくくりにまとめることは、ちょっと無理だ。
ポオが書いたミステリは何だったか。そこにはまず謎があり、推理があり、解決があった。だから、もっとも広汎にミステリを纏め上げる定義は、「謎とその推理とその解決(真相)を中心とした物語」となるだろう。乱歩のように、「主として犯罪に関する」と頭に付けてもいい。探偵役が必要なのは、この推理の部分をやらなければならないからだ。
本格ミステリとは何か。ポオの探偵小説は種であり、そこから樹木が生まれた。本格とは幹の部分に価するものだ。忘れてはならないのは、それが伝統的に築き上げられたものだということだ。本格ミステリが完成したのは、いわゆる黄金時代であると思う。ポオ自身が伏線の妙やアリバイ崩しやどんでん返しを発明したのではない。ポオが基礎的な要素を一挙に提示したのだが、すべてを、ではない。その樹木を発展させる活力となったものは、知的な面白さを求めるという人間の一側面である。人間がこの知的な面白さを忘れないかぎり、ミステリの樹木は枯れることがないだろう。
「本格ミステリ」と一口に言っても、その種類は様々であり、当然その様々な種類は許されるべきなのだ。
では、その広汎なミステリのなかでも、ぼくが最も好きなミステリの特徴を一言で表せば、こうなる━━「犯罪分析の論理学」。……つまり「推理」の部分をクローズアップし、論理的に揺るぎなくしたものだ。
名探偵エラリー・クイーンは「犯罪分析の論理学」のスペシャリストである。例えば『フランス白粉の謎』。この複雑な事件を、エラリーは徹頭徹尾、論理で解く。
驚くべきなのは、これが作者の第二作目だということだ。物的証拠と状況証拠をちりばめて、堅実な分析的思考を探偵に駆使させる作者の手際は、デビューニ作目にして、すでに名人の域である。
解説に作家クイーンが提唱した「推理小説批判法」が紹介してある。10項目を10点満点で評価して、合計が何点になるかで、そのミステリの質を総合的に評価しようとしたものだ。
この『フランス白粉の謎』にもぼくなりに適用してみると……プロット6、サスペンス6、意外な解決6、解決の分析10、文体7、性格描写6、舞台10、殺人方法5、手がかり10、フェアプレイ10━━で、76%である。作者クイーンによると、この作品は「佳作(70%)」以上「秀逸(80%)」以下、になる。

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