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先月(2017年8月)

Ken1050さんのレビュー一覧

投稿者:Ken1050

1 件中 1 件~ 1 件を表示

紙の本パレスチナ紛争史

2004/06/21 18:38

紛争の舞台裏をリアルに描いた好著

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 パレスチナ関連の本はちまたにあふれているが、その多くはフリージャーナリストやカメラマンらによって書かれたもので、パレスチナ人の痛みは伝わるものの、なぜこうなってしまったのかという論理的な説明が欠けている。学者による良書も、10年以上前のものが多い。アラファト議長やパレスチナ武装組織リーダーのインタビューも行った新聞記者の手による本書は、現場の雰囲気を伝えつつ、なぜ憎しみの連鎖が止まらないのかという点について、歴史を含めた様々な視点から明快に解き明かしている。
 一般の我々にとって最も分からないのは、和平交渉をしていたイスラエルとパレスチナが、決裂からわずか二ヶ月ほどでなぜ突然戦争状態になってしまったのか、という点だろう。キャンプデービッドでの和平交渉も取材したという著者は、交渉決裂に至る内幕のやり取りを緻密に再現し、シャロンがイスラム聖地に足を踏み入れて紛争が勃発するまでのプロセスをドラマの如く描いている。多くの水脈が集まって一つの川になるように、パレスチナ紛争は起こるべくして起こったのである。
 著者は前書きで、イスラエルとパレスチナの双方と等距離を取るよう努力してきたが、それは極めて難しいと告白している。「日本のメディアは、いわゆるルポを好んで載せるため、意図しなくてもパレスチナ側の主張に沿った報道になりがちだ」という一文は誤解を招きかねないが、これはバランスの取れた報道を行う難しさから吐露されたマスコミ界からの反省の弁と取るべきだろう。
 実際、筆者は一章をまるまるその「ルポ」に費やしているが、イスラエル軍に投石で立ち向かうパレスチナの少年たち、流れ弾に当たって障害者になったパレスチナ人少女だけでなく、自爆テロで両親と幼い兄弟を失った子供たちの悲しみにもスポットを当て、どちらが悪いという議論を超えて、読む者に何とかこの紛争に終止符を打たなくてはならないと思わせる。
 かつて左翼運動がパレスチナ解放運動に結びついた日本では、一般的にパレスチナに対するシンパシーが根強い。書店に並ぶパレスチナ関連本を見てもそれは明らかだろう。本書はパレスチナ側も容赦なく批判している点で異色である。その一方で、パレスチナ人をテロリストと非難するイスラエルが、かつて「テロ」の末に独立を勝ち取った事実や、イスラエルの過剰な報復の裏にあるユダヤ人の深層心理にまで言及している。このバランスをどう評価するかは、読者のスタンス次第であろう。
 しかし、おそらく著者が一番批判しているのは、パレスチナでもイスラエルでもない。終章の「アメリカの罪」というタイトルがそれを暗示している。
 

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